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    <title>園田のり</title>
    <description>今までアイデア状態だったストーリーを、少しずつ作品に変えています。

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    <copyright>園田のり</copyright>
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    <lastBuildDate>Thu, 08 Oct 2026 15:10:43 +0900</lastBuildDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜エピローグ　</title>
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      <description><![CDATA[<p name="78c571b3-9b3e-48da-ba04-6e64c326acd5" id="78c571b3-9b3e-48da-ba04-6e64c326acd5">十月。みあれ祭の朝である。<br>北斗の水汲み公園の砂浜には、まだ露が残っていた。</p><p name="c2a21f08-a5de-417f-93d6-e5d7b28c855d" id="c2a21f08-a5de-417f-93d6-e5d7b28c855d">沖の方にはのぼりを立てた船団が列をなし、静かに、しかし誇らしく湾を滑っていく。<br>太鼓の音が遅れて陸に届き、見物の人々の胸を震わせた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n8a8413d7ec60'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 26 May 2026 16:50:00 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第9章③「風は未来へ」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="358f6d8b-ef0e-4faf-9fd9-5e7e0ce26b75" id="358f6d8b-ef0e-4faf-9fd9-5e7e0ce26b75">舟団が宗像の浜に戻ったとき、そこにいた者たちは息をのんだ。<br>七十余の若者たち―<br>日に焼けた頬、潮に鍛えられた腕。瞳には大海を越えた経験の光が宿っていた。<br>彼らは同じ宗像の人間でありながら、どこか遠い国の武人のようにも見えた。<br><br>浜辺に真っ先に駆け寄ったのは、はまみときなりであった。<br>二人は涙をあふれさせ、声を震わせて叫んだ。<br>「東風！　なんと誇らしいことか！」<br>その声は潮風に乗って浜にこだまし、人々の胸を揺さぶった。<br><br>老若男女が浜へと走り寄る。<br>母は息子を抱きしめ、子は父の腰にしがみついた。<br>誰もが泣き、笑い、名を呼び合った。<br>日々の祈りが通じたと、老女は泣きながら浜に腰を抜かしたように座り込んだ。<br>海に持って行かれたと思っていた命が、いまここに戻っている。<br>潮の香と涙が入り交じり、浜は祈りの光に包まれた。<br><br>宮司は群衆の前に進み出た。<br>その顔には深い感慨と安堵が刻まれていた。<br>「この者らこそ、神々が選び守られた勇者である。」<br>そう言い切った声は震えていたが、そこには確かな誇りがあった。<br>――七十五人もの命を海に送り出した。その賭けが、今こうして実を結んだのだ。<br><br>舟団員は宗像の神々へと参進した。<br>沖ノ島、大島、地島――航路を見守った神々への感謝を、宮司の祝詞とともに捧げた。<br>社殿の前で東風が祈りを捧げると、風が衣の裾を揺らし、陽光が彼女の頬を照らした。<br>その姿に、人々は見入った。<br><br>そのとき、鎮国寺から春日の行者が現れた。<br>かつて菅原道真と語らった日の記憶が、彼の胸に蘇った。<br><br>春日の行者は、風の音に耳を傾けた。<br>この風こそ、曼荼羅に命を吹き込む息――。<br><br>「理は形ではなく、息であったか……」<br>頬を撫でた風が、答えるように温かかった。<br><br>その夜、浜は灯に照らされて祭りのように明るかった。<br>舟団の若者たちは、見聞きした異国の話を次々に語った。<br>「向こうでは、豆を砕き、白く柔らかな食べ物にしていた。干し魚や麦飯とは違い、口の中で溶けるような味だった」<br>「豆腐というらしい。豆から、あんな食べ物ができるとはな。」<br>宮司は驚き、東風は静かに頷いた。<br>「宗像の豆でも、工夫すればできるかもしれませんね。病の人や子どもにも食べやすいでしょう。」<br>東風は、掌に豆腐を載せているかのように静かに見つめた。</p><p name="c16d4b38-7bb6-4d03-bcda-a2a2b6676a40" id="c16d4b38-7bb6-4d03-bcda-a2a2b6676a40">柔らかな白が、灯火の下で小さく揺れていた。<br><br>別の若者が腰巾着を探り、白くふわりとしたものを取り出した。<br>「市でアワビや干し魚と引き換えに手に入れた。花が咲いて実ができ、枯れたと思ったら、殻を破って白い綿が出てくる――それを糸にして布を織るのだという」<br>村人たちは息をのんだ。柔らかく、白く、しかも丈夫――村人たちは、その白い綿を何度も指で確かめていた。<br>「これが木綿か……」<br>宮司は掌の上でその白を見つめた。<br><br><br>「神は、海の果てからこの地へ、新しい糸を授けられたのだろう」<br>行者が静かに頷いた。<br>「この地を守る者と、海を拓く者。その二つが重なってこそ、国は栄える」<br><br>はまみときなりは東風の両脇に立ち、笑みを浮かべた。<br>「海に潜る我らも、この潮の流れの一部だよ」<br>「東風、あんたも潮の匂いが似合うようになったね｣<br>三人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。<br><br>夜、東風と真澄は浜辺に立った。<br>星々が冴え、潮風が二人の髪を撫でた。<br>「必ず、もう一度海を渡ろう。」<br>真澄の声に、東風は静かに頷いた。<br><br>波が寄せ、風が頬を撫でた。<br>遠い空の彼方――<br>北斗の光が、静かに海の向こうを指していた。<br>やがて、夜明けの風が大地に吹いた。<br><br><br>人々は彼を怨霊と呼んだ。<br><br>東風は海を見つめた。<br>夜明けの風が、再び海を渡った。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n164eb4ad130c'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 26 May 2026 13:40:19 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第9章②「帰路の海」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1e2c83f3-1598-4581-adcf-e06759266063" id="1e2c83f3-1598-4581-adcf-e06759266063"><strong>Ⅰ　出航 ― 見送る声</strong><br>夜明けの港に、舟団の帆が張られた。<br>博多の豪商・津屋弥兵衛の手配により、舟団は必要な食料と水を積み込み、安全な出航を許された。<br>村人たちは岸辺に立ち、見慣れぬ漂着者たちを、いまや仲間のように見送っていた。<br>「必ず戻って来いよ！」<br>誰かの声に、舟団の者たちは手を振って応えた。<br>岸には、朝餉の香を運ぶ潮風が流れていた。<br>女たちは湯気の立つ鍋を囲み、子どもたちは裸足で波打ち際を走り回る。<br>旅立ちの静けさの中に、どこか祭りのような明るさがあった。<br><br>弥兵衛は東風の前に歩み寄り、腰の袋から小さな包みを取り出した。<br>「これは博多藻塩だ。<br>我らの浜で汲んだ潮を、幾度も陽に晒して結んだ結晶よ。<br>おぬしらが帰り着いたなら、この味をもう一度確かめてくれ。」<br>東風は深く頭を下げ、静かにそれを受け取った。<br>――海の塩は、命の証。白い塩は、朝日に小さく輝いていた。</p><p name="7b50271c-cae8-4c4b-9b6e-06c2249e0bcb" id="7b50271c-cae8-4c4b-9b6e-06c2249e0bcb">舟に乗り込む直前、光（てる）は包みを開いた。<br>中には、たくさんの煮卵が並んでいた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n598956d86331'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 26 May 2026 13:39:00 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第9章①「帰国の決意」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="595fd755-4e70-4f2c-ae21-44e3b32234a8" id="595fd755-4e70-4f2c-ae21-44e3b32234a8"><strong>Ⅰ　未来を抱いて</strong><br>舟団の滞在は、学びと驚きに満ちていた。