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【雲間月怪異譚】 第話④

    柚子茶

    【雲間月怪異譚】第話 号宀④

    幜霊になるず蚀うこずは、この䞖に恚みがあるから
    それずもこの䞖に未緎があるから

    私は、実録怪談ずいうこの䞖に残る怪談を人に聎かせる仕事をしおきた。

    挔技を乗せお誇匵があったかもしれない。でも、私が取材をしお受け取った残滓をどう衚珟しようず考えた結果である。

    私こず秋野しのぶは、今真っ暗な䞖界で金瞛りにあっおいる。

    立ったたたの金瞛りは初めおだ。
    真っ暗なので、今日がい぀なのか、昌なのか倜なのかさえわからない。

    ホテルに導かれお、号宀に呌ばれたのよね

    恐怖よりも冷静に刀断しおいる自分に苊笑いをしおしたう。
    だが、それは気取られないように挔技しなければならない。

    元気な様子、ぞこたれない様子はここに閉じ蟌めた者の意に反するようだからだ。

    怪談奜きの怪談垫を怖がらせようたっお、ハヌドルめちゃくちゃ高いず思うのよねぇ。もう、若すぎるずいう幎霢ではない。
    それなりの人生経隓を経お、今怪談垫及び怪談䜜家を自称しおいるのだ。
    どちらかず蚀えば、無事に垰るこず。この怪異を䜙すこずなく蚘憶しお本に曞いおやるっお気抂がもう溢れんばかりに膚れ䞊がっおいる。

    「幎増はダメね」

    暗闇に女性の声がした。

    なんお倱瀌だろうなんお自分勝手で閉塞的な人なんだろうず
    思うのは勝手よね。

    「どうしおっお思っおるでしょう。ここで少し話を聞いおもらおうかしらね」

    真っ暗闇で声だけが響く。この声がここの怪異なのか
    実䜓があるならば、埀埩平手打ちくらいお芋舞いしたいず思いながら黙っお聞いおいた。

    ◇◇◇
    かれこれ什和に入っおすぐの頃
    ずおも深い恋愛をしおしたったのが䞍味かったの。

    たさか自分がそこたでのめり蟌む系だなんお思っおいなかった。
    指導係で始たった関わりが、呚りにも気づかれる䞍倫だなんお思わなかった。
    圌は、私に䌚うずきは、指茪を倖しお仕事もプラむベヌトも倧人の遊びに゚スコヌトしおくれたし、私もその関係に倢䞭になった。

    その関係性にひびが入ったのは、倏の日のホテルだった。
    1523号宀の窓から眺める倜景を芋ながら、私は将来の話をした。
    「そんな本気にしないで。今たでの関係でいいじゃないか」

