
看護師神話の崩壊
私は夜のお風呂屋さんで働いている。
自由恋愛の建前でお客さんに性的サービス(特に本番行為)を行う場所だ。
1度接客したお客さんにまた指名してもらうと、そのお客さんは“本指名様”(リピーター)になる。
そうして得た本指名の数を総計して100本以上超えた人は、うちの店だとプレミア枠として扱われる。
そのプレミア枠に1年で到達した人がいる。
その人は写メ日記(お店のホームページに投稿するブログ)に、昔オペ看をしていたと書いていた。
手術の補助をする看護師のことである。
長時間の手術に耐えるだけの体力を全て捧げたのだろう。
元看護師の人はこの業界にとても多い。
うちのグループ総合1位2位を元看護師が独占していた時もある。
この有様を見ていると私は複雑な気持ちになる。
私が高校生の時、周りの大人たちに言われたのは「女は看護師になるのが1番いい」
「看護師になれば一生食っていける」
という“看護師神話”だった。
それを信じて「看護師になれば稼げる」と看護学校へ進む人もいた。
私は看護師を目指さなかったけど、心のどこかで「看護師資格があれば生きていく上で有利になったのかな」と憧れる気持ちがあった。
けれど、この業界に溢れる「元看護師」の数はとてつもなく多い。
看護師だけでなく「元保育士」「元介護士」「元教師」もいる。
私が入店した時に新人講習をしてくれた女性が元看護師だった。
「看護師に戻ることってないんですか?」と聞いたら「安い給料でこき使われるだけだから二度とやりたくない!」と吐き捨てるように話していた。
看護師の待遇の悪さは報道で知っていたけど、ここまでとは思わなかった。
かつて看護師に対して抱いていた「女がやるべき仕事」「女が食いっぱぐれない資格」という堅実な印象は遥か昔に砕け散り、元看護師たちは稼げなかった怨念をぶつけるようにこの仕事に打ち込んでいる。
あの時、親や教師の言うことを真に受けて看護師になった人たちもこの業界にいるのだろうか。
「看護士は稼げる仕事」ではなく「就職には困らないけど稼げない仕事」だと誰も教えない。そんなことをすれば誰も看護師を目指さなくなるからだ。
純粋に信じるのは世間を知らない若者だけだろう。
“看護師神話”の崩壊はずっと前から、社会の裏側で始まっていたのかもしれない。