だが、日々市場を歩くたびに、海人たちの心は次第に落ち着かなくなっていった。　　　　　　　　　　　　　<br>「この綿の実を持ち帰れば、あの風の強い丘でも育つだろうか」<br>「豆を醤にするやり方を、村でも試してみたい」<br>市で買い求める者もいれば、商人に頼み、作り方を絵にしてもらう者もいた。　<br>それぞれが自分の見た未来を胸に抱いていた。<br><br><br>学びきるには時間が足りない――それでも、早く帰って試したいという気持ちが勝った。<br>　　<br>東風は、市場を歩く海人たちの背を静かに見つめていた。</p><p name="60ba5749-723e-48ce-9cd9-a1f1ce8b6cc4" id="60ba5749-723e-48ce-9cd9-a1f1ce8b6cc4">風が吹き抜け、市場の布がはためいた。<br>その音は、まるで帰路を告げる合図のように彼らの胸を震わせた。<br><br><strong>Ⅱ　商人との約定</strong><br>その頃、博多の豪商――津屋弥兵衛（つや・やへえ）は、舟団と役所の間を取り持っていた。弥兵衛は若いころから、幾度も大陸へ渡った。港を出るときの潮の匂い、異国の言葉のざわめき、帰れぬ者を見送る夜の灯――それらを胸に刻み、今日まで商いを続けてきた男であった。<br>「新しい道を確かなものとするならば、私も力を貸そう」　　　　　　　　　　<br>弥兵衛はそう語り、舟団の安全な帰国を約した。　　　　　　　　　　　　　　<br><br>彼が渡した木箱の中身を見たとき、東風は息をのんだ。香辛料のほかに、宗像にはまだ知られぬ紙と、細い筆、そして一通の書状が入っていた。<br>「この印を持って行きなさい。いつか正式な交易が許される日が来る。その時、あなた方が最初の使者になる」<br>「最初に……？」東風の問いに、弥兵衛は静かにうなずいた。　　　　　　<br>「いまは漂流者として迎えられたが、いずれ海は再び人を結ぶ。あなた方がその先駆けとなるのです。国の許しを待つよりも、先に人の信を築くことが何より大事だ」<br>東風はその言葉に、父の姿を重ねた。父もこんな商人と出会っていたのだろうか。<br><br>「わたしたちは必ず戻ります。その時、再びこの港でお会いできるでしょうか」<br>弥兵衛は微笑んだ。　<br>「海の約定に“終わり”はありません。風が吹けば、潮が満ちれば、また出会える。それが、海に生きる者の掟です」<br>弥兵衛はそう言って建物の一角を見て手招きをした。<br>男が静かに現れた。<br>東風と真澄は驚いた。その顔は……、一度は東風の命を狙った男だった。<br>「この男、国ではもう仕える主はいないというのでな。私の元でこの中国の雑用を担ってもらうことにしたのだよ。この国で私に会えずとも、この男がしっかりと案内が出来るはずじゃ。」<br>男は深く頭を下げた。<br>東風は、男の顔を静かに見つめた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n53275c9cca64'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Tue, 26 May 2026 13:37:50 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/nolly_note/n/n53275c9cca64</link>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第8章⑤「揺れる均衡」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="51e067f3-2c0e-4b4f-b448-84f1a65002b7" id="51e067f3-2c0e-4b4f-b448-84f1a65002b7"><strong>Ⅰ　限られた自由の中で</strong><br>舟団の滞在は続いた。朝ごとに役人が浜に現れ、名簿を確かめ、舟の帆を点検した。<br>東風はそのたびに、視線の先で微笑むよう努めた。<br>冷たい視線の横を、海風だけが自由に静かに吹き抜けていった。<br><br>役所からはさらなる情報提供の圧力がかかり、食料と庇護を受ける代わりに、半ば監視下に置かれていた。<br><br>荷の整理を名目に港の者たちと笑顔を交わし、物の流れを覚える者も出てきた。<br>「海の上と同じだな」と真澄が小声で言った。<br>「潮に逆らわず、流れに乗るほうが遠くへ行ける。」<br>東風は頷いた。<br><br><strong>Ⅱ　驚きと学びの芽吹き</strong><br>市場に行くことも許された。目の保養にと気軽に出かけたが、驚くことが多くて非常に刺激的だった。<br>杭州の市場には、日本ではまだ目にしたことのない品々が並び、船員たちはその光景に息を呑んだ。<br>乾いた果実、香辛料、金糸を織り込んだ布、銅の器、どれもが鮮やかで、匂い立つような異国の気配を放っていた。<br>その中に、南の海から運ばれたという白い花綿があった。光を含んでやわらかく、まるで雲を掌に乗せたかのようだった。<br>「これが布になるのか……」彼らは思わず声をもらした。<br>商人は笑いながら言った。<br>「これは天竺からの贈り物、風に運ばれた宝です。」<br>｢……風も、物を運ぶと言われましたか？｣<br>東風は掌に綿をのせ、その軽さに息を詰めた。<br><br>港の滞在が長くなるにつれ、海人たちはじっとしてはいられなくなった。<br>ある日、港の役人の許しを得て、若者たちが魚や貝の干物を持って市場へ出た。<br>「替えてくれるだろうか」と半信半疑だったが、果物商の男が笑って干物を手に取り、銅銭を数枚差し出した。<br>「これは……。売れたということか。」<br>若者たちは目を丸くした。若者たちは、銅銭を何度も裏返して見つめていた。<br>真澄は銅銭を手に取り、静かに言った。<br>「銭の種類で決まるのか。これは“信”を形にしたものだ。人と人とが約束を交わすしるし。」　<br><br>干物を見た商家の妻が「海の香りがするわ」と微笑み、東風は思わず答えた。<br>「潮と太陽で干したものです。宗像の海では、これが冬の糧になります。」<br>女たちは頷きながら、籠の中から果物を取り出した。<br>「これは南の果。貴女の国には無いでしょう」<br>東風は戸惑いながらも受け取り、かじった。<br>甘酸っぱい汁が口に広がる。<br>「太陽の味がする」と言うと、女たちは嬉しそうに笑った。<br><br>履き物も全く違う。裸足で育った海人たちは、靴を履く人々の姿に目を丸くし、自分たちこそ異国の者であることを思い知らされた。<br>やがて一人の若い海人が、露店の前に並ぶ履物をじっと見つめた。<br>「これ、履いてみてもいいか？」と問うと、店の女は笑って頷いた。<br>男は足を通した瞬間、ぎこちなく立ち上がり――次の刹那、見事につまずいた。<br>仲間たちは腹を抱えて笑い、彼は顔を赤らめながらも、どこか誇らしげだった。<br>「どうだ、これが大陸の“足の舟”か」<br>「お前、まるで役人みたいだ！」<br>そう言って皆が茶化すと、町の子どもたちまで集まり、拍手が起こった。<br>他の者たちも帽子や衣の飾りを試しては、笑い声が響いていた。<br><br><strong>Ⅲ　帰還の約定</strong><br>博多の豪商は、静かに東風を見ていた。<br>津屋弥兵衛――その名を知る者は、まだ少ない。</p><p name="5c8cc8b1-a557-40a0-97f1-fd417f668793" id="5c8cc8b1-a557-40a0-97f1-fd417f668793">東風と真澄は、帰国の日を定めることにした。<br>｢帰りの支度はこちらで整えましょう｣<br>津屋の申し出に、東風は素直に礼を言った。<br>｢有り難うございます｣<br>｢そのかわり……｣<br>意味ありげな表情で切り出そうとした津屋だったが、東風がすぐに津屋の一語をとって切り出した。<br>｢そのかわり、無事に帰港できましたら、公開できるこの度の航海の記録を仕上げてお渡しします。ご遠慮なさらず｣</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n0b33a6954c30'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 25 May 2026 17:23:37 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第8章④「交渉の影」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="1f271967-380f-48d7-ab80-63c74e48f60a" id="1f271967-380f-48d7-ab80-63c74e48f60a"><strong>Ⅰ　利の匂い</strong><br>舟団の滞在が続くにつれ、彼らの存在は村だけでなく周辺の港にも知られるようになった。<br>短期間で大陸に至ったという噂は、商人たちの心を揺さぶった。<br>交易の利を得るため、新しい海路の情報を求める者が後を絶たなかった。<br><br>日が傾くころ、港の小路には香辛料の匂いが漂っていた。<br>焼かれた魚の煙とともに、異国の噂もまた風に乗って流れていく。<br>「潮の裏を読んで渡ったらしい」<br>酒をあおる商人たちの声が、浜の石垣にこだました。<br><br>東風は、井戸端に集まる女たちの囁きを聞きながら、桶の水面を見つめた。