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パラノイド・アンドロイド:レディオヘッドに振り回されて

90年代後半から2000年にかけて、ロックリスナーとしてレディオヘッドに振り回された。いま「振り回された」と書いたのは、何となくそんな言葉が一番ぴったりに思えたからである。デビューアルバム「Pablo Honey」はニルヴァーナが現役だった1993年に出ていて、当時の自分はオルタナ系に狂っていたのでその流れとしてリアルタイムで買った。いち早く話題になっていた「Creep」はたしかに良い曲だと思っていたけど、アルバム全体ではそれほど強い印象がなく、ピクシーズフォロワーのひとつということで自分内ではおしまいにしていた。

ちなみに当時の自分は、ビートルズからの流れで古い英ロックしか聴いていなかった80年代から180度転換して、完全に現代の米ロック派に転向していた。いわゆるブリットポップは初期のブラーぐらいしか興味がなくて、90年代にもなって英ロックの伝統を継承しようとする動きに対してははっきりとアンチだった(オリジナルはもちろん大好きだけど)。90年代初めから数年間、毎月欠かさず買っていたロッキング・オンの読者をやめたのも、当時のブリットポップ推しの方針に違和感が大きくなったから。

レディオヘッドはさすがに当時からブリットポップのくくりではなかったと記憶しているけど、1995年に次作「The Bends」を出したときに自分は認識すらしておらず、友人の車の中で初めて聴かされてびっくりしたのだった。あのピクシーズもどきのファーストと全然違うじゃないか!

普通のエイトビートで流れていくロックサウンドとはくっきりと一線を画す、ぶつ切りになった複数のビートが混ざるリズム感に、トレモロの効いた浮遊感のあるギターとキーボード。ほかのどのバンドとも違う新しい響きを感じて、あの「Creep」の人たちからずいぶん変わったものだと驚いたのだけど、当時はなぜだったか、そこですぐにCD屋に走るようなことはしなかった。ただ、頭の中にしっかりレディオヘッドの名前は刻まれていたので、次の新作が出たときはすぐさま買った。1997年、「OK Computer」である。

これには完全に吹っ飛ばされた。自分が90年代に出会って全身でどっぷりはまり込んだロック三大アルバムを挙げてみると、ニルヴァーナの「Nevermind」、ベックの「Odelay」、そしてレディオヘッドの本作だった。最終曲の「The Tourist」が、ちーん、と音を立てて終わるまで、息をするのも忘れて(死ぬぞ)ひたすら聴き入るという体験を毎日繰り返した。輸入盤シングルも店で見つけ次第すべて購入。同じ曲のシングルでもカップリング違いが複数出たりしていて、CDシングルをたくさん持っていたものだったけど、いま棚を見てみたら1枚も残っていない。当時は目を血走らせながら集めた入魂のシングル群だったが、水害で水浸しになって全部捨ててしまったかね。あーあ……まあ、音源自体はすべてパソコンに入れてあって日常的に聴いているし、20周年記念盤にも入ってるんじゃないかな。

それからは来日公演にも毎回足を運び、そのたびに生演奏の説得力に圧倒された。ここまでドはまりしたバンドだから、次の新作にも当然、並々ならぬ期待を寄せていた。2000年の「Kid A」は、発売日にすぐさま入手したのを覚えている。たしか、ネットで漏れ聞こえていたいくつかの曲は発売前から聴いていたような気もするし、前作と同じようなことは絶対やらないだろうと覚悟はしていたけど、いざ全貌を聴いてみると、自分はこの作品に乗れなかった。何だろう、90年代も終わって、こうなることはあらかじめわかっていたのかもしれない。どこかで聞いたセリフを借りると、私の列車は行ってしまった、のである。

「Kid A」でそんな気持ちにさせられたことは、以後10年ぐらいロックから気持ちが離れる決定的な要因になった。だから、最初に書いたようにレディオヘッドに「振り回された」という気持ちがある。「Kid A」にも好きな曲はいくつもあったし、以降しばらくの期間、彼らは少しギター寄りのバンドに戻って、「Amnesiac」と「Hail To The Thief」の2作はずいぶん気に入ってよく聴いた。それでもやはり、いったん行ってしまった列車はもう戻ってこない。だから、今ブログやnoteに色々と書いているロック話はすべて、思い出し書きなのである。でも、そんな音楽にリアルタイムで出会えて、気持ちいいほどに激しくぶん回されたのだから、かけがえのない音楽体験だった。

今朝、ほぼ徹夜で仕上げた朝9時納品の仕事が一段落したとき、BGMシャッフルで「Paranoid Android」が流れて、こんな話を突発的に書き始めたのだった。レディオヘッドの話なんて今までほとんど書いてなかったな。

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