
【未練配達員】 #毎週ショートショートnote
「未練、お届けに参りましたー!」
後藤の仕事は、失恋した人が捨てきれなかった未練を相手に配達することだった。
その日も元恋人の美咲の家へ向かう。
「三年前のまだ好きだったかもしれないをお届けします」
「また?」
美咲は呆れながら受領印を押した。
未練は厄介だ。一度届けても「やっぱり返してください」と送り返されることが多い。
後藤は毎日、大量の未練を運んでいた。
『あの日、告白していれば』
『あのLINEを送らなければ』
『もう一度だけ会いたい』
どれも重く、捨てられない荷物だった。
ある日、配送センターで上司に呼び止められた。
「長期保管の未練が見つかった。君宛てだ」
箱にはこう書かれていた。
『夢を諦めた自分へ』
中には若い頃の写真と、ミュージシャンを目指していた頃のメモ。
後藤は思わず笑った。
「届け先を間違えていたのは、俺か」
翌日、彼は退職し、ギターを抱えて旅立った。
数か月後。
美咲のもとへ一枚のCDが届く。
送り主は後藤。
添えられた手紙にはこうあった。
『未練は配達できても、夢は自分で取りに行くしかないらしい』
美咲はCDを胸に抱き、小さくつぶやく。
「……ああ、今度は私が未練を受け取っちゃったか」
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たはらかにさんの企画「#毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!