
【エッセイ】メロンソーダは宇宙。祖母と通った「秘密基地」と、小さな銀河の記憶。
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カラン、と氷が鳴る。シュワシュワと、目に見えないほど小さな泡が踊る。
私の目の前にあるグラスの中には、透き通ったエメラルドグリーンの宇宙が広がっています。

「メロンソーダ」
大人になった今でも、この飲み物を注文するときは、少しだけ背筋が伸びるような、それでいて冒険に出かける前のような不思議な心地になります。
思えば、私の「食」への好奇心は、この緑色のグラスから始まったのかもしれません。
小さい時、祖母によく連れて行ってもらった喫茶店がありました。
カウベルのような重たい音を立てるドアを開けると、そこは琥珀色の照明に照らされた、大人の「秘密基地」のような場所。

コーヒーの深い香りと、新聞をめくる音、そして名前も知らない誰かの静かな話し声。
幼い私には少しだけ背伸びが必要なその場所で、祖母はいつもブラックコーヒーを、そして私にはメロンソーダを注文してくれました。
運ばれてきたグラスを覗き込むたびに、私はそこに「宇宙」を見ていました。
四角い氷は、名もなき氷の惑星。
絶え間なく立ち昇る気泡は、遠く離れた銀河のまたたき。
そして、その上にぽっかりと浮かぶ真っ白なバニラアイスクリームは、冷たくて神秘的な、一番大きな月。
ストローでそっとアイスの端を突くと、白いクリームが緑の海に溶け出し、淡いパステルグリーンの星雲が生まれる。
「壊すのがもったいないけれど、もっと見たい」
そんな葛藤を抱えながら、私は自分だけの小宇宙をスプーンですくっていました。
祖母は、そんな私の様子をニコニコと眺めながら、ゆっくりとコーヒーを味わっていました。
あの時、私たちは言葉を交わさなくても、同じ「ゆったりとした時間」を愛しんでいたのだと、今なら分かります。
毎日キッチンで食材と向き合っている今。
私が大切にしたいのは、栄養や効率だけではありません。
お皿の中に、自分だけの物語を見つけること。
食材の色彩に、季節の移ろいを感じること。
それは、あの日の喫茶店で、メロンソーダの中に宇宙を見ていたあの純粋な好奇心の延長線上にある気がします。
忙しい日常に追われて、空を見上げることも忘れてしまいそうな時。
私は時々、あの頃のような喫茶店へ足を運びます。
そして、運ばれてきた緑色の宇宙を眺めながら、深く、深く、深呼吸をするのです。
皆さんの心の中には、どんな「宇宙」が眠っていますか?
たまには立ち止まって、自分だけの小さな銀河を見つめる時間を大切にしたいものですね。