メインコンテンツへスキップ
見出し画像

工場長の、ほんとうにあった怖いはなし

    工場長が24くらいの時かな。

    まだ大阪にいて、日夜鰻を捌いてた頃の話だ。

    普段、地元に帰っても実家には寄り付かなかったんだよ。

    たまたま帰省した時に、いつもなら友達のM家に泊まるはずが、
    その時はなんか『帰ろ』って思った。

    何かに呼ばれた?ような気がしたんだ。


    Mと、
    「あれ?今日は泊まんないのか?」
    『たまには実家に泊まるわ』

    みたいな会話したの覚えてる。

    その日、実家に帰ったが、誰もいない。

    『えらい散らかってるな。まぁいつもの事か。』

    と思い自分の部屋で寝た。

    『なんか急に湿っぽくなったな、この家』

    後でわかったことだが。

    その時、あの家にはもう誰も住んでいなかった。

    祖父が亡くなり、祖母は施設に入っていた。父も、母も、兄も、それぞれ別の場所で暮らしていた。

    誰も住んでいない家に、俺は一人で泊まった。

    それを知らなかったのは、俺だけだった。

    ———じゃあ、あの湿っぽさは何だったんだ。

    そんなこともつゆ知らず、俺は翌朝大阪に帰った。


    それから数か月後、たまたま地元に帰った時、親父と会った。

    「今、家リフォームしとんや」

    『へぇ―そうなんや』

    「なんか職人が『この家おかしいからお祓いしてくれ』って言うから、明日神主呼んでお祓いしてもらうわ」

    ———おもろそうやな。


    「明日お祓い来いや」

    特に予定もなかった俺は、次の日実家に向かった。

    実家は壁が取り壊され、俺の部屋も解体の途中だった。

    俺と親父、そして工事関係者が揃った。
    来ていた知り合いの職人さんに、

    『この家何がおかしいの?』

    そう尋ねた。

    「なんかおかしいねん。一人は髪がごっそり抜けたし、一人は体調不良が続いてな。」

    ———まじか。

    暫くして神主が現れた。

    『今日はお願いします』

    ———なにこの怪しげな神主?

    もうちょっと神主さんって上品で静かそうなイメージだった。


    うさん臭い神主のお祓いが始まった。

    ———かしこみかしこみ———


    祝詞が読み上げられ神妙な空気が流れていた。


    一通り神事が終わったころ、神主が急に

    『なんかいますなぁ。』

    ———まじか。

    『長いなにか、、、竜?でもない。竜にしては小さい。』

    ———ごくっ

    『蛇?蛇にしては短い』

    ———なんだ?

    『これは・・・』

    ・
    ・
    ・

    『・・・ウナギ、ですなぁ。』

    ・・・?。
    うなぎ?

    親父の方を見ると、
    親父が俺を見ていた。

    「お前やないかい!」

    親父の鋭いツッコミ。

    ———間違いないね。すんません。

    その後、神主はあの、ビラビラしたやつを振りながら、

    『ぬわぁい!』

    と何かを放り投げた。

    『裏の田んぼに放り投げておきました!』

    親父が、

    「いや、捨てたらあかんやろ!封じ込めるとかなんかせーよ!拾って来い!」

    そういうと、神主はしぶしぶ、家の倉庫に転がっていた酒瓶にウナギの霊を詰めだした。

    その姿はもう、笑うしかない。

    『ほなこの瓶の中に閉じ込めましたんで!10万になります!』

    「なめとんか!」

    親父の怒声が静かな村中にこだました。

    その後いくら払ったかは知らないが、
    おかげで?無事に実家のリフォームは完成した。

    ちなみに今でも親父には、

    「お前がウナギ連れてきた」

    と言われ続けている。

    ちなみに、
    あのウナギの霊を封じ込めた酒瓶はどうなったのか。

    後日兄貴に聞いた。

    「あー、あの外に捨ててあった瓶か? 瓶の日にすてたわ」

    ———兄貴・・・。

    ウナギの霊、
    無事に分別回収されたらしい。


     
     
    工場長、成長、途上。 迷走、暴走、それも本望。 それでも上昇、今日も快調。

    あなたへのおすすめ