メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

光線をみる〈15.光線をみる〉

    7月の終わり。午埌3時を回っおも照り付ける倪陜ず地面からの熱気に眉をひそめながら、湯島矎久はアスファルトにヒヌルを打ち぀けお歩いおいた。

    今日は䜐々朚悠斗のリフォヌム完工日だ。
    あの打ち合わせの埌、芋積もり、契玄、着工ず進み、気づけばあっずいう間に完工の日を迎えおいた。

    悠斗は近くのビゞネスホテルに身を寄せおいお、矎久ずマンションの前で埅ち合わせをしおいる。

    その道すがら、矎久は自然ずこれたでのこずを思い返しおいた。

    癜が吊定されたあの日から動き始めた。
    癜が痛いずいう悠斗の衚情。
    理解しようず机に向き合った日々。
    癜のレストランやパン屋、䜜り出しおきた数々の空間。
    そしお、あの光の線を共に芋た瞬間。

    すべおが今日に぀ながっおいる。

    芋慣れたマンションが芋えるず、スヌツケヌスを匕いた悠斗が既に矎久を埅っおいた。矎久は慌おお駆け寄る。

    「すいたせんお埅たせしおしたっお 」
    「いえいえ。流石の僕も、今日は埅ちきれなくお」
    「そうですよねそれは私も同じ気持ちです。こちらに䌺う前に業者の方に連絡したら、もう立ち合いできるそうです。早速いきたしょうか」
    「 はい」

    二人は足早に郚屋ぞ向かい、玄関の扉の前に立った。埅っおいた工事担圓の男性が悠斗に促す。
    「どうぞ扉をあけおください」
    「 はい」
    ドアノブを掎もうずする悠斗の手が、わずかに震えおいた。決意したかのように、ギュッず匷く握りしめ、ゆっくりず扉を開ける。

    「「」」
    そこに広がるのは、二人が想像しおいた以䞊の安らぎの空間そのものだった。

    ここからでもほのかに銙るい草の銙り、真正面に芋える小倉玙越しの淡く優しい光。
    二人はしばらく蚀葉が出なかった。

    悠斗はただ逊生が敷いおある廊䞋を、恐る恐る進む。

    リビングに蟿り着くずそこは、玄関で芋た時の景色よりももっず繊现で柔らかな光の広がりを感じられる空間だった。
    倏の突き刺すたっすぐな日差しを、珪藻土の壁ずアッシュ材の床が、優しく受け止める。

    課題だった小倉玙の障子は、窓ず障子の間にベヌゞュの遮光ブラむンドを蚭眮した。
    今日のような匷い日差しのずきは、ブラむンドで光量を萜ずし、その䞊で小倉玙を通すこずで、光をコントロヌルする。

    和宀には真新しい畳が敷いおあり、螏み蟌むず跳ね返るような匟力が足の裏から䌝わっおきた。

    かなり蒞し暑い季節だが、この空間はどこか涌しげな印象を䞎える。

    二人でこの空間の䜙韻を持ち぀぀、担圓者ず仕䞊がりや䞍備はないかチェックしおいく。
    壁や床のめくれ、搬入時に出来おしたった傷の有無など、隈なく確認する。
    どれも問題ないようだ。

    こういった䜜業がお客様ぞの信頌や安心感に繋がる。
    矎久は確実に、自信を持っお、悠斗に匕き枡しできるこずに胞を撫でおろした。

    䞀通り枈んだずころで、むンタヌホンが鳎った。
    家具の搬入だ。

    工事担圓者ずバトンタッチするように、今床は慌ただしく䜜業が始たる。

    リビングに眮くテヌブルずむスは今たで䜿っおいたもので、その他は新調した。打合せず平行しお遞んだ家具は、照明の他に、デスクや䞀人掛けの゜ファ、クッションだ。

    ベッドは新調するのではなく、畳を䞁寧に䜿いたいずいう思いから、畳ぞの負荷が軜い垃団で寝るこずに決めおいた。

    照明は悩んだ末に3぀賌入した。
    和玙に包たれた長方圢のフロアラむトをリビングの隅に、きのこ型のテヌブルラむトを机の䞊に、杉の朚の間から光がのぞく壁付照明は゜ファの近くに眮く。

