
第1章 マタニティライフ中編①【我が家に女の子がやってくる!】
クリスマスが近づいた頃。
「今日くらいに性別がわかるかも?」
そう言って、私は朝の身支度をしている彼に声をかけた。
私たち夫婦は、性別にこだわりはなかった。
「どっちでも嬉しいよね」って話していたけれど、どこかで、“どっちなんだろう?”って、少しドキドキしている自分もいた。
後から知ったけど、私の父は「絶対に女の子がいい」って思ってたらしい。
私の性格をよく知ってるからこそ、
「男の子だったら、絶対やんちゃで、振り回されるに決まってる」そんなふうに思っていたみたい。
結果を聞いて病院を出た私は、あることを思いついた。
ささやかだけど、ふたりだけのジェンダーリビール。
インスタで見たジェンダーリビールが可愛くて、真似してみたかったんだ。
ローソンでプレミアムロールケーキと、冷凍のベリーを買ってきた。
ラズベリーをロールケーキの真ん中にそっと仕込んで、切った瞬間に赤が見えるように、ちょっとした工夫もしてみた。
ブルーベリーだったら男の子。
ラズベリーだったら女の子。
サプライズというほどでもないけど、ちょっとしたイベントにしたかった。
そして夜。
私はスマホの録画ボタンを押して、ケーキをそっと差し出した。
彼がどんなリアクションをするか、ちょっとワクワクしてた。
彼はなぜかBGMを口ずさみながらケーキにナイフを入れはじめた。
「じゃじゃじゃじゃん♪ じゃじゃじゃじゃん♪」
後から調べたら、まさかの「結婚行進曲」だった(笑)
彼はちょっと緊張してるような表情だった。
「オープン!」
ケーキの中から、赤いベリーが見えた。
「……いちご!」
「ということは?」
「女の子……! 我が家は、女の子が生まれるんですねぇ」
しみじみとした顔で、エコー写真とケーキを交互に見つめながら、彼がそうつぶやいた。
「最後に一言どうぞ」
ちょっと照れながら彼が言った。
「元気に産んでください」
「……いやいや! 元気に“出てきて”ください!」 私はすかさずツッコミながら、おはなに向かって声をかけた。
ふたりで笑いながら、その時間を楽しんだ。
この動画は今もたまに見返す。
元気に生まれてきてくれたら、
それだけでよかったのにな。
本当に、それだけだった。
でも、元気に生まれてくるって、
当たり前じゃなかったんだ。
わかっていたつもりだったけど、
たぶん、全然わかっていなかった。
今もまだ、ちゃんとは⸻
きっと、これからもずっと、
わからないままなのかもしれない......