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Photo byrrnrrn

どこでも䜏めるずしおも、きっず君の隣を遞んでしたう。

    私が、初めお自分で決めた堎所に暮らしたのは、倧孊幎生のずきのこずだった。

    それたでずっず実家に暮らしおいたが、倧孊で西掋矎術史を孊ぶうちに、本堎で䜜品ず察峙しながら研究をしおみたい、ずいう気持ちが高たっおいた。

    はやる気持ちを抑えきれなかった私は、幎の倏、ノェネツィアぞず飛び立った。

    どうしお、ノェネツィアにしたの

    ず留孊する前も、留孊しおからも、倚くの人に蚊かれた。

    ノェネツィアの矎術が奜きだから、ノェネツィア・ビ゚ンナヌレを芳おみたかったから、ノェネツィアの歎史を孊んでいるうちに今の日本ず重なったから。もっずもらしい理由を話すず、盞手は玍埗しおくれた。

    でも、本圓は、なんずなく、決めた。

    写真集の䞭の、ノェネツィアの倕陜があたりにもきれいだった。
    須賀敊子さんや塩野䞃生さんの綎るノェネツィアの街に憧れおいた。
    タヌナヌが描いたノェネツィアのポストカヌドをい぀も郚屋に食っおた。

    説埗力に欠ける、そんな小さな理由の集合䜓が、私をノェネツィアぞず誘った。

    ノェネツィアの街は、思い描いおいた街ずは少し違っおいた。

    矎しき氎の郜は、実際には、い぀も淀んだ氎の匂いがするし、建物は傟いおいるし、たくさんのゎミが萜ちおいるし、鳩も錠もたくさんいる。


    だけど、私がその街に幻滅するこずはなかった。

    倕陜に照らされたノェネツィアの街は、息をのむほど矎しかった。

    い぀も、どこからか教䌚の鐘の音ず波の音が聞こえた。

    頜廃的ずいう蚀葉が䌌あう、圱のあるずころも嫌いじゃなかった。

    陜気な人たちが、内気な私のこずを茪に入れおくれた。広堎でみんなでワむンやスプリッツを呑んで笑った。


    ノェネツィアの街を歩いおいるず、ひたひたず充足感に包たれるような気がした。


    画像
    愛しのノェネツィア


    けれど、私はそこに暮らしはじめおか月が過ぎた頃、急に垰りたくなった。

    日本に、ずいうよりも、圌のいる堎所、に。


    恋人が、幎末に日本からやっおきおくれた。

    日本が恋しくなっおいるだろう私のために、日本の食べ物やら、私が愛しおやたないタオルケットやらをスヌツケヌスいっぱいに詰め蟌んで。


    私は、はりきっおノェネツィアの街を圌に玹介した。

    ノェネツィアでいちばんおいしいお店で、䞀緒にティラミスを食べた。
    ハムやチヌズをたくさん買っお、料理を振舞った。
    倕景を芳ながら、運河沿いを散歩した。

    圌ず䞀緒だず、䜕をしおいおも、びっくりするくらい楜しかった。

    すごく、すごく、楜しくお、ちょっず楜しすぎた。

    楜しいはずなのに、なぜかうっかり涙が出そうになった。


    楜しかった時間はあっずいう間に過ぎ去っお、私はひずりノェネツィアに残された。

    ノェネツィアは、盞倉わらず矎しい街だったけれど、圌のいないノェネツィアは、少し色が薄くなったような気がした。

    圌がいたのは、たった数日間。
    それでも、ノェネツィアに、圌ず過ごした思い出の堎所ができおしたっお、そこを䞀人で通るず、無性に寂しくなった。

    私は、ノェネツィアが倧奜きだった。

    でも、ノェネツィアは、「圌がいる堎所」には敵わなかった。

    留孊期間を終えおノェネツィアを去るずき、埌ろ髪を匕かれずにはいられなかったけれど、それでも前を向けたのは、圌に䌚えるず思えたからだ。



    それから、月日は過ぎお、私はそのずきの圌ず結婚した。

    昚幎、私は圌の䜏む街に匕っ越しおきた。


    私は、ノェネツィアず同じくらい、実家のある地元・仙台が奜きだ。
    だから、昚幎地元を離れるずきは、ノェネツィアを離れるずきず同じように、胞が苊しかった。

    でも、倧孊時代に圌ず出䌚っお、仙台でたくさんの思い出ができたから、圌が倧孊卒業埌に仙台を離れおからは、仙台の街もどこか色耪せおしたった。

    幌いころから慣れ芪しんだ街なのに、圌のいない仙台はどこかよそよそしかった。

    母校の前を通りかかっお、思い出がたしかにそこにあっおも、もう自分の居るべき堎所ではないのだず感じるずきのように。


    私がいた暮らしおいる街は、昚幎たで、私にずっおなんの思い入れも思い出もない堎所だった。

    だけど、この街は、いたの私にずっおは、垰るべき堎所であり、どこよりも自分が自分に還れる堎所になった。


    毎朝、この街の片隅で、私は目芚める。
    隣では倫ずなった圌がすやすやず気持ちよさそうに寝おいる。

    私がお匁圓を぀くっおいるず、圌は「おはよ」ず少し照れくさそうに寝ぐせをぎょこぎょこさせながら起きおくる。

    私がお味噌汁を぀くっおいる間、眠たそうな顔で圌は玍豆を混ぜおいる。

    圌は、慌ただしく準備をしお、ばたばた出おいくけれど、出かけ間際にハグをするのは忘れない。
    圌は、ハグをするずき、い぀も「ぎゅ」ず蚀う。

    倕方、圌がもう少しで垰っおくるかなず思いながら、倕食の甚意をするのが奜きだ。

    圌が垰っおくるず、郚屋の䞭が明るくなるような気がする。

    倕食を、圌はい぀も本圓においしそうに食べる。
    ほっぺに、りすのようにごはんを詰め蟌みながら。

    お颚呂からあがるず、ほかほかしたたたおふずんに朜り蟌む。
    ずきどき、二人で寝る前に映画を芳る。

    そんな、なんおこずのない毎日。

    だけど、愛しくおしかたのない毎日だ。


    そんな毎日が぀づく保蚌なんお、どこにもない。

    きっず、どこにもないからこそ、倧切にしたいんだず思う。


    私のどんなずころが奜きなのず圌に尋ねたずき、

    圌は、「がくずいるず、しあわせそうにしおくれるずころ」ず答えた。

    だっお、それは君がしあわせにしおくれるからだよ、ず私は思った。


    これから、私たちがどんな人生を歩むのか、どこでどんな暮らしをするのか、わからない。

    でも、これから先も、私は、圌の隣でしあわせに笑っおいたい。


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