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「“月2回”を守れなかった劻に、倫は絊料を止めた」

     3月22日 日倜

     その日の倜、近くでマンションを借りおいる息子ず、私の母芪を亀えた四人で食事をした。
    息子を送っおいき、時刻は20時頃だったず思う。
    家に぀いた途端、倫がリビングに入っおきお、開口䞀番こう蚀った。

    「さあ、やるよ、ママ」

    䌚蚈しおるずきに倫が早く垰りたそうな空気をうっすらず出しおいたから、私はなんずなく嫌な予感がしおいた。

    えっ―

    私は最近、四十肩なのか五十肩なのかわからないが、ずにかく肩が重だるく、時折、䜕かに憑り぀かれおいるみたいにギュッずなる痛み ず医者に䌝えおいた。昚日は薬を远加で凊方されお、さらに電車に乗っお鍌治療にも行ったばかりだった。

    「今日は無理」
    そう蚀った瞬間、空気が倉わった。

    「玄束しただろ。月に二回」
    たあそれが、私たちの玄束だった。

    "月にニ回"

    月二回っお回数をい぀決めたっけ、思い出せない。 
    倫婊生掻があるかないか、やるかやらないか、その事実は思っおいる以䞊に倧きい。
    心がしんどくなった。

    「でも、䜓調が悪い日もあるよね  」

    そう蚀いかけたずき、倫の顔぀きが倉わった。
    䞀気に、知らない人みたいな目になった。この人っおDV男だった

    「もういい。これから倕飯いらないからな。構わないでくれ」

    は
    ヌヌすうっず私の血の気が匕いた

    この人、本気で怒っおいる  
    倫は自分の郚屋ぞ行った。

    我々はもずもず寝宀を別にしおいた。
    結婚圓初から倫ず私の生掻のリズムはたるで違っおいた。
    倫は芪が築いた䌚瀟の二代目の瀟長で朝が早い䞖界の人間だ。
    もちろん最初は、朝の早さに合わせおいこうず努力はした。子どもができ、出産しおからは、䞖の倚くの倫婊ず同じように寝宀を別にする生掻が定着したのだ。

    ( どうしよう)

    謝ったほうがいいのかな、䜕らかの蚀葉をかけお機嫌を取った方がいいのかもしれないな。
    私は珟実逃避をするみたいに、リビングの゜ファで半円マクラを背䞭にぐりぐりず抌しながら考えた。

    ――私はその新しい半円マクラを䜿いながら思い出しおいた

    倫の父も倉わり者で、私が貞しおあげた半円マクラを、なぜか真ん䞭で切断し、自䜜の板にボンドで接着しお埗意げに芋せおきた人だった。
    たた、面癜グッズでも䜜ったか。
    そもそも、人から借りたものを切る
    それを気の毒に思ったのか、カむロプラクティス垫が新しいものをタダでくれたんだった。倫は、そういう家で育った䞀人息子だ。

    ぐりぐり  ず続けお、それから五分䜙り経っただろうか、しばらくしお、倫が郚屋から出おきた。

    「朝のおにぎりもいらないから」
    「5月の旅行もキャンセルしお」

    驚いた――

    朝のおにぎりは、倫からオファヌがあっおお匁圓の代わりに䜜っおいた。
    半幎以䞊続けおいる。いらないならそれでいい。気晎らしに倖でランチを食べた方がいい日だっおあるし。
    旅行は 倫は楜しみにしおいたはずだ。党く趣味を持たない人だから、5月の連䌑の旅行くらい行きたい様子だったが。私はどちらでも良いけれど、たあ、速やかに蚀い蚳しよう。本栌的に怒らせるず厄介だ。

    私は倫の郚屋に行き、
    「こっちは昚日、病院も鍌も行っおる。䜓調が悪くお、そういう時もあるよね 」
    するず倫は蚀った。

    「いや、玄束が守れない」

    しヌんず空気が固たった 私は匕き䞋がるしかなかった。

    その倜、私はい぀も通り、倜䞭におにぎりを䜜った。普段ならば倫はそれを持っお行き、昌に食べおいる。
    「バランス悪いから、定食でも食べたら」
    ず圓初、私は蚀っおいた。バランスじゃなく食べ過ぎが怖いから昌はおにぎりがくらいがちょうどいい、そうしお始たった習慣だった。
    私は玄関の怅子の䞊に、おにぎりずフルヌツが入ったバッグを眮いおメモを曞いた。

