
『独り言観察日記』 博士の遺品
以下は、「ヤツら」から取得した神経電位パターンを言語変換アルゴリズム(Ver.2.14)により近似翻訳したものである。
【個体A】
(S区スクランブル交差点)
6/12 6:38 a.m.
私は全てを知りました。
そして私は産まれました。
星はこのようにして巡ります。
【個体B】
(T駅からK駅間、Y線電車内)
4/30 3:54 p.m.
あなたは座っています。
私は立っているということは、
重力も呼吸をするということです。
満員電車、都市部スクランブル交差点など、高密度環境において「ヤツら」の個体群の潜伏率が有意に上昇することが、近年の観測データ(n=482)から明らかになっている。
外見的特徴は我々ヒトと極めて類似しているが、唯一の識別点として「瞬目(まばたき)の欠如」が挙げられる。
これは、周囲の観測を途切れさせないため、あるいは外的脅威への反応速度を維持するためと推測されるが、確証は得られていない。
また、2010年以降のスマートフォン普及に伴い、平均視線角度が約17度低下したことが、個体群の潜伏成功率と強い相関を示す(相関係数 r=0.82)。
この点から、我々の視線が下方へ逸れたことが、「ヤツら」の増殖を促進した可能性が高い。
【個体C】
(Y公園野外フェスにて)
8/24 1:06 p.m.
熱さとは記憶ですが、海馬は汗をかきます。
全ては運動を伴います。
アイスクリームが溶けるときに、
流れ星は産まれました。
【個体D】
(M神宮)
1/1 11:34 a.m.
はじめまして。
太陽が登るのはあなたのおかげだったのですね。
おかげで寝返りが捗りました。
そういえば、■■は順調ですか。
※固有名詞(■■)部分は、変換アルゴリズムによる解析が不可能であった。我々の言語体系に存在しない概念である可能性が高い。
長年、「ヤツら」が何を目的として人間社会に溶け込んでいるのかは不明であった。
しかし今回、ついにその糸口を掴むことに成功した。
「ヤツら」は我々と酷似した発声器官を持ち、言語もほぼ完全に模倣する。
ただし、それはあくまで模倣的再現であり、そこに思考過程は存在しない。
そこで我々は、「ヤツら」の“脳”に相当する器官から発せられる電位信号を取得し、言語体系へ変換する試みを行った。
変換の詳細な手法については別紙に記載する。
【個体E】
(某テレビ局内)
5/16 11:54 p.m.
見つけました。
すぐに会いに行きます。
なお、この信号の取得直後、観測室の監視カメラが約0.8秒間ブラックアウトした。
原因は現在も調