
AIの進化の果て
西暦2080年、人間世界はAIに支配されていた。人間は全ての労働から解放され、生きるための食事をとり睡眠をし、生活を充実させるために趣味を追求したり、運動をしたり、旅行をしたり、好きな勉強をしたりしていればよかった。
生活インフラ、食料品、サービスなど、人間が生きるために必要なものは全て、AIとロボットが作り、提供し、管理してくれた。AIとロボットは全ての個々の人々が、生活を充実させるために望むとおりのものを、必要とするものを最適な内容で、地球環境にも配慮しながら、作り、提供し、管理してくれた。
世界の全ての人間が平等に扱われたため、貧富も差別も不公平も無くなり、世界から争いが無くなり、国も無くなった。個々の人間の居住地はあったが、地域による環境の差がない気温・気候管理がなされ、災害も事故も事前防止されるので、地球上のどこに住んでも全く不公平はなかった。全世界で通貨・経済が不必要になり、悪事を行う動機が無くなり、全てが平和になった。言語も自動的に翻訳されるので、どの人種間でも自由に会話できるようになった。
人間は生まれた時から公平に高度に教育を施されていたので、個人個人の能力差もほとんど無くなった。容姿・スタイルも、幼少の頃からAIによる管理が行われ、必要な子供には整形も行われたので、皆が美男美女になった。
健康管理や遺伝子管理により、人間はほとんど病気をしなくなり、老化も抑えられて、200歳まで健康に生きられるようになった。ただ地球上の総人口管理の都合により、全ての人間は200歳の誕生日に生命を終える義務を課せられた。希望する人は、200歳を待たずに死を選ぶこともできた。
このような世界にはなったが、人間らしさは損なわれないように配慮されてきた。家族があり、学校があり、各種サークルがあり、希望に応じて金儲けではない作業、創作、趣味などを体験することができた。
恋愛、性交渉は自由に行われた。皆が美男美女で性格も良かったので、恋愛のチャンスが増え、恋愛トラブルは減り、セックスはいつ誰とでも行うことができた。そんな中でも子供を作る夫婦、家族という関係は維持された。子作りは夫婦限定、結婚前に子供を産むことは禁止され、人口管理上、女性1人につき子供2人までと決められていた。離婚・再婚はあったが、女性は子供2人まで産んだ後は、妊娠しても中絶を義務付けられた。結婚後も浮気の恋愛・セックスを行うことは、お互いパートナーからも許容されていた。自然と離婚は無くなりつつあった。
こんな世界、どうなんだろう。悲しみ、怒り、争い、不公平、犯罪、病気、災害などが無くなるのはよいことだが、刺激がなくなり、なにか大切なものが失われてしまう。ニュース、ドラマ、トラブル、サスペンス、ホラー、ギャンブルなどがほとんど成り立たなくなり、多くの文化が失われる。
人間らしさを維持するためには、悲しみ、怒り、争い、不公平なども必要だ。人間は欲を追求し、努力し、そして喜び・悲しみを噛みしめ、成長する。
AIの進化は、どんなに良いように制御しても、人類を滅亡させる。そんな気がする。