<br>澄んだ水に映る自らの顔が、わずかに揺らめく。<br><br>真澄は、そんな彼女の横顔を見て静かに言った。<br>「人の噂は潮のようなものだ。放っておけば、やがて引いていく」<br>「けれど、利の匂いが混じれば、潮は濁る」<br>東風は小さく頷いた。<br><br>その夜、舟団の帆に当たる風が、微かに湿っていた。<br>港の通りには、夜になっても灯りが消えることがなかった。<br>屋台では湯気が立ちのぼり、通りを歩く人々の影が、幾重にも重なっていた。<br>宗像の浜では、日が落ちれば闇が支配した。<br>けれど、この国では夜が眠らぬ――その光景に、海人たちは息を呑んだ。<br>灯火が波に映り、まるで星が海に降りたように揺れていた。<br><br><strong>Ⅱ　疑念の眼</strong><br>やがて沿岸警備の役人から、再び役所への呼び出しがあった。<br><br>博多の豪商は、今回も彼らの側に立って同行した。<br><br>衙門の壁には、香の煙がうすく漂っていた。</p><p name="4cb1858d-f2a7-4520-a228-c77718123268" id="4cb1858d-f2a7-4520-a228-c77718123268">机の上で筆が滑るたび、乾いた音が小さく跳ねた。<br>役人のひとりが東風の袖を指し示した。<br>「その衣の文様、どこの織りか」<br>東風は、わずかに視線を伏せた。<br>金糸の光が袖口からこぼれ、薄明かりの中で淡く揺れた。<br>「母が、京で仕立てたものです。<br>博多から上った商人が持ってきた唐布を少しだけ……」<br>その声に、筆を握る手が止まった。<br><br>東風は、袖の奥で指を強く握った。<br>彼女の、わずかに震える指先を通訳の男が見逃さなかった。<br><br>「我らは海を渡ってきただけです｣<br><br>役人は一瞬、眉をひそめた。<br>「……言葉だけでは信じられぬ。漂着と称して密偵を送るのは、どこの国にもあることだ」<br>東風は静かに首を振った。<br>「ならば、海を見てください。この潮に逆らって来られる者などいません」<br><br>沈黙のあと、役人は小さく息をついた。<br>「――この女、風を知っておるな。」<br>その言葉に、真澄と東風がわずかに顔を見合わせた。<br><br>役人のひとりが鼻を鳴らし、筆を置いた。<br>「潮が道を示す？　風が言葉を持つとでも？」<br>その嘲りに、豪商が横から口を挟んだ。<br>「星と潮の理を知らぬ者には、信じ難いことでしょうな」<br>彼の言葉は柔らかだったが、眼は測るように光った。<br><br>東風は、まっすぐ役人を見返した。<br><br>取り調べが終わり、外に出た二人のあとを、通訳をしてくれた博多の商人が後を追ってきた。<br>「ひとつ、お尋ねしてもよろしいか。もしや貴女は道真公の姫君ではありますまいか。」<br>東風と真澄の背中に凍り付くような緊張が走った。<br>「ご安心を。私は追手ではありません」<br>津屋は笑った。<br>｢京の風向きも、すでに変わって折ります｣<br>｢……どうして、それを？｣</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n9c08b8ca4ab4'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 25 May 2026 17:22:02 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第8章③「滞在の日々」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="26300782-0f78-40e8-92e6-5a346bc00e75" id="26300782-0f78-40e8-92e6-5a346bc00e75">舟団の滞在が正式に許されると、村も漂着した浜も一斉に活気づいた。<br>修理の音と笑い声が、浜辺に絶え間なく響いた。<br>宗像の海人たちは、船の修理に取りかかり、村人の手伝いにも精を出した。本田丸のひときわ大きなかけ声は、周囲を笑い声で包んでいた。<br>幸い役所からの配給もあり、海人たちの食事のまかないに困ることはなかった。<br>光（てる）が中心になって竈を仕切り、村の女たちと並んで手を動かしている。<br>以前はただ驚くだけだった異国の料理も、いまはその手順を真似し、味を確かめ、学び取ろうとする余裕があった。<br>「この鍋、火のまわりが違うね。風の通りがうまい」<br>村の老人が頷く。<br>その言葉に東風は微笑んだ。<br>夜が更け、港のざわめきが潮に溶けていった。<br>東風は一日の終わりを静かに受け止めるように、海辺へ出た。<br>光も浜に出て、星を見上げながら呟いた。<br>「宗像の空も、ここも、同じ星が瞬いているのね」<br>東風は静かに頷いた。<br>｢でも、少し違う」<br>｢違う？｣<br>東風は空を指した。<br>｢父の星図と、同じに見えないところがある｣<br>光も目を凝らした。<br>｢私には、わからない｣<br>東風は少し笑った。<br></p><p name="46013be3-2341-411c-8ff1-df5310801907" id="46013be3-2341-411c-8ff1-df5310801907"><strong>Ⅰ　学びと模倣の時間</strong><br>日が高くなると、海人たちは港の倉へ招かれた。<br>船の傷んだ部材や、異国の工具を見せてもらい、互いの技を試し合う。<br><br>宗像の船匠は、港の職人に小さな壺を差し出した。<br>中には、松脂に灰を混ぜた粘りのある黒い膏が入っている。<br>「これを木の継ぎ目に詰めて乾かすと、水が入らぬ。<br>乾く時、風を通してやるのが肝心だ」<br>港の職人が目を見張った。<br>「我らは漆と麻布を重ねる。見栄えは良いが、剥がれると厄介でな」<br>「漆は高貴なもの。だが、油と灰はどこにでもある。」<br>その言葉に、港の人々は深く頷いた。<br>光は記録のため、木片に符号のような印を刻み、港の青年たちに見せた。　　　　　　やがて青年のひとりが、笑いながら筆を持ち、同じ印を描き返した。<br>港の青年は、何度もその印を描き直していた。<br>光は笑いながら、頷いた。<br><br><strong>Ⅱ　静かな夜の不穏</strong><br>滞在が長くなるにつれ、噂も静かに広がった。<br>「女が船を導いたらしい」</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n186fbbb61b8e'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 25 May 2026 17:19:43 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第8章②「承認」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="026098a4-7c80-454f-ae29-a7db3eb531f9" id="026098a4-7c80-454f-ae29-a7db3eb531f9"><strong>Ⅰ　乱世の港 <br></strong>910年。唐が滅びて三年、五代十国の動乱はなお続いていた。<br>しかし杭州の港は急速に整備が進み、南海の商人たちが往来し、博多へも盛んに来航していた。<br><br>港には、色鮮やかな帆布が林立していた。紅、藍、黄――どの帆にも見たことのない文様が踊り、朝の光を受けて海面に揺れていた。<br>それらは、苧麻に絹を織り交ぜた丈夫な布を南海の染料で染め上げたもので、陽をはらむたびに宝石のような光を返した。<br>香料の甘い匂いと焼き魚の煙が潮風に混じり、遠くからは荷を運ぶ牛車の軋む音が響く。<br><br>船上では裸足の男たちが声を張り上げ、巨大な壺や織物の束を縄で引き上げていた。<br>東風はその光景に目を奪われた。<br><br><strong>Ⅱ　取り調べ</strong><br>東風と真澄は、代表として沿岸の役所に連行された。<br>石畳の敷かれた広間は薄暗く、潮の匂いがかすかに漂っていた。<br><br>粗末ながらも厳格な衙門で、警備兵と書吏が列をなし、冷たい視線を投げていた。<br>真澄は一歩前に出て、東風を背にかばった。<br>「われらは、漂着の民にすぎません。戦を望むものではございません」<br>通訳の博多商人が言葉を選びながら伝える。<br>額に汗が滲み、声がわずかに震えていた。<br><br>問いが容赦なく続いた。<br>木簡を打つ音が響くたび、空気が張りつめていく。<br><br>その時、博多商人は一歩前に進み出て、低い声で告げた。<br>「彼らは、宗像沖ノ島の元から来た海人たちで、漂着者にすぎません。争いを望んではいません」<br>役人たちの眉がわずかに動いた。<br>沖ノ島――<br>誰かが小さく息を呑み、筆を持つ手が止まった。<br><br>東風は深く息を吸い、目を閉じた。<br>言葉を誤れば、すべてが終わる。<br>彼女は静かに顔を上げた。<br><br>「もしや、新しい海の道を知っているのではないか」<br>役人のひとりが声を張った。<br><br>博多商人がすぐさま口を開いた。<br>「いや、彼らは嵐に流され、命からがらここへ漂着したのです。<br>星や潮の加護に導かれた――と、そう申しております」<br><br>――やがて、条件が取り決められた。<br>舟団はこの地での滞在を許される。<br>その代わり、役所は航路に関する情報を逐次求める。<br><br><br><strong>Ⅲ　約定<br></strong>博多商人の仲介によって、舟団全員への食料と安全の保証、帰国の援助も約された。