
『免許返納!?』感想文。「映画なんてそれでいいの」に刺された
『免許返納!?』を観てきた。
観る前は、王様のブランチで紹介されていたのを見て、なんとなく気になっていた。西野七瀬さんは、乃木坂46の頃は正直よく知らない。ただ、ドラマ『ハコヅメ』の牧高役と、『ある閉ざされた雪の山荘で』で観て、かなり好感度が高い(後者の映画については言いたいことが別にあるから、また書きたい)。それはそれとして、西野七瀬さんはいい。
舘ひろしさんも、実はほとんど観てきていない。昔、『パパと娘の7日間』で、中身が女子高生の娘(ガッキーね)と入れ替わっているように本当に見えた。あれは当時、ガッキー目当てで見ていたけど、かなり引き込まれた記憶がある。渋い大人の男性が、ちゃんとガッキーの魂を入れてくる。そういう俳優さんなのだと思った。
だから、軽い気持ちで観に行った。
※以下、ネタバレ含みます、と言うわりにセリフの記憶はいい加減。
免許返納をテーマにしたコメディなのかな、くらいの気持ちだった。もちろん、その要素はある。老いの話でもあるし、家族の話でもあるし、仕事を失うかもしれない人の話でもある。だけど、観終わって一番残ったのは、そこではなかった。
南野陽子さんだった。
南野陽子さん演じるスナックのママの台詞に、刺されて刺されて、グサグサ。この映画を観て、私は穴だらけになった。
スナックでカラオケを歌う場面があり、舘ひろしさんが南野陽子さんのために歌う。途中から、一緒に歌ってあげる。あそこで泣いてしまった。この映画で泣くとは思っていなかった。泣かせにきている場面なのかもしれない。でも、こちらの心の準備ができていなかった。
そのママが、「映画なんてそれでいいの」というようなことを言う。でも、子どもの頃に映画を観て、笑ったり、泣いたり、感情を揺さぶられてきた。そういう話をする。
物語には、前後で矛盾があったり、現実にはそんなことあるわけないと思うようなことが起きたりする。それを肯定している。
これが、妙に刺さった。
去年まで、私は家族の付き合いで映画を観るくらいだった。映画館に行くことはあっても、自分のために行くことはなかった。それが今年になって、映画館に通うようになった。自分で観たい映画を選ぶ、行く前提で仕事を段取る、時間を調べて、仕事終わりに映画館へ行く。
だから余計に刺さったのかもしれない。
リアリティとか、辻褄とか、考察とか、緻密に組み立てられている物語も、もちろん素晴らしい。そういう作品に唸ることもある。だけど、映画館を出たあとに何が残るか、という話もある。
細かいところを突けば、いろいろ言えるのかもしれない。そんなにうまくいくかとか、そこは都合がよすぎないかとか、現実ならどうなのかとか。チャチャはいくらでも考えられる。
でも、映画なんてそれでいいの。
笑った。泣いた。ちょっと元気になった。誰かに会いたくなった。もう一回映画館に行きたくなった。それで十分じゃないの。そんなことを、スナックのママに言われた気がした。
南野さんは、舘ひろしさんが去るときに、「また会いに行きます、映画で」というような言葉を残す。あれもよかった。物語の中の台詞でありながら、映画文化そのものへの礼賛にも聞こえた。映画館で誰かに会う。スクリーンの中の人に会う。過去の自分に会う。子どもの頃に映画を観て感情を揺さぶられた記憶に会う。
そういうものが、この映画にはあった。
出演者も総力戦だったと思う。
劇中で宇崎竜童さん演じる人物の元妻たちが、みんなすごい。大地真央さんは、大画面でも美しかった。圧倒的に華。真矢ミキさんはオトコマエだった。MEGUMIさんは上手い。出てくる人たちが、それぞれにちゃんと強い(雑に端折ってごめんなさい。吉田鋼太郎さん、八嶋さん、宇崎竜童さんみんなすごい)。
そして、西野七瀬さんは、コメディとの親和性がすごい。
作中では、昔は超人気子役だったけれど、高校生になって仕事がなくなった人物として描かれる。その彼女がマネージャーに選ばれた理由にも、ジーンときた。舘ひろしさんが運転して炎上し、仕事を失うことを防ごうとする。その必死さには、自分も一度失った過去があるからなのかな、と感じた。
グラサンをかけてフェラーリを運転する姿もカッコよかった。あと、チューハイのロング缶が相当似合っていた。ロング缶の似合う女優といえば南沙良さんだと思っていたが(万事快調オールグリーンズもぜひ見てほしい)、西野七瀬さんもかなり強い。ロング缶オブザ2026をどちらに渡すか、たいへん悩ましい。
黒川想矢さんもよかった。
観ている最中は誰なのか知らなかった。観終わってから調べて、初めて名前を知った。登場した直後は、どこか諦めの境地にいるように見えた。それが物語が進むにつれて、すごくいい笑顔になっていく。あの変化がよかった。
そして、なにより舘ひろしさん。
全編を通して、とにかくカッコいい。コメディをやっていてもカッコいい。真面目な場面でもカッコいい。情けないところを見せてもカッコいい。老いや衰えに触れる話なのに、ただ痛々しくはならない。格好悪くなることをちゃんと引き受けられる人は、結局カッコいいのだと思った。
『パパと娘の7日間』で、中身が女子高生に見えた記憶がある。今回もそうだった。舘ひろしさんは、ちゃんとその場面に必要な舘ひろしさんになってくれる。スターでありながら、ちゃんとおかしい。スターでありながら、かなり人間くさい。
仕事人舘ひろし。
この映画を観て、舘ひろしさんが大好きになった。
免許返納の映画だと思って観に行った。
でも、観終わって残ったのは、映画っていいな、という感覚だった。
荒唐無稽でもいい。都合がよくてもいい。笑って、泣いて、感情を揺さぶられて、映画館を出たあとに少しだけ何かが残るなら、それでいい。
レイトショー前の中途半端な時間だったので、客席にいたのは年配のご夫婦(舘さんくらいの年代かな)と私の3人だけだった。
帰りのエレベーターも、そのご夫婦と一緒になった。旦那さんが、私に話しかけたわけではなく、小さく「面白かったな…」と呟いた。なのに、つい「面白かったですよね」と反応してしまった。すると、「うん、面白かったよね」と返してもらえた。
映画なんて、それでいいの。
私は、その言葉たちに刺されて、穴だらけになって帰ってきた。
舘さん、アンタは本気(マジ)でカッコいいぜ!!
(アンタ呼ばわり失礼しました!!)
【7/6追記】
この記事で、コングラボードをいただきました。読んでくださった方、スキを押してくださった方、ありがとうございます。
観終わったあと、ジ〜ンとした余韻が残る映画でした。舘さんニワカファンとしても、まだ観ていない方には、機会があればぜひ観てほしい作品です。