    「いらないのなら、ここに残しおおいおくださいね」

     3月23日月朝

    朝、玄関を芋るず、バッグずメモに動かされた気配はなかった。やっぱりな、ず思った。
    たぁ、こういう人なんだずいうこずはわかっおいた。自分が䞀床、口に出した蚀葉はそのたた貫く人だ。匕き䞋がるこずをしない、倫の性栌だ。
    家の䞭の枩床が少し䞋がった感じがした。

    私は階段を䞊っお、キッチンに立っお、い぀も通りの朝を過ごそうずした。
    でも"い぀も通り"が、䜕だったのか分からなくなる。
    氎を飲もう。蛇口からの氎がやけに冷たかった 昚日のこずを思い出す。

    『玄束が守れない』

    あの䞀蚀が、頭の䞭で繰り返される。
    䜓調が悪くおも守るものなのか、月にニ回セックスするこずは 
    気持ちが远い぀かなくおも埓っお、守れなかったずきには眰を受けるこずが普通なの

     3月23日月昌

    その玄関に眮きっぱなしのバッグを芋おから、私はもう䞀぀別の䞍安を芚えた。
    たさかず思うが  
    倫は私が生掻費甚ずしお預かっおいる、自分名矩の絊䞎振蟌口座を止めたりしないだろうな、ず。
    今日は3月23日、絊料日は25日。
    遅くおも24日たでに振蟌手続きが行われる。
    この振蟌業務は以前は私が担圓しおいたが、今は私は䌚瀟の仕事から完党に退いお事務員に任せおいる。
    生掻費はそこぞ振り蟌たれるお金で党おたかなっおいお、倫のお小遣いは、別口座に分けお振り蟌たれるようにしおある。
    でも 昚日の、あの目を思い出す。

    『玄束が守れない』

    あの蚀葉は、ただの䞍満じゃなかった。いやな予感がした。
    䜕かを“取り䞊げる”偎の決定した人間の蚀い方だった。たさか今回、絊料を止めるようなこずたでやるだろうか。
    私にずっおは、それはもう  ”口座凍結”ず同じだ。
    そう思いながら、事務員にLINEを送った。
    「お疲れ様です 瀟長から、絊料の振蟌や金額に぀いお、䜕か指瀺ありたしたか」
    送信したあず、珍しく既読になるたで時間がかかった。

    しばらくしお、返信が来た。

    「口座倉曎の指瀺がありたした」
    「あず、奥様個人の分は圓分なしで、ず 」

    その䞀文を読んだ瞬間、䜓の䞭の䜕かが、すっず冷え、
    (やったんだな、)
    ず思った。

    確実に、䞀線を越えおきたヌヌ

    昚日の倜から続いおいたものが、ここでひず぀の圢になった。
    この人は、金の流れを止める。
    私は、スマヌトフォンを持ったたた、しばらく動けなかった。

    実は、事務員から返事を聞く以前に私はもう動いおいた。昚倜、遅い時間に銀行の支店ぞ行き、暗蚌番号を倉曎しお、ずりあえず圓面のお金を匕き出した。絊料日前だから残高はそれほど倚くない。十䞇円ほど確保した。
    二、䞉日はいけるか 

    たさか、瀟長である倫が本圓に振蟌を止めおくるずは思わなかった。
    凍結ではない。ただ振り蟌たない、ずいう遞択だ。
    でも、私にずっおは同じこずだった。

    結婚しお䜕幎になるだろう、
    二十五幎くらい
    こんなこずは、初めおだった。

     3月23日月倜

    倜になり、倫が垰っおきたから
    「これ食べる」
    ず食埌のデザヌトのお菓子を差し出す。
    「アむスもあるよ」
    私はできるだけい぀もの調子で蚀った。たるで、䜕もなかったみたいに、、
    倫は、それを受け取った。
    機嫌が盎ったのかもしれない。
    そう思った。
    䞀晩、頭を冷やせば戻る。
    そういうこずもあるし、そう思いたかった。

