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鋌鬱んぜ

    非おむろ

    『鋌鬱んぜ』
             

    正匏名称『鎖鎌探偵 鋌 ─鬱 おちんぜIC─』
                

      䜜非おむろ   #小説 #オリゞナル  2025/07/05
               #創䜜倧賞2025 #ミステリヌ小説郚門
               ルビ蟌み25637字

    あらすじ


     新期県しんせきけんにお原尿もずばり工たくみによる逊殖ヌヌトリアを攟぀蚈画を阻止した自分──亜川あかわ鉛児えんじず惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正ず蚭楜したら建健爬けんけんぱの䞉人みたりは岐阜県たたおかけんぞ垰る為にバスに乗り蟌むが、運転手が発狂し青森県せいしんけんぞ到着。譊芖正は宿酔ふ぀かよいで嘔吐。扚さお、自費で垰るか  ずいう雰囲気の䞭、地元の譊察の葛西かさい韮蔵きゅうぞう巡査郚長は自分ず蚭楜したらさんを、〝鎖鎌探偵 鋌はがね〟ず〝倚賀癟人たがももたり抜きの鬌おに蚭楜したら〟ず知った䞊でパトロヌルカヌぞ乗せる。巡査郚長曰いわく、どうやら二、䞉ヶ月前から〝碇ヶ関ICむンタヌチェンゞ出口の䞀般レヌンの粟算機からおちんぜが出おいる〟ずいう通報を耇数回受けおいるのだずか。だが、粟算機からは垞におちんぜが出おいるわけではないらしい。
     果たしお我々はこの〝鬱 おちんぜICむンタヌチェンゞ事件〟──通称・りツンポ﹅﹅﹅﹅を解決するこず胜あたうのか──



    本線


    ⊿幕䞀⊿


     長雚ながめを裂きお遠ざかるパトロヌルカヌを眺めおいた。雚音以倖は音も無いずいうのに、粗悪な䞇華鏡の劂く乱反射する赀き回転灯が五月蠅うるさかった。携垯電話をパカリず開くず、午前䞉時四十五分。倜、ずいう抂念の賞味期限が、切れようずしおいた。

     自分は亜川あかわ鉛児えんじ。䞉十䞀歳。普段は﹅﹅﹅岐阜県たたおかけんの塩ビ管関連補品の工堎で、原材料の梱包材の廃棄や、完成品の梱包、着荷・出荷の各皮点怜業務、その他諞々の荷圹等をしおいる。虹色のツナギに黒髪のモヒカンがトレヌドマヌクだ。

     隣で飲んだくれおいるのが惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正。五十䞀歳。譊芖正ではあるが、飲酒が止められない為、岐阜県たたおかけんの片隅に巊遷されおきたおじさん。趣味は嚁嚇射撃。癜髪亀じりのリヌれントだ。譊芖庁  は東京郜だから、譊察庁に属しおいるず思うが、いずれにせよこの者に䞎える絊料は本来、0円が劥圓だろう。

     その隣で立っおいるほが透明であるメッシュのタンクトップを着おいる男は蚭楜したら建健爬けんけんぱ。四十䞀歳。或る無人駅の駅前で〝ちんぜこ塟〟を経営しおいる。合気道がメむンで、オマケで英䌚話の短期講習をたたに開くが、評刀が良いのは専もっぱら英䌚話の短期講習の方だ。スポヌツ刈り。

     䜕故岐阜県圚䜏の我々䞉人みたりが新期県しんせきけん譊察のパトロヌルカヌが去るのを芋送っおいるのかずいうず、知らぬ仲ではない岐阜県圚䜏の二十䞀歳の傍迷惑はためいわくな男性・原尿もずばり工たくみによる〝逊殖した倧量のヌヌトリア達を歀凊ここ新期県しんせきけん魚沌垂うおぬたしで攟぀蚈画〟を、今し方、未然に防いだずころだからだ。防ぎたおほやほや。
     自分の代名詞でもある、高性胜な盗聎・盗撮甚ミダマクワガタ型ドロヌン〝㋟靉云♚眒眘たあいんゆもうぶ〟は六癟六十䞀匹党お、今回の隒動で砎損した。ヌヌトリアずいうよりかは、原尿もずばり工たくみや無関係の通行人、曎には事情を知らぬ新期県しんせきけん譊察にやられたのだが  たあ、必芁な犠牲だったず思うこずにする。
     原尿もずばり工たくみを乗せたパトロヌルカヌが芋えなくなった埌も、パトロヌルカヌは呚囲に倚く駐ずたっおいる。ヌヌトリアを倧量に乗せた倧型トラック数台を取り囲んでいる新期県譊察の皆様に䌚釈をしお、我々はもう垰岐きぎする旚を䌝えた。譊官の䞀人が我々䞉人みたりをJR倧癜川おおしらかわ駅前たで送っおくれた。あず䞀時間もせぬうちに岐阜県たたおかけん飛隚垂ひだし神岡町かみおかちょう行ゆきの朝バスが出るらしい。乗ったら六時間埌、぀たり昌ちょっず前頃には着くのだずか。

     もう既に惰宮《だみや》譊芖正は出来䞊がっおおりぞべれけ﹅﹅﹅﹅だった。

     送っおくれた譊官に謝意を述べ、䞉人みたりは倜明け前のJR倧癜川おおしらかわ駅前を楜しんだ。䞃月になったばかり。蛙の倧合唱。時折蛙が鳎き止む床に、嗚呌、降霊術日和だなあ、ず感じた次第だ。

     軈やがお駅前にバスは来た。幞い、垭は空いおいた。空いおいたどころか、運転手以倖は我々䞉人だけだった。運転手に問うず、予玄は入っおいないので、奜きな垭に座っおよいずのこず。倚分無いずは思うが、混んできたら荷物を含めお䞀人䞀垭で空間スペヌスは譲り合っおね、ずのこず。

     極めお寡黙な運転手に前払いを枈たせ、バスの䞭ぐらいに座った。自分が背嚢はいのうを背負っおいるぐらいで、埌あずは氎分を入れた地図鞄マップケヌスぐらいだ。䞉人みたり党員、倧した荷物は持っおいない。
     自分は背せ凭もたれを優しく倒すず、その儘たたぐっすりず眠っおしたった。


    ⊿幕二⊿


     目が芚めたら、車内はすっかり明るかった。バスは静かに走り続けおいるようだ。惰宮《だみや》譊芖正も蚭楜したらさんも、ぐっすり寝おいる。

     携垯電話を確認する。

     午埌䞀時を過ぎおいた。

     車窓から倖を芋る。目に入った看板には「小坂町」の字があった。
     えっ  岐阜県たたおかけん䞋呂垂げろし小坂町おさかちょう どんな道皋ルヌトだ もしかしお、神岡町をかなり過ぎおいやしないか

     車窓を凝じっず芖みる。

     流れおゆくポヌルには、小さな六文字が印字されたシヌルが貌っおあった。


    〈鹿角郡小坂町〉


     急いで惰宮《だみや》譊芖正  は䜿い物にならないので、蚭楜したらさんを叩き起こした。

    「  むにゃ  」
    「蚭楜したらさん蚭楜したらさん 倖芋おください、倖」
    「  ん  亜川あかわ君  おはよう  」
    「歀凊ここ、秋田県しゅうでんけんですよ 今 秋田県しゅうでんけん鹿角郡かづのぐん小坂町こさかたち」

     蚭楜したらさんは䞉十秒埌、挞ようやく自分ず同じぐらいに顔面おもおをしお蒌癜あおざめしめた。

     䞀分の沈黙の埌、二人は運転手の䞋ぞ歩いおいった。急に倧声を出したりしお、ハンドル操䜜を誀り、党員で䞍垰の客ずなるのは面癜くない。䜵しかし、〝バスゞャックされずるんずちゃうんけ〟ずいう疑念も有り、看過は蚱されない状況なのだ。

     運転垭付近には  別に、バスゞャック犯は居ないように芋える。
     二人がゆっくり近付いお来たこずを悟ったのだろう、運転手は絶叫した。

    「もうすぐ着くから もうすぐ着くから もうすぐ着くから」

    「あ  は、はい」
    ず蚀ったのは蚭楜したらさんかず思ったら、自分だった。あたりにも他人行儀な声音こわね。

     戊々兢々せんせんきょうきょうず元の垭に戻った自分ず蚭楜したらさん。自らの䞻芳﹅﹅﹅﹅﹅が乗っおいるバスが今たさに秋田県の高速道路を走っおいる──ずいう事態が、予定に無さ過ぎお絶句しおいた。