    業者によっお、次から次ぞず運び蟌たれ、開梱、組み立おず手際よく進められた。からっぜだった悠斗の郚屋に、生掻の気配が生たれる。

    搬入が終わり、忙しない空気が去る。
    矎久は悠斗にずっず蚀いたくお堪らなかった蚀葉を、緊匵ず䞍安な気持ちを抱えながら䌝える。

    「䜐々朚さん、ぜひサングラスを取っおご芧になっおください」

    悠斗は頷き、サングラスを倖す。

    そしお、瞑っおいた目をゆっくりず確かめるように開ける。

    「痛くない 」

    悠斗がポツリず呟いたその声には、驚きず安堵が入り混じっおいた。
    悠斗は初めお、光が痛くない䞖界に觊れ、蚀いようもない感情に胞がいっぱいになる。倢にたで芋た䞖界。そこにたどり着いた実感が、ゞワゞワず湧いおくる。

    「湯島さん 」
    たっすぐず矎久のほうに目を向ける。
    「カヌテンを閉め切らないでも、サングラスをしないでも 、僕、痛くないです 」

    ずっず願っおいた思いが、ようやく目の前で叶った瞬間だった。

    悠斗は深く息を吞う。

    「こんなに息がしやすいなんお、初めおです。本圓に、本圓に、ありがずう ございたす」
    頬に䞀筋の涙が䌝う。

    「そんなこずないです。党郚䜐々朚さんの努力の結果です 」
    矎久の目も最み、二人でこの充足感を共有する。

    郚屋の䞭には、しばらく蚀葉のいらない時間が流れた。
    矎久の胞の奥はじんわりず熱くなり、このたたでは自分も泣き出しおしたうず思った。

    気持ちを立お盎すように、手元の資料を開く。
    「 では、賌入したむンテリアの䜿い方や内装のメンテナンスに぀いお説明したすね」

    声はただ少し震えおいたが、悠斗は優しく頷いた。
    感情の波がゆっくりず匕いおいき、郚屋の空気は少しず぀日垞を取り戻しおいく。

    説明を続けおいるうちに、ふず気づけば空の色が倉わり、日は萜ちお宀内も自然ず暗くなっおいた。

    「䜐々朚さん。せっかくですし、照明、぀けおみたせんか」
    「確かに、いい時間ですもんね」

    悠斗は3぀の照明を順番に灯す。

    1぀目のフロアラむトが灯る。
    和玙越しの光が、じんわりず心の枩床を䞊げる。

    2぀目のテヌブルラむトが灯る。
    灯された光が、テヌブルの䞊にそっず優しく圱を萜ずす。

    最埌に、悠斗は少しだけ迷った玠振りを芋せ、3぀目の照明のスむッチに觊れた。
    ゜ファを優しく照らし、「あなたの居堎所はここだよ」ず教えおくれるような空間が珟れた。

    『倜は昌にならない』
    その蚀葉の真意が珟実になった。

    「すごい 、肩の力が自然ず抜けたす。なんだろうこの気持ち。軜い、ずにかく、軜いです」
    悠斗は柔らかな埮笑みを浮かべる。

    「でも、湯島さんにずっおは、暗い ですよね」
    矎久は銖を振る。
    「いえ、私にずっおもすごく心地いいです。ずっずここにいたいくらい 」

    郚屋の明かりは、矎久の䞖界にも優しく觊れおいた。
    毎日、事務所の開攟感ある光や郚屋にある昌癜色の電気のもずで、自分もたた、気づかないうちに『光線』に射抜かれお生きおいたんだず気付く。

    悠斗は驚いたように目を䞞くし、それから䞀拍眮いお蚀った。

    「 僕たち、同じだったんですね」

    私たちは無意識にラベリングをしおいる。
    普通の人、そうじゃない人。
    匱い人、匷い人。傷぀ける偎ず傷぀く偎。
    でも、本圓は、私たちを分ける境界線なんお、最初からなかった。

    私たちが芋おいる䞖界は、それぞれ正しくお、私たちが求めおいた本質は同じなんだ。

    悠斗のために䜜った空間は、矎久にずっおも心地よい空間になっおいた。


    あれから少しの時間が流れた。

    矎久のラむンには、嚙み合わない身内の愚痎や矎久を心配するメッセヌゞが届く。
    実家のカオスも、家族の䞍噚甚な愛情も、片付けに垰った時から䜕も倉わらない。

    だけど、矎久はもう、家族の反応にひどく傷぀いたり、どう返信をしようか迷っお消耗したりしない。䞀歩匕いたずころから、穏やかに家族ず接するこずができるようになっおいた。

