ママには内緒。~バブバブ井戸端会議~ 社会人編
最終話「バブバブ井戸端会議。」
休日の午後。いつものカフェに、凪、嵐、雪、空の四人が集まっていた。
窓の外には、柔らかな春の日差し。テーブルには、それぞれが注文した飲み物と、嵐が持ってきた手作りのお菓子が並んでいる。
「……こうして四人で集まるのも、ずいぶん長くなったわね」
凪がカップを手に、しみじみと呟いた。
「赤ちゃんの頃からだからね。あの頃は、みんな将来のことなんて、まだぼんやりしていたのに」
空が懐かしそうに笑う。
「今じゃ、凪は病院の心理カウンセラー、空は塾の先生、雪は獣医師、俺は料理人!」
嵐が指を折りながら、誇らしげに言った。
「……料理人というより、料理動画の配信者と子ども食堂の活動もしている、でしょう?」
雪がすかさず訂正する。
「細かいことはいいじゃん!」
「……大人になっても、そこは変わらないわね」
凪が笑った。
「でも、みんな本当に頑張っているよね。それぞれの仕事で、誰かを支えている」
空の言葉に、三人は静かに頷いた。
「……そして、嵐と雪は夫婦になった」
凪がふたりに視線を向ける。
「えへへ。そうなんだよ!」
嵐が雪の肩に腕を回す。
「……嵐、カフェでくっつきすぎ」
「いいじゃん!夫婦なんだから!」
「……そういう問題じゃないわ」
雪が照れながら腕を外すと、三人は笑い出した。
「……私たちも、いつかはね」
凪が空を見つめる。
「うん。僕たちも、僕たちのペースで考えていこう」
空は優しく微笑み、凪も穏やかに頷いた。
それぞれの人生。それぞれの歩み。
けれど、四人の友情は、あの頃から何ひとつ変わっていなかった。
🌸 あの日のバブバブ井戸端会議
「……ねぇ、みんな。覚えてる?」
凪がふと尋ねた。
「何を?」
嵐が首を傾げる。
「私たちが、最初にママの愚痴を言い合った日のことよ」
「ああ!覚えてるよ!」
嵐が大きく頷いた。
「凪のママの料理が焦げて、俺の母親は謎のオリジナル料理を作って、雪のママは健康志向で量が少なくて、空のママは料理が完璧!」
「……あの頃から、母親の料理の話ばかりだったわね」
雪が苦笑する。
「でも、あの頃は、ただ不満を言い合っていただけだったかもしれない」
凪は少し考えながら続けた。
「今は、ママたちにも、それぞれの事情や悩みがあったことが分かるようになったわ」
「うん。仕事で疲れていても、家族のために食事を作ってくれたり、健康を気遣ってくれたり、将来を心配してくれたり……」
空が頷く。
「親も完璧じゃないし、僕たちと同じように迷ったり、悩んだりしていたんだよね」
「……それでも、私たちを大切に育ててくれた」
雪が静かに言った。
「だから、今は感謝しているわ。もちろん、昔の不満が全部消えたわけじゃないけれど」
「……そこは、変わらないんだね」
凪が笑う。
「好きと評価は別問題よ」
「出た!凪の名言!」
嵐が大笑いする。
「……でも、あの頃の私たちがいたから、今の私たちがあるのかもしれないわね」
凪の言葉に、空が優しく頷いた。
「そうだね。あの井戸端会議が、僕たちの大切な居場所になっていたんだと思う」
🌪️ 嵐、まさかの提案!
