
ロイホのトイレで5歳の娘に唇を奪われた話。
ロイヤルホストのトイレの個室で用を足した後に「いま誰も見てへんで!」と突然唇を奪われた。5歳の娘に。
急なイケメンムーブに戸惑う。いや、トイレで突然のキスはそんなイケメンでもないか。笑
その後しばらくは「いま誰も見てへんで!」がネタみたいになって、急に言ってチュッとするのがおもろい遊びみたいになったんだが。
最近、「いま誰も見てへんで!」と言って近づくと「チューはいい。」
と断られるようになってしまった。先月6歳になったばかりの娘である。
6歳になった娘の興味の矛先はもっぱら「ポケモン」と「マイクラ」だ。
あんなに好きだったディズニープリンセスも「もう興味ない」とバッサリ。
着られることのなくなったエルサのドレスが妙に寂しげに見える。
奪われることのなくなった私の唇と一緒や。
私は仕事で疲れた時に、娘が小さい頃の動画をよく見る。
たどたどしい言葉で「だいしゅき」と駆け寄ってくる動画や、
「いやっ、ちあう、これじゃないのっ」と今見ても訳の分からないことで泣き喚いている動画。
あの頃はそれはそれは大変だった。
おもちゃで溢れかえったリビングはいくら片づけても片づかない。
だっこで移動することが多かった私の二の腕はずいぶんたくましくなった。
何度も失敗したトイトレ。
トイレについて行かなくなったのはいつからだっけ。
ほんの数年しか経っていないのに。まるで何十年も前のように感じたかと思えば、振り返るとあの頃の君が泣いている気がする。
晩ご飯を食べたあとコーヒーを飲みながらぼんやりしていると、リビングで何やらこそこそしていた娘が「これあげる」とチラシの裏紙を渡してきた。
紙いっぱいに書かれたお気に入りのキャラクターの絵。とても上手に描けていたので感心してしまった。
「今度はママの顔描いてよ」と言うと、「イヤ」とまたしても断られてしまった。
君はいま断るブームなんか?
娘が産まれてから振り回されることに慣れた私は、いまや多少のことでは動じなくなった。
それでも毎朝ダラダラ用意する娘に「はよしいやー!」と大声ではやしたてたり、「今日のご飯はサイゼリアがいい」と週5回言ってくる娘をなだめすかすのにへとへとになったり。
相変わらず我が家は慌ただしい日々を送っている。
なんとか残業を免れた週末、ついに娘のサイゼリア攻撃に負けてしまった。
ご飯を食べながらも、頻繁に届く職場からのメールは私のスマホをブルブル震わせている。
ふと隣のテーブルの会話が聞こえてきた。
「私、ドライフラワーより生花の方が好きなんです。だって枯れるじゃないですか。」
スマホが震えた。返信待ちのメールがまた増えていく。
私はスマホを置いて、ピザを頬張る娘の顔をじっと見つめた。