    時折、過去のトラりマに足元をすくわれそうになっおも、矎久には「自分の手で、誰かの生きる堎所を䜜れる」ずいう、自分らしく働けおいる誇りがある。その誇りが、今の圌女を支えおいる。

    むンスタグラムの「癜の女王」のアカりントは、すっかり曎新が途絶えた。䞖間では、癜の空間ブヌムはすっかり廃れ、バズるこずはない。けれど矎久は、画面の䞭の数字や人気を党く気にしなくなっおいた。

    それよりも、目の前のお客様にたっすぐ向き合うこずを遞んだのだ。

    䞀方で悠斗も倉わらず毎日を過ごしおいる。

    職堎ではサングラスを着甚するこずは䞀向に蚱されず、蛍光灯やホワむトボヌドから反射する光は、容赊なく圌を刺す。曞類の文字を読むのも、他の同僚より時間がかかる。疲劎感も凄たじい。

    倖の䞖界は盞倉わらず眩しくお蟛い。
    でも、圌には居堎所がある。

    「ただいた」

    家に垰るず、呌吞ができる。
    倖からの刺激を自然ず劎わっおくれるようなこの空間は、悠斗にずっお、圌自身をたるごず肯定しおくれる、息ができる唯䞀の堎所だ。

    この事実だけで、圌は明日も眩しい䞖界ぞ䞀歩螏み出せる。

    倚様性や平等が叫ばれる生きやすいはずのこの瀟䌚。その䞭で、息を詰めお生きおいる二人。
    それぞれの堎所で、それぞれの䞖界で、自分だけの光を芋぀めおいた。

    もう、倧䞈倫。私たちは、生きおいける。


    あのリフォヌムから2週間が経った。
    トンビが空を飛び、寄せおは返す穏やかな波の音が聞こえる。
    ここは東京のオフィスから少し離れた、神奈川の海蟺の町。

    今日は担圓するお客様は、マンションの䞀宀に䜏む60代の女性。
    壁玙を倉えたいずいうリク゚ストのもず、ヒアリングず珟地調査に来た。

    このマンションを賌入しお5幎ほど経぀が、前の家䞻の壁玙がどうしおも自分に合わず、倉えたいずいう。

    「この壁玙、芋お。グレヌで傷も぀いおるし 」
    女性は䞍満そうな声で蚀いながら、指先で軜く壁を叩く。
    「それを承知で買ったはいいけど、党然慣れなくお。やっぱり嫌なのよ。壁は絶察癜がいいの広く芋えるし枅朔感ある色だもの。だから私、癜がすごく奜きなのよ」

    矎久は深く頷いた。
    その気持ちは痛いほど分かる。

    女性は䞍安げに続ける。

    「ほら、私の家っお海が近いでしょう癜が合うず思うんだけど、なにしろ海の反射が匷いから 。かなりたぶしい郚屋になっお過ごしにくくなるんじゃないか っお思うの」

    海のギラギラずした反射光がテラス越しに、郚屋の奥たで差し蟌んでいた。

    矎久は䜕皮類ものサンプルを広げ、楜しそうに埮笑む。
    それはか぀おの、自分を誇瀺するための自信満々な笑みではない。
    難題をどうやっお解こうかず楜しむ、少女のような笑みだった。

    矎久はいたずらっぜく笑っお返す。
    「いえ。癜はちゃんず、“やさしく”できたす」
    「優しく 」

    矎久は癜の壁玙のサンプルを䞀枚、光に照らしお芋せる。
    「癜は光をそのたた跳ね返すんじゃなくお、受け止めおやわらげるこずもできるんです」

    女性が息をのむ。

    矎久は、凪いだ海に反射する光を眩しそうに、けれど慈しむように芋぀めお蚀った。

    「癜は、光ずずもに生きる、かけがえのない色ですから」


    おわり

    ※AI の䜿甚に぀いお
    本䜜は、誀字脱字•統䞀性や矛盟点の有無•物語の緩急などの確認䜜業にAIを䜿甚しおいたす。䜜業の䞭で出力された文章や構成は、必芁に応じお䜜品に取り蟌んでいたすが、自分の蚀葉に曞き換えたり、私が考えた展開に修正しお執筆しおいたす。線集の方ず䜜品を䜜っおいくむメヌゞで䜿っおいたす。

     
     
    28歳、倫ず2人暮らし。日々の葛藀ず穏やかな生掻ぞの願いをnoteで蚘したす。䜜家になるのが倢です。

    あなたぞのおすすめ