
第1章 マタニティライフ後編①【里帰り出産をめぐる、家族とのすれ違い】
私は地方出身で、関東に引っ越してきてから旦那さんと出会った。
母も父も大好きで、
会えない時間が増えた分、
電話や帰省のたびにできる限りの想いを伝えてきたつもりだった。
だから、「赤ちゃんができても、今の家で旦那さんと一緒に過ごす」ことは、
私にとってはすごく自然な選択だった。
「お母さん、もし赤ちゃんできたら、
こっちで産むと思うよ。」
そう話していたから、
私はてっきり伝わっていると思っていた。
でも、違った。
父も母も、「娘の出産は実家で支えるもの」
という前提で考えていたみたいだった。
私の言葉よりも、“常識”や“今までの当たり前”のほうが、ふたりの中にしっかり根づいていた。
そのとき初めて、私の選択がふたりを困惑させてしまっていたことに気づいた。
母の口調が少しだけとげとげしくなって、
父は無言のまま、ほんの少し冷たい態度になった。
何気ない電話のやりとりの中で、
気まずさのような空気が流れていった。
「私、間違ってるのかな」
「わがままなのかな」
「せっかく妊娠できたのに、なんでこんなに淋しいんだろう」
そんなふうに思って、
自分の気持ちを何度もぐるぐるさせていた。
今になって思うのは、
あのとき私は、直感的に「旦那さんの側で産みたい」って思っていたけど、
それが自分でも気づかないところで、
お父さんとお母さんを淋しくさせてしまっていたんだな、ってこと。
妊娠中にもっと悩みや変化を共有して、
もっと相談すればよかった。
もう少しだけ、やわらかく甘えてもよかったのかもしれない。
ちょっとだけ、意固地になっていたなって思う。
でも私はやっぱり⸻
おはなと、旦那さんと、
いまの家で“家族”を始めたかった。
それはきっと、わがままじゃなくて、
「ここから私たちの“家族”を始めたい」という
祈りのような気持ちだったんだ。