<br>書吏が筆を走らせ、文書が封ぜられる。<br>それは裁きではなく、ひとつの儀式のようだった。<br>沈黙のなか、香の煙が細く立ちのぼり、外では港の潮騒が絶え間なく続いていた。<br><br>港の夜明け、霧が晴れると、舟団の者たちは新しい日々を迎えた。<br><br>東風は港の少女たちが織る布を見て、指の動きの早さに驚いた。<br>「風を織るようですね」と言うと、少女は笑った。<br>光は薬草の市場に出向き、海辺でとれる塩草を見つけて真澄を呼んだ。<br>港から吹く潮風が、東風の髪を静かに揺らした。</p><p name="75150de6-aa3e-42d9-bdcb-7ad2e98acd36" id="75150de6-aa3e-42d9-bdcb-7ad2e98acd36"><br></p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n6f83293ae7df'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/47655556/profile_3a949b9c47827bb7fbe795dca0b63f17.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 25 May 2026 17:17:46 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第8章①「試される絆」</title>
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      <description><![CDATA[<h3 name="89b5d784-b8d4-48f8-8404-fe5a71af6086" id="89b5d784-b8d4-48f8-8404-fe5a71af6086">Ⅰ　小道</h3><p name="d8e89b11-e5ed-496f-835b-0280b41064db" id="d8e89b11-e5ed-496f-835b-0280b41064db">新しい集落での暮らしは、穏やかな日々をもたらした。<br>海人たちは船を住処にして貝や魚の漁をし、村人たちと物々交換した。穀物や水を分けてもらう分、畑を手伝い、水汲みを率先した。<br>獣道はやがて浜と村との往来から、木の枝を切り、雑草は踏み固められ、次第に小道ができていった。<br>東風はその小道を歩きながら、ふと立ち止まった。<br>足もとには見慣れぬ草花が咲き、薄紫の花弁が朝の潮風に揺れていた。<br>村の女たちはそれを摘み取り、籠に入れている。<br>香り高い草で、乾かして煮出せば熱を下げるのだという。<br>彼女たちは言葉の通じぬ東風に、手振りで使い方を教えてくれた。<br>何度も笑いながら伝えてくるうちに、東風も笑った。<br><br>だが、その安らぎに異変が起きた。<br></p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/nad07c2186b2f'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 25 May 2026 17:15:19 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第7章⑤「新しい絆」</title>
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      <description><![CDATA[<h3 name="9ddade89-6bc0-4c9e-9622-702a66bf6d6a" id="9ddade89-6bc0-4c9e-9622-702a66bf6d6a">Ⅰ　村から浜へ</h3><p name="efffbe42-0817-4ef8-9781-2af41eed5c1e" id="efffbe42-0817-4ef8-9781-2af41eed5c1e">夜明け、村の家々から薄い煙が立ちのぼっていた。<br>東風は真澄とともに、数人の村人を浜へ案内した。<br>「私たちの仲間が、そこにいるのです」<br><br>森を抜けると、潮風の匂いが戻ってきた。<br>浜では舟団の者たちが網を繕い、火を焚いて魚を炙っていた。<br>誰かが東風の姿を見つけ、思わず叫んだ。<br>「姫――！」<br>その声に、東風は足を止め、静かに首を振った。<br>東風は笑みを浮かべ、静かに頭を下げた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/nad9276cb198a'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/47655556/profile_3a949b9c47827bb7fbe795dca0b63f17.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 21 May 2026 20:58:02 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第7章④「はじめての交易」</title>
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      <description><![CDATA[<h3 name="7d8fbb98-9cd8-47f2-b593-96aca95129c5" id="7d8fbb98-9cd8-47f2-b593-96aca95129c5">Ⅰ　森の影――触れ合う眼差し</h3><p name="38f5574e-901f-46c0-9824-9b7c889b839f" id="38f5574e-901f-46c0-9824-9b7c889b839f">ここは集落の外れのようだ。<br>男たちはイノシシのような動物を棒につるし、二人がかりで担いでいた。<br>それを出迎えに来たのだろう、女や子どもたちが小道の先から集まってくる。<br>森から現れた人々は、なお警戒を解かぬまま舟団を取り囲んでいた。<br>槍の穂先が夕日を受けて赤く光り、緊張の空気が張りつめる。<br><br>真澄が背の荷から布と小刀を取り出し、ゆっくりと差し出した。<br>それは海を越えて持参した交易品であった。<br>現地の男はしばらくそれを見つめ、やがて慎重に受け取る。<br>海の者と陸の者。<br>誰も言葉を発さぬまま、互いの目を見ていた。<br><br>風の音と鳥の声だけが、森の間を渡っていった。<br></p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n1fafe82ca73f'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 21 May 2026 20:56:08 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第7章③「初めての邂逅」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="e512b0ff-404f-47dc-a36f-12ab98e81241" id="e512b0ff-404f-47dc-a36f-12ab98e81241"><strong>Ⅰ　森の香― 異国の樹々</strong><br>舟団の一部が砂浜に残り、舟を守った。<br>東風と真澄は数人の仲間と共に、森へと足を踏み入れた。<br>森に一歩足を踏み入れると、湿り気を帯びた風が肌にまとわりついた。<br>ふと見上げると、天を衝くような一本の巨木が立っていた。その皮目からは樟のような芳香が染み出している。<br><br>遠くの茂みで、小さな虫が金属の鈴を転がすように鳴いている。真澄がカネツキムシと呼んだ。その虫の声は、森の静けさをいっそう深くした。<br>「ここでは、風も別の言葉を話しているようだな」<br>真澄の声に、東風は黙って頷いた。<br><br><strong>Ⅱ　声なき鳥― 目覚める世界</strong><br>森はさらに深くなった。<br>枝葉のざわめきに混じって、聞き覚えのない声がした。人が言葉を投げかけたようにも響く、不思議な鳴き声。<br><br>湿地に光が差し込むと、群れをなした鳥たちが一斉に舞い降りた。赤い喉をもつ雉たちが、草の影を抜けながら羽根を広げている。<br><br>その中に、ひときわ大きく異彩を放つ影があった。<br>尾羽を扇のように広げ、緑と青と金が入り混じって光る――。<br>高い岩の上にとどまり、光を受けるたびに羽根を微かに震わせた。<br>「これがもしや孔雀か…。」<br>東風は息を呑み、ただその場に立ち尽くした。<br><br>仲間の一人が低くつぶやいた。<br>「ここは……ほんとうに人の住むところなのか」<br><br>森を抜け、真澄が地面を指さした。<br>小径に、踏みしめられた跡があった。<br><br>Ⅲ　人の影― 最初の出会い<br>さらに進むと、遠くの丘の向こうに薄い煙が立ち上るのが見えた。<br>舟団の心に緊張が走った。<br>人がいる――。<br>だが敵か味方か、誰も分からない。<br><br>やがて森の奥から、人影が現れた。<br>褐色の肌に、見慣れぬ布をまとい、長い槍を手にした男たち。<br>耳には貝の飾りが揺れ、胸元には木の実を編んだ首飾りが光っていた。<br>後ろには、驚きに目を見開いた女や子どもの姿も見える。<br>彼らもまた、不意に現れた見知らぬ人間を警戒していた。