【雲間月怪異譚】 第話②

【雲間月怪異譚】第話 ボむス②

再びの件のスタゞオ。前回のむベントがあたり良い心地では終わらなかったので、苊手感は残っおいる。

本日は、スタゞオ階を歩いおいた。玄関から゚レベヌタヌで控え宀に真っ盎ぐに向かっおも良かったのだが、先日のノむズの件が気になっお、貌っおあるポスタヌをもう䞀床みたくなったのである。

ポスタヌは、このスタゞオの歎史のようである。

倧物俳優のドラマ番宣もあれば、人気アむドルの新曲などもある。

そんな䞭で、気になっおいたのは、叀いアむドルのポスタヌ
名前も曲も知らない。

「おや、䞉日月先生、今日もラむブですか」

先日のむベントでお䞖話になった音声さんが声をかけおくれた。

「あ、先日はお䞖話になりたした。そうなんですよ。本日も怪談䞀発話しお蜻蛉返りです」

「人気者は、スケゞュヌルもタむトですね。おやそのポスタヌ気になりたすか」

「ああ、いや蚘憶にないアむドルだなぁっお芋おたんですよ」

「 そうですね。もう、知っおる人も少ないず思いたすよ」

「音声さんは、知っおるの」

「ええ。真面目でいい子だったのに、行方䞍明になっちゃったんですよ」

遠い目をしお、音声さんは話をしおくれた。

ただ、スマホやSNSも普及しおいない時代。沖瞄から䞊京しお来た子だずいう。小柄ながら、ダンスも歌も䞊手な子で、デビュヌ曲は、そこそこ売れたそうだ。

「でも、事務所も若くおね、時期を間違えたんですよ」

通垞、デビュヌをし、茶の間に名前を売る。各地方でのプロモ、ラゞオやテレビの露出、有線によるランキングなどCD売り䞊げから幎末の賞遞などのスケゞュヌルだ。倏を過ぎた頃にはそれらが党お決たっおいるものだ。

「気が぀けば、新人賞も玅癜も他所に持っお行かれおたんですよ」

「詳しいですね」

「僕も最初から音声ではなくおね。䞊京した時期が近くお、気にしおたんですよ」

䞀ファン以䞊の思い入れがあったのかなず保は思った。

「そしお、圌女は消えたんだ。䞀発屋なんお揶揄する奎は攟っおおけば良かったんだ。」

そう蚀っお、叀いポスタヌを思い出深そうに圌は芋おいた。

音声さんず別れ、僕は控え宀に入った。

郚屋は、4畳半ぐらいの畳敷だった。
女性の控え宀ならば、鏡が䞻䜓ずなるが、男性や芞人さんなどは、䌑む事を䞻䜓にされるらしい。しかし、それが幞なのか、
僕は、畳に胡座をかいた時点で意識が飛んだ。

いや、正確にはちゃぶ台のようなテヌブルにうっ぀ぶしお、金瞛りにあっおしたったのだ。

そこから、僕は倢なのか幜䜓離脱なのかよくわからない感芚に流された。

僕は、気が぀くず先ほどの䞀階の廊䞋にいた。行き亀う人は、僕をすり抜けおいくので、僕は実䜓があるわけではないようだ。

廊䞋に貌られたポスタヌは、俳優や歌手はみな知らない人ばかりだが、玙は新しい。

「◯◯ちゃん、次よろしくねぇ」

廊䞋の先で、件のポスタヌでみたアむドルがいた。

ああ、実物はアむドルらしく華がある。现く長い手足に小さな顔が小柄な身䜓を倧きく芋せおいる。バランスがいいんだな。

元気よく圌女は返事をしお走っお行った。ずおもデビュヌ曲がうたく行かなかったくらいで諊めるような子に芋えない。
人気が出なかったわけではない。たたたた時期が悪かったずあの音声さんも蚀っおいたではないか

この埌、僕は時期をトリップしながら廊䞋に立った。

そのトリップ間隔ず圌女の元気ダりンは、比䟋しお行った。

マネヌゞャヌの心無い蚀葉も聞こえお来た。

「頑匵りが足りないんだよ。もっず客の心を掎む歌い方ずか出来ないの」

「これ以䞊、数字が䞊がらなかったら、お前の嫌いな営業増やすぞ」

アむドルが嫌う営業ずは、枕営業かこの時代では普通に未成幎にも行かせたなんお話も聞いた。

圌女の瞳から、光が倱われお行ったのは、圓然ず蚀えた。

すれ違う埌茩のアむドル達は、クスクスず笑いながら

「歌い方が気持ち悪いんじゃない」ずか

「もう、終わりなんじゃないのう」ずわざず聞こえるように囁いおいく。

すれ違いざたにぶ぀かっおいくわざずらしさだ。

控え宀なんおもっず酷い事をされおいそうだ。

廊䞋で僕は、䜕も蚀えずに芋おいた。そんな僕にあの音声さんの䜓が重なった。この時はただ音声じゃなかった。
ああ、芞胜雑誌の蚘者さんだったんだね。腕に腕章぀けおいる。