「……よし!」
突然、嵐が立ち上がった。
「俺、ひとつ提案がある!」
「……何?」
雪が少し警戒する。
「これからも、ずっと四人で集まろうよ!」
嵐は満面の笑みで続けた。
「仕事が忙しくなっても、家族が増えても、年を取っても、ずっと!」
「……いいわね」
凪が微笑んだ。
「もちろん。私たちの大切な時間だもの」
空も頷く。
「うん。これからも、定期的に集まろう」
雪も笑顔で同意した。
「……ただし、嵐。集まるたびに、お義母さんの新作料理を持ってくるのは禁止よ」
「えっ!?なんで!?」
「……あなたのお母さんの料理、以前より進化しているんでしょう?」
「そうなんだよ!最近は、納豆チョコレートカレーに、いちごジャムだけじゃなくて、焼きマシュマロまで添えるようになったんだ!」
「…………。」
一瞬、三人が沈黙した。
「……進化というより、複雑化しているわね」
凪が冷静に呟く。
「……それ、料理なの?」
雪が真顔で尋ねる。
「……俺にも分からない」
嵐は遠い目をした。
「……母さんにも分からないと思う」
その言葉に、全員が吹き出した。
☁️ 空の提案「今度は、僕たちが作ろう」
「……でも、せっかくなら、今度は僕たちが母親たちを招待してみない?」
空が提案した。
「えっ?」
凪が顔を上げる。
「僕たちが料理を作って、母親たちに食べてもらうんだ。これまで育ててくれた感謝を込めて、みんなで食卓を囲むのはどうかな?」
「……それ、いいわね!」
雪が笑顔になった。
「私たちが大人になった姿を、ママたちにも見てもらえるものね」
「いいね!俺が料理を担当するよ!」
嵐が張り切る。
「……あなたの料理なら安心ね。お義母さんのレシピを使わなければ」
雪が念を押す。
「分かってるって!俺の料理は、ちゃんと美味しいんだから!」
「……じゃあ、私は献立を考えるわ。栄養バランスも大切だもの」
雪が続ける。
「私は、みんなが無理なく準備できるように、役割分担を考えるわね」
凪が微笑んだ。
「僕は、母親たちへの招待を担当するよ」
空が頷く。
「……決まりね!」
四人は顔を見合わせ、笑顔で頷いた。
それぞれの仕事で培った経験を生かしながら、今度は親たちへ感謝を届ける。
それは、子どもの頃には想像もできなかった、新しい家族の時間だった。
🍽️ 感謝の食卓
数週間後。
四人は、それぞれのママを招待し、手作りの料理でもてなすことにした。
会場は、空の実家の広いリビング。
テーブルには、嵐が腕を振るった料理が並んでいた。雪が栄養バランスを考えて献立を整え、凪が準備の進行をまとめ、空が母親たちを迎えた。
「みなさん、今日は来てくださってありがとうございます」
空が丁寧に挨拶する。
「まあ、こんなに素敵な食事を用意してくれたの?」
凪のママが嬉しそうに目を輝かせる。
「わぁ!嵐、すごいわね!」
嵐の母も感激していた。
「俺たちからの感謝の気持ちです!」
嵐が笑顔で答える。
「俺たちを育ててくれて、ありがとう!」
四人は、ママたちの前で頭を下げた。
「……まあ……」
凪のママは、目元を押さえた。
「みんな、大きくなったわねぇ……」
雪のママも、嬉しそうに微笑んでいる。
「本当に、立派になったわね」
空のママは、息子たちを見つめながら頷いた。
「こちらこそ、ありがとう。あなたたちが元気に成長してくれて、それが何より嬉しいわ」
嵐のママは、涙ぐみながら息子を抱きしめた。
「嵐〜!ママ、感激よぉ!」
「……母さん、ありがとう!」
親子の温かな抱擁に、みんなの顔もほころんだ。
そして、いよいよ食事の時間。
「それでは、いただきましょう!」
凪の声で、全員が箸を手に取った。
「……あら!この煮物、美味しいわね!」
凪のママが驚いたように言った。
「ありがとう。ママが昔作ってくれた味を思い出しながら、作ったの」
凪は少し照れくさそうに笑った。
「……そう。覚えていてくれたのね」
ママは嬉しそうに頷いた。
雪のママも、娘の料理を味わっていた。
「雪、野菜の組み合わせがいいわね。栄養バランスも考えられているし、とても美味しいわ」
「ありがとう、ママ。今日は、量もしっかり用意したわよ」
「ふふっ。嬉しいわ」
空のママは、息子が作った料理を口に運んだ。
「空、あなたも料理が上手になったのね」
「母さんが教えてくれたおかげだよ」
空は照れくさそうに笑った。
そして、嵐のママは、息子の料理を一口食べると、目を輝かせた。
「まあ!嵐、本当に美味しいわ!」
「でしょ!今日は、みんなに喜んでもらえるように頑張ったんだ!」
「……ねぇ、嵐」
ママがにっこり笑った。
「この料理に、ママの新作ソースをかけてみない?」
「…………。」
嵐の笑顔が固まった。
「……母さん?」
「今日は特別に、納豆チョコレートソースを持ってきたのよ♡」
「……母さん!!今日は感謝の食卓だよぉぉぉ!!」
一同は大爆笑。
「……お義母さん、せっかくだから、まずは嵐の料理をそのまま味わいましょうね」
雪が優しく、しかしきっぱりと言った。
「……そうね。今日は嵐の料理を楽しむわ!」
嵐は胸をなでおろした。
「……よかったぁ……!」
💗 親から子へ、子から親へ
食事が進み、ママたちがそれぞれ昔の思い出を語り始めた。
凪が小さい頃、転んで泣いて帰ってきた日のこと。
嵐が初めて料理を手伝い、台所を大混乱にした日のこと。
