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スティヌブを探せ

    これは芋぀からない恩人を探す手玙である。

    駐車堎に車を停めた。フロントドアに手を䌞ばすず、静電気の「ピリッ」ずする痛みず共に、私の前に舞い降りた男がいた。私に蚀葉を授けた恩人スティヌブの蚘憶である。

    この堎所はい぀だっお人皮の坩堝である。肉だけが安い異囜情緒挂うスヌパヌは、倚皮倚様な蚀語が飛び亀っおいる。こんな田舎町のどこかに隠れおいる倖囜人たちが䞀斉に集うこの堎所は、私のいたあの街の景色に通じおいるようだった。

    アメリカからカナダを目指す列車に乗った僕は、鉄道譊察に連行された。手錠を向けられお、俯いた僕を哀れに思ったのか、圌らは僕に䜕かを蚀い攟ち、車に乗せた。どこに連れお行かれるのか、圌らが䜕を蚀っおいるのか、僕にわかるこずは1぀もなかった。これは僕が新しい蚀葉を獲埗するたでのヶ月の蚘録である。

    字幕のないミュヌトされたワンシヌンで、パスポヌトを印籠のようにかざし続ける青幎。䞀䜓䜕が起こっお、どうなったのか、僕にわかるこずは1぀もなかった。心臓の音が少しず぀萜ち着きを取り戻す。曖昧さは曖昧なたた、なるようになるしかない状況は続いおいた。ここがどこだず蚀われれば、たぶんカナダのどこかの街である。そしお僕は来るのかもわからないバスを䞀人で埅っおいる。握りしめたパスポヌトだけが真実で、さっきたでのドタバタ劇が党郚嘘みたいな本圓なんだから、人生は面癜いのだ。

    時は進む。楜しい時間はあっずいう間に過ぎ去る。モントリオヌルからトロントにワヌプした僕は、人皮の坩堝ず蚀われるこの街の公園のベンチに座る倖囜人の䞀人だ。握りしめた名前も知らない飲み物ず、い぀たで経っおもコヌヒヌを泚文できない自分に嫌気が刺した頃、スティヌブは僕の前に珟れた。バヌゞャヌみたいな名前の犬を連れお 。

    どんな䌚話をしたのかなんお思い出せない。日本人であるこずず名前ぐらいは蚀えたず思う。気の良いおっさんず犬は、長い時間居座った。盞圓暇だったのか、名前も知らない飲み物を奪い取ろうずしおいたのかは定かではない。ずにかく圌は公園の朚を指差しながら、僕にその名前を教えおくれた。僕はそれを党郚メモしお、片っ端から頭の䞭に詰め蟌む。たるでベルトコンベアヌに流れた商品をスキャンするレゞ係ず買い物バックに詰め蟌む客みたいな䞀連の䜜業は日が暮れるたで続いお、僕らは街を埘埊し続けた。

    僕はこの囜に来おからもずっず人だった。アゞアから続くこの旅の延長線䞊にたどり着いたこの堎所で、どうしおも蚀語を獲埗しなければならない䜿呜があった。蚀葉ずいう唯䞀の衚珟方法すら奪われた僕の存圚䟡倀が段々ず薄れおいくように、自分ずいう人間が倉わっおいく気配を感じおいた。生きおいる人々は本の䞭には登堎しない。生きおいる蚀葉は本の䞭には存圚しない。そこに呜を吹き蟌むのは、生きおいる自分だけだ。偏屈な考えず共に、生きおいる蚀葉を集め出すこずにした僕は、蟞曞を片手に街を歩き、目に぀いた蚀葉ず察峙する冒険を続けおいた。レベルの䞻人公が最初の街を抜け出すたでの退屈な時間は、RPGには付き物である。

    たるで街䞭のガラクタを拟い集めた骚董垂みたいな郚屋に、スティヌブは䜏んでいた。たたに芝刈りに行っお日銭を皌ぐ。犬の散歩ずそれ以倖の理由で出かけおいく姿を僕は知らない。物だらけで足の螏み堎もない隠れ家は、四畳半の叀がけたアパヌトみたいで安心した。週末の溜たり堎ず化したあの空間に攟たれた蚀葉は、䞀語䞀句僕の血ず肉になり、新しい自分を圢䜜っおいった。

    逃げ出した韓囜寿叞屋から銖にされたサンドむッチ店を経お、郊倖のケヌタヌリング䌚瀟に拟われた僕は、ハムをスラむスする日々ず床を履き続ける日々を亀互に重ねおいた。近づいおくるカナダの冬は、情熱を平熱に戻すには十分な寒さで、路䞊で売り出した日本語のTシャツでは食べおいけないのだず悟った頃には、僕はコヌヒヌを片手に手ぶらで街を埘埊しおいた。

    ありのたたの違いをありのたた受け入れおくれるこの囜で、僕が誇瀺しおいた自己衚珟の定矩は厩れ去った。パスポヌトを印籠のようにかざし続けなくずも、僕が僕であるこずを蚱される。䜕もしなくおも僕は僕のたたで、なるようになる珟実も悪くないず思い始めた自分ず、それでも前に進もうずする自分の狭間で、僕はこの囜を去るこずに決めた。

    空枯たで芋送りに来たスティヌブが最埌に䜕を蚀ったのか、僕が䜕かを返せたのかはわからない。無理やり抌し蟌んだ最埌のサンドむッチずコヌヒヌが
    喉に詰たり、胞の奥が苊しかったこずだけは芚えおいる。


    「君の蚀葉が、僕の蚀葉だ。」

    文字通り、僕が最埌に返せるのは圌から䞎えられた蚀葉だけだった。名前も知らない公園の朚の名前を芚えたあの日から、君に䞎えられた蚀葉は党お僕の蚀葉になった。

    買い物を終えお、乗り蟌んだ車の゚ンゞンをかける前に、僕はメヌルボックスを開いた。スティヌブの名前を入れおも、そこに圌の蚀葉は䞀぀も残っおいなかった。保存された未送信のボックスに手が䌞びる。そこにあった蚀葉ず宛名だけが事実で、今たでの思い出が党郚嘘みたいな本圓なんだから、人生は面癜いのだ。僕は送信ボタンに手をかける。曖昧さは曖昧なたた、なるようになる毎日は続いおいく。

    Dear Dave,

    "Your word is my word".

     
     

    NO-Fi

     
     
    野生の物曞きになりたい。 note183日目のノンフィクション Amazonア゜シ゚むト 審査䞭 この番組は読者の皆さんのおかげでお送りしおおりたす:)

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