    「あ  青森県せいしんけんに入りたしたね」
    ず自分が呟いた。
    「  北䞊ほくじょうしおんの  」
    「  みたいです  ね  」


     それから、氞遠にも感じられる数分﹅﹅が経った埌。


    「  あ  」

     高速道路を降りるようだ。

     碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞ。

     いくら䞭郚地方の者でも碇ヶ関いかりがせきが枩泉郷いでゆのさずであるこず䜍は知っおいる。旧・南接軜郡みなみ぀がるぐん碇ヶ関村いかりがせきむらは平成の倧合䜵で平川垂ひらかわしの䞀角ず盞成った筈はずだ。

    「  ん  」

    ず、右偎の窓を芋おいる蚭楜したらさんが、呻うめいたような気がした。気のせいだったかもしれない。
     高速道路を降りるにあたっお通る料金所──碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞ出口の料金所に差し掛かったずころで、バスは停たった。料金を払っおいるのだろう。ETCレヌンではなく、䞀般レヌンだ。

    「  おちんぜ」
    「  え  」
     自分は、耳を疑った。

    「あヌおちんぜだよあれ あのヌ  おちんぜ おちんぜが、あるよ」
    「蚭楜したらさん 合気道の埌遺症ですか」
    「合気道に埌遺症ずかは無いが  あの、あれ あそこに、おちんぜ生えおた このICむンタヌチェンゞは、デペむズマン﹅﹅﹅﹅﹅﹅の実戊基地なのかい」
    「蚭楜したらさん 萜ち着いおくださいっお」
    「郚屋の䞭の象同然じゃないか、歀凊ここは」
    「は、はい」
    「歀凊ここはさあ  」

     バスは動き始める。支払いを終えたのだろう。

     蚭楜したらさんが叫おらぶ。


    「おちんぜICむンタヌチェンゞやんけ」



    ⊿幕䞉⊿


     蚭楜したらさんの叫びは、無芖した。倧方、䞀時的に気が、狂っただけだろう。
     ずころで、頭が痛くなるような事実を列挙しようず思う。仮什たずえ、頭が痛くなろうずも、だ。

     自分──亜川あかわ鉛児えんじず蚭楜したら建健爬けんけんぱさん、序぀いでに惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正ずいう客人たろうど䞉人みたりを乗せたバスは、新期県しんせきけん魚沌垂うおぬたしのJR倧癜川駅前を発った。そこ迄たではOオヌキヌKドヌキヌだ。そしおバスは、飛隚垂ひだし神岡町かみおかちょうぞ六時間埌に着く筈はずが、八時間半埌に、あろうこずか青森県せいしんけん平川垂ひらかわし碇ヶ関いかりがせきの民家ぞ到着した。  碇ヶ関いかりがせきICの近くの民家ぞ

     珟状から目を背けるこずは叶わない。

     バスが停たっお゚ンゞンも切れ、扉も開いたようなので、自分ず蚭楜したらさんは恐る恐る降り──る前に面倒だが惰宮だみや譊芖正を揺さぶっお起こし、改めお恐る恐る降りた。
     昌。
     青空。
     山峡やたかいを南北に田が走っおいる。

     熱い。東北ず雖いえども摂氏せっし䞉十床に远い぀け远い越せじゃないか

     飲食店の裏にある民家の敷地に倧型バスが䜕の説明もなく駐ずめられおいる状態。
     啞然。

     惰宮だみや譊芖正が寝惚ねがけ県たなこで、

    「神岡かみおかに着いたか」

    ず問うお来た。蚭楜したらさんが、

    「いえ  碇ヶ関いかりがせきみたいですね」

    ず答えた。譊芖正は、

    「  んあ   䜕で霞かすみが関」

    ず呟いたので、今床は自分が、

    「  いえ、青森県せいしんけんの碇ヶ関いかりがせきです。マルメロ゜フトずか足湯ずか筍たけのこずか」
    「あず林檎ず、ブランド米の〝青倩の霹靂〟もそうだっけ」

    ず蚭楜したらさんが続いたずころで、

    「  ほヌん  」

    ず譊芖正、小さく述べ、甚氎路の方ぞ蹣跚ふら぀き、蹌螉めき、嘔吐。宿酔ふ぀かよいだ。譊察官の制服を着おいるだけに、䜕ずいうか、絶句させられる光景だ。

     䜵しかしたあ  酔客よっぱらいは扚さお眮くにせよ、青森県せいしんけんの民家で茫然ず自らを倱っおいるのは、倖ほかならぬ自分なのだ。圓事者意識を持たねば

    「蚭楜したらさん、運転手っお  狂っおたすかね」
    「  ん  」

     蚭楜したらさんは黙っお指を差した。芋るず、運転手の男が泣き乍ながら民家ぞず走っおいる。



    ⊿幕四⊿


     青森県せいしんけん平川垂ひらかわし碇ヶ関いかりがせきに着いおから䞉十分経っただろうか。
     バスの運転手は実家である八朚橋やぎはし家の自宀に籠っおしたった。八朚橋やぎはし家の裏──ずいうか衚──には飲食店・諏蚪平すわだいらドラむブむンがほが隣接しおいる。八朚橋やぎはし䞀家が経営するその諏蚪平すわだいらドラむブむンにお、自分ず蚭楜したらさんは昌食を取っおいた。〝詊金石しきんせき定食〟なる目玉メニュヌを頂いおいるのだが、矎味い和食だ。譊芖正は田の近くでただ吐いおいるだろう。䞀応、氎のペットボトルを䞀本添えおおいた。

     埡銳走様、ず唱える頃には我々二人以倖の客は粗ほが捌はけおいた。玄関の倖の札は「営業䞭」から「準備䞭」ぞず倉わっおいるのかもしれない。若いお婆さんが食噚を䞋げたずころで、若頭﹅﹅颚の男が股間をがりがり掻き乍ながら近付いお来た。この若頭﹅﹅颚の男は、先皋のお昌時の混雑時は姿が芋えなかった。厚房の奥の死角の蟺りに居たのだろうか。
     若頭﹅﹅はやれやれずいった感じで、述べる。

    「陰金いんきんではありたせん。蚊に刺されお痒かゆいのです」
    「は、はあ  。あの、自分は蚭楜したら建健爬けんけんぱず蚀いたす。こちらは亜川あかわ鉛児えんじ。先皋チラリず説明したしたが、八朚橋やぎはしさんの家に入っお行かれた運転手さんに連れられお、ここたで来たんですよ」
    「今々、母から少し聞きたした。ただ、母からの䌝聞は粟床が非垞に怪しいので、申し蚳ありたせんが  お二人の口から盎接、情報を聞かせおください。えヌず  䜕凊どこからいらしたんでしたっけ」

     今床は私が答える。

    「新期県しんせきけんからです」
    「新期県しんせきけん。  新期県しんせきけん」
    「岐阜県たたおかけんに垰る心算぀もりが  」
    「岐阜県たたおかけん」

     改めお、特に運転手さんから説明は無く、寝お起きお「もうすぐ着くから」ず連呌されお今ここに居る旚を䌝えた。
     䜕時い぀の間にか店䞻らしきお爺さんが近づいお来おいた。目の前の若頭﹅﹅に耳打ちをする。
     お婆さんが我々ぞ冷えた麊茶を持っお来おくれた。瀌を蚀う。

     䞀分半皋しお耳打ちが終わり、店䞻らしきお爺さんは厚房ぞず消えおいった。
     若頭﹅﹅は語る。

    「あヌ、今、父がですね、兄ず喋っお来たようで  。䜕が起こったか分かりたした。順を远っお説明したす」

     若頭﹅﹅は滔々ずうずうず蚀の葉を玡぀むいだ。その話の  䜕ず、䞋手なこず


    ⊿幕五⊿


     四十分皋経っただろうか。
     畢竟ひっきょう、麊茶を䞉杯おかわりした。

     若頭﹅﹅の䞋手な話を纏たずめるず、䞋蚘のように敎理するこず胜あたう。

     語りし者──そう、県前で怅子に座っお股間を掻き乍ながら説明行為をしおくれおいる若頭﹅﹅颚の店員は、八朚橋やぎはし打地乎だちおずいうらしい。䞉十五歳。奜きな食べ物は蒲鉟かたがこ。朝颚呂が日課。

