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芋出し画像

どこかの誰かが死んだ倏。

    たた寝蟌んでいる。
    寒さが氞遠に続くのではないかずいう冬が過ぎお
    暑さでむラむラする勢いに任せお生きおいる倏が
    すぐそこたで来おいるようで来おいない。
    倪陜は今日も分厚い雲に隠れおいる。

    7月っお、こんな気分になったかなあ 
    去幎はこうじゃなかったような気がするなあ 
    1幎ぶん歳を食ったらこんな倉化するのか。
    幌いころから痩せ现ったたたの䜓を芋るず
    私は長生きするのかな、実は短呜だったりしお。
    なんお考えたりする。私はい぀も悩んでいる。
    い぀も寝ながら悩んでいる。

    梅雚がこんなにも気持ちを憂鬱にさせるのは
    人生のうちで今シヌズンが初めおだ。
    そういえば去幎は、私の䜏む地域ではたるで梅雚がないたた、急激に倏になったんだっけ。

    鬱々ずした倏の環境は、私が十数幎前に経隓したある駅のホヌムの景色を思い返させるずいう、ずいぶん䜙蚈なきっかけになっおくれた。


    通信制の高校に行っおいる人間はおかしい。
    倉な孊校、そんな倉な孊校に通っおいるお前も
    お前の友人もみんなおかしい。

    SNSがただそこたで発達しおいない平成二桁代。
    画面越しでなく、盎接この蚀葉を私に吐く人間がいた。
    いたはずいぶんず理解は進んだようで
    「通信制高校出身は予埌が悪い」ずいう蚀葉が
    ポンっず䞖の䞭に誕生するこずもある。

    「おかしい」ずいう蚀葉が䜕幎も぀づく呪いになるずは぀ゆ知らず、ひずずおり怒ったあず
    月に1回ある、通信制高校が䞻催する勉匷亀流䌚に向かうために、日曜日の電車に乗った。

    日曜日の電車は日曜日らしく、通勀通孊の利甚者が少ない。
    少ないから座れるかなあず思っお乗っおみるけど、残念ながら座れない。

    優先座垭に座っおもよいのだけれど、10代の私はなぜか座れなかった。
    しなくおもいい苊劎をするなず蚀いたいが、圓時は他者の目線を受けるならば、しなくおもいい苊劎をするような匷がりずいう匷さがあった。

    田舎から郜䌚ぞ向かう車内は、街に近づくたびにオシャレをした人間が増えおいく。
    頭から぀た先たでみんなそれぞれ、綺麗だ。

    たたに車内でメむクをする人を芋かける。
    過去に電車の䞭でフルメむクを完成させた女性を芋たずき、隣に座っおいた母が迷惑がるどころか揺れる車内でよく䜜り䞊げたず感心しおいたこずを思い出した。

    ずころで私はどうだろう。
    田舎から郜䌚に出る機䌚が匷制的にできお、少しだけ自分も身なりを気にしおみたけれど
    星条旗柄のTシャツに、お気に入りだった蛍光む゚ロヌのホットパンツ、りェッゞ゜ヌルサンダルに、背負うのはモノクロチェックのくたくたになったリュックサック。
    通信制高校だからずここぞずばかりにブリヌチで色を抜きに抜きたくった頭髪、い぀からか倖せなくなった1000円くらいのサングラス。

    ちょっずオシャレじゃないけど
    ちょっず間違った方向に思い切っお背䌞びをした
    ずおもかわいい10代の田舎者だった。

    そんなギャルずも蚀いがたい私を乗せお
    順調に走っおいた列車が埐々に枛速しおいく。
    むダホンでラゞオを聎いおいたので、呚囲のざわめきに気付くのに少し遅れた。

    気付いおすぐ、車内にアナりンスが流れる。
    問題が発生したため、付近の駅で䞀時停止する
    ずいうこずだった。

    停車した駅はふだん、急行列車が止たらない駅で出入り口を閉め切ったたた2番線に立ち尜くす車内のざわめきは、少しず぀広がっおいく。

    停車から10分埌、しばらく運行を䞭止するずいうアナりンスが再び入り、出入り口が開く。
    どろどろず流れ出る人々。車内にただ座っおいる人もいる。
    私は立っおいたのもあり、流れ出た人々に混じっお投げ出されるようにホヌムに立った。

    えっず、どうすればいいんだろう。

    こういった状況に慣れおいそうな人の波に乗っお
    ずりあえず゚スカレヌタヌに足を眮く。
    長時間立っおいられない軟匱な足は、プルプルず震えおいた。
    今思えばこの時点でパニックを起こしおいたのだろうから、足の震えが筋肉の疲劎なのか
    それずも粟神的なものだったのか。たぶん䞡方。

    流れるたたに改札を出ようずしたけれど
    そういえば私はここを目的地ずしお切笊を買ったわけではない。
    途䞭䞋車っおできたっけ、いやいや䞋車したずころで初めお降りた駅で䜕ができるんだろう。
    ずいうか、私は今日目的地に行けるのだろうか。

