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小孊䞀幎生の倏䌑み最終日。曞けない宿題に泣いた日のこず。

    野田志保



    ぜずり。

    ただ小孊䞀幎生だった私の右目から、雫が萜ちた。

    萜ちた先は、400字詰めの原皿甚玙。

    涙で濡れた鉛筆の文字は
    消しゎムで消しおも、消えなかった。

    拭いおも拭いおも、萜ちおきた。

    「読曞感想文」

    それは、私がもっずも苊手ずする
    倏䌑みの宿題のひず぀だった。

    小孊䞀幎生の倏䌑み。

    原皿甚玙2枚。たった800字を前にしお途方に暮れおいたあの日。
    本圓に、ずんでもなく、倚い文字数だず思った。

    ただ7幎しか生きおいないのに。
    こんな宿題を匷制でさせるなんお、
    倧人は悪魔だ、ず思っおいた。

    毎幎、思った。

    やめたい、やめたい、逃げたい、ず思った。
    でも、逃げるこずはできなかった。

    時蚈の針が、劙にうるさかった。
    でもたずえ無音だったずしおも、
    私は結局曞けなかったず思う。






    子どもの頃、「先生、あのね」が奜きだった。

    1幎生のずきの担任朚原先生は、優しい笑顔ず穏やかな話し声の、萜ち着いた女の先生だった。

    この頃からわたしはずおも匕っ蟌み思案だったけど、朚原先生になら、話せる気がした。
    文字でなら、曞ける気がした。

    だから、「あのね垳」にはどんどん曞いた。

    先生は、よく耒めおくれた。
    だから私はもっず期埅に応えたくお、
    䞀生懞呜、考えた。

    䜜文を、頑匵った。
    教宀にもよく匵り出された。

    だから、芪は䜙蚈にわからなかったず思う。

    「読んで、思ったこずを曞くだけやろ」
    「䜕が、曞けない」
    「もう、倜の11時だぞ。」ず、蚀った。

    「わからない。」
    「䜕お曞いたらいいのかわからない」

    そう蚀っおも、机の前から
    離れられなかった。

    だから、私は曞いた。

    曞きたくないこずを曞いた。

    曞きながら、絶察にちがう、ず思っおいた。

    感想文は
    匷制されお曞くものではない。

    人に芋せるものでもない。

    読んだ本のタむトルを蚀うこずすら
    嫌なのに。




    そんな私が遞んだ読曞感想文の本は、
    『赀ずきんちゃん』だった。

    これなら、「普通の小孊1幎生の女の子」が
    遞んだ本ずしお、人に蚀っおも恥ずかしくない本ではないか、ず考えたからだ。

    「シンデレラ」はよくない。
    お姫様に憧れおるの、ず思われたら笑われそう。

    「桃倪郎」の話も奜きだけど、小1の女の子が遞ぶにはちょっず。
    男の子なら、ありかなず思うけど。

    うん、「赀ずきんちゃん」がちょうどいい
    たぶん、みんな聞いたこずがある話だし。

    少し子どもっぜい気はしたが、
    䞀幎生ならセヌフだよね、ずも思った。

    よかった、決たった。

    そんな気持ちで遞んだ。
    わりず奜きな童話でもあった。

    最埌、おおかみのお腹を切る郚分だけ、怖くお苊手だったけど。

    「赀ずきんちゃんを読んで」

    タむトルを曞いた埌に、名前を曞いた。

    わたしは、

    ず曞いた埌、続きを曞こうずしおも、
    曞けないこずに気が぀いた。

    本圓は、もっず前から気付いおた。

    だから、最埌たでずりかかれなくお
    埌回しにしおしたったのだ。

    机に向かえば曞けるかず思ったけど、
    やっぱり蚀葉が出おこない。

    “わたしは、「赀ずきんちゃん」ずいう本を遞びたした。”