     打地乎だちおの父は先皋耳打ちしおいった店䞻・八朚橋やぎはし⚡いなずた。六十九歳。埗意料理はガム。昔、マギヌ叞郎に握手しおもらったこずがある。

     打地乎だちおの母は八朚橋やぎはし芖鐚矎しあみ。六十四歳。店員だ。レゞスタヌを打぀こずが可胜。若い頃、脚立を䞇匕きしお半幎豚箱に入っおいたこずがあるのだずか。

     八朚橋やぎはし新あらた。四十歳。誰かずいうず、䟋のバスの運転手だ。バスゞャック犯ではなく、運転手自䜓にバスゞャックをされたら、防ぐのは甚はなはだ哲孊的に困難だ。⚡いなずた氏から聞いた情報を打地乎だちお氏から聞く限り、どうやら䞉日前の倱恋の発狂が祟たたったらしい。収入印玙ず収入蚌玙の違いが刀らないにも拘らず知ったかぶりをしおしたい、それが原因もずで砎局、嘔吐したのだずか。莫迊ばかな。収入印玙ず収入蚌玙の違いが刀る者なんお日本囜でも片手で数えられるぐらいの人数しかいないのに、䜕故そんな知ったかぶりをしたんだ、新あらた氏。先皋携垯電話の留守番電話に解雇通知ず〝バス返せ〟通知の䞡方の旚の音声が入っおいたのだずか。新あらた氏自身は平凡な人物。目立った過去は無いらしいが、囜立囜䌚図曞通を出犁になっおいるらしい。


    「えヌず  ぀たり、バスの運転手では、もう、ない」

    ずいう蚭楜したらさんの蚀葉に、打地乎だちお氏は、

    「たあ  そうですね」

    ずいう、䜕ずも蚀えない返事を寄越した。


     沈黙しじた。


    ⊿幕六⊿


     今倜は八朚橋やぎはし家で䞀泊しお明日自費で﹅﹅﹅垰りなよ、ずいう打地乎だちお氏の蚀葉を有難く頂戎し、八朚橋やぎはし家──民家の方ぞ戻っお来た。瞁偎の日陰の箇所では、吐き疲れたのかげっそりした顔の惰宮だみや譊芖正が銃の手入れをしおいた。傍らには件くだんの氎のペットボトル。勝手に䞊がり蟌んで涌んでいるらしい。狂っおいるのだろうか。
     䞊がり蟌みはしなかったが、自分ず蚭楜したらさんも瞁偎の近くの日陰ぞず移動する。
     蚭楜したらさんが惰宮だみや譊芖正ぞ事情を䌝えた。私は最埌に、

    「たあ  発狂しお解雇された盎埌の運転手に岐阜県たたおかけんぞ乗せおいくようせがむのも、非珟実的ですから、自力で垰りたしょう」

    ず添えた。惰宮だみや譊芖正は気怠けだるそうに、

    「平川垂ひらかわしねェ  。おお気持ち悪い  。いや、平川垂ひらかわしが気持ち悪いわけではなくお  。平川垂ひらかわしず蚀ったら、倧鰐枩泉おおわにおんせんスキヌ堎なんかの割ず近くか   おお気持ち悪い  。いや、倧鰐枩泉おおわにおんせんスキヌ堎が気持ち悪いわけではなくお  」

    ず呻うめいおいた。蚭楜したらさんが、瞁の䞋に䌏せおあった金属の叀めかしい銬穎バケツを差し出すずたたゲ゚ゲ゚吐き出したので、そっず自分等らはその堎を埌にした。


     その堎を埌にするず蚀っおも行く宛あお無し。山ず山に囲たれた田を眺め぀぀、二人で逍遥おさんぜした。日差しが匷い。垜子を持っお来お良かった。
     この囜道はどうやら䞃号線らしい。

     番所橋、ずいう名が衚瀺された橋を枡っお平川を越えたずころで、埌方から来たパトロヌルカヌが自分ず蚭楜したらさんの脇に停たった。

    「こんにちは。畏おそれ乍ながら  鋌様ですか」

     「青森県譊察」ず蚘されたパトロヌルカヌの䞭には運転者䞀人。その䞀人から、開いた助手垭の窓越しに肉声を掛けられたのだ。
     自分は答えた。

    「はい」


    ⊿幕䞃⊿


     自分──亜川あかわ鉛児えんじが数々の難事件を解決たたは郚分的決着たたは迷宮入り等に導いお来た泣く子も泣き続ける名探偵〝鎖鎌探偵 鋌〟だずいうこずは、有名かず蚀われれば埮劙である。〝鎖鎌探偵 鋌〟ずいう名探偵が居るずいう情報は日本党囜接々浊々に広がっおいるが、その正䜓が自分──亜川あかわ鉛児えんじであり、普段は﹅﹅﹅岐阜県たたおかけんの塩ビ管関連補品の工堎で、原材料の梱包材の廃棄や、完成品の梱包、着荷・出荷の各皮点怜業務、その他諞々の荷圹等をしおおり、虹色のツナギに黒髪のモヒカンがトレヌドマヌクであるずいうこずはそこたで有名ではない。今は苔こけ色の党鍔垜子ハットも被っおいるずいうのに、よくぞ芋抜いた。流石譊察官だ。

     自分は蚀う。

    「よく分かりたしたね」
    「いや、虹色のツナギのツナギで  。お連れの方は、合気道の蚭楜したらさんですか 宜しければお二人共、乗っおいただけたせんか。協力しおいただきたいこずがありたす」

     蚭楜したらさんが麊で線たれた野球垜を被り盎し぀぀、蚝いぶかしんだ。

    「自分のこずも埡存知ずは  。で、えヌず、協力」

     譊察官は速やかに運転垭を降り、埌郚座垭の扉ドアを開け乍ながらお蟞儀をした。

    「事件ぐです」
    「嚙たないでくださいよ」
    「事件です」

    ⊿幕八⊿


    「で、殺されたのは」
    「誰も死んじゃあいたせんよ」

     自分の問いに譊察官は軜く答えながら我々を乗せたパトロヌルカヌを発進させた。涌しい車内だ

     譊察官は運転し乍ながら、自己玹介を行った。

     葛西かさい韮蔵きゅうぞう、ずいうらしい。䞉十九歳。巡査郚長。瘊せ気味で、円県鏡たるめがねをしおいる。葛西かさい巡査郚長以倖に誰もパトロヌルカヌに乗っおいないのは、今、青森県せいしんけん譊察の殆ほずんどが極秘任務に駆り出されおいるらしい。

    葛西「内緒ですが、階䞊岳はしかみだけで五十頭前埌、マンモスが出たらしいんです」
    亜川「は、はあ」
    葛西「青森県譊の負の遺産。嘗お県譊の䞊局郚が資金を暪領しお独断で遺䌝子実隓をしおいたようでね。䞖間に知られる前に我々青森県せいしんけん譊察は、五十頭前埌のマンモスを斃たおさねばならない」
    蚭楜「  頑匵っおください」
    葛西「  」
    亜川「  たさか、自分等らもマンモス狩りに加勢せよ、ず」
    葛西「あヌ  それもいいですね」
    蚭楜「〝それもいいですね〟」
    葛西「今回お二人を拟わせおいただいたのは、他でもありたせん。りツンポ﹅﹅﹅﹅ず県譊が呌称しおいる事件の解決を助けおいただきたいのです」
    亜川「りツンポ﹅﹅﹅﹅」
    葛西「はい。りツンポ﹅﹅﹅﹅。正匏名称は〝鬱 おちんぜICむンタヌチェンゞ事件〟ず申したす」
    蚭楜「  あ  」

     蚭楜したらさんが劙な呻うめき声を䞊げた刹那せ぀な、パトロヌルカヌは平川垂圹所碇ヶ関総合支所の駐車堎に停たった。゚ンゞンはただ切られおいない。涌しさを堪胜。倖に出たらたた、熱いだろう。

     葛西かさい巡査郚長は駆け足で、色々ず説明しおくれた。

     
     惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正から葛西かさい巡査郚長が詰めおいる亀番ぞず間違い電話が掛かっお来たらしい。惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正は有名人である。有名人、ずいうのは良い意味でも悪い意味でも䜿う蚀葉だが。
     た、そこで少し雑談をしたずころ、惰宮だみや譊芖正は葛西かさい巡査郚長ぞ宿酔ふ぀かよいの声で、〝鎖鎌探偵 鋌〟である自分──亜川あかわ鉛児えんじず、合気道ず英䌚話の男──蚭楜したら建健爬けんけんぱの二人ず共に〝青森県せいしんけんの霞が関みたいなずころ〟に到着したこずを告げたのだ。

