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73.短文 むかし京橋に100%チョコレートカフェがあって、

    そこが大好きで、東京へ行った時には必ず寄っていた。明治製菓の本社ビルの1Fにあって、オープン中は爽やかな水色の看板が立っていた。(その水色はお店のイメージカラーだった。)お店に入ると数字が書かれた小さな正方形の箱がずらりと並んでいて、その箱には一つ一つ違った味の、タブレット型のチョコレートが入っているのだ。ミルクやベリーなどオーソドックスなものから黒胡椒やレッドチリなどの変わり種もあった。自分は和三盆が好きだった。

     確か「贈るチョコレート」がコンセプトだったと思う。人にあげたこともあったし、人からもらったこともあった。嬉しくて可愛くて、その約5センチ四方の箱を大事に取っていた。でも今はない。どこへ行ってしまったのだろう。

     100%チョコレート“カフェ”という名前なのでもちろん食事もできた。自分はそこのホットチョコレートが大好きだった。飲み比べセットもあった気がする。あとチョコクロワッサンだ! これも美味しかった。

     美味しかった! 好きだった! そして、また行きたい! と話すことはできるのにその場所がもうどこにも存在しない、という事実は、すごく不思議なことだ。なぜないの? どこへ消えたの? という問いをどれだけ繰り返してもその場所にはもう二度と行くことはできない。十数年経った今でもこんなにはっきり覚えているのに。

     暮らす、ということは、もう二度と行けない場所ばかりが増えていく、ということだ。人はそれを“思い出”と呼んだりする。思い出が増えていく、ということはピカピカした明るい出来事に違いないのだけれど、だけれども自分は、それを少し寂しいことだと思ったりもするのだ。

    おわり


    0.短文 書いた短文をまとめてる。|サトウのび

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