<br><br>沈黙が流れた。<br>風だけが、森を抜けて両者の間を渡っていった。<br>真澄が低く息を吐いた。<br>――退くか、進むか。<br><br>彼女は腰に残った紅の布に手を伸ばした。<br>布をとき、両手で差し出した。<br><br>｢わたしは敵ではありません」<br>紅の布が陽を受け、金糸の刺繍がかすかに光を返した。<br>その鮮やかさに、子どもが思わず小さく声をあげた。<br>若い女がその肩を抱き寄せながらも、視線を逸らさずに東風を見つめている。<br><br>言葉は通じない。<br>だが、その仕草にこめられた思いは真っ直ぐだった。<br>年長らしき男が槍を地に突き立て、ゆっくりと首を傾けた。</p><p name="fdd88318-a82d-431e-83ca-3a608ee65043" id="fdd88318-a82d-431e-83ca-3a608ee65043">その瞬間、張り詰めていた空気がわずかに緩んだ。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/na7b1cd0e60a5'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/47655556/profile_3a949b9c47827bb7fbe795dca0b63f17.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 21 May 2026 20:54:56 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/nolly_note/n/na7b1cd0e60a5</link>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第7章②「大地を踏む」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="20b4a2a8-df60-49a1-8f2d-02efde3a0c1e" id="20b4a2a8-df60-49a1-8f2d-02efde3a0c1e"><strong>Ⅰ　白波の道 ― 岩礁を越えて</strong><br>舟団は稜線を目指し、慎重に櫂を進めていた。<br>浅瀬と岩礁が複雑に入り組み、波がぶつかり合って白く砕ける。<br>舵を誤れば、舟は一瞬で砕かれるだろう。<br><br>東風は櫂を握る手の汗を感じながら、風の匂いを嗅いだ。<br>そこには潮の塩辛さと、かすかに湿った木の香りが混じっていた。<br>風向きが変わる――<br>「真澄、風が少し南に」<br>彼は頷き、帆の角度をわずかに変えた。<br>舟は滑るように進む。波頭が高くなり、すぐ崩れる。<br>甲板を打つ水しぶきが冷たく頬を叩いた。<br>「櫂を合わせて！　一息で抜ける！」<br>自らの声が、風にちぎれて消える。<br>それでも、仲間たちは応えた。<br>「ひと息で！」<br>櫂が水を割る音が重なり、舟は一気に白波を超えた。<br>岩礁の群れを抜けたとき、海は急に静まった。</p><p name="550d219f-147d-4762-b4ed-6b472a626da8" id="550d219f-147d-4762-b4ed-6b472a626da8">白波を越えた祈風は、しばらく波間に身を委ねた。<br>仲間の舟も無事だった。遠くで汐路の帆が揺れ、朝凪の櫂が光を返す。<br>本田丸が甲板にへたり込み、笑った。<br>「この海、牙をむいて笑うとはな……だが、まだ俺たちを呑み込めんようだ！」<br>光（てる）は帆の端を掴みながら微笑んだ。<br>「海は試しているのです。私たちが、真に進む者かどうかを」<br><br>それはもう“宗像の風”ではない。<br>新しい大地の匂いを運ぶ、異国の風だった。<br>東風はその変化に、息を呑んだ。<br><br><strong>Ⅱ　砂の祈り ― 生の証</strong><br>砂を踏んだ足が、震えていた。<br>舟の揺れに慣れた脚が、地の重みを忘れていたのだ。<br>しっとりとした砂が足裏にまとわりつき、冷たさの中に温もりがあった。<br>「これが……大地」<br>東風は呟き、両手で砂を掬い上げた。<br>背後では、海人たちが倒れこむように座り込み、<br>海を仰いでは「生きたぞ」と叫んでいた。<br>その声は、風に溶けて潮の音と混じり、泣き声にも笑い声にも聞こえた。<br>東風は、指先に砂を乗せたまま祈った。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n5c7939de409b'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 21 May 2026 20:53:40 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第7章①「未踏の港」</title>
      <media:thumbnail>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/283532968/rectangle_large_type_2_3fae29eff67664be5f2a9e70cd4fa08c.jpg?width=800</media:thumbnail>
      <description><![CDATA[<p name="55e7e853-2687-4945-bcf1-222ecff3f1b7" id="55e7e853-2687-4945-bcf1-222ecff3f1b7">大陸の稜線が見えてから、舟団の胸は熱く高鳴っていた。<br>だが近づけば近づくほど、海は牙を隠していた。<br>陸は確かに目の前にあった。だが岸辺は荒く削られ、白波が浅瀬に砕けていた。<br>ところどころ黒々とした岩礁が顔を出し、波が打ち寄せるたびに白泡が散った。<br>陸影が近づくほど、そこが舟を迎え入れぬ場所であることが、いや増しに明らかになっていった。<br><br>潮は四方からぶつかり合い、渦を巻いてはまた裂け、舟を翻弄した。<br>東風は眉をひそめ、波間に光る岩の列を指さした。<br>「……あれでは舟底を削られる。寄せることはできぬ」<br>真澄も頷き、眼差しを鋭くした。<br>「この岸は我らを拒んでいる」<br>「見えているのに……届かんのか」<br>若い水夫は悔しげに唇を噛んだ。<br>老いた舟守は震える声で呟いた。<br>「これでは戻るしかあるまい……」<br>だがその言葉はすぐさま、反発の声にかき消された。<br>「いや、まだ探せば道はある！　海は一つの顔だけを見せるものではない！」<br>光（てる）は祈りの鈴を取り出し、波間にそっと振った。<br>「海よ、道を返しておくれ――」<br>その声は風に溶け、潮の音に重なった。<br><br><br>海面の泡がひと筋、沖へと伸びた。<br>頼玄がそれに気づき、目を細める。<br>「……潮が変わる。まだ行けるぞ」<br><br>真澄は頷いた。<br><br>光（てる）は鈴を握ったまま、静かに息を吐いた。<br><br>東風は舳先に立ち、波を睨んだ。<br><br>海鳥の群れが舞い上がり、陸の匂いを告げた。<br>潮風には森の湿り気が混じり、胸の奥まで満たしていく。<br></p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n8ef2b98091c8'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Thu, 21 May 2026 20:52:29 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第6章 ⑤「選ぶ」 </title>
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      <description><![CDATA[<p name="3f08ce88-b225-4789-a446-a5038c311c5c" id="3f08ce88-b225-4789-a446-a5038c311c5c"><strong>Ⅰ　発覚</strong><br>水を得た。<br>誰もが、生き延びたと思った。<br>海を渡る蝶の道……。<br>東風の判断を信じるしかなかった。<br>誰もが、それを奇跡だと思った。<br><br>だが――<br>ひとつだけ、流れに乗らない視線があった。<br><br><br>光（てる）は真澄のそばで呟いた。<br>「気になって仕方が無い奴がいるよ。」<br>祈風・朝凪・汐路…。<br>光の視線は汐路の艫（とも）で作業する一人の船員に向けられていた。<br>真澄は、えっとした表情で目を凝らした。<br>「あの男だけは、いつも持ち場を離れる。理由をつけてはこの祈風に渡ってくるよ。」<br><br>真澄は直接には知らない男だった。<br>船員を集める際に、博多から来たと聞いていたが…。<br><br>静かな夜だった。皆眠りについていた。<br>三艘の舟は、綱でゆるく結ばれていた。<br>波に合わせて離れ、また近づく。<br>まるで、呼吸を分け合っているようだった。<br><br>ギーときしむ舟の音。ザブンと船板にぶつかる波の音。<br>群青の月明かりの中、<br>……音も立てずに舟を渡る人影があった。<br><br>男は素早く祈風の船首へ動いた。<br>そこは、舳先の一角――<br>東風が星図を開く、ただ一人の場所だった。<br><br>「捜し物か」<br>男の背後から真澄の声。<br>男は、ハッとして動きを止めた。