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小学生建築の城、崩壊

     特に悩みも目的もないが休日なので散歩をしていた。秋というにはまだ暑すぎるが夏というには涼しいここ最近の日本では貴重な心地よい季節だった。

     散歩をしていると公園で小学生5人が横一列になって何かを見ているようだ。私は気になって小学生たちの視線の先を見ると公園のベンチにカラスが一羽止まっていた。

    なんてことない普通のカラスだ。
    無論異常なカラスは見たことはないが、好奇心旺盛な小学生といえど立ち止まって見るほど珍しくもないただのカラスだった。

    一体何故小学生たちはカラスを見ているのだろうか。気になって横一列になっている小学生の横に私(30歳男性)が参加した。よっぽど私の方が異常であり、立ち止まって見られるべき対象である。

     改めて見ると確かにベンチにいるのは少し珍しいかも知れないが5秒見たら見飽きる。にも関わらず小学生たちは体感30秒を超えて見つめている。改めて見ても普通のカラスなので何故こんなにもカラスを見つめているのか事態は迷宮入りかと思われた。

     しかし観察してから10秒後、異変は起こった。よく見るとそのカラスは鳴いている素振りがないのに鳴き声が聞こえるのだ。カラスにそんな特性があっただろうか。私は関心ではなく恐怖を感じた。自分の常識を超えてくることが起きると恐怖を感じる歳になってしまった。

    きっと私が横にいる小学生たちの年齢だったらわくわくが止まらなかっただろう。
    私は逃げずに考察した。カラスの中でも声が小さいとかあるのかな、カラス界にもいっこく堂のようなポジションの人がいるのかな、そんなくだらない事を考えていたら事態はさらなる恐怖へと進む。

     カラスは確かに鳴いている素振りはない。だが確かに鳴き声が聞こえる。周りを見渡してみよう。きっと別のカラスの鳴き声が聞こえてるだけだ。そう思って回りを見渡したがカラスなどいなかった。

    いたのはカラスの鳴き真似をしているおばあちゃんだけだった。

    今見えている景色が現実とは思えなかった。小学生たちが見ているベンチのカラスのそのさらに奥に本域でカラスの鳴きまねをしているおばあちゃんがいたのだ。

    声の高さ、抑揚、リズム全て完璧だ。だが公園で1人本域でカラスの鳴きまねをしているおばあちゃんに遭遇してみてほしい。私はこれまでに味わったことのない恐怖を感じざるを得なかった。

     よくよく考えてみると小学生たちはカラスではなくカラスの鳴きまねをしているおばあちゃんを見ていたのだと思った。街中でカラスの鳴きまねをしているおばあちゃんがいたらそりゃ見るか。妙に納得して私はカラスがいない方の公園のベンチに座った。

     やがて小学生たちはおばあちゃんに慣れてきたのか見るのを辞めて砂場で遊んでいた。砂場で遊んでいる小学生、ベンチで休んでいるカラス、カラスの鳴き真似しているおばあちゃん、
    今日もこの町は平和である。

     呑気に休日に浸ってふと砂場の小学生たちをみるとなんと立派なお城が完成していた。
    最近の小学生たちはすごい。ただ砂をかき集めて山にするのではなく水を使って固まらせ、ちゃんと誰が見でもお城と分かるレベルで砂のお城を完成させたのだ。この国の将来が楽しみだ。
    完成させた小学生たちも手応えを感じたのか大いにはしゃいでいる。

     しかし次ぎの瞬間、ベンチにいたカラスが突然羽ばたきなんと小学生たちが築いたお城に飛び乗ったのである。そしてカラスは近くで見ると思ったより大きく、いくら水で固まらせた砂のお城といえどカラスの重みで一瞬で崩壊した。

    唖然である。

    誰も何も言葉がでなくなっていた。あのカラスの鳴き真似のおばあちゃんですら鳴き真似を辞めた。

    さっきまできゃっきゃ騒いでいた小学生たちも黙り込んで空気はかなり重い。

    その空気の重さに耐えられなくなったのかカラスは遠くへ飛び去っていった。

    シーン。

    現場はより一層静まり返っていった。カラスに連動して真似る対象がいなくなったおばあちゃんも公園から去っていった。

    すると小学生の男の子がとぼとぼ崩壊したお城の前まで歩きだした。

    そして崩壊したお城を見つめながら一言、

    「誰か僕に、温かい飲み物を下さい」

    と放った。

    偏見だが小学生男子が温かい飲み物を欲しくなる事なんてまずない。

    にも関わらず欲しているということはそれほどショックが大きかったのだとうかがえる。

    小学生たちよ、強くなれ。

     
     
    クスッと笑えるエピソード中心に更新しています。 たまに本気の小説も書きます。ぜひギャップをお楽しみください。

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