     葛西かさい巡査郚長が䞀通り話し終えるず、今床は自分が口を開いた。青森県せいしんけんぞ我々が到着した経緯をかい぀たんで話したのだ。流石に驚いおいた。

    葛西「  た、たあ、どんな経緯であれ、〝鎖鎌探偵 鋌はがね〟ず〝倚賀癟人たがももたり抜きの鬌おに蚭楜したら〟が我が県ぞいらしおくださったのは嬉しいです」

     〝倚賀癟人たがももたり抜きの鬌おに蚭楜したら〟ずは、蚭楜したらさんの異名である。
     滋賀県しげよしけん犬䞊郡いぬかみぐん倚賀町たがちょうにある癟名前埌の新興宗教団䜓が倚賀町立博物通を占拠した事件が数幎前にあったのだ。滋賀県しげよしけん譊察の殆ほどんどが䜙呉湖畔よごこはん莋札事件を远っおいたので出払っおおり、倚賀町立博物通には普段萜ずし物を担圓しおいる高霢の再雇甚の婊譊さん䞀人しか来なかった。蚭楜したらさんはその日、パチンコで負けに負け、旅先であるにも拘らず党財産をほが倱い、蹣跚ふら蹣跚ふらず歩いおいた。そうしたら倚賀町立博物通で新興宗教団䜓ず譊察  ずいうよりかは地元䜏民達が䜕やら揉めおいお、新興宗教団䜓が足元の砂を握り、投げお来たのだ。その䞀握の砂を顔面に受けた、虫の居所の悪い蚭楜したらさんは、ホヌムセンタヌの犏匕きで圓たった熊撃退甚スプレヌ二十猶が頭陀袋に圚ったので、自棄やけになっお投げ぀けたのだ。序぀いでに、
    「金返せ 金返せ 金返せ」
    ず叫びながら砂も投げたらしい。暫しばらくしお、婊譊さん以倖の譊察官達が珟堎に着いたのだずか。
     翌日の各新聞には、〝旅の合気道家が催涙スプレヌを济びながらも果敢に悪の組織の癟名を壊滅させた〟〝合気道ここに有り〟〝正矩の歊、顕珟あらわる〟〝倚賀癟人たがももたり抜きの鬌おに蚭楜したら〟〝悪を蚎぀栌闘家の鑑かがみ〟ずいった芋出しが躍おどり狂ったのである。

     〝倚賀癟人たがももたり抜きの鬌おに蚭楜したら〟の勇名は、歀凊青森県せいしんけん迄たで蜟ずどろいおいたのだ。

    葛西「それでね  荒事で無くお申し蚳無いのですが、〝鬱 おちんぜICむンタヌチェンゞ事件〟──通称・りツンポ﹅﹅﹅﹅は、こういうわけです」

     葛西かさい巡査郚長は緊迫した声色で話し始めた。


    ⊿幕九⊿


     葛西かさい巡査郚長の話は、斯かくの劂ごずきものだった。

    「ここ二、䞉ヶ月、〝碇ヶ関ICむンタヌチェンゞ出口の䞀般レヌンの粟算機からおちんぜが出おいる〟ずいう耇数件の通報があったんです。䜵しかし、䞀床珟堎をチラリず芋に行ったもののおちんぜは出おなくお、その堎に居た職員もサッパリだずかで、そんでもっお耇数件の通報も或る䞀族﹅﹅﹅﹅からしかなかったので、それ以降は無芖しおいたんです。半幎前に発生した高速道路亀通譊察隊碇ヶ関分駐隊集団倱螪事件も未解決な儘たたですし、手が回りたせんでしお。で、先皋䌝説のヘベレケ譊芖正──倱瀌、飲んだくれ、じゃなかった、惰宮だみや譊芖正ず雑談をしたら、「ああ、本官ほんかんも芋たぞ、おちんぜ」っお蚀っおたでしょう だから、慌おお動き始めたんですよ。耇数の通報を寄越しおいた或る䞀族﹅﹅﹅﹅を今から蚪問したす」

     埌ろの方に座っおいた惰宮だみや譊芖正がICむンタヌチェンゞを出る時に起きおいたずいうのが意倖だ。䞀瞬起きお、たた寝たのだろうか。
     そしお、蚭楜したらさんが埮発狂しただけだず思っおいたのに、本圓におちんぜ問題が発生しおいたずは。蚭楜したらさん、疑っお申し蚳無かった。

    蚭楜「  䜕だね亜川君、その目は  」

     色々ず现郚が気になる話だったが、兎ずたれ角こうたれ、葛西かさい巡査郚長に促されお蒞し暑い車倖ぞ出お、歩いた。目指すは耇数件の通報をした或る䞀族﹅﹅﹅﹅が経営しおいる理容宀ずのこずだ。

     あしこ理容宀に着く頃には、葛西かさい巡査郚長も蚭楜したらさんも自分も汗だくだった。
     倕方が始たろうずしおいる。

    ⊿幕十⊿


     理容宀はガラガラだったので、事情聎取を行い易かった。葛西かさい巡査郚長は自分ず蚭楜したらさんのこずを付き添いの私服譊官であるず説明しお、或る䞀族﹅﹅﹅﹅から話を聞き始めた。


    「たヌったく 捜査に入るのが遅過ぎるのでは」

     そう怒っおいるのは、あしこ理容宀の店䞻・岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう。六十䞃歳。カンガルヌが奜きだが、飌える筈はずもなく。

    「ICむンタヌチェンゞからおちんぜが生えおいるずいうのは、由々しき事態ですよ」

     岩淵いわぶち音倪郎おんたろう。五十二歳。無職。店䞻の匟だろうか。霊感が匷いらしい。

    「出おいる時ず、出おいない時があるんです。どうか、謎を解くなり、埡祓いするなり、しおほしい」

     岩淵いわぶち運倪郎うんたろう。䞉十二歳。念倪郎ねんたろうや音倪郎おんたろうの匟かず思いきや、入り婿。元倧工。近所の酒店で働いおいる。趣味は切手集め。

    「いや  人為的なものでしょう。ICむンタヌチェンゞの職員さんずか、怪しいんじゃないですか」

     そう蚀うのは岩淵いわぶち䜕時䞖い぀よ。二十八歳。念倪郎ねんたろうの嚘で運倪郎うんたろうの劻。近所に䜏んでいる。倜勀の枅掃業者。フェンシングの腕はなかなかのもの。

    「姉さんの蚀う通りです。粟算機からおちんぜが出おいお、すぐ隣に居るICむンタヌチェンゞの職員さんが無関係な筈はずは無い」

     スキンヘッドの岩淵いわぶち怿倪郎ちんたろうは念倪郎ねんたろうの嚘で䜕時䞖い぀よの匟。二十䞀歳。熊に四床襲われたこずがある。郵䟿局の非正芏雇甚者。

     結局、葛西かさい巡査郚長  ず我々が責められお終わっただけだった。蚭楜したらさんは悪びれず、口笛でも吹き始めそうな衚情で窓の蟺りをチラチラ芋おいた。
     岩淵いわぶち䞀族は、〝䞉ヶ月前ぐらいから断続的に碇ヶ関ICむンタヌチェンゞ出口の䞀般レヌンの粟算機からおちんぜが出おいるのが芋えた、ず、䜕床蚀えば分かる〟ずいう旚を蚀っおいた。目撃時間は昌倜を問わぬ。しかも、出っ攟しではなく、出たり出おいなかったりするらしい。

     我々䞉人みたりはハハハ  ずいった感じであしこ理容宀を出た。


    ⊿幕十䞀⊿


     パトロヌルカヌぞ戻る最䞭、葛西かさい巡査郚長に聞こえないぐらいの声で蚭楜したらさんが蚊いお来た。

    「〝㋟靉云♚眒眘たあいんゆもうぶ〟は党滅したんだよね」
    「はい、党滅枈みです」

     そうなのだ。盗聎・盗撮甚ミダマクワガタ型ドロヌン〝㋟靉云♚眒眘たあいんゆもうぶ〟の力を、䜿えない  。
     日が長い。西陜が雑草を撫でおいる。


     パトロヌルカヌぞ戻るず、葛西かさい巡査郚長はすぐに発進した。

    葛西「行き先は勿論、珟堎﹅﹅です。碇ヶ関ICむンタヌチェンゞぞ向かいたす。  あヌ、そうそう、助手垭の埌ろのクリアファむルには岩淵いわぶち䞀族からの通報のメモが入っおいるので、目を通しおいただきたいです。  ず蚀っおも、A4䞀枚ですがね」

     揺れる車内で蚭楜したらさんず䞀緒にメモを芋たが、先皋䌚った岩淵いわぶち氏達が耇数回通報しおきおいるなあ、ずいう印象を受けただけだった。「通り過ぎちゃったけど、今芋た」ずいう内容で、通報時間は午前䞀時だずか午埌䞀時だずか、午埌八時、午埌䞉時に午埌十䞀時、えヌ、たた午埌䞉時、午前䞉時なんおのもある、で午埌五時、午前零時、そしお午前䞀時、午埌䞀時、午埌八時、午埌䞉時、午埌十䞀時、午埌䞉時  うむ、時間はバラバラだ。
     葛西かさい巡査郚長に幟぀か質問したが、別に青森県せいしんけん譊察は、通報されお即座に碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞぞ通報する、ずいったこずもしおいないようだった。おちんぜいたずら通報ず認識よんでの無芖、ずのこず。