雪が動物を助けたいと言い出し、獣医師になる夢を語った日のこと。
空が勉強を頑張り、将来は子どもたちを教える仕事がしたいと話していた日のこと。
「……あの頃は、みんな小さかったのにね」
凪のママが懐かしそうに笑う。
「今では、立派に仕事をして、それぞれの人生を歩んでいるんだもの」
雪のママが頷いた。
「親として、こんなに嬉しいことはないわね」
空のママも、優しい眼差しで子どもたちを見つめた。
「……でも、これからも、何かあったらいつでも相談してね」
「もちろんよ」
凪が笑顔で答える。
「私たちも、これからはママたちの力になれるように頑張るわ」
「そうだね。お互いに支え合っていこう」
空が頷いた。
嵐はママの隣に座り、少し照れながら言った。
「……母さん。これからも、料理のことを教えてね」
「もちろんよ!ママの新作料理も、どんどん教えてあげるわ!」
「……いや、そこはほどほどで!」
雪が笑い、凪と空もつられて笑った。
それぞれの親子が、これまでの時間を振り返りながら、これからの未来を語り合う。
そこには、子どもの頃とは違う、対等な大人同士の関係が少しずつ育っていた。
🌸 そして、いつもの4人へ
夕食会が終わり、母親たちを見送った後。
四人は、リビングに残って片付けをしていた。
「……今日は、いい時間だったわね」
凪が食器を片付けながら言った。
「うん。母さんたちも喜んでくれたし、僕たちも感謝を伝えられた」
空が頷く。
「……でも、嵐のお母さんの新作ソースは、ちょっと危なかったわね」
雪が笑う。
「……もう!今日はちゃんと阻止したじゃん!」
嵐が抗議する。
「……あなたのお母さん、最後までソースを勧めていたわよ」
凪が苦笑した。
「……そうなんだよ。母さんの料理への情熱は、まだまだ衰えないんだ……」
嵐は遠い目をした。
「……でもさ」
雪がふと、穏やかな表情で言った。
「私たちがこうして大人になって、親のことを理解できるようになったのも、四人で話してきたからかもしれないわね」
「……そうね」
凪が頷く。
「愚痴を言い合ったり、笑い合ったり、時には真剣に悩みを話したり。あの時間があったから、親のことも、自分のことも、少しずつ考えられるようになったのかもしれない」
「僕たちのバブバブ井戸端会議は、これからも続くんだね」
空が微笑んだ。
「もちろん!」
嵐が元気よく答えた。
「仕事のことも、恋愛のことも、家族のことも、何でも話そう!」
「……ただし、ママの新作料理の試食会は除外よ」
雪がきっぱりと言う。
「……ええっ!?」
嵐が大げさに驚いた。
「……だって、あなたのお母さんの料理は、予測不能なんだもの」
凪が笑う。
「……それは、否定できないね」
空も苦笑した。
「……みんな、ひどいよぉぉぉ!」
嵐の叫び声に、三人は笑い出した。
☕ エピローグ「これからも、ずっと」
数日後。
四人は、いつものカフェに集まっていた。
窓の外には、穏やかな春の風が吹いている。
「……これからも、こうして集まれるといいわね」
凪がカップを手に微笑んだ。
「うん。仕事が忙しくなっても、家庭ができても、時間を作って集まろう」
空が頷く。
「私たちは、それぞれ違う人生を歩んでいるけれど、ここに来れば、いつでも昔の私たちに戻れるものね」
雪が優しく笑った。
「そうだね。大人になっても、四人で集まれば、やっぱりバブバブだ!」
嵐が胸を張る。
「……その言い方、どうにかならない?」
凪が苦笑する。
「いいじゃん!俺たちの大切な合言葉なんだから!」
嵐は笑顔で続けた。
「これからも、ずっと四人で、バブバブ井戸端会議を続けよう!」
「……そうね」
凪が微笑む。
「これからも、よろしくね」
「こちらこそ」
空が頷いた。
「よろしくね、みんな」
雪も笑顔で答えた。
四人は、それぞれのカップを持ち上げた。
「これからも、よろしく!」
カップが軽く触れ合い、澄んだ音が響いた。
子どもの頃、ママの料理や子育てに文句を言い合っていた四人。
大人になった今、親の苦労や愛情を少しずつ理解し、それぞれの人生を歩み始めている。
仕事に悩み、恋に悩み、家族のことで悩む日もある。
それでも、四人で集まれば、笑い合える。
親への感謝も、友人への信頼も、恋人への愛情も、少しずつ形を変えながら、これからも続いていく。
そして、いつか彼ら自身が親になったとしても――。
きっと、子どもたちには内緒で、こんな井戸端会議を開くのだろう。
「……ねぇ、みんな。うちの子がね……」
「……うちのママもね……」
そんな未来を想像して、四人は顔を見合わせた。
「……ふふっ。私たち、いつまでたっても変わらないわね」
凪が笑った。
「それが、僕たちらしさだよ」
空が答える。
「よーし!次回は、俺たちの子どもたちの話で盛り上がろう!」
嵐が張り切る。
「……まだ気が早いわよ!」
雪のツッコミが飛ぶ。
四人の笑い声が、カフェいっぱいに広がった。
ママには内緒。~バブバブ井戸端会議~
社会人編・完結
大人になっても、親への愛情は変わらない。 友達との絆も、これからずっと続いていく。
そして、ママの料理の評価は……やっぱり別問題!
――おしまい。💐
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