
UOIでもLOIでもない、周波数が整数比の音程-(音楽雑談11)
前回、上方倍音音程と下複方倍音音程という概念を導入しました。
(↓前回の記事)
上方倍音音程の周波数比や、下方倍音音程で定義された、比の値が1以上2未満の整数比は、無限にありますが、そのようなすべての整数比を網羅しているわけではありません。
実際に、短三度の周波数比5:6は、上方倍音音程にも、下方倍音音程にもあらわれない周波数比です。
今回は、比の値が1以上2未満の整数比、かつ、上方倍音音程にも下方倍音音程にもあらわれない、周波数の整数比を表現していこうと思います。
複合倍音音程(Composite Overtone Interval, COI)
複合倍音音程の定義
二つの音の周波数 f1, f2 (f1 ≤ f2) とし、
P,Qを互いに素な、3以上の奇数とした時、
f1 : f2 = [ 2^{ ⌊ log₂(Q/P) ⌋ } × P ] : Q ( P<Q )
もしくは、
f1 : f2 = P : [ 2^{ ⌈ log₂(P/Q) ⌉ } × Q ] ( P>Q )
を満たすとき、この二音のなす音程を、
複合倍音音程(Composite Overtone Interval, COI)
と定義することにします。
また、特定のP,Qの値の時の複合倍音音程を特に、(P, Q)次の複合倍音音程と呼ぶことにします。
UOI、LOIを紹介しいた回では、定義では、自然数全体の任意の値で定義し、その後、正の奇数全体だけで網羅できる、という順序で説明しましたが、今回はそのプロセスが面倒くさいので、最初から必要十分な値で示しました。
COIへの道
どのような過程で複合倍音音程を導いたのかを、ざっと書いていこうと思います。
可能な整数比から考える
まず、既約な比 A : B(1 ≤ B ⁄ A < 2)は、次の形で記述できます。
A : B = { 2^(m) × P } : { 2^(n) × Q } (ただし、P, Q は 1以上の奇数)
特に、P=1の時、上方倍音音程の周波数比となり、
Q=1の時は、下方倍音音程の周波数比となります。
したがって、上方倍音音程でも、下方倍音音程でもない周波数比となるのは、PとQが両方とも3以上の時となります。
P<Qの場合
前述の場合で、なおかつ、P<Qの時、
A : B = 2^{ ⌊ log₂(Q/P) ⌋ } × P : Q
となります。
P>Qの場合
前々述の場合で、なおかつ、P>Qの時、
A : B = P : 2^{ ⌈ log₂(P/Q) ⌉ } × Q
となります。
PとQを考える
PとQは、3以上の奇数としましたが、それらの奇数全てから選ばなくても、整数比は網羅できます。
それは、PとQが互いに素であるものです。
なぜなら、PとQが互いに素でない時は、結局比にしたときに、その最大公約数が消えて、互いに素なものが現れるからです。
このようにして、複合倍音音程の周波数比を考えました。
COIをさらに切り分ける
COIは、場合分けが含まれているので、それぞれの場合を、それぞれ一つの概念として、新たに定義したいと思います。
上方複合倍音音程(Upper Composite Overtone Interval, UCOI)
COIにおいて、P<Qの場合は、
f1 : f2 = [ 2^{ ⌊ log₂(Q/P) ⌋ } × P ] : Q ( P<Q )
となっていたが、この式が、上方倍音音程の定義
f1 : f2 = 2^{ ⌊ log₂(p) ⌋ } : p
と形が似ているので、特に、上方複合倍音音程(Upper Composite Overtone Interval, UCOI)と名付けようと思います。
下方複合倍音音程(Lower Composite Overtone Interval, LCOI)
COIにおいて、P>Qの場合は、
f1 : f2 = P : [ 2^{ ⌈ log₂(P/Q) ⌉ } × Q ] ( P>Q )
となっていたが、この式が、下方倍音音程の定義
f1 : f2 = p : 2^{ ⌈ log₂(p) ⌉ }
と形が似ているので、特に、下方複合倍音音程(Lower Composite Overtone Interval, LCOI)と名付けようと思います。
複合倍音音程のセント
上方複合倍音音程のセント
UCOIの定義は、COIのP<Qのとき、つまり
f1 : f2 = [ 2^{ ⌊ log₂(Q/P) ⌋ } × P ] : Q ( P<Q )
であるから、上方複合倍音音程のセントは、
(上方複合倍音音程のセント)
= 1200log₂[ Q / { 2^( ⌊ log₂(Q/P) ⌋ ) × P } ]
= 1200log₂(Q/P) - 1200log₂[ 2^{ ⌊ log₂(Q/P) ⌋ } ]
= 1200log₂(Q/P) - 1200⌊ log₂(Q/P) ⌋log₂2
= 1200log₂(Q/P) - 1200⌊ log₂(Q/P) ⌋
= 1200{ log₂(Q/P) - ⌊ log₂(Q/P) ⌋ } cent
となります。
下方複合倍音音程のセント
LCOIの定義は、COIのP>Qのとき、つまり
f1 : f2 = P : [ 2^{ ⌈ log₂(P/Q) ⌉ } × Q ] ( P>Q )
であるから、上方複合倍音音程のセントは、
(上方複合倍音音程のセント)
= 1200log₂[ { 2^( ⌈ log₂(P/Q) ⌉ ) × Q } / P ]
= 1200log₂[ 2^{ ⌈ log₂(P/Q) ⌉ } ] - 1200log₂(P/Q)
= 1200⌈ log₂(P/Q) ⌉log₂2 - 1200log₂(P/Q)
= 1200⌈ log₂(P/Q) ⌉ - 1200log₂(P/Q)
= 1200{ ⌈ log₂(P/Q) ⌉ - log₂(P/Q) } cent
となります。
おわりに
前回と今回で、比の値が1以上2未満の、可能な整数比を網羅することが出来ました。UOI、LOI、COIを用いると、新たな音律の作成や、和声について考えることが出来ると思います。
良かったら使ってみてください。
次回は、前回と今回のまとめをしようと思います。