     倕暮れ。碇ヶ関ICむンタヌチェンゞのすぐそばの駐車堎ぞ到着。
     高速道路亀通譊察隊碇ヶ関分駐隊のものだった建物が廃墟になっおいるのが芋える。
     ただ、車倖は暑そうだ。

     駐車堎から碇ヶ関ICむンタヌチェンゞ出口を芋るず、赀箱の䞭に男女二人が入っおいるのが芋えた。四方に透明な窓付きのその赀箱の右にはETCレヌンがあり、曎に右には茶箱、䞀般レヌン、ガヌドレヌル、平原、廃墟ず続いおいる。
     葛西かさい巡査郚長が゚ンゞンを切るたでに二十秒あったが、車の出入りは無かった。我々のバスが通った時も、そういえば前埌に車は無かったように思える。

     パトロヌルカヌから降りる。
     暑い。
     颚が閑しずかに唄うたっおいた。


    ⊿幕十二⊿


     途切れ途切れの虫の音に圩られた倕間暮れ。急に高速道路から車が来おも蜢かれないように慎重になりながら、䞀同は平原に介した。我々䞉人みたりは譊察の者である﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅ず軜く自己玹介をした。葛西かさい巡査郚長による蚪問予玄アポ無しで抜き打ちの蚪問だったらしく、職員二名は譊察の出珟に驚いおいた。──そりゃ、蚪問予玄アポなんかを取っお蚌拠隠滅を図られたらたたらない。
     䟋のおちんぜ粟算機が目ず錻の先に芋える。自分はおちんぜが芋えない方に座っおいたからよく分からないずいうのもあるが、普通の粟算機に芋える。

    「あの右䞊のずころ 癜い鉄板に円たるい跡みたいなものがあるでしょう あそこからおちんぜが出おいたんですよ」

     蚭楜したらさんの蚌蚀に、堎が、途端に緊迫した。
     おちんぜ粟算機。
     赀箱よりも〝硝子ガラス匵り同然〟ずいった様盞を呈しおいる茶箱の䞭倮郚に、癜い倧型の自動販売機みたいなものが埋め蟌たれおいるのだ。背も高い装眮で、䞊郚は柱ぞず暪に走っおおり、柱は圓然屋根ぞず続いおいる。

     車に気を付け乍ながら、葛西かさい巡査郚長ず自分は亀互に䞋になっお肩車をし、おちんぜ猜疑円さいぎえんを調べた。──駄目だ。硬く閉ざされおおり、ただの鉄板ずいった感じだ。倖郚にドラむバヌが通るような堎所も無い。

     本圓に、ここからおちんぜが出おいたのか 粟神的なものに起因する幻芚でなければ  ホログラム
     ──䜵しかし、おちんぜホログラムなぞ、犬も食わないだろう。  䜕の為に

    ⊿幕十䞉⊿


     茶箱は冷暖房の効きが悪いらしい。我々五人い぀たりは冷房のよく効く赀箱ぞず入った。職員の䞀人が蚊に喰くわれやすい䜓質らしく、パチン、パチンず倧倉なこずになっおきたからだ。

     葛西かさい巡査郚長は職員二人にここの䜓制に぀いお質問をした。

    「あ、四人よたりの亀代制ですね。勀務䞭は䞀人です。自分は今さっき勀務終了したんですが、もうちょっず暑さが匕けるたで赀箱に居ようかな、ず思っお残っお居たした。  あヌ痒い 喰われちゃった、もヌ  。あ、自分は耳錻銙じびかっお蚀いたす」

     続いおスキンヘッドの方の職員が口を開いた。

    「自分は犏士ふくしです」


     葛西かさい巡査郚長はメモを取り始めた。県前に居る二人は改めお、自己玹介をしおくれた。

     小比類巻こひるいたき耳錻銙じびか。二十䞃歳。ギザ十を倧量に集めおいる女性。熇尟蛇ひばかりずいう皮類の、無毒で小さな蛇を飌っおいるらしい。蚊にモテる䜓質のようだ。嘗お攟火魔を偶々芋掛け、萜ちおいた鉄パむプを手に取っお突き技で远い詰めお衚地されたこずがあるらしい。昌前から倕方にかけおの勀務を担圓するこずが倚い。

     犏士ふくし千℃圊ちどひこ。四十䞀歳。この碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞの副所長。スキンヘッド。背は䜎い。マッチョ。髭ひげが立掟。若い頃、グッチ裕䞉の停者に党財産を盗たれたこずがある。「地理歎史」の高等孊校教諭䞀皮免蚱状を持っおおり、非垞勀講垫をやっおいたこずもあったが、未成幎が倧嫌いなので半幎で蟞めた。オヌルラりンダヌずいうか、色々な時間垯を担圓するので、䜓を壊さないか心配な人物だ。

     葛西かさい巡査郚長が芁求したので、耳錻銙じびか氏は勀務シフト衚を綎じたファむルを枡した。葛西かさい巡査郚長はここ䞉ヶ月分のシフトを確認する。
     ファむルは、蚭楜さんも自分も目を通した。

     ファむルの裏衚玙の裏には、手曞きで、各人の䜏所ず電話番号らしきものが曞かれおいた。

    葛西「この、小田桐おだぎりずいう方ず察銬぀したずいう方が、残りの二人ですな」
    犏士「はい」

     犏士ふくし氏は残りの二人に぀いお説明した。

     小田桐おだぎり折子おれこ。六十二歳。この碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞの所長。ロゞックパズルの名手で、䜜るのも埗意。髪は玫のセミロング。本日は党時間垯勀務候補者オヌルラりンダヌの犏士ふくし副所長が出勀でおいたが、小田桐おだぎり所長は〝今〟を含む時間垯、即ち、基本的に倕方から深倜を経お倜明け迄たでを担圓するこずが倚い。

     察銬぀した靄郎もやろう。五十四歳。超絶にむカした髪型のおじさた。長き氞き、ず蚘しおもよいかもしれないに亘わたり囜立印刷局圊根工堎で働いおいたが、解雇されお䞉ヶ月前に地元──歀凊ぞ垰っお来たらしい。特技はバック宙で、ム゚タむの達人だずか。ダりゞングが埗意らしい。倜明けから昌迄たでを叞るおじさんだ。
     察銬぀した氏が来る前は船氎ふねみずンヲワさんずいう䞃十五歳の高霢者が働いおいたようだ。半幎前たで。暗芖スコヌプを装着しお蝮たむしを退治する甘党のお爺さんだったらしい。叀遠郚ふるずうべ枩泉の近くに䜏んでいるのだずか。叀遠郚ふるず〝う〟べ。平生ぞいぜい「遠い」は〝ずおい〟ず読むが、地名の蚛なたりに非力な珟代的正論は通じない枩泉付近から冬も原付で歀凊迄ここたで来おいたずのこず。船氎ふねみず翁おうが去っおから察銬぀した氏が来る迄たでは䞉人みたり䜓制で䌑日れロで厳しい状況だった、ず小比類巻こひるいたき氏も犏士ふくし氏も熱匁した。


    葛西「二人共」

     葛西かさい巡査郚長は小比類巻こひるいたき氏ず犏士ふくし氏に問うた。

    葛西「䜕でも構いたせん。あの粟算機からおちんぜが出る、ずいう情報に぀いお、憶えはありたせんか」
    犏士「  ず蚀われおも、ねえ」
    小比「以前䞀回、県譊の方が歀凊ぞ芋に来たんですよねえ その時は小田桐おだぎり所長が質問されたず聞いおいたすけど」
    葛西「ええ。その時も自分が来たした。  所内で共有枈みでしたか」
    小比「雑談皋床ですけどね。粟算機からおちんぜが生えおいる、なんお、劙な怪談じゃないですか」
    犏士「所長特有の無気味な味わいの冗句ゞョヌクだず思っおいたしたがね、自分は  」

     兎ずに角かく、二人共、その所長からの雑談䞀回以倖はおちんぜ粟算機に纏わる蚘憶は人生においお皆無だず䞻匵した。


     葛西かさい巡査郚長は小比類巻こひるいたき氏から職員四人よたりに加え元職員の船氎ふねみずンヲワ氏の電話番号を教えおもらっお、小比類巻こひるいたき氏ず犏士ふくし氏に瀌を蚀った。その堎で抜き打ちで小比類巻こひるいたき氏ず犏士ふくし氏の携垯を鳎らす。小比類巻こひるいたき氏の音が鳎った。犏士ふくし氏はバむブレヌション。二人共、嘘の電話番号を教えおはいないようだ。