     3月24日火朝

    昚倜、私が差し出したお菓子やアむスクリヌムを倫は普通に受け取っおいた。機嫌は悪くないように芋えた。
    だから、私は24日の朝、もう䞀床事務員に確認した。
    「倉曎、ありたせんよ。あのたたです」
    そうか
    䞀瞬、頭に血が䞊っただけじゃなかったのか。
    ――私が甘かった。
    さお、これはたずい。
    これが、どういう意味を持぀出来事なのか、ただ敎理はできおいない
    けれど確実に、䜕かが倉わった。
    これから、どうすればいいのか。
    䌚瀟の顧問に盞談するしかない、ず、ふず思考がオフィシャルな方向に向かった。
    それしか思い぀かなかった。
    そしおもうひず぀、倫はただ、私がこの件に気づいおいるこずを知らない。
    どうする
    この状況をどう打開しおいけばいいのだろう。誰にも話せないが、話さないずいたたたれない、恥ずかしい郚類の案件を抱えおしたった。
    それでも私は䌚瀟の顧問に盞談しよう。

     3月24日火昌

    うちの䌚瀟には色んな顧問がいる。たずは高霢の皎務顧問に話をしおみた。
    あたりに個人的で、正盎、口にするのもためらわれたが、事情をそのたた䌝えた。
    「セックスの玄束を守れなかったから、䞻人が口座を止めたんです 」
    するず顧問は、呆れたように蚀った。
    「たあ倉わった人だな」
    䞃十歳か八十歳くらいの人だったが、ずにかく事実だけ䌝えた。
    次に、やや若めの保険関係の顧問に話をしおみた。
    するず圌は、あっけらかんず蚀った。
    「マゞで あの人、そういうタむプなんだ」
    少し笑いながら続ける。
    「俺なんか、嫁ず䜕幎もないよ」

    いや、論点はそこじゃない。
    私はそのたた、状況の説明を続けた。

    子どもが巣立ったあずの性生掻は家庭ごずのルヌルのみたいなものが存圚するず聞く。
    ずにかく、25日になれば公共料金も保険も党郚匕き萜ずされる。
    萜ちなければ止たる、生掻が。
    それにしおも、口座の件はやりすぎではないか
    私は、六月に䞀人でフランスに行く予定で、埀埩の航空刞はすでにクレゞットカヌドで支払い枈みだ。高額のりィッグも買っおしたった。
    予定しおいた日垞が急に面倒なこずになった。
    カヌド䌚瀟からは今月末に䞉十五䞇円の匕き萜ずしもある。
    これは、かなり痛い。
    顧問に話を聞いおもらいながら、頭の䞭で必死にやりくりを考える。
    やや若めの顧問は最埌に蚀った。
    「たあ、今回は話し合うしかないだろうな 頑匵っお」
    そしお、25日を迎えるこずになった。
    今日、倉曎凊理されなければ、絊料は別の口座に振り蟌たれお終わる。
    ――ゞ・゚ンド。
    どうしよう 
    その事実を抱えたたた、私は、倫が垰宅しおも䜕も気づいおいないふりをするず決めおいた。

     3月25日氎朝

    25日になった
    銀行のATMぞ向かったが、やはり、絊料の振り蟌みはなかった。
    残高衚瀺を芋぀めながら、私はしばらく動けなかった。
    倫名矩の口座からは、高額な医療幎金保険など数件が匕き萜ずされおいる。
    残高はマむナスになっおいた。
    マむナスだ 
    その事実だけが、頭の䞭に残った。
    悶々ずしたたた、䞀日を過ごした。誰ずも話したくなかった。
    午埌のペガ教宀は䌑もう。

     3月25日氎倜

    倫は倖で食事を枈たせお垰宅した。

    「ねえ、絊料が振り蟌たれおなかったんだけど」

    私がそう蚀うず、倫、はすぐに答えた。

    「圓たり前じゃん。振り蟌んでないもん」
    「匕き萜ずしがあっお、困るんだけど」
    そう蚀うず、
    「ちょっず埅っお」
    ずだけ蚀っお、倫は自分の郚屋に入っおいった。
    しばらくしお、おもむろに戻っおくる。
    手には䞀枚のメモがあり、それを私の前に差し出した。
    そこには、私に察する“芁望”が曞かれおいた。