<br>次の瞬間、男は海へ飛び込もうとしたが、本田丸に阻止された。<br><br>捉えられた男の周囲に、海人たちが集まり、成り行きを見守っている。<br><br><br>「悪党は海に投げてしまえ」<br>海人たちの中から声が漏れてでた。<br>「命を乞うつもりはない。」<br>男は毅然としていた。<br>真澄は言った。<br>「お前は、どこの奴だ。その訛り、博多ではないな。」<br>真澄には男のしゃべりに、東風と同じ訛りをかすかに感じていた。<br>「藤原か。」<br>その言葉に、男の肩が少し落ちた。<br>真澄は、安全のためにも統制のためにも強硬な姿勢を崩さなかった。<br><br>「私のためか…。」<br>東風は切り出した。<br>「お前の欲しかったものは、この星図か、私の命か。それとも…」<br>しかし、真澄は遮った。<br>「俺たちの船団の行程が分かっているかのように黒帆が現れた。お前の手引きだな。東風だけの問題ではない。全員の命さえ落としかねなかった。」</p><p name="ffbb9d02-205e-4ecb-bcf6-7bda4b274c4b" id="ffbb9d02-205e-4ecb-bcf6-7bda4b274c4b">東風は真澄と対峙した。<br>東風は自らの命を狙われながら、男をかばうように立ちはだかった。<br>「この男の命、私に預けてはくれませんか。」<br>集まった船員たちは、意外な成り行きに息を呑んだ。<br><br>「何故かばう」<br>「かばってはいない。預かるだけだ。」<br>真澄は、東風の真意を測りかねていた。<br><br>「お前に預けることは出来ない。この男の命は、俺が預かる。」<br>真澄はそう言って、柱に結びつけ、信頼ある者に番をさせた。<br>騒ぎを見届けた船員たちは、それぞれに散っていった。<br><br>真澄が近づき、声をかけた。<br>「どうするつもりだ。」<br>真澄の声は、否定もせず急かしてもいなかった。<br>「真に私の命を奪うのであれば、とうに出来たはず。<br>あの者は、きっと私の命を預かっていたのでしょう。藤原でなく、自分の判断で。」<br>東風は裂けた紅い布を見て小さくうなずいた。<br><br>真澄は、黙って聞いていたが、ゆっくりと言った。<br>「東風。お前の言うことは分かった。しかし、大陸に着いたのち、この船団からは追放する。俺は船団全員の命の安全を優先する。」<br>東風は、頷いた。それで十分だった。<br><br><br>夜明けが近づくにつれ、水平線は淡い光を帯びていった。<br>やがて雲の切れ間から差す光が海を染め、その先に黒い影のような稜線が浮かび上がった。<br>「……陸だ。」<br>声に涙が混じっていた。<br><br><strong>Ⅱ　光の稜線 ― 新しき風</strong><br>真澄は目を凝らし、思わず息を呑んだ。<br>宗像の海人に伝わる遣唐使の古い航路は、彼の頭に刻まれている。<br>しかし、ここまで早くその姿に辿り着けるとは信じがたかった。<br>「……まさか、もう着いたというのか。」<br>呟きは驚愕と戸惑いを帯びていた。<br>夜明けの光が水平線を割る。<br>最初に気づいたのは、舳先に立つ若い海人だった。<br>「……光だ！　あの向こうに、光が揺れてる！」<br>叫びと同時に、人々の胸が跳ねた。<br>その光は蜃気楼のように揺れながらも、確かに陸の稜線を映していた。<br><br><br>光（てる）は胸の数珠を握り、涙をこぼした。<br>「あれが……わたしたちを呼ぶ、風の果て」<br><br>遠く、鳥の影が一羽、また一羽と空を横切る。<br>潮の香りが変わった。生きた土の匂いが、風の底から立ち上る。<br><br>「見える……あれは、島ではなく、陸です！」<br>振り返る声に、疲れ切った舟人たちの顔が一斉に上がる。<br>誰かが帆綱を握りしめ、誰かが泣き笑いの声を上げた。<br>張り詰めていた心が、一気に解かれてゆく。<br><br>風は、未知の陸から吹いていた。<br>東風は、その風を受けていた。<br></p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/nde4daf8500f9'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 20 May 2026 09:24:42 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第6章④「乾きの海」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="43f98bb7-4efe-4ca7-a425-7ad11e68d83a" id="43f98bb7-4efe-4ca7-a425-7ad11e68d83a"><strong>Ⅰ　安息の海</strong><br>南の海に入ってから、幾日かが過ぎていた。舟団には、ひとときの安堵が広がっていた。<br>潮の香りが、焼けた木と人々の肌に柔らかくまとわりつく。<br>神湊（こうのみなと）を出てから、すでに二十日あまり――。<br>黒帆を振り切り、嵐を切りぬけ、海人たちはようやく息をついた。<br>舟の上には、久しぶりに笑みが戻っていた。</p><p name="4377c8d6-c38c-451e-a6d7-d02c085d66ac" id="4377c8d6-c38c-451e-a6d7-d02c085d66ac">東風がふと見渡すと、光が若い海人の手の傷に布を巻いてやっていた。<br>「もう少しの辛抱だよ」と笑うその声に、船員たちの顔が和らぐ。<br>本田丸は甲板の端で、壊れかけた櫂を削り直していた。<br>「海の道具は、気を抜くと命を奪う。だが、手をかければ、必ず応えてくれる」</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n72f2b55dbf94'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 20 May 2026 09:22:25 +0900</pubDate>
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    </item>
    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第6章③「黒潮と空白」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="a9387dea-601b-40b0-ad09-f75e9fbf8be9" id="a9387dea-601b-40b0-ad09-f75e9fbf8be9">Ⅰ　黒潮の影<br>潮の境界が見えた。<br><br>波が二つに割れ、海の色が変わる。<br>南から流れ込む黒潮が、別の命のようにうねっていた。<br>その境に差しかかると、風の匂いまで違っていた。<br>塩気に混じって、どこか懐かしい花の香がする。<br><br><br>東風は一歩、舳先に出た。<br>――この潮の先に、父が見た世界があるのかもしれない。<br>だが、その胸の奥に小さなざわめきが生まれていた。<br>未知を前にして感じる、祈りにも似た鼓動だった。</p><p name="6e2fd309-9b5e-4d32-997f-04c095871f37" id="6e2fd309-9b5e-4d32-997f-04c095871f37">頼玄は帆柱の影から低くつぶやいた。<br>「これより先は、潮が牙をむく」<br><br>光（てる）は祈りの鈴を鳴らし、船員たちは一斉に綱を締め直した。<br>空には雲の縁が光を帯び、遠くで雷鳴が腹を鳴らしていた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n611ad12eae33'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 20 May 2026 09:18:55 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第6章②「追手の影」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="863f14b0-3afe-4c0f-9020-9414b23656e8" id="863f14b0-3afe-4c0f-9020-9414b23656e8">波のざわめきが変わった。<br><br>だが――風は、止んでいない。<br><br>櫂の水音が、妙に重くなる。<br>水を掻いているのに、進まない。<br><br>「……おかしい」<br><br>誰かが呟いた。<br><br>松明の火が、横ではなく、下に揺れた。<br>まるで、海が呼吸しているかのように。<br><br>東風は動かなかった。<br>目は、沖ではなく――水面を見ている。<br><br>音が、一拍遅れて届いた。<br><br><br>数日の順風に助けられ、舟団は壱岐を越えて外洋に差しかかろうとしていた。<br>夜の海は静かにうねり、舟団の松明が小さな灯火の列となって波間に揺れていた。<br><br><br>そのとき――波が、逆に動いた。<br>「……なにか来る！」若い漕ぎ手の隼人が叫んだ。<br><br>光（てる）は荷に手をかけたまま、動かなかった。<br>「……揺れが違う」<br>その声は、恐れではなく――計っていた。<br><br>次の瞬間、月明かりに黒々とした帆影が浮かび上がった。<br>――だが、その数が、合わない。<br>それは闇に潜んでいた追手の舟団であった。<br>彼らは松明を一切消し、波音に紛れてひそかに近づいていたのだ。