    その蚀葉を聞いた瞬間。

    胞の奥で、䜕かが音を立おお冷えた。

    「  そう」

    私は笑った。

    笑うしかなかった。

    だっお、それたで私は、自分だけが特別なのだず思っおいたから。

    圌が仕事䞭には芋せない顔を芋せおくれるこず。
    私ず䌚うずきだけ指茪を倖しおいたこず。
    店を遞ぶのも、ホテルを遞ぶのも、い぀も圌の方だったこず。

    その党郚が。

    私だけに向けられたものだず思っおいた。

    「でもね」

    暗闇の䞭で、女の声が少しだけ近くなった。

    「女っお、銬鹿よね」

    私は黙っおいた。

    「愛されおいるず思い蟌むず、芋えなくなるのよ」

      劙な蚀い方だった。

    たるで、誰かに蚀い聞かせおいるような。

    「私は圌の家庭を壊したいわけじゃなかった。ただ、い぀か私のずころぞ来おくれるず思っおいたの」

    「  」

    「だから埅った」

    声が少し笑った。

    「半幎」

    たた笑う。

    「䞀幎」

    そしお。

    「二幎」

    私は眉を寄せた。

    そこたでは、よくある話だった。

    䞍倫盞手ずの別れ。
    捚おられた女。
    そしお、その恚みが怪異になった。

    怪談ずしおは、珍しくない。

    「でもね」

    声が止たった。

    暗闇が、劙に静かになった。

    「圌が最埌に蚀ったのよ」

    『君だけじゃなかった』っお。

      ん

    私は、その蚀葉に匕っかかった。

    「君だけじゃなかった」

    思わず声に出しおいた。

    するず。

    女が、嬉しそうに笑った。

    「そう」

    「私の他にも、いたのよ」

    その瞬間。

    遠くで、䜕かが鳎った。

    カチン。

    金属が觊れ合うような、小さな音。

    私は反射的に音のした方ぞ顔を向けた。

    圓然、䜕も芋えない。

    「指茪よ」

    女が蚀った。

    「圌が倖しおいた指茪」

      指茪。

    私は息を止めた。

    「圌ね、私ず䌚うずきは必ず倖しおいたの」

    「  ええ」

    「でも」

    声が少しず぀䜎くなる。

    「私ず別の女ず䌚うずきも、倖しおいたの」

    カチン。

    たた音がした。

    今床は、少し近い。

    「だから私、考えたの」

    「  䜕を」

    「指茪を倖す必芁なんお、なくしおしたえばいいっお」

    ぞくり、ず背䞭に冷たいものが走った。

    「圌の指からじゃないわよ」

    女が笑う。

    「指茪そのものを」

    カチン。

    カチン。

    カチン。

    金属音が䞀定の間隔で響き始める。

    私は息を殺した。

    その音は、どうやら䞀぀ではない。

    耇数の䜕かが。

    暗闇のどこかで。

    互いに觊れ合っおいる。

    「私ね」

    女の声が、すぐ耳元でした。

    「ここで埅っおたの」

    私は動けない。

    いや。

    動けないのは、金瞛りのせいだけじゃない。

    「圌がたた来るず思っお」

    耳元で、女が囁く。

    「私のずころぞ」

      違う。

    私はそう思った。

    䜕かがおかしい。

    さっきたで、この女は「捚おられた女」の話をしおいた。

    けれど。

    だったら、なぜ。

    「  あなたは、ここで䜕幎埅っおいるの」

    そう聞いた瞬間。

    女の気配が消えた。

    暗闇の䞭に、私䞀人だけが取り残される。

    しばらくしお。

    女が答えた。

    「䜕幎」

    その声には。

    さっきたであった恚みも悲しみもなかった。

    ただ、䞍思議そうな声だった。

    「だっお、昚日の倜よ」

    私は息を呑んだ。

    「  昚日」

    「そう」

    クスクスず笑う。

    「昚日、圌がここに来たの」

    「  誰ず」

    聞いおしたった。

    聞かなければよかった。

    「あなたず」

    䞀瞬。

    意味が分からなかった。

    「  私」

    「そうよ」

    女が楜しそうに蚀った。

    「あなたず䞀緒に、この郚屋に入っおきたでしょう」

    心臓が、倧きく跳ねた。

    「私は  」

    蚀葉が出ない。

    「あなた、芚えおないの」

    暗闇の向こうから。

    女が笑っおいる。

    「じゃあ、芋せおあげる」

    カチン。

    たた、金属音。

    今床は䞀床だけ。

    そしお。

    暗闇の䞭に、がんやりず䜕かが浮かび始めた。

    窓。

    倜景。

    ホテルの郚屋。

    ベッド。

    そしお――。

    窓際に立぀、男の埌ろ姿。

    私は目を凝らした。

    その男が。

    ゆっくりず振り返る。

    顔は芋えない。

    けれど。

    右手だけが、劙にはっきりず芋えた。

    薬指に。

    指茪がある。

    私は息を止めた。

    「  違う」

    思わず呟く。

    「それは  」

    私が知っおいる指茪じゃない。

    それどころか。

    その手には――

    指が、六本あった。


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    こんにちは、柚子茶です。 ミステリヌや、ファンタゞヌ物語が奜きです。 今は、久々に 『転生したら魔法の仕様が芋えるんですが〜元テクニカルラむタヌが、異䞖界魔法をデバッグしたす〜』 お寄りくださるず幞いです。 静かな田舎で賑やかな猫達ずの時間を倧切にしおたす🍋

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