    ず、曞いたらいいのかな。
    でも、題名に曞いおあるんだから、わかるか。

    じゃあ、本の説明から
    その䞭で、思ったこずを曞いおいけばいいのかもしれない。

    そんなふうに思った。

    「赀ずきんちゃんは、おばあちゃんの家に向かっおいるず、おおかみず出䌚いたす。」

     思うこず、なし。

    「おおかみは、赀ずきんちゃんに話しかけたした。」

     うん。

    おばあちゃんのために、赀ずきんちゃんはお花を摘みにいきたした。

     。

    そしお、赀ずきんちゃんはおばあちゃんの家に向かいたした。

     。

    おおかみは、おばあちゃんのフリをしお、
    こんなこずを蚀いたした。

    


    ようやく、2枚目にいっお、話は終わった。

    物語の文を曞く䞭で、
    「ここで、こんなこずを思いたした。」
    を挟んでいこうず思ったけど

    気付けば赀ずきんちゃんずおばあちゃんは笑っおいお、物語は終わっおいた。

    そう、私には特に感想がなかった。
    だっおもう䜕床も読んだ話だったから
    今さら思うこずなんお、ほずんどない。

    それに、思ったこずを曞くのなんお
    恥ずかしいし 。

    でも、ずりあえず曞いた。
    原皿甚玙を埋めるこずはできた。

    「曞けた」ず自信のない声で
    芪に枡すず、「これのどこが感想文なんや」
    ず蚀われた。

    知らないよ。
    曞いたこずないんだから。

    っお思ったけど、

    私も曞きながら思っおた。

    これっお、ただ物語をそのたた
    曞いただけじゃないのかなっお。

    私はもう疲れおいた。
    でも、曞かないずいけなくお。

    私、䞀幎生だよ
    もう倜の11時だよ

    鉛筆で曞いたあらすじを必死に消しながら
    私は泣いた。

    ポロポロず涙がこがれた。

    このたた甚玙がぐしゃぐしゃになったら
    いいのに

    そしたら仕方ないねっお

    


    蚀わないか。

    逃げられない。



    私は、「こわい」だけを曞くこずにした。
    それなら今の私にも曞ける。

    あらすじの埌半を消し終えた私は、
    原皿甚玙1枚目の、巊偎䞭倮あたりに

    「もし私が赀ずきんちゃんだったら、すごくこわいず思うだろうなず、思いたした。」

    ずいう䞀文を曞いた。

    これか。ず思った。

    ここだけ芋たら、
    感想文に芋えそう、ず、思った。

    埌半で、もう䞀回くらい感想をはさみたかったけど、やっぱりあらすじしか曞けなかった。

    芪は、私のボロボロの顔ずボロボロの原皿甚玙を芋お、そこでようやく

    「この子は読曞感想文が本圓に曞けないのかもしれない」ず気付いたようだった。

    その倜、垃団の䞭で、こう思った。

    「読曞感想文なんお、だいきらい」

    「この䞖からなくなればいいのに」

    っお。

    匷く思った。








    そしおあれから玄30幎が経った。

    今幎から党員提出が必須になった
    小孊二幎生の嚘の倏䌑みの宿題、
    もずい、私の倩敵
    『読曞感想文』を前に、

    私は思う。

    「しぶずいや぀め」

    ず、思う。

    これは、30幎越しの、
    嚘ず私のチヌム戊だ。

    あの日のリベンゞなのである。

    今床こそ、勝っおみせる。

    YouTubeのゲヌム実況をい぀たでも
    芳続ける嚘の前で、私はひずり、
    気合いを入れた。

    そしお探す。
    私はこれから。

    倏䌑みの宿題䞀芧が曞かれた、今䞀番倧事な、プリントを。

     
     
     
    家で昌寝をしたり、のんびり本を読んだりするのが奜きです。゚ッセむストを目指しおいたす。 珟圚は執筆に集䞭するため、コメント欄を閉じおいるこずが倚いです。

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