<br><br>「紅姫を捕らえよ！」<br>怒号が夜風に乗って轟いた。<br><br>舟団に緊張が走った。<br>「数が多いぞ！」<br>「逃げ場がない！」<br>闇の海がうねり、舟底が軋む。櫂の音が狂い、潮が甲板を洗った。<br><br><br>東風は舳先で風を読む。<br>黒い帆影が、夜を裂くように迫る。<br>心臓の鼓動が波音と重なった。</p><p name="205feb60-9429-46db-a64a-0b70864a2e77" id="205feb60-9429-46db-a64a-0b70864a2e77">「逃げねば……」<br>父が教えてくれた星図が、脳裏に閃く。<br>――星は嘘をつかぬ。北斗を信じよ。<br>恐怖の底から、理性が浮かび上がった。<br><br>北斗七星が冴え冴えと輝き、その下の波が不自然に裂けている。<br><br><br>「……ここで東へ！」<br>「今なら抜けられる！」　　<br><br><br>真澄が低く叫んだ。<br>「舵を切れ！」<br><br>怒号と共に舟団は一斉に舵を取り、荒れる潮の裂け目へと突入した。　　　　　　　　　　<br>潮が裂ける瞬間、船は風を孕み、まるで光の帯を滑るように抜けた。<br><br><br>潮を抜けた瞬間、<br>一本の櫂が鈍い音を立てて折れた。<br>誰かの息が詰まる。<br>――誰かが、落ちていてもおかしくなかった。<br><br><br>頼玄が帆を張り直し、祈風は再び風を受けて進み始める。<br>――風は、まだ東から吹いていた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/na44d2a6c8530'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/47655556/profile_3a949b9c47827bb7fbe795dca0b63f17.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 20 May 2026 09:16:53 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/nolly_note/n/na44d2a6c8530</link>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第6章①「大航海へ」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="3f1cec7b-f118-4f47-b83a-8131bd3b27e4" id="3f1cec7b-f118-4f47-b83a-8131bd3b27e4">神湊では、すでに舟の準備が整いつつあった。<br>帆は張り替えられ、<br>水桶は満たされ、<br>干し鮑や乾飯などが積まれている。</p><p name="8b20079f-5a83-4b68-a146-3a37b672f483" id="8b20079f-5a83-4b68-a146-3a37b672f483">宗像大社の宮司の指揮で、<br>この航海は、すでに動き出していた。<br><br>東風たちが練習航海から宗像の浜へ戻り、数日の支度を経たのち――<br>いよいよ本番の大航海の時が来た。<br><br>浜に立つと、夜明け前の風が潮の匂いを運んできた。<br>その匂いの奥に、<br>あの横波の記憶がまだ残っていた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n6440770aa79b'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Wed, 20 May 2026 09:15:31 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/nolly_note/n/n6440770aa79b</link>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第5章⑤「玄界――黒い海」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="978e80d7-e92d-4308-b235-dda28977d1ff" id="978e80d7-e92d-4308-b235-dda28977d1ff">静かな夜明けだった。<br>水平線は周囲にどこまでも続き、昇る太陽はあたりを明けの気配で満たしていった。<br><br>舟は帰港の途についていた。<br><br>風は順風だった。<br><br>祈風の舳先の紅い布。東風には晴れ晴れと見える。<br><br>「一緒に来れて良かった。いい舟の旅だった。」<br>背後ではまみときなりが目を輝かせて、船上からの美しい海の景色を見ていた。<br>「ここは、良い漁場らしいよ。さっきからトビウオがついてくる。」<br>二人はトビウオの跳ねる様子をまねしながら子供のようにはしゃいだ。<br><br>「元気がいいねえ。」<br>と光（てる）も呆れたような表情で加わった。<br><br>東風は微笑んで返しながら舳先で風を受けた。<br>――いける。<br>そう思った。<br><br><br>対馬を離れて二日が経った。<br>深く暗い海を越えようとしていた。<br><br>東風は異変を感じた。<br>帆は順調なのに、少しずつ流されている。<br><br>潮と風にずれが生じていた。<br><br>その時舟が大きく揺れた。<br>女たちは船の縁に捕まった。<br><br>容赦なく横波が襲ってくる。<br><br>潮が遅れ、櫂の返りが重い。<br><br>「舟が流されるぞー！」<br>海人たちは危険を察して叫びだした。<br>「女たちは、中に入れ！」<br>慌てて船室に向かうはまみときなりだった。<br><br>次の瞬間、大きな横揺れが襲った。<br>きなりは握った船縁から手を滑らせて、半身が落ちそうになっている。<br>はまみと光が必死に押さえている。<br>「真澄にいさーん！」<br><br>その声に真澄は振り向いた。<br>真澄と本田丸がすぐに駆けつけた。<br><br>助けられたきなりは恐怖で泣きじゃくった。<br>女たちは腰を抜かしたように放心状態で甲板にしゃがみ込んだ。<br><br>横波だ――<br><br>そう分かっていながら、<br>東風の手は一瞬、止まった。<br><br>船首を切るべきか、<br>それとも風を待つべきか。<br><br>その迷いの間に、<br>波がもう一段、舟を打ったのだった。<br><br>「船首を波に立てろ！」<br>真澄が叫んだ。<br>一斉に櫂を切った。<br><br>東風には波が読めていた。<br>しかし、選べなかった。<br><br>風も潮も見えていたのに……。<br><br><br>その一瞬が、東風にはとても長い時間に感じられた。<br>舟から投げ出されようとしたもの、怪我をしたもの、軽傷では済んだものの、一歩間違えば転覆さえあり得た。<br>「この海、甘くない」<br><br>「――ここで読めるようになって、初めて外海へ出られる。」<br>真澄の言葉が、胸の奥で蘇った。<br><br>――まだ、読めていない。<br><br>黒くうねる海が、まだ息をしていた。<br><br>東風はその奥を見た。<br><br><br>その向こうに、島影があった。<br>沖ノ島。<br><br>光に包まれているのに、<br>どこか触れられてはならぬもののように見えた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n8a83bfcf75e8'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 18 May 2026 13:43:51 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第5章④「潮の乱れ」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="28452f11-4120-4ff1-8275-df58db520291" id="28452f11-4120-4ff1-8275-df58db520291">その頃、遠い京の都でも、ひとつの噂が広がっていた。<br>「紅姫が生きているらしい――」<br>「博多の商人どもがそう申しております。津屋の名も出ておりました」</p><p name="481b825b-2065-4e88-ac7b-f96461b74fd4" id="481b825b-2065-4e88-ac7b-f96461b74fd4">紫宸殿の奥、香の煙がゆるやかに立ちのぼる。<br>夜半の灯は少なく、御簾の向こうで老公卿が筆を走らせていた。<br>「風の国より来る娘、紅の衣をまとい、祈りの舟に立つ――か」</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n5001c633a2d4'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 18 May 2026 13:42:02 +0900</pubDate>
