東京漫遊記7/28
東京漫遊記7/28

田中実 TANAKA Minoru
2026年4月25日 00:00
「お前、たまに哲学者みたいなこと言うねぇ」
境内を歩くと、空気が変わった。風の音も、鳥の声も、どこか遠くに感じる。高田はふと、自分の人生を振り返った。
「ワシ、健康なんて気にしたことなかったばい。酒もタバコも、仕事のストレスも、全部“気合い”で乗り切っとった」
吉開が優しく諭す。
「高田さん、命は“気合い”だけでは守れません。あなたは、少し無茶をしすぎました」
「……耳が痛いばい」
エリカが、ふわりと囁く。
「死を意識するとね、生きる力が目を覚ますのよ。あなたの身体も、まだ“生きたい”って言ってるわ」
高田は胸に手を当てた。
「……ほんとに、まだ生きたいんかねぇ、ワシの身体」
そのとき、天の声が静かに降りてきた。
《高田よ。幸運とは“偶然のラッキー”ではない。生きていることそのものが、最大の幸運なのだ》
高田は思わず立ち止まった。
「生きとるだけで幸運…… ワシ、そんなふうに考えたことなかったばい」
幸太郎が続ける。
「おっちゃん、戦争で亡くなった人たちは、“今日”を生きたくても生きられなかったんだぞ。
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