
右に回して
幸せとは。
人生とは。
人間とは。
豊かさとは。
学問とは。
平和とは。
秩序とは。
優しさとは。
好きとは。
家族とは。
血縁とは。
細胞とは。
化学反応とは。
運命とは。
運とは。
時代とは。
境遇とは。
価値とは。
選択とは。
責任とは。
ひとつひとつを
別々の言葉だと思っていた。
けれど、
よく見れば
みんな同じ糸の先についていた。
一本を引けば、
全部が揺れる。
優しさを辿れば
家族にたどり着く。
家族を辿れば
血縁にたどり着く。
血縁を辿れば
細胞にたどり着く。
細胞を辿れば
化学反応にたどり着く。
化学反応を辿れば
星の爆発にたどり着く。
そして気づけば、
宇宙の話をしている。
責任を辿れば
選択にたどり着く。
選択を辿れば
境遇にたどり着く。
境遇を辿れば
時代にたどり着く。
時代を辿れば
運にたどり着く。
運を辿れば
運命にたどり着く。
そして気づけば、
自分の話をしている。
人は
自分の足で歩いているようで、
数え切れないものに
押されながら歩いている。
人は
自分の意思で選んでいるようで、
数え切れない偶然の上で
選ばされてもいる。
生まれる国。
生まれる時代。
親。
名前。
身体。
才能。
出会い。
別れ。
病気。
幸運。
不運。
誰も選ばずに
手渡されたもの。
まるで
大きなガチャガチャ。
世界という機械が
無数のカプセルを回し続けている。
カラン。
と音がして、
私が出てくる。
カラン。
と音がして、
あなたが出てくる。
白いカプセルもある。
黒いカプセルもある。
金色もある。
透明もある。
当たりもある。
はずれもある。
けれど、
どのカプセルも
同じ世界から出てきた。
だから、
少しだけ優しくなれる。
あの人には
あの人のガチャガチャがあった。
私には
私のガチャガチャがあった。
見えていないだけで、
みんな違う景色を背負っている。
幸せとは何か。
人生とは何か。
最後まで
わからないかもしれない。
それでも、
わからないまま
誰かと笑い、
誰かを愛し、
誰かに支えられながら
生きていく。
もしかすると、
それこそが
答えのない問いに対する
人間なりの答えなのかもしれない。
そして今日もまた、
世界のどこかで
カラン、と音がする。
新しい誰かが、
この不思議なガチャガチャの中へ
やって来る。
右に回して、