
小説「わたしたちのイロ」 第一章⑧
あらすじ
それぞれの人生にそれぞれの色がある。
同じ時間に起き、
同じものを食べ、
同じ道を歩く、
変化を恐れ、静かな毎日を繰り返す、真っ白な
白間玲。(しらま れい)
好きなものを買い、
美味しいものを食べ、
時には落ち込みながらも、
新しい道を探す、
自分なりに多彩な日々を楽しんで生きている
朝倉小春。(あさくら こはる)
みんな違ってみんないい。
そんな世の中であって欲しい。
共に彼らの穏やかな日常を傍観していこう
第一章①はこちらから↓↓↓
あれから僕は、よくスーパーへ行くようになった。スーパーに行こうと思うと足取りが軽くなるのはどうしてだろう。
ショートケーキがこんなに好きだっただろうか。
いや、正直になろう。
朝倉さんが気になるのだ。
気になる…、高島さんや佐藤さん野田さんのように頻繁に会うわけではないのに…。
佐藤さんの言う、好きという感情は、こんな感じなのだろうか。
まだ、実感はない。
ただ、もっと彼女のことを知りたい。
白間「高島さん…。好きってどんな気持ちですか?」
高島は急に話しかけられて、驚くと共に嬉しくなった。彼から話しかけられることが少ない上に内容が内容だからだ。
高島「好き…ですか。僕も実はそう言う感情には疎くて、きっと、僕が白間くんや野田くんたちを好きと思う種類とは違う好きの話だよね?」
白間「僕のことを好き…?」
あまりにも自然に好きだと言われて、驚いた。最後にこんなにも面と向かって好意を向けられたのはいつだっただろうか。
高島「うん、好きだよ、白間くんは素直で仕事も真剣に向き合っているし、ご飯も一緒に食べてくれるしね。」
白間「……僕も、高島さんにはとてもよくしていただいていると感じています。」
高島「それは嬉しいな〜。佐藤くんなら彼女もいるみたいだし、聞いてみたらどうかな?」
白間「…はい。ありがとうございます。」
高島「いいえ。僕は力になれなかったけど、話ならいつでも聞くからね。」
優しい人だ。
こんなにも優しい人に出会えて、僕は…。
心が暖かくなるのを感じる。
次の日の昼休憩、高島さん、野田さん、佐藤さんとまたいつもと同じ席に座る。
今日の卵焼きはここ最近の中で1番上手くできた。
高島「佐藤くん、彼女さんとはどう?」
佐藤「ふっふっふっ…」
野田「なに、そのにやけた笑いは。」
佐藤「そろそろ一緒に住もうかって話になったんすよ!嬉しくて嬉しくて!休み合わせて物件見に行くんすよね〜、楽しみ。」
高島「同棲か〜、それは楽しみだね〜。ねぇねぇ、佐藤くんと彼女の馴れ初めって聞いてもいい?」
野田「長くなりますよ?」
佐藤「短くまとめますって!えっとですね、あの日は天気も良くて、サイクリング日和だったので、ちょっと遠くまで行こうと思って
野田「ほら、長くなるって」
えー、ここから巻きます!それで、疲れてスーパーが近くにあったんでそこでお茶買って休んでたんすよ。そしたら、めっちゃ可愛い人が通り過ぎてって、あれは一目惚れっすね、速攻声かけたっす!」
高島「そうなんだ!やっぱり佐藤くんは情熱的なんだね〜。じゃぁ、その情熱に彼女もときめいちゃったのかな?」
佐藤「結果そうっすね!でも、初めて話しかけた時はめっちゃ怖い顔されたっすね。まぁでも俺こんな性格なんで、彼女がそこで働いてることがわかってからはめっちゃ通ったっす!」
………身に覚えがある気がする。
野田「彼女、よく振り向いてくれたね。」
佐藤「そうなんすよ〜、初めてデートしてくれた時のことは今でも忘れないっす。」
高島「好きなんだね。彼女のこと。」
佐藤「大好きっすね、毎日毎秒好きっす!」
野田「聞いてるこっちが恥ずかしくなるんですけど。」
高島「白間さんはどう?」
白間「……え?」
ふと、視線を落とす。
今日の卵焼きは甘い。
コップに注がれた麦茶、氷がカランと音をたてる。
白間「好き……かはわかりません。でも、また会いに行きたい。とは思います。」
佐藤「えー!白間さん、気になる人いるんすか!」
野田「佐藤うるさい。そりゃ、白間さんイケメンだし引くて数多でしょ。」
佐藤「ていうか、この前言ってた人っすか?
カレー屋でも見かけたって。偶然で、運命で、必然の!」
野田「引き出しの開け方独特だな〜。」
佐藤「連絡先交換してないんすか?」
白間「はい。…声をかけてもいいものなんでしょうか。」
佐藤「気になるなら押すのみっすよ!ガンガン聞くっきゃないっすよ!」
野田「みんながみんな佐藤みたいに情熱的になれるわけじゃないんだよ?」
高島「好きの解釈も、向き合い方も人それぞれではあるけど、後悔はしたくないよね〜。」
後悔…。
僕は彼女と付き合いたいのだろうか…。
でも、このまま何もしなければ後悔するかもしれない。それはとても苦しい。
白間「……僕、聞いてみます。」
佐藤「白間さんやるっすねー!俺めっちゃ応援してます!こんなかっこいい人に連絡先聞かれたら誰も嫌な顔しないっすよ!」
野田「無理しないでね。」
高島「おぉ。白間くん、分岐点に立ってるね。」
ここからは、僕の選んだ必然。