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かわいいかわいいふさふさの長女

    つわりの最もつらい時期。妊娠糖尿病対策になるかと買った「小麦でない麺のカップ麺」を食べたら、つわりで吐いてる最中に喉に詰まってトイレで死を意識した。夫は夜22時まで帰ってこない。このまま息ができなかったらトイレで死んで発見されるな、と思った。
    吐きながら吐けない苦しさと戦い、何とか全部吐いて、息も絶え絶えにトイレから出ると、ふわふわの毛をした彼女が険しい顔をしてこちらを見ていた。いつもクリクリお目目で「ん?」と可愛くこちらを見上げてくるのに、眉間にしわを寄せるようにして。「いったいどうしたの。大丈夫なの?」と言われているように感じた。もしかしたら「吐き方、下手じゃない?」だったかも。
    そもそも、一人きりでトイレで死ぬ、と焦っていた時、この家に彼女がいることが頭から抜けていたと思う。まさか、こんなに近くでずっと(いつからかわからないけど)待っていてくれたとは。トイレを出て彼女が居ると気付いたとき、いっそ死にたいくらいに殺伐としていた心にふっと暖かなものが触れた。

    「ゆっくり過ごしてね」などと周囲に言われて産休に入っても、二人分を抱えた大きすぎる腹は四六時中私を苦しめ、ソファでただ横になっていても常に重たく苦しかった。そんなとき、ただ彼女は私におしりをくっつけて、一緒にテレビを見ていた。
    私の上にのって首元をふみふみしてくるのが大好きなのに、大きな腹を見てそれができないと理解し、文句も言わず、ただ傍にいた。

    子が生まれてからは、匂いの変わったらしい私に一時警戒し、くっついてもくれなくなって、本当に寂しかった。けれど、いつの間にか、抱えたままの二人の赤子が昼寝した隙に横になった私の足元で彼女も眠り、赤子を抱っこしているときに足元にすりすりとしてくるようにもなった。原因不明で泣き続ける赤子を、「もう無理……」とバウンサーに載せて泣くままにしていたら、私に代わってバウンサーをのぞき込むこともあった。

    そして今。子どもらは少し大きくなった。子どもの起きる一時間前に起きて朝の準備をしていると、朝ご飯を食べた彼女は尻尾を立ててこちらを見つめながら近づいてくる。仕方ないなあとソファに座ると、すぐに私の上に飛び乗り、首元をふみふみする。
    子どもが早く寝てくれた夜、リビングに戻ってソファに座ると、すぐに私の上に飛び乗り、首元をふみふみする。
    仕事が早く終わった夕暮れ、保育園に向かう前に一瞬だけ休息しようとソファに座ると、すぐに私の上に飛び乗り、首元をふみふみする。
    彼女は、子どもたちが帰ってくると、起きていると、甘える時間がないと分かっている。

    なんて健気で、切なくて、愛らしくて、愛情深いのだろう。
    気ままに生きているように見えて、家族の変化を理解し、たくさんの我慢をして、少しの時間で小さな小さな自分の欲求を伝えてくれる。

    元気で、長生きしようね。私たちの大事な大事な長女のねこ。


     
     

    N氏

     
     
    アニメとお酒とお肉で生きてる。

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