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夏の夜も、大仏殿へ

    つきふね

    朝の大仏殿は、清々しい。

    では、夜の大仏殿は?
    こわい?

    ううん、そんなことない。
    過去何度か訪れたけれど、荘厳で宇宙を感じた。

    通常、大仏殿の拝観は7:30 - 17:30
    でも年に数度、夜間参拝ができる日がある。

    8月15日はその日。
    夜の大仏殿へ、行ってみましょうか。


    ☆ ☆ ☆


    夕方六時過ぎ、一条通りを東に向かってまっすぐ歩くと、見えてきたのは転害門。『てがいもん』とも『てんがいもん』とも呼ばれてきたこの門は、東大寺創建時の面影を残す貴重な遺構。柱には、戦で放たれた矢の跡がいまなお残っているそう。


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    転害門を超えて東大寺の境内に入ると、一気にセミの声が大きくなりました。幅を利かせるアブラゼミに交じって遠慮がちに聞こえてくるのは・・・ツクツクボウシ!確実に夏のおわりが近づいているんですね。

    わたしの好きなお散歩ルート。
    大仏池越しに大仏殿の屋根が見えてきましたよ。

    空の色が変わり始める、ちょうどいい時間帯。
    なんといっても奈良は夕空が美しい!


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    東の空


    振りかえって、西の空



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    いい雲~!


    ただいまの気温は30度。ここまで歩いただけで既に汗がダラダラ。ゆるやかに続く坂道を上りながら周辺の樹々から聞こえる音に耳をすませると、一瞬、ヒグラシの声を聞いた気がしました。

    夏の夕といえば、蜩。
    わたしの大好きな夏の音。

    けれど奈良に来てからまだ一度も聞いたことがなく、夕になっても厳しい暑さが残る奈良盆地では、蜩は生息できないのかと残念に思っていました。

    でも、ひょっとして、東大寺の森にはいる?

    もう一度音に集中します。


    カナカナカナカナカナカナ・・

    カナカナカナカナカナカナ・・・


    他の蝉に押されながらも、確かに聞こえました!
    一匹だけ、消え入りそうな声でしたが、間違いなく蜩です。

    嬉しいなぁ。
    今日ここを通って良かった、ほんとうに。



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    蜩と夕暮れ



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    と、鹿ちゃん



    二月堂に向かう裏参道を上りながらふと後ろを振り返ると、美しい古都の夕暮れ。ちょっと黄昏れようかなと歩みを止めた途端、あのイヤ~な音が寄ってきます。すかさずバッグから北見のハッカ油スプレーを取り出し、頭のてっぺんから足首までシュシュシュッ!よし、これで安心。しかもひんやりすーすー涼しい。



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    誰そ彼どき



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    ちょっと分かりにくいけど、サワガニ!


    額から流れ落ちる汗を拭いながら、登り廊の階段を上りきりました!首にかけた手ぬぐいは、とうにしっとり。ここですこし休憩しましょう。



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    あついあつい奈良盆地、毎日手ぬぐいが手放せません。よく汗を吸ってくれて、休憩中は外してどこかに掛けておけばあっという間に乾きます。本当に便利な日本手ぬぐい。

    わたしが愛用しているのは、奈良の手ぬぐい専門店『朱鳥あけみとり』さんのもの。奈良らしい模様の色とりどりの品が並ぶ店内で、どれにしようかと迷う時間もまた、楽しいひととき。




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    写真を撮るお兄さんをモデルに。


    大仏殿をはじめ、奈良のまちを一望できる二月堂。ここはいつも気持ちの良い風が吹いています。”ひんやり”とまではいかずとも、下界よりははるかに涼しい夕風が、火照った顔と汗を静めてくれました。


    さて、時刻は19時過ぎ、そろそろ大仏殿へ向かいましょう。


    鹿の落とし物を踏まないようにスマートフォンのライトで足元を照らしながら階段を下りはじめると、徐々にがやがやと賑やかな気配が伝わってきました。


    わ、すでに大勢の人が中門前に並んでいる!


    一度に多数の人がなだれ込まないように入場制限をしていましたが、それでも待ち時間10分ほどで入ることができました。


    さあ、では夜の大仏殿へ!



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    毎年8月15日は、東大寺万灯供養会まんとうくようえの日。全国から寄進された灯籠が参道に並ぶさまは、幻想的で、別の世界へ誘われそうです。そしてこの日いちばんの特別は、いつもは閉ざされている大仏殿正面の<観相窓かんどうまど>が開くこと。

    参道の中央寄りに立つと、灯りに照らされた大仏さまのお顔が観相窓から覗き、その神々しさと有り難さに、思わずその場で合掌しました。ありがたや~



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    八角灯籠も影絵のように


    もちろん参拝もできます。
    人混みの正面を避けて、横からゆっくりと拝みましょう。



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    わたしもローソクを一本献じ、それぞれの像に手を合わせました。

    満足したのち出口へ向かうため回廊へでると、さーっと涼やかな風が吹き抜けました。周りにいた人々も口々に「涼しいね~」と言うほどのひんやりさ。

    あついあついと言いながらも、確実に秋は近づいているんですね。



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    南大門



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    昼とはひと味ちがう夜の大仏殿の雰囲気、楽しんでいただけましたか?

    わたしもまた別の季節に、観相窓から見える大仏さまを拝みに訪れたいと思います。


    ご先祖さまに、
    合掌。



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    書きたいことを、書きたいときに。 みどりと水辺と風が好き。奈良でピアノを弾いたり教えたりしています。

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