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知らない母と知らない娘と知らない男性

    私は耐熱性ではないので電子レンジは勿論、夏の暑さにも対応していない。なので毎年夏を越せるのかとても不安になる。今年は極めて厳しい。

    本日もアホみたいな暑さの中、個室のある飲食店に避難した。
    ここのお店は電源は使えないけれど、個室なので人目を気にせずにPC作業や読書がしやすい。

    事前に家でフル充電を済ませたPCと数冊の本を持って入店。食べ物や飲み物が注文できるのは勿論、セルフサービス(無料)のお水もある。そして何より、程よく涼しい。

    長居をしても体が冷えきることもない絶妙な温度。まるで天国だ。

    「あぁ、涼しい。これで心置きなく自分タイムが過ごせる!」

    その天国で読書をしていると、店員さんに案内されながら年配の女性がやって来る声が聞こえてきた。(個室なので顔は見えていない)

    『こんなところに私ひとりだなんて贅沢で、なんだか申し訳ないわ…うふふ。こんな奥まで部屋があるだなんて!なんだか迷路みたいで迷っちゃうわね…うふふ。あとから、もうひとり来ます!娘が来るんです。うふふ。』と、とても ご機嫌な様子だった。

    「今日は平日のわりにお客さんが多いんですよ!」と店員さんが返していた。なので奥の部屋に案内しました。という意味で言ったのであろう言葉が、長居をしていた私には「混んできたし、そろそろ帰って欲しい」に聞こえなくもなかったけれど、これから友人と合流して夕飯を食べることになっていたので引き続き待機していた。

    それから数分後に友人が無事に到着し、食事を始めると向かいの部屋から

    「なんで私まで同じもの食べないといけないの!?自分が食べたいの食べさせてよ!…値段の話なんてしてないよ!!」と女性の大声が聞こえてきた。

    きっと、あの年配女性の娘さんだ…

    これは私の推測だが、お母さんは娘さんに ここのお店で一番高い料理を食べさせたくて「同じもの食べよう」と誘ったのだと思う。きっと親心だろう…

    『じゃあ私も同じやつにしようかな』で、いいのでは?…たとえ納得がいかないとしても、そんなに怒ったような言い方をしなくてもいいのに…お母さんに対してのあたりが強いな…と思った。

    しかし、自分の親だからこそ分かってもらえると思っていて、意見が合わなかったときにイラッとしてしまう気持ちも分からないでもない…

    しばらくして、
    『こんな ぐちゃぐちゃにした醬油ご飯、誰が食べたいと思うの!?…作ってくれた人に申し訳ないし、私が食べるしかないじゃん!!』と金切声が聞こえてきた。

    母は恐らく丼ものの上にのったおかずだけを食べたのであろう…

    『それに私言ったよね!?冷たい麺は嚙み切れないから食べられないと思うよ!って!!』娘はヒートアップ。

    「この麺は、ついてきたやつ(セットの料理)だよ?…」母の弱々しい声。

    『” ついてきたやつ ” じゃないよ!!だったら最初から、ついてないのを頼めばよかったでしょ!?!?』

    「持ち帰ればいいかなと思って…」

    『そんなことできるわけないでしょ!?』

    (お持ち帰り用のパックがあることを教えてあげたい…)

    『毎回毎回そうやって…もうほんとにヤダ!!来なければ良かった!!』

    『あとから、もうひとり来ます!娘が来るんです。うふふ。』

    ~回想シーン~

    お母さんが楽しそうに店員さんに話していたことを知っている私は泣きそうになった。

    友人にそのことを話すと「…そうなんだ……悲しいね…」とふたりで、しょんぼりとしてしまった。

    あまりの険悪ムードに『お母さん、娘さんが来ることを とても楽しみにしていらっしゃいましたよ?…とても嬉しそうに「あとから娘が来るんです」って店員さんとお話されていたのが聞こえてきました。仲良くしてください…』と言いたかった。

    もちろん、そんな出過ぎた真似はできず…

    私
    「もし、いけそうならば お母さんが残しちゃったご飯を食べてあげてほしいんだけど…」
    友人
    「…食べてあげたほうがいいかな?
    …ガラッ!…「話は聞かせてもらった!!」って??」

    そんな冗談を言い合ったあとも、娘の怒号は響き続ける。
    「あんな強い口調で…可哀想…」と、再び しょんぼり…

    すると、ガラッ!…と扉を開ける音がして、
    音がした方を見てみると、男性が顔を覗かせてこちらを見ていた。
    私は、しょんぼり顔のまま その男性と目が合った。

    (…誰?…店員さん??…)

    男性
    『…喧嘩してます?』
    私
    「いや、うちじゃないです。多分、向こうの部屋だと思います。」
    男性
    『…あぁ、分かりました。』

    とっさに説明してしまったが、よく見たら私服の一般客だった。

    (ひと部屋ずつ扉を開けて聞いてまわってきたのだろうか…)

    しばらくして、再び扉を開けてきて
    『すいませんでした』そう言って頭を下げ、彼は自分の部屋へと帰って行った。

    (…思うところはあるけれど、悪い人ではなさそうだ。)

    しかし、こういう時は 自分で直接 言いに行くのではなく、店員さんに言って動いてもらった方がいいのでは?…と思いつつ、面倒なことには巻き込まれたくないので、何も言えなかった。

    『…私が何で泣いてるか分かる!?!?…そうやって、いつもワガママばかり言って…!!』

    どうやら娘の怒りは、まだおさまっていないようだ。

    (あっ、泣いてるんだ…)

    『もういいよっ!!また隣の部屋の人に怒られるから、これ以上は言わないよっ!!』

    ???

    …隣の…部屋??
    隣の部屋は私たちがいる部屋ですが…?

    私たちは何も言ってないのに、まさかの勘違いのとばっちりだ。
    むしろ、この空間で一番の被害者は私たちだと言っても過言ではない。

    というか、他人に怒られるから大声で喧嘩しない。じゃなくて、頼むから家でやってくれ。いい大人が公共の場で他人に迷惑をかけるな。

    もちろん、それも言えずに店を後にした。

    天国がいつの間にか地獄と化し、モヤモヤは残ってしまったけれど
    これが大人の対応だと自分に言い聞かせて家路に着いた。


     
     
    はじめまして。栃木県在住のWebライター、野良街 ポッケです。noteでは主にエッセイを執筆中。深夜にモニターの光の中で思考を巡らせる時間が好きです。日々の気づきや感情を大切に。誰かの原動力になれるような記事を目指しています。 お仕事のご相談は、X(旧Twitter)DMまで

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