
8話 一人分しかない洗濯物
朝早くに未映子から電話がかかってきた。これから、未映子と子どもたちは、はるみさん親子と一緒に同じ新幹線で帰ってくるらしい。
「お母ちゃん、まだ買い物行くやろ? 新大阪からレンタカー借りて帰るねん。そっち着いたら、はるみさんを降ろして、お母ちゃんと買い物行こうか?」
「えっ?」
「わかるやろ。はるみさんと悠貴を二人きりにさせて、話させるねん」
「なるほど!」
「そういうことやから、すぐ行けるように用意しといてや!」
未映子は、そう言うと電話を切った。
「あー、忙しい、忙しい」
ブツブツ言いながら、いろいろ準備を始めた。
キーッ、バタンと家の前に車が止まって、ドアの開く音がした。
「はいはいはい」
私は慌ただしく、玄関を開ける。
「あー、疲れたー」
未映子が大きな荷物を持って降りてきた。
「お義母さん、お久しぶりです」
はるみさんも荷物を持って降りてきた。
「お母ちゃん、子どもら降ろさへんから、見といてや」
「さあさあ、みんな、おばあちゃんと買い物行こうね」
私はそう言いながら車に乗り込む。
「おばあちゃん」
「こんにちは」
孫たちが代わる代わるあいさつをする。
「みんな元気やった?」
「うん、元気だったよ」
にぎやかな車内で、それぞれの話を聞いていた。
「お待たせ」
未映子が車に乗り込んだ。
「悠貴も出てきてたから、ちゃんと話し合いすると思うで」
私の耳元で、そう小声で言った。
「はるみさんと話した時、離婚する気なんてなさそうやったからな」
「それにしても、大きい車借りてきたなぁ」
「道幅が狭いとちょっと怖いけど、みんなで乗れるからなぁ」
未映子はにこにこ笑っていた。
「さぁ、楽しい買い出しに行こう!」
大型ショッピングモールをうろうろして、孫たちのおもちゃや、服、そして食べ物などを買って回ったら、脚は棒のようになってしまった。
しかも、荷物はすごく重い。
しかし、財布もかなり、軽くなった気が…
まあ、それはさておき、そろそろ家に帰ることにした。
「話はうまく進んだかな?」
未映子に、小声で話しかけると、
「大丈夫やと思うよ」
やっぱりこの子はお気楽だな、と思った。
「あんたのとこのダンナさんは、いつ来るの?」
私が言うと、
「明日、土曜日やから、明日こっちに来るで」
と言った。
さあ、家に着いた。
「ただいまー」
悠貴の子どもたちの手を引いて家に入った。
「パパ!」
健斗とかなは、悠貴を見てうれしそうに言った。
「パパ、会いたかった!」
かなは、ぎゅーっと悠貴に抱きついて、健斗もその上から抱きついている。
「おしごと、いそがしかったの?」
かなは、悠貴の目を見て言った。
「うん、ちょっとな」
「パパに会いたかったよ」
健斗も言った。
悠貴は、すごく子どもたちに好かれている。
亡くなった夫は、昔ながらの仕事人間だったから、子どもたちと接する時間も少なく、ここまで懐かれている感じはなかった。
退職して家にいるようになってから、里帰りする子どもたちとの仲が縮まったけれど、思春期の頃は、ろくすっぽ話もしていなかった気がする。
今は「働き方改革」とか言って、残業も減ったみたいだし、親子の時間も変わったのかなぁ? と考えていた。
「お母ちゃん、ボーっとしてないで、買い物の荷物、片付けしてよ!」
未映子が言った。
しまった、娘に叱られた。
私は大慌てで、買い物袋を台所へ運んだ。