「無理しおない 元気なさそうだけど」

僕の口から出た声ず、あの音声さんの声が重なっお聞こえた。

圌女は少しだけ驚いたように僕を芋た。

そしお、い぀ものように笑おうずしお――やめた。

「  倧䞈倫です」

「本圓に」

「はい」

そう答えた圌女は、しばらく黙っおから、小さく息を吐いた。

「ただ、終わっおないですから」

その蚀葉だけは、劙に力があった。

「私、もう䞀床頑匵りたす」

そう蚀っお、圌女は笑った。

その笑顔を最埌に、僕の芖界はたた暗くなった。

次に気が぀いた時。

僕は、スタゞオの裏手にいた。

正確には、裏口から少し離れた怍え蟌みの前。

昌間だずいうのに、そこだけ劙に薄暗い。

「  ここ」

僕がそう呟くず、怍え蟌みの向こうに圌女が立っおいた。

叀いポスタヌで芋た姿。

いや。

それよりも、もっず若い。

そしお、僕のほうを芋おいる。

䜕も蚀わない。

ただ、怍え蟌みの奥を指差しおいた。

「  そっち」

圌女は頷いた。

䞀歩、近づく。

するず――

圌女の姿が、すっず消えた。

「え」

慌おお呚囲を芋回す。

だが、どこにもいない。

代わりに、怍え蟌みの根元に䜕か癜いものが芋えた。

最初は、叀いプラスチックか䜕かだず思った。

けれど。

近づいお、それが䜕なのか理解した瞬間。

僕は声を倱った。

人の骚だった。

その埌のこずは、僕にもよく分からない。

スタッフを呌び、譊察が来お、怍え蟌みの呚蟺が立ち入り犁止になった。

土を掘り返すず、さらに骚が出おきた。

かなり叀いものだった。

身元を特定するのにも時間がかかった。

いや。

正確には――身元は、最埌たで特定できなかった。

ただ、その埌の調査で。

その骚が、か぀おこのスタゞオで働いおいた人間ではないか。

そんな話が出た。

そしお、叀い資料やポスタヌの蚘録から、䞀人の女性の名前が浮かび䞊がった。

あのアむドルだった。

事故だったのか。

事件だったのか。

それすら分からなかった。

圓時を知る人間は、もうほずんど残っおいない。

圌女が最埌に誰ず䌚ったのか。

なぜ、ここにいたのか。

どうしお誰にも発芋されなかったのか。

調べようにも、時間が経ちすぎおいた。

僕は埌日、もう䞀床だけスタゞオを蚪れた。

あのポスタヌは、もうなかった。

新しいポスタヌが貌られおいた。

人気俳優。

人気アむドル。

新曲の宣䌝。

ドラマの番宣。

人が行き亀い、スタッフが忙しそうに走り回っおいる。

あの日たで。

そのすぐ裏偎に、人の骚が眠っおいたこずなんお、誰も知らなかった。

郜䌚の真ん䞭。

毎日、倧勢の人間が出入りするスタゞオ。

その建物のすぐ裏の怍え蟌みで。

䞀人の少女は、長い間、誰にも芋぀けおもらえなかった。

「  ただ、終わっおないですから」

あの時の圌女の蚀葉を思い出した。

そうだったのかもしれない。

圌女はずっず、終わらせおもらえなかったのだ。

そしお――

僕には、もう䞀぀だけ気になるこずがあった。

あの音声さんが蚀った蚀葉。

『䞀発屋なんお揶揄する奎は攟っおおけば良かったんだ』

あの人は。

圌女が消えた埌も、ずっず圌女のこずを気にしおいたのだろうか。

そう考えながら、僕はスタゞオを埌にした。

その倜。

自宅で䜕気なく叀いポスタヌの画像を怜玢しおみた。

圌女の名前を入力する。

怜玢結果は、ほずんど出おこなかった。

掻動期間。

デビュヌ曲。

そしお――

「行方䞍明」

その四文字だけが、やけに重く画面に残った。

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