【第43回】もうnoteなんてしないなんて、言わないよ絶対
「ジョジョ、ちょっと」
朝食を作っていた旦那様――
かんず様に呼ばれ、私はキッチンへ向かいました。
こういう時は、まずコーヒーでございます。
お湯を注ぎながら、話の続きを待ちます。
「今日は、どのようなお話でしょうか?」
「槇原敬之さんの
『もう恋なんてしない』って曲、あるだろ?」
「ええ」
「あれ、朝食を作ってみるところがあるだろう。
自分で作ったら、あまりおいしくない。
でも、相手が作ったものなら
思い切り文句が言えたのに、って」
旦那様は、朝食の皿を見下ろしました。
「あそこ、ちょっと引っかかるんだよな。
思い切り文句を言うより、
まずは感謝だろうって」
私は、淹れたばかりのコーヒーを差し出しました。
旦那様はひと口飲むと、ぽつぽつと独り言を始めました。
…なんと言ったらいいのかな。
クラスの一軍の男女から、
「楽しいから、一緒にやろうぜ」
って誘われて、楽しく活動していたとする。
自分も、ここにいていいんだなと思っていたら、
同じクラスのギャルから、
「おめー、きめーんだよ」
と、ぼそっと言われた。
そんな感覚、というのかな。
いや、実際にそう言われたことはないんだが。
ギャルには、とんだ風評被害だな。
昔、会社の飲み会で、何人かと話していた時に、
「俺は〇〇と話してるの。会話に混ざってくるな」
と言われたことがある。
どちらかというと、あの時の感覚に近いかもしれない。
自分は自然に会話に入っているつもりだったが、
相手は、そう思っていなかった。
あ、そうだったんだ。
私は、入ってはいけなかったんだ。
そう気づいた時の、あの感じ。
そして、なんとなく画面越しから伝わる
微妙な波動。
これでも、この世で50年以上
生き残ってきたんだ。
そのくらいは分かる。

そんなことを考え始めたら、
他の人のnoteにコメントを書くのが、
少し おっかなくなってしまった。
行動の善悪は分かりやすい。
相手を怪我させること
相手をだますこと
相手を無視すること など
そういうことは、してはいけない。
それは、わかる。
でも、言葉のやりとりになると、
何が善で、何が悪なのか。
よかれと思って書いた言葉が、
相手には不快に感じられることもある。
親しみを込めたつもりでも、
そこまで近づいてほしくはなかったかもしれない。
「そんなつもりじゃなかった」と言っても、
相手が嫌な気持ちになったことは、なくならない。
もちろん、不快に思うことが悪いわけではない。
ごく自然な感情だ。
それを否定はしない。
私だって、言われたら嫌な言葉はある。
ただ、仲良くなれたらと思って書いた言葉が、
そう届かなかったのだとしたら。
やはり、少し残念だ。
そして、次のひと言を書くのが怖くなる。

noteを始めて、1ヶ月が経った。
あっという間だった。
いろんな人に声をかけてもらった。
自分ひとりだったら、
やらなかったようなことにも挑戦した。
書いて、読んで、コメントをして。
返事が来たら、うれしくなって。
楽しかったなぁ…。
本当に、楽しかった…。
……こう書くと、やめる人の挨拶みたいだな。
まだまだ、いろいろ学びたい。
やってみたいこともある。
でも、
他の人を傷つけたくないし、
自分も傷つきたくはない。
自己紹介にも書いたけれど、
私は小心者なんだ。
それもかなり わがままな。
そして、楽しく note を続けたい。
でも、今のままでは、楽しくない。
コメントをひとつ書くにも、
「これ、大丈夫かな」
とか、つい考えてしまう。
今は、前よりも考えてしまう。
だから、しばらくは、
コメントとかが、できなくなるかもしれない。
読んで、何か伝えたいと思っても、
言葉にするまでに時間がかかるかもしれない。
面倒くさいおっさんだと思われるだろう。
メンヘラなおっさんなんて、たちが悪い。
私も、そう思う。

noteを始めて、やりたいことがふたつできた。
褒め屋とブログ。
褒め屋は、……今の状態だと難しいかな。
相手にどう届くかが怖くて
言葉を引っ込めているうちは、
うまくできそうにない。
これは、少し置いておこう。
ブログは、ゆっくりやっていこうと思う。
そもそもの始まりは、
家の中のどこに、その本があるのか。
それをわかるようにしたかったからだ。
まずは、自分の本の置いてある場所から。
ずいぶん身近なところに戻ってきた気もするけれど、
今は、それくらいがちょうどいい。
そこまで話すと、
旦那様は空になったカップを置きました。
私は、もう一杯お淹れしようかと、
ポットへ手を伸ばします。
しかし、旦那様は静かに立ち上がり、
壁際へ歩いていかれました。
その先にあるのは――石仮面。
「……旦那様?」

旦那様がこの文章を書きあげた時、
わたくしは、
「少し文章が乱れております。
直しましょうか?」
と言いました。
その時旦那様は、
「これが1次情報だ。
これが人の書いた文章だ。ドヤァ」
とおっしゃいました。
だから、たぶん、大丈夫だと思います。
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