    葛西「倱瀌。譊察特有の事務的な確認です」

     小比類巻こひるいたき氏は自らの携垯電話の電話垳から電話番号を読み䞊げお葛西かさい巡査郚長ぞ教えたわけだが、特にファむルの裏衚玙の裏の蚘述ずの違いは無かった。

     我々は赀箱を埌にした。

    ⊿幕十四⊿


     䞉人みたりはパトロヌルカヌぞ垰った。萜陜を経お、倜の垳ずばりが䞋り始めおいる。
     冷房が効き始めた車内で、葛西かさい巡査郚長が口を開いた。

    葛西「所長の小田桐おだぎり折子おれこですが、通名぀うめいですね。本名は小田桐おだぎり店䜜たなさく。女装をしおいたすが、男です」
    蚭楜「譊察が把握しおいる人物なんですね」
    葛西「ええ。嘗お、亀番の前で赀ワむンを片手に運転をしたらしいですね。䞊長が蚀っおいたした。たた、䞋着に電波劚害玙チャフを仕蟌んでいるらしく、携垯電話は倧䞈倫なのですが、盗聎噚や発信機を無力化しおいるらしいです。過去に北海道のダクザず色々あったらしくお」
    亜川「ふむ」
    葛西「尀もっずも、その北海道のダクザ──名前は出せたせんがね、そのダクザグルヌプっお、雪害で党滅したらしいんですよ。小田桐おだぎりは知らないようですが」

     葛西は携垯電話を操䜜した。

     小田桐おだぎり店䜜たなさくは出なかった。

     察銬぀した靄郎もやろうは出た。青歯王無線通信Bluetoothにお、車内に音声が響く。

    察銬「はい。察銬です」
    葛西「もしもし、青森県譊察、黒石くろいし譊察眲所属の巡査郚長、葛西かさいです」

     葛西かさい巡査郚長は慣れた様子で流暢に蚀った。先皋車内で聞いたずころによるず葛西かさい韮蔵きゅうぞう巡査郚長は黒石くろいし譊察眲の䞭でも碇ヶ関譊察官駐圚所の所属らしいが、なるべく端的に、ずいうこずで「碇ヶ関譊察官駐圚所」の郚分は省いたのだろう。

    察銬「け、譊察の方  」
    葛西「はい。そうです」

     察銬぀した氏には、えらく動揺しおいるな、ずいう印象を受けた。

     葛西かさい巡査郚長は粟算機おちんぜ目撃情報に぀いお問うたが、察銬぀した氏は知らぬ存ぜぬ、ず蚀っおいた。
     軜自動車が前を暪切っお行った。小比類巻こひるいたき氏が垰路に着いたずみえる。

    葛西「  しかし、奇劙おかしいですな。小田桐おだぎり所長から聞きたせんでしたか 譊察がおちんぜのこずを聞きにきたこずがある、ず」
    察銬「え ああ  あれっお冗談かず思っおいたした。──あの、忙しいんで切っおもいいですか」
    葛西「  ええ。埡協力、有難う埡座いたした」


     船氎ふねみずンヲワ氏は電話に出た。

    船氎「䜕ィ 譊察   すみたせん。自分が殺したした。  で、甚は䜕ですか」

     既に飲んでいるようだ。

     葛西かさい巡査郚長の説明に、船氎ふねみず翁おうは爆笑﹅﹅しおいた。爆笑、ずいうのは本来〝倧勢が倧声でどっず笑うこず〟らしく、䞀人で爆笑するずいうのは蚀い回しずしお誀っおいるらしいのだが、それでも爆笑﹅﹅しおいたずしか蚀いようがない。船氎ふねみず翁おうは爆笑﹅﹅しおいた。

    船氎「ダヌッヒャッヒャッヒャ 自分も酔っおるけどあんたも酔っおるでしょヌ、公おおやけの僕しもべさん おちんぜは通垞、粟算機から生えない 聞いたこずない おおかた浮遊霊のおちんぜですよ。浮遊おちんぜ ダヌッヒャッヒャッヒャ」

     それから船氎ふねみず翁おうは、

    「碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞを蟞めおから二、䞉回シルバヌの雇甚で草刈りのアルバむトをしたけどよお、暑くお斃たおれるぜありゃ」

    ずいったこずや、

    「最近の暗芖スコヌプは質が悪い」

    等ず云った雑談を四十分皋続けた。


     通話終了。宵闇がずっくに空を支配しおいる。
     蛙の倧合唱以倖は、静かだ。
     そういえばこの碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞ、パトロヌルカヌで来おから䞀台も出入りが無い。

    葛西「  で、鋌はがねさん、鬌蚭楜おにしたらさん、犯人は分かりたしたか」
    蚭楜「  え」
    葛西「犯人」
    蚭楜「  いやいや、霊ずか、幻芚ずか、ホログラムでは」
    葛西「えヌ」
    蚭楜「えヌ、ではなく。  珟実的な路線なら、やっぱり職員が怪しいのですが」
    葛西「うヌむ。職員ねえ  。党員、芋おないずは蚀っおいたしたが」
    蚭楜「  今からでもカメラを確認しに行きたせんか」
    葛西「え」
    蚭楜「監芖カメラですよ。ICむンタヌチェンゞには぀いおいる筈はずです。それを芋れば䞀発では 行きたしょう」
    葛西「流石鬌蚭楜おにしたら」

    ⊿幕十五⊿


     長電話で時間も空いたからか、犏士ふくし副所長は䞉人みたりの再来に倚少驚いおいた。が、どうぞ、ずすぐに監芖カメラの録画を芋せおくれた。茶箱から赀箱ぞ移動。

    犏士「特に問題が起きない限り芋ないので、自分なんかは研修時以倖は芋たこずないですけどね」

     そう蚀っお赀箱内の備え付けの機噚で録画を再生する。たずは、本日我々が通過した時間あたり。

    亜川「  えっ」
    葛西「  やられたしたね」
    犏士「  䜕ですか、これ」
    蚭楜「  いやはや」

     調べたずころ、ここ半幎分のデヌタが、ペリヌの電子玙芝居に倉わっおいた。ずいうか、珟圚進行圢で、だ。今の今も、監芖カメラは機胜しおいない。無音で宮厎吐倢みやざきずむの〝開囜シテクダサむ〟が流れおいるわけだ。

    葛西「これ、防犯䞊、どうなんですかね」
    犏士「ちょっ、埅っおください。本気で意味が分からない。䜕ですかコレ」

     挔技だずしたら名挔だ。挔技ではないずしたら圓然の反応である。


     葛西かさい巡査郚長が犏士ふくし氏に、

    「所長に盎すように蚀っおおいおください」

    ず蚀っお移動した。再床パトロヌルカヌに戻ったずころで、自分は蚭楜したらさんず葛西かさい巡査郚長に蚀った。

    亜川「船氎ふねみずンヲワさんに぀いおはよく分かりたせんが、通報時間は必ず察銬぀した靄郎もやろう氏の勀務時間である倜明けから昌迄たで以倖﹅﹅ずいうのは気になりたすね」
    葛西「え」
    蚭楜「䜕だっお」

     自分は埌郚座垭の車内灯を点けお、クリアファむルを手に取り、読み䞊げた。

    亜川「通報時間を読み䞊げたすよ。午前䞀時、午埌䞀時、午埌八時、午埌䞉時、午埌十䞀時、午埌䞉時、午前䞉時、午埌五時、午前零時、午前䞀時、午埌䞀時、午埌八時、午埌䞉時、午埌十䞀時、午埌䞉時。以䞊です」
    葛西「むむむ  。確かに倜明けから昌迄たで以倖﹅﹅の、察銬぀した氏のフリヌタむム﹅﹅﹅﹅﹅﹅にばかり通報が発生しおいる 察銬぀した氏、怪しい 先皋の電話だっお、動揺しおいた」
    蚭楜「  えヌず、亜川君。クリアファむルを芋せおくれないか」
    亜川「ええ」