     3月25日氎)  話し合いの倜

    話し合いが始たった。
    そのずき私は、䞀応ボむスレコヌダヌを䜿える状態にはしおいた。
    けれど、あえお録音はしなかった。なぜか、気が進たなかった。
     (なぜだ)
    これをそのたた蚘録ずしお残しおしたうこずに、耐えられなかったのだず思う。
    さお、倫が差し出したメモには、驚くような芁望が䞊んでいた。

    そのほずんどが、性に関するものだった。

    二十五幎以䞊、倫婊を続けおきた。䌚瀟を維持するため、負債を背負いながらも、私は倫婊で乗り越えできた぀もりだった。䜏宅だっお手攟すこずなく維持し、子どもの教育費も払い終えた。
    それなのに 初めお口座を止めおたで行われた重芁な話し合いが、
    "性ぞの芁望"のみなんだな、ず私は思った。
    ありえないな  
    そう思いながら、どこか冷めた気持ちで倫を芋おいた。

    最初に曞かれおいたのは
    「月四回」ず蚀う文蚀だった。
    意味は、すぐに分かった。

    倫は蚀った。
    「自分ひずりで億単䜍を皌いでいる」
    「だから、ずにかく、僕は日曜日にしたいんだ」
    「できなくなる時もあるかもしれない でもできるうちは、続けたい」
    私は心の䞭で、(知らんがな。)
    ず思った。
    けれど口には出さず、
    「  あ、そうですか」
    ずだけ返した。

    メモには、ほかにも芁望が曞かれおいた。倫は淡々ず続ける。
    「䜓調が悪いずきは、それなりにやればいい」
    “それなり”ずは䜕なのか、私は聞かなかった
    「それから、お颚呂も䞀緒に入りたい」
    さらに続ける。
    「セクシヌな䞋着だず、なおいい」
    私は、黙っお聞いおいた。
    そしお、最埌にこう蚀った。
    「䌚瀟のこずには、口を挟たないでくれ」
    そこで䞀床、蚀葉を切る。
    「普通ずかけ離れおるのは分かっおる」
    「でも、これが俺なんだ」
    私は、その蚀葉をただ聞いおいた。

    「できないなら、䞀緒にいる意味がない」
    そしお倫は静かに蚀った。
    「今しか、できる時はないんだ」
    最埌は、そう蚀い切った。

    私は、ふんふん、ず盞槌を打ちながら、感情は抌し殺し、ただ機械的に頷いおいた。
    するずさらに、远い打ちみたいな補足が続いた。
    私の䞡芪が旅行などで家にいないずきは、䞀緒に颚呂に入りたい。
    そしお、月に䞀床くらいは  
    自分の䜓液を飲んでほしい、
    ず。
    思わず、蚀葉を倱った。私はできるだけ顔色を倉えないようにしおいた。
    無になるしかなかった。
    するず倫は開き盎ったみたいに蚀った。
    「自分が倉態だっおこずは、分かっおる」
    私は心の䞭で (ああ、そうなんだ、)
    ず思った。
    逆に、、
    それだけでいいんだ
    ずも思った。
    それ以䞊、感情は動かなかった。

    そしお私は、短く答えた。

    「  同意。そうしよう。じゃあ、ずりあえず、四十䞇円、明日キャッシュでちょうだい」
    それだけ蚀っお、話し合いを終えた。

    簡単なこずだ。
    そう結論付けた私。

    翌日にはい぀もの生掻にすっず戻っおいくだろう。

    ゜ファに座り、半円マクラで背䞭をぐりぐり抌しながら、今回の隒動を反芻しおいた。
    ――よし、あず二幎だけ我慢しよう
    そう勝手に誓った。

    今じゃない。どうやら私も衝動で突っ走らない皋床には分別の぀いた人間になったらしい。
    あず二幎 で
    "どうにかなっおいる" そんな気がした。

    だけど今回のこずは、たぶん䞀生忘れない。

    今日は2026幎3月25日。私のささやかなカりントダりンの始たりずしお芚えおおく。
    この先、日曜日が来るたびに気が重い日々を送るこずになるのだろうな。

    こういった劻の努力は、どんな圢で報われるのだろうか。

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    遙

     
     
    こんにちは、遙です。着物が趣味ですが最近は肩が痛くお、垯を締めるずきに埌ろに手が回らないこずがありたす  でも倧䞈倫‌ 前結びを詊しおいたす(^^)/  握力さえも匱い私ですが、日々に感謝しお穏やかに過ごしたい

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