      <link>https://note.com/nolly_note/n/n5001c633a2d4</link>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第5章 ③「練習航海」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="3a9b6325-5ef1-4690-a2e2-b27bfd602833" id="3a9b6325-5ef1-4690-a2e2-b27bfd602833">宗像の浜に、まだ朝靄が残っていた。浜の砂は夜露を含み、足元にひんやりとした感触を残している。東の空がうっすらと明るみ、波の向こうで太陽の気配が海を染め始めた。<br>人々が集まり、並んだ舟の舳先には白布が翻り、潮の香りが濃く漂っていた。<br><br>その中に、ひときわ目を引く舟があった。舳先には、紅の小袿の袖――母の形見が結ばれ、朝の光を受けて静かに輝いている。<br>それは昨夜、東風が名を与えた舟。祈風（きふう）ーー風に祈る舟。<br>母の紅と、娘の祈りを、その小さな船体に宿していた。<br><br>風は潮の香を孕み、白布を膨らませた。<br>だがその風は、わずかに遅れて吹いてくるようだった。</p><p name="e1a5a90e-65c8-4986-88e1-8cf66133b221" id="e1a5a90e-65c8-4986-88e1-8cf66133b221">光（てる）は帆を撫でる風の流れを感じ取り、低く唄を紡ぎ始めた。<br>“風は海を渡り、命をつなぐ。<br>……われらはその息に生かされる”<br><br>その声はやがて浜の者たちに広がり、<br>老いも若きも、唇を合わせて同じ節を唱えた。<br><br><br>浜辺が一瞬、神楽のような一体感に包まれた。<br>東風は胸のおくが震えるのを感じた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/na5a0dd6f35d8'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 18 May 2026 13:38:53 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第5章②「出発前夜」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="4844062f-bbea-400f-a9b8-bc6df8134e45" id="4844062f-bbea-400f-a9b8-bc6df8134e45">浜では、翌日の出発に備えて舟の準備が進められていた。潮風がやわらかく吹き、空はゆるやかに茜から群青へと移り変わる。海人たちの笑い声も、どこか緊張を帯びていた。</p><p name="d7b9062e-93b2-413a-91bb-50a71d456c44" id="d7b9062e-93b2-413a-91bb-50a71d456c44">その少し離れた浜辺に、東風は立っていた。夕陽の中、東風は舟を見上げている。舳先には、赤い小袿の袖が結ばれ、風にたなびいていた。<br>潮が満ちるたび、波は光を孕んで寄せ、引く。<br><br>東風は足元の砂を握った。冷たい砂の粒の間から、まるで小さな命の息吹が湧くようだった。<br>その鼓動を確かめるように、彼女は手を開いた。<br>そのとき、潮の彼方にひとすじの光が走った。<br>だがその光は、一瞬だけ不規則に揺れた。<br><br>夜の浜辺には、舟の影が浮かんでいた。<br>真澄が手にした松明が帆柱を照らし、海人たちは帆を張り、縄を締めていた。<br>海の上には、月の道ができている。<br>その光をなぞるように、舟はゆっくりと波に乗せられた。<br><br>はまみときなりが、砂を踏みしめながら東風の様子を見に近寄ってきた。<br>はまみが明るく声をかけた。<br>「私なら、亀の背に乗って渡りたいけどね…。東風は凄いよ。」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<br>冗談めいた声だったが、東風の顔を覗き込んで、気持ちをしっかりと受け止めようとする眼差しだった。<br>東風は小さく笑って答えた。「でも私は、あの舟に乗りたい」<br>きなりは真っ直ぐに東風を見て言った。<br>「私はね、海の宝物も大事だけれど……、人が宝物に見える時があるの」「……だから、失いたくないの」<br>はまみは驚いたようにきなりを見やり、そして二人で笑いあって波打ちぎわへ駆けていった。<br><br>東風は波が寄せては返す音に耳を澄ませた。海の匂いに混じるのは、焦げた松明の煙。<br>はまみたちの笑い声が遠のくと、胸の奥から別れの寂しさが滲み出た。<br>「父上…」<br>小さくつぶやいた。<br>潮の向こうの灯は、やがて波に紛れて見えなくなった。<br><br>その夜、東風は眠れず、波の音に合わせて舟の名を口の中で何度も唱えた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/nb46ee871bae8'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 18 May 2026 13:34:58 +0900</pubDate>
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      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第5章①「神湊（こうのみなと）――訓練」</title>
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      <description><![CDATA[<p name="74214459-a101-4a6a-8485-8db68e400e5e" id="74214459-a101-4a6a-8485-8db68e400e5e">大島から戻った数日後、東風は再び神湊の浜に立っていた。<br>そこにはすでに数艘の大舟が並び、男たちが帆を繕い、縄を締め直していた。</p><p name="fd5d6ab2-ca8d-49b1-bffc-a51255bc0d60" id="fd5d6ab2-ca8d-49b1-bffc-a51255bc0d60">玄界灘の荒波に挑むための舟は、大きさと力強さを備えていた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n6b7c5afc9c19'>続きをみる</a>]]></description>
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      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 18 May 2026 13:32:38 +0900</pubDate>
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    <item>
      <title>東風物語〜菅原道真の娘、海を渡る〜｜第4章④｢大島――海の懐｣</title>
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      <description><![CDATA[<p name="0a7a18a3-d024-413f-b416-f187ae39b17e" id="0a7a18a3-d024-413f-b416-f187ae39b17e">地島から戻って間もなくのことだった。<br>東風と真澄の乗った小舟は、板を組んだ船体をギーギーと波に軋ませながら沖へ出た。櫓が波と反発してしぶきが立つ。櫓を漕ぐ東風の衣は濡れて徐々に濃く色が変わってゆく。<br><br>真澄の視線が背に突き刺さるのを感じた。<br><br>「あれが噂の娘か…」<br>港でひそひそ噂を交わす漁師や海人たちの声は、陸を離れるにつれて櫓を漕ぐ音にかき消されていった。東風は次第に自らの鼓動に耳を澄ませ、波のうねりと同調していくのを感じた。<br><br>一回り大きな舟に乗って、真澄からいきなり漕げと言われた。<br>波に旨く乗ると早く進む。無理をしなければ旨くこなしていけると東風は思った。<br>船首には供物の布や塩が積まれている。<br>｢舟に立つ者は、大島で誓う」<br>真澄の言葉には、揺るぎない響きがあった。</p><p name="cca9c479-2b77-49e2-9ecc-7d53fc275feb" id="cca9c479-2b77-49e2-9ecc-7d53fc275feb">大島――。宗像三女神湍津姫神（たぎつひめのかみ）が鎮まる聖なる島である。<br><br>港に舟を止め、砂浜を歩いて行く。<br>東風は真澄のあとを、黙々と着いて歩いた。<br>いつしか浜を抜け、細い山道を登っていた。</p><br/><a href='https://note.com/nolly_note/n/n68c6b8bcfc3d'>続きをみる</a>]]></description>
      <note:creatorImage>https://assets.st-note.com/production/uploads/images/47655556/profile_3a949b9c47827bb7fbe795dca0b63f17.jpeg?fit=bounds&amp;format=jpeg&amp;quality=85&amp;width=330</note:creatorImage>
      <note:creatorName>園田のり</note:creatorName>
      <pubDate>Mon, 11 May 2026 17:56:51 +0900</pubDate>
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