日日是好日日記 猫とか本とか映画とか Vol. 53 愛しの茄子様
最近、茄子のことが好きになった。子供の頃は、どちらかというと苦手な野菜だったのに。
茄子が好きな理由。まずは、その美しい色。「茄子紺」ともいわれる深い色を目にすると、なんとも気持ちが落ち着いてくる。
そして、茄子に包丁を入れたときの、微かな芳香。なんともいえない食欲をそそる香りに、しばし手をやすめてしまう。
お料理のことを語れるほどの技術も知識も持ち合わせてはいないけれど、茄子ほど便利に使える野菜もないように思う。適当に切って塩をして、ぎゅっと絞っただけでも美味しい即席漬けができあがる。お味噌汁の具にしてもとろんとした食感がやさしい。そして、揚げたての茄子の天ぷらのおいしさといったら。料理が得意でなくても、それなりにおいしくいただける。ナマでも、煮ても、焼いても、揚げても、茄子に功労賞を差し上げたくなってしまう。
そんな茄子の良さが子供のころはわからなかった。口に入れるとふにゃっとした頼りない食感がどちらかというと苦手だった。
子供のころ、母がよくつくっていた茄子とコンニャクの味噌煮。実はこれが苦手だった。ばんごはんに出てくると、正直、うわーっという気持ちになりながらも、ごはんのおかずとしてせっせと口に運び、なんとかはやく食べ終わりたいと思っていた。
最近になって、なぜか無性にこの料理が食べたくなり、母が遺してくれた料理ノートを見ながらつくってみた。味見をしてみると、なつかしい味に仕上がっていた。
食卓に出して、家人と一緒に食べた。食べ進むうちに、あー、そうそう、この味と子供の頃を思い出した。食べ終わってひと息ついていたら、おもむろに家人がこう言った。
「ねぇ、ちょっとこれ、甘すぎない?」
そうだ。そうなのだ。九州の実家で食べていた料理の多くは、味の決め手が「砂糖」だった。子供の頃、母がつくっていた茄子とコンニャクの味噌煮が苦手だったのは、白味噌と砂糖が合わさった、甘すぎる味付けだったことにようやく気が付いた。そして、生まれも育ちも東京の家人にも甘すぎたのだ。
それでも、無性に食べたくなったのは、私が育った家庭の味だからだろうか。苦手な味でもおふくろの味として記憶の中に刻まれているらしい。
まだまだ自分の家庭の味と誇れるほどの料理はつくれていないけれども、日々の食事は大切。今年も美味しい茄子をたくさんいただきたいと思う。

まるっとたのしく生きましょう