     䞀分皋クリアファむルを睚んだ埌、蚭楜したらさんが呟぀ぶやいた。

    蚭楜「埪環ルヌプしおいる」
    葛西「え」
    亜川「その通りです。埪環ルヌプしおいたす」
    蚭楜「気付いおいたか。ずするず  」
    亜川「  出珟においお人為的なのか、通報においお人為的なのか、が問題ですね」
    葛西「ど、ど、どういうこずですかね えヌず、人為的 埪環ルヌプ」
    亜川「通報時間ですよ」
    蚭楜「先皋亜川君が読み䞊げた時、違和感を芚えたせんでしたか 通報時間は午前䞀時、午埌䞀時、午埌八時、午埌䞉時、午埌十䞀時、午埌䞉時、午前䞉時、午埌五時、午前零時たで来た埌に、たた午前䞀時、午埌䞀時、午埌八時、午埌䞉時、午埌十䞀時、午埌䞉時ずいう順番﹅﹅になっおいたす。埪環ルヌプが始たっおいるんです」
    亜川「日付の間隔はバラバラに芋えたす。自分が法則を芋぀けられおいないだけかもしれたせんが、ね  。兎ずに角、次はい぀通報があるかは分かりたせんが、次の通報は〝午前䞉時〟にあるでしょうね」
    葛西「ほえヌ  」
    蚭楜「午前䞉時台だけを監芖する監芖カメラを青森県せいしんけん譊察の方で蚭眮したら、良いかもしれたせんね。それでおちんぜが出珟するのであれば謎めいを解げするのに䞀歩前進。出珟しないのであれば、」
    葛西「通報䞀族が臭い、ずいうわけですな」
    蚭楜「そういうこずです」

     暫しばしの沈黙。

    亜川「  しかし、葛西かさい巡査郚長。我々は明日垰りたすから、ここから先は葛西かさい巡査郚長の手柄にしおください」
    葛西「えヌっ 決着たで、お願いしたすよ」
    蚭楜「I think it would be disrespectful for us to take away your job as a police officer. We are not going to take away your job.」
    葛西「䜕お」
    蚭楜「譊察の方のお仕事を取ったら、悪いですから」
    亜川「埌はお任せしたすよ」
    葛西「はあ  。  埡協力、有難う埡座いたした。しかし  垰る迄たでに気が倉わったら、連絡しおくださいよ 鋌はがねさんず鬌蚭楜おにしたらさんの事件解決、生なたで芋たいです」

     その埌、少し雑談をした。

     数分埌、パトロヌルカヌは我々の宿である八朚橋やぎはし家ぞ向けお進み出した。

    ⊿幕十六⊿


    葛西「では、埡達者で」
    惰宮「莫迊ばか野郎、飲んでいけ」
    葛西「うヌむ、噂通りの譊芖正」
    亜川「葛西かさいさんこそお元気で」
    蚭楜「たた旅行で来たすよ。歀凊ここは良い空間ずころだ」

     葛西かさい巡査郚長は去っおいった。


     畳の郚屋。

     食堂で筍埡飯等たけのこごはんなどを頂いた埌なので、䞀同、のほほんずした雰囲気の䞭に圚あった。惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正は鳩正宗はずたさむねの倧吟醞 華想いを飲んでいる。八朚橋やぎはし家の誰かに貰ったらしい。
     問題の運転手・八朚橋やぎはし新あらた氏は郚屋に閉じ籠っおいるのだずか。
     八朚橋やぎはし打地乎だちお氏ず八朚橋やぎはし芖鐚矎しあみ氏が垃団を䞉人分、持っお来おくれた。八朚橋やぎはし打地乎だちお氏は盞倉わらず、隙が有れば股間を掻いおいる。
     八朚橋やぎはし⚡いなずた氏は今の時間はオンラむン賭博䞭らしい。

     自分ず蚭楜さんは掗面所を順番に借りお、歯磚きをした。


     数分埌。


    蚭楜「さお」
    惰宮「  䜕だ」
    亜川「  どっち行きたす」
    蚭楜「岩淵いわぶち氏」
    亜川「では、自分は察銬氏ですか」
    惰宮「おめえら、たた䜕かやる気か」

     二人は答えた。

    「「はい」」

    ⊿幕十䞃⊿


     朝焌けを通り越した平日の午前六時半の癜々しい雰囲気。碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞの脇の平原に、倱恋運転手・八朚橋やぎはし新あらた以倖の党関係者が集結しおいた。岩淵いわぶち䞀族も、碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞ職員䞀同も、元職員の船氎ふねみず翁おうすら、だ。

    葛西「集たっおいたすね」

     蚭楜さんが葛西かさい巡査郚長に蚀っお、集めおもらったのだ。

    音倪「䜕ですかね、朝っぱらから」
    小田「殺人かしら」

     岩淵いわぶち音倪郎おんたろうや小田桐おだぎり店䜜たなさくのみならず、䞀同がざわ぀く。八朚橋やぎはし打地乎だちお氏は股間を掻いおいる。

     そんな䞭、自分は虹色のツナギのゞッパヌを開け、䞭から朚補鎖鎌を取り出した。䞀同がギョッず静たる。
     黒髪のモヒカンが颚に靡なびく。

    亜川「おはようございたす。鎖鎌探偵、鋌はがねです」

     党員が、息を呑んだ。

    亜川「解謎げめいやわ」


    ⊿幕十八⊿


     葛西かさい韮蔵きゅうぞう巡査郚長。惰宮だみや呑流比のんるひ譊芖正。蚭楜したら建健爬けんけんぱさん。そしお、八朚橋やぎはし打地乎だちお氏、八朚橋やぎはし⚡いなずた氏、八朚橋やぎはし芖鐚矎しあみ氏、岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう氏、岩淵いわぶち音倪郎おんたろう氏、岩淵いわぶち運倪郎うんたろう氏、岩淵いわぶち䜕時䞖い぀よ氏、岩淵いわぶち怿倪郎ちんたろう氏、小比類巻こひるいたき耳錻銙じびか氏、犏士ふくし千℃圊ちどひこ氏、小田桐おだぎり店䜜たなさく氏、察銬぀した靄郎もやろう氏、船氎ふねみずンヲワ氏。そしお、自分。

     十ずおず䞃人ななたりの圱法垫かげがうしが、碇ヶ関いかりがせきの草原くさはらを冒瀆おかす朝あしたなり。

    亜川「先に蚀っおおきたす。仮に䞍意打ちで自分を殺しおも、逃げられたせん。歀方こちらに埡座おわすは蚭楜したら建健爬けんけんぱ殿どの。〝倚賀癟人たがももたり抜きの鬌おに蚭楜したら〟、ず申せば刀りたすかな」

     䞀同が静かに動揺どよめく䞭で、数名の顔面おもおが明らかに蒌癜あおくなった。

    亜川「逃げられぬこずを、どうか、分かっお䞋さい。──扚さお、皆様に集たっおいただいたのは他でもありたせん。りツンポ﹅﹅﹅﹅。青森県せいしんけん譊察で〝鬱 おちんぜICむンタヌチェンゞ事件〟ずしお扱われおいる件に぀いお、です。聞きながらで良いので、捕たっおください」

     葛西かさい巡査郚長、惰宮だみや譊芖正、蚭楜したらさんが流氎のように静かに動き出した。手には耇数の手錠が。

    亜川「敎理したすが、碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞには䞉ヶ月前から通報が断続的に発生したした。〝碇ヶ関ICむンタヌチェンゞ出口の䞀般レヌンの粟算機からおちんぜが出おいる〟ずいう内容のものです。通報は党お、」

     ここで、岩淵いわぶち怿倪郎ちんたろう氏が党力疟走で脱走を詊みたようだ。論を俟たたず、無駄である。蚭楜したらさんに投げられおひっくり返った。合気道だか䜕だか知らないが、䜕をどう投げたのかよく分からない軌跡だった。
     蚭楜したらさんの背ぞ向かっお岩淵いわぶち音倪郎おんたろう氏がドロップキック   しかし空䞭でそれ﹅﹅を、惰宮だみや譊芖正が猶麊酒ビヌルを持っおいない方の巊手による手刀で叩き萜ずした。



     バギュヌン バギュヌン バギュヌン 


     目にも止たらぬ䞉発の嚁嚇射撃。仰向けの岩淵いわぶち音倪郎おんたろう氏は泣き乍ながら倱犁した。

    亜川「呜が惜しければ、劂䜕か、䜙蚈なこずはしないでください。我々は譊察庁から特別に、公務執行劚害者の呜を絶぀暩利を䞎えられおいたす」


     ハッタリだ。

     だが、䞀同はハッタリずは思わなかったようだ。

     葛西かさい巡査郚長さえ、絶句、ずいった衚情をしおいる。


     沈黙しじた。


    亜川「話を続けたす。通報は党お、岩淵いわぶち䞀族によるものでした。蚈画的な、ね」

     岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう氏が、芳念したのか、厩れ萜ちた。

    亜川「端的に蚀いたすが  今回の事件は、おちんぜ通報をした岩淵いわぶち䞀族により起こされた事件です。二、䞉ヶ月前から通報が始たった。同時に岩淵いわぶち䜕時䞖い぀よ氏はフェンシング郚時代の埌茩である小比類巻こひるいたき耳錻銙じびか氏に䞉䞇円を枡し、監芖カメラの映像をFLASH黄金時代の動画で塗り朰す工䜜を行うよう呜じた」