    財垃の䞭には3000円、亀通費ず昌食代ギリギリ。
    倚めに持たせようずしおくれる芪の気遣いを、お金を持぀こずぞのプレッシャヌに負けお断った結果がこの額だ。

    私ひずりではどうしようもないこずず、こういうずきはずりあえず駅員さんにたずねればよいこずだけは知っおいた。

    焊らずに䌑憩しおから行けばよかったのに
    私は焊った。
    私の持論のひず぀は「焊りは䞍幞を呌ぶ」だけど
    この頃から焊っおいる。今も焊っおいる。
    焊らなくおいいこずに焊っおいる。

    案の定焊りは䞍幞を呌んだ。
    駅員さんに詰め寄る乗客、その数ざっず10人以䞊。その間に私は「目的地に向かうにはどうすればいいですか」ず聞く緎習を、䜕床も䜕床も頭で繰り返す。倏の暑さに汗が止たらなかったけれど、䞀番汗が倚かったのは握りしめた手の䞭。

    人が死んでるんですよ

    暑さでかいおいた汗が、すっず冷たくなる。
    䜕床も䜕床も繰り返しおいる私の蚀葉に、いきなり別の蚀葉が割り蟌んできお、党おをさらっおいく。

    血の気が匕いた経隓はず聞かれたら、私はい぀の日かこの時のこずを話すだろうず思った。

    ずにかく座ろう。
    私は今すぐ座らなくちゃいけない。
    ホヌムにあるベンチに腰を䞋ろしお、私はいただ駅員さんに詰め寄る乗客ず、それを萜ち着かせようずする2人の駅員さんを芋おいた。

    真っ黒な姿で矀がる人々の䞭心で、駅員さんの持぀真っ赀な旗が映えおいる。
    こんな暑い日でも、駅員さんは真っ癜な手袋をしおいお、その理由を知らない私はただ「かわいそうだな」ず思っおしたった。

    真っ黒な姿の人たちは、やっぱりさっきのひず蚀が攟たれた時点でどうしようもないず分かっおいたのか、ひずり、たたひずりずたばらに去っおいく。

    私はベンチから立ち䞊がっお
    「もう動きたせんか」ず尋ねた。
    駅員さんは芪切に、少し眉を䞋げおから
    「そうですね、しばらくは 」ず蚀った。
    だから䞁寧にお瀌を蚀っお、頭を䞋げる。
    10代の私はいい子でいたかった。
    真っ黒なんかに絶察なるもんかず思いながら。


    陜炎がゆれるのを芋るこずができる。
    さっきたでたるで聞こえなかった蝉の鳎き声が聞こえる。
    だから私はたぶん死んでいない。
    だけど他の誰かが死んだ。
    私が乗っおいた車䞡が蜢いたわけじゃないけど
    銬鹿みたいに食らった。

    盞倉わらず動かない電車。
    車内にはそのたた目的地に向かうこずを決めた人たちず、1番ホヌムには目的地に向かうこずをすっかり諊めた人間がたった1人だけいた。

    どうやら䞖の䞭は誰かが死んだくらいで目的地を諊める人はめったにいないらしい。

    勉匷亀流䌚に行けないこずを友人にメヌルで䌝えるず、すぐに返信がくる。
    私が眮かれた状況を「倧倉だったね、倧䞈倫」ず心を寄せおくれお「仕方ないよ。気を぀けお垰っおね」ず、私が目的地ぞ向かうこずを諊めたこずすら肯定しおくれた。

    ほら、やっぱりおかしくないじゃん。
    こんな優しい友人をおかしいず蚀うのなら
    そういうお前こそがおかしいんだよ。

    そう思いながら、私は再びラゞオを聎いた。
    行くはずだった進行方向には、どうしおも目線を向けられないたたで。


    やがお目の前の車䞡はゆっくりず動き出し
    意倖ず早かったな、乗っおおけばよかったかしら
    かすかにそう思いながらも、私はそれを芋送る。

    最初に「死にたい」ず思ったのは小孊6幎生のずき。「死にたい」ずいう蚀葉を、そういう感情を
    私は䞀䜓どこで孊んだのかはたるでわからなかったけれど、誰かが皮を蒔いたのだろう。
    お花が咲くように自然ず浮かんだ瞬間があった。

    どうやらそれは垌死念慮ず呌ぶらしく
    最初に思ったその日から、ランダムに咲いた。
    咲いおは枯れお、たた芜生えお、たた咲いお。
    たるで春に桜が咲くのが圓たり前のように
    どんどんず「死にたい」はカゞュアルになる。

    そんな垌死念慮持ちの子どもが、䞀番最初に
    死ずいうものを珟実ずしお䜓感したずき
    「情けないなあ」ず思った。
    䜕床も死にたいず思っおおきながら、いざ珟実味を垯びるず、ここたで動揺するんだず。

    本圓に情けないかどうかは別ずしお
    「情けないなあ」ずただただ思った。
    だからずいっお、この出来事を境に垌死念慮が消えるわけでもなく、たた芜生えお咲いお枯れおいくだけだった。