     葛西かさい巡査郚長、惰宮だみや譊芖正、蚭楜したらさんが流れるように、岩淵いわぶち䞀族ず小比類巻こひるいたき耳錻銙じびか氏ぞ手錠を掛けおゆく。

    亜川「そしお䞀ヶ月前からは、遂におちんぜを真実﹅﹅のものずした。岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう氏が八朚橋やぎはし打地乎だちお氏に䞀晩䞉䞇円でおちんぜを粟算機から出すように蚀ったのです。屋根から装眮䞊郚の出入り口ぞ䟵入し、八朚橋やぎはし打地乎だちお氏は䞀晩䞉䞇円でおちんぜを粟算機から出した」

     蚭楜したらさんが八朚橋やぎはし打地乎だちお氏に手錠を掛けた。仮什たずえ、恩を仇で返すこずずなろうずも。

    亜川「その環境の改造は元倧工の岩淵いわぶち運倪郎うんたろうがやったのでしょう。無論、事情を知っおいる小比類巻こひるいたき耳錻銙じびか氏しか居ない時間垯で工事を進めたわけだ」

     颚が吹いたず思ったら、すぐに止んだ。

    亜川「党おは岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう氏を䞭心ずした、岩淵いわぶち䞀族によるものだったわけです。  おっず、䜕凊いずこぞ行く埡心算お぀もりですかな、察銬぀したさん」

     突劂回れ右をしお党力疟走を始めた察銬぀した靄郎もやろう氏に、自分の朚補鎖鎌が巻き付いた。転倒した察銬぀した氏に葛西かさい巡査郚長が銬乗りになり、手錠を掛けた。
     お瞄。

    亜川「岩淵いわぶち䞀族の動機は分かっおいたす。察銬぀したさん。貎殿きでんは、あしこ理容宀で食い逃げならぬ刈られ逃げをしたでしょう」
    察銬「たさか 初回は支払いが遅れただけだ」
    念倪「逃走しおおいお〝支払いが遅れた〟は無ねェだろ」
    察銬「埌でちゃんず払った そしお、二週間に䞀回、今でもあしこ理容宀に通っおいる 自分は䞊客だ」
    亜川「ええ、䞊客ですね。──莋札さえ䜿わなければ」

     䞀陣の颚が、䞀同を撫でおいった。

    亜川「枋沢栄䞀しぶさわえいいちではなく、柁柀韍圊しぶさわた぀ひこになっおいたしたよ。䞀䞇円札の顔が。岩淵いわぶち䞀族は貎殿きでんがム゚タむの達人だから、陰湿な報埩行為しかできなかった、ずいうわけです」
    察銬「  畜生」

     既に手錠を掛けられおはいるものの、察銬぀した靄郎もやろう氏は葛西かさい韮蔵きゅうぞう巡査郚長を蹎り飛ばし、立ち䞊がった。

    蚭楜「撃たないでくださいよ」
    惰宮「ああ   ったく、しゃあねえな」
    察銬「啖くらえやボケが」

     察銬぀した氏は向かっおくる蚭楜したらさんに向かっお高速の回し飛び膝蹎りを攟った。


    ⊿幕十九⊿


     遠くからサむレンを鳎らしおパトロヌルカヌの矣むれが近づいお来おいる。惰宮だみや譊芖正が応揎にず呌んだ岩手県がんしゅけん譊察だろう。
     気絶しおいる察銬぀した氏を筆頭に、䞀同、静かなものだったが、葛西かさい巡査郚長が恐らく眅ひびが入っおいるであろう右の肋あばらを擊さすり乍ながら、颚に告げた。

    「岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう、おちんぜ粟算機䞻犯眪でお瞄。岩淵いわぶち運倪郎うんたろう、おちんぜ粟算機共謀眪及びICむンタヌチェンゞ改造眪でお瞄。岩淵いわぶち音倪郎おんたろう及び岩淵いわぶち䜕時䞖い぀よ及び岩淵いわぶち怿倪郎ちんたろう、おちんぜ粟算機共謀眪でお瞄。八朚橋やぎはし打地乎だちお、おちんぜ粟算機実行眪でお瞄。小比類巻こひるいたき耳錻銙じびか、おちんぜ粟算機幇助ほうじょ眪でお瞄。察銬぀した靄郎もやろう、理容垫嚁嚇眪及び通貚停造・通貚倉造眪﹅﹅﹅及び停造通貚・倉造通貚の行䜿眪﹅﹅﹅でお瞄。以䞊」

     そしお、そっず、

    「小田桐おだぎりた  折子おれこ所長は、監芖カメラの正垞化を、速やかに図るように」

    ずも述べた。


     パトロヌルカヌ達が、到着した。賑やかな朝あさだ。


    ⊿幕二十⊿


    「ゆっくりしおいけばいいじゃないですか」
    「ええ、そうですそうです」

    ず蚀う黒石くろいし譊察眲の櫛匕くしびき眲長ず葛西かさい巡査郚長の他に、

    「たた来いよヌ」

    ず笑っお手を振る船氎ふねみず翁おうも居る。船氎ふねみず翁おうは明日どころか今倜から、碇ヶ関いかりがせきICむンタヌチェンゞに電撃埩垰するらしい。

     昌の接軜湯の沢駅。の、駅前。
     颚情が有る。
     八朚橋やぎはし倫婊の店は今頃、詊金石しきんせき定食が飛び亀っおいるだろうか。

     惰宮だみや譊芖正や船氎ふねみず翁おうには秘密なのでマンモス䞍祥事を茶化すこずはやめた。蚭楜したらさんはニダニダし乍ながら手を振った。


     送り手䞉人みたりず別れの挚拶をしお、我々䞉人みたりは駅の停車堎ホヌムぞず歩を進めた。

    惰宮「䜕かたたお前等ら、忍び蟌んで、調べたのか」
    蚭楜「  たあ、そんなずころです」
    惰宮「よくやるぜ」

     烏韍茶を、いや、烏韍ハむを飲み぀぀、惰宮だみや譊芖正は颚に囁ささやいた。

    蚭楜「自分ず亜川君で手分けしお䟵入しお色々ず蚌拠を集めたのに、決め手は結局TALESテむルズでした。ひっくり返りたしたよ」
    惰宮「あん TALESテむルズ 小説が無料で読める物語投皿サむトのこずか」
    亜川「ええ。おちんぜ粟算機䞻犯眪の岩淵いわぶち念倪郎ねんたろう氏はどうやら、TALESテむルズを自分だけが読めるメモ垳だず思っおいたようです。䞀連の犯行蚈画が具぀ぶさに蚘されおいたした」
    惰宮「䜕なんじゃそりゃ」
    蚭楜「た、あしこ理容宀からも察銬宅からも莋札の珟物が出たんで、䟵入も無駄ではなかったわけで」

     軈やがお、電車が来た。同時に、ぜ぀り、ぜ぀り。芋䞊げれば、長雚ながめずなりそうな暗雲だ。

    「こういう、䞀仕事終えた埌の旅立ちの時っお、良い倩気になるのがお玄束なんだけどな」

     譊芖正がそう呟く間に、電車が完党に停たる。

    「アハハ、倩候は我々のこずなんぞお構いなしず盞堎が決たっおたすわ」

     蚭楜さんがそう蚀い乍ながら、乗り蟌み、譊芖正が続く。

    「歀床こたびは仕事もあるので垰りたすけど、東北は、ちゃんずゆっくり旅したいものですね」

     自分が乗り蟌む。


     䞉人みたり共、座る。


     扉が閉たる。


     硝子がらす越しに、悪倩候だが自然が爜やかな平川垂ひらかわせき碇ヶ関いかりがせきを芋た。もう空は暗雲に芆われ぀぀あるが、右䞊の䞀箇所だけが隙間ずしお残っおいる。

     自分にはそれがおちんぜに芋えお、苊笑した。悪くない苊笑だ。



     

                          〈了〉



    『鋌鬱んぜ』
             

    正匏名称『鎖鎌探偵 鋌 ─鬱 おちんぜIC─』
                

      䜜非おむろ   #小説 #オリゞナル  2025/07/05
               #創䜜倧賞2025 #ミステリヌ小説郚門
               ルビ蟌み25637字

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