    垰宅のための電車が1番ホヌムに到着する。
    準急列車だったそれは、䞁寧に䞁寧にひず駅ず぀停車しお扉を開き、泚意をうながしおからたた扉が閉たる。

    ガラガラの車内でぜ぀んず座り、少々寒く感じる冷房にため息を぀きながら、よく知らない駅に着いおは流れ蟌む生ぬるい颚を呜綱にするしかなかった。

    自宅の最寄り駅に着くころには、すっかり䜓が冷え切っおしたっお、真倏の猛暑さえ心地がいい。
    私は改札口にある駅員宀に声をかけお、事情を説明しおから、目的地たでの切笊を返华。
    途䞭䞋車した駅から最寄り駅たでの電車賃を支払った。

    事情を話したずきの、駅員さんの䞍思議そうな顔がちょっず匕っかかったたた、私は垰路を急ぐ。
    早々に垰宅した私に察しお、家族が蚀った。

    「それはね、よくあるこずなんだよ」

    怖かった、ず打ち明けた私に慰めずしおかけた蚀葉なのか、呆れお口を぀いお出た蚀葉だったのかはわからない。

    早々に運転は再開したのだず蚀うず、あっけらかんず「じゃあそのたた乗っおいればよかったのに」ず蚀った。確かに私も少し萜ち着いおからそう思ったけれど、そのこずを隠しお「無理だよ」ず蚀った。

    本圓は
    よくあっおはいけないんじゃないの
    ず蚀いたかったんだけれど。

    しばらくしお、駅員さんが䞍思議そうな顔をした理由をなんずなく察した。

    どうやらやっぱり、本圓によくあるこずらしい。


    どこかの誰かが死んだ倏から10幎も経たないうちに、私ず友人を「おかしい」ず蚀った人が、倏の終わりに死んだ。

    亡骞は綺麗だった。痛みを䌎う倧病を患ったずは思えないほど穏やかな顔で、傷ひず぀ない。
    痛みを感じる様子はなかったず䌝えるず、䞻治医はひどく驚いおいたほどだ。

    私を傷付けた人は、穏やかな最期を迎えた。
    もちろん苊しめなんお思わなかった。
    だけど、悪人は畳の䞊で死ねぬずいうこずわざ通りにはならなかったずいうこず。
    それはすなわち、私ず友人を「おかしい」ず蚀ったこずは悪行ではなかったのかず思っおしたった。

    それでも別れ花をそえるずき、私は泣いた。
    「ごめんなさい」ず泣いた。
    そういえば、私も感情にかたけおひどい蚀葉をたくさん吐いたのだ。
    穏やかに逝っおくれたのは、私がこの先で「私が蚱しおいれば、苊したずに逝けたのだろうか」ず気にしないようにしおくれるためだったのだろうか。

    死ずいうものを前に、私はあっさりず
    祖父のこずが奜きだった孫に戻るしかなかった。


    思えば私は真っ癜すぎたのかもしれない。
    真っ癜であるこずに気付いおから、あたりに長い間、その真っ癜さを誇りに思っお守ろうずしおいたのかもしれない。

    電車通勀をしおいたずき、人身事故で遅延するずいうアナりンスが流れるず、舌打ちをする人を芋かけた。

    そういう人を芋るたびに「おお 」ず、本圓にいるのだな、怒鳎るよりマシかな。ず思いながら、私も「早く垰りたいなあ」ずこっそりため息を぀く。

    グレヌに染たり始めおいた。

    そしお珟圚、電車通勀の必芁もなくなった無職は無職だずいうのに他人の子どもの成長に関わるボランティアなんおものをしおいる。

    善い行いずされおいるボランティアを通じお
    自分がどんどんず黒く染たる感芚を背埌に感じながら、真っ癜な子どもたちを眺めおいる。

    涙を芋せる子どもに「泣かないで」ず蚀うたびに
    すなおに泣けるこずは幞せなのに、ず思う。

    やるべきこずをやっおいないず叱るたびに
    真っ癜すぎるゆえの甘さず怠けが私ず重なっお、心をえぐる。

    黒に染たる、それすなわち倧人になるずいうこず
    私は生きおいる間、どれくらい癜い郚分を残せるだろうか。

    私はもう
    黄色い傘を差しおあめふりを歌えない。
    氎たたりに飛び蟌めない。
    プヌルの授業がなくなったず喜べない。

    今日も寝蟌んでいる。
    今日は䜕にもないから寝蟌んでいる。
    やらなきゃいけないこずはあるけど
    今日もやっぱり寝蟌んでいる。

    今幎は氎が倚すぎるから、根腐れを起こすのではず期埅したのに
    垌死念慮の花は、たた芋事に矎しく咲いおいる。

     
     
    からっぜ神経質人間の思考ず蚀語化。 䞖の䞭にあふれる「なぜ」を文章化し、読んでくれる方にも「考えおみる」こずをしおいただけるように頑匵っおいるアカりントです。

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