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風呂上がりのカノジョ

    すゑひろがりず局番に捧ぐ
    いつもありがとうございます


    【風呂上がりのカノジョ】

    カノジョの声:すゑっと借りたよー
    俺:はーい
    (スマホをいじってる)

    カノジョの声:しょーちゃーーーん!
    俺:はーい?
    (スマホをいじってる)

    カノジョの声:こかつーーー
    俺:えぇっ???
    カノジョの声:こかつぅーーー!!!
    (物音)

    俺:(スマホ操作が一瞬止まる)
    てきとーに冷蔵庫開けてー
    (微妙に声の方向へ顔を向けて話している
    まだスマホいじってる)
    カノジョの声:開けていいーのー?
    俺:(目線をスマホから外す)
    てきとーに入ってるから飲んでー
    カノジョの声:ありがとうー
    俺:先、布団入っとくわー、俺
    (スマホと共に布団へ)
    俺:こかつねっ(嬉しそう)
    カノジョの声:御おぉぉー意
    俺:(むくりと起き上がり)ぎょっ???

    カノジョは丁寧だった
    何回も貸してるすゑっと
    毎回「借りる」とちゃんと伝えてくる
    冷蔵庫も開けるたびに開けていいか聞いてくる
    うん…開けてから聞いてくる

    そんなカノジョの変換遊びに俺はハマっていた
    風呂上がりという状況での【枯渇】は
    「なんか冷えたやつ飲みたい」をあらわしている
    御意は新しい

    カノジョは俺の
    スマホをいじっている手にハマっていた
    指が短くて、肉厚な手がいいのだそうだ
    小学校から大学まで野球部やと言ったら
    えっ!?(こんな大きさで)
    何にも掴めないでしょ!と嘘つき扱いされた
    何にもってひどい
    草野球に連れて行って初めて信じてもらえた
    すごく不思議がられた

    カノジョは、スマホをいじってる手は好きだが、
    スマホをみてるのは、ご不満な様子で
    「それ(スマホ)、【なんでも屋】なんだから、
    なんでも知ってて、わかってて、できるのが
    当たり前なんだよ、
    残念なこともしてくるし…
    もっとさ、
    2人で考えたりしようよ、
    間違ってても笑えるじゃん、2人で」と言った
    スマホって、お金も払ってくれるし、
    道案内もしてくれる、
    人を運ぶものを呼んだり、大切な人の顔や、
    本人よりちゃんと、色々、余計なことも、
    覚えていたりする…
    【便利屋】じゃあかんの?と聞くと、
    【なんでも屋】の方が愛される感じがあり、
    【便利屋】は都合よく利用されるイメージだし、
    電気屋みたいな響きも嫌だと、
    【なんでも屋】がいいんだとカノジョ
    電気屋の何があかんねん…

    そこから2人でいるときは、
    スマホ時間を減らして行った
    でも、指はみたいらしく、
    指観察時間が設けられた
    指を貸し出している間、大変暇なので、
    (大変丁寧に観察されるので…)
    俺が【なんでも屋】に続き、
    変換遊びしていい?と申し出た、カノジョは了承
    グリーンヒルは青春白書(古谷実先生の作品、
    若者の群像劇だとカノジョは感じたらしい)
    Netflixは、テレビ要らず
    (寂しい、俺はテレビっ子なのに)
    ゲームは、敵…俺がゲーム好きなので
    ライバルらしい(愛されてる、俺)

    指の観察と頭の体操
    なかなかに独特な時間
    お気に入りな時間
    2人の時間、そう思っていた

    そこから3年、カノジョが消えた

    クロックスと共に、
    俺のすゑっとと共に

    俺:(ゲームしてる)
    あのすゑっと、気に入ってたんやけどなぁ…
    わっ!ずるむけ!!!
    (ずるむけ→ゲーム内の敵、皮膚がない)

    声:(玄関の鍵が開く)ただいまぁー

    俺:…!!(背筋ピンっ!!
    画面はずるむけにやられゲームオーバー)

    声:(近付いてくる)ただいまぁー

    ドアが開く

    俺:(振り向き)…うわっ誰⁈⁈何⁉︎
    カノジョ:ごめんね…遅くなって
    俺:いや、何⁉︎誰⁉︎
    (カノジョじゃない奴がみえる)
    カノジョ:遅くなったから…
    俺:遅く…?
    カノジョ:お土産
    俺:お土産⁉︎
    カノジョ:歌えるんだよ、、ね?
    (頷く1匹)
    俺:ちょっと待って…うわっ手繋いでるやん‼︎
    誰っ‼︎‼︎
    (許可のない人がいる)

    (恥ずかしそうに、鼻の下を人差し指でこする
    昭和の子供みたいに
    ぺこりとお辞儀の可愛い許可なし人)

    カノジョ:歌える河童

    俺:…いや待って、何⁈河童?
    嘘つけ‼︎‼︎(一応ツッコむ、全力で)
    はっ?えっ?何じゃその嘘…‼︎‼︎
    カノジョ:嘘じゃないもん…
    俺:兎に角、その手を離せっ
    (河童とカノジョのアイコンタクト→離れる)
    俺:…きぃっ!(なんか悔しい)
    カノジョ:あぁ、バイヲ、相変わらず好きなんだね
    俺:何しに来たの
    カノジョ:帰って来たの
    俺:おじさんつれて?!
    カノジョ:歌える河童!!
    俺:河童て…
    カノジョ:う、た、え、る!!河童
    俺:歌えるっ!?(新鮮に驚く)
    カノジョ:言ってんじゃん、さっきっから…
    相変わらず聞いてないな、人の話、
    歌えるの、ねっ
    河童:(いやぁー…と照れくさい)
    俺:…いやいや、いやいや、いやいや!!
    四角いやん!!人やん!!!
    そもそも河童なんていねぇし!!!

    カノジョ:(しくしく泣き出す)河童なのに…
    歌えるのに…

    (河童もしくしく泣いてる、が、途中、
    流した涙をてっぺんに塗っている)

    俺:急に来て、、急に泣くなよ、、、
    (お髪をぐしゃっとして、座り込む)

    相変わらず華奢で、髪の毛が長くてサラサラで
    目が綺麗で…
    久しぶりのカノジョだった
    泣かせてしまった…
    泣き顔、俺、知ってたかな?
    …思い出せない

    そして、その横の、知らないおじさん
    四角すぎる、どうみても四角い、

    次第に泣いてるカノジョより、おじさん…
    河童がかわいそうだなと、
    河童にわるかったな、
    いないなんて言って…そう思っていた
    「冷蔵庫にきゅうりあったかな…」
    と考えたりした

    カノジョ:ティッシュ…

    ティッシュ箱を手渡す俺
    長くて細い指が近づく
    この手を、握っていたのになと、ふと思う

    (河童にもティッシュを差し出すカノジョ
    てっぺんに塗っているので
    必要ないとジェスチャー→頷くカノジョ)

    俺:…久しぶりやな
    カノジョ:うん
    俺:どないしてたん?今まで
    カノジョ:…うん
    俺:すゑっとは?あれ、俺のお気に入りの
    カノジョ:ごめんなさい、驚かせて、
    急に帰って来たりして、
    河童連れて来たりして…
    俺:ほんまに河童なん?
    カノジョ:うん、歌える方のね
    俺:そこ譲れへんなぁ
    カノジョ:素敵な歌なんだよ、とっても
    (河童照れる、しょっちゅう照れる、可愛い)
    俺:どう見ても人やけど….おっさんやし…
    カノジョ:河童なの
    俺:四角いし…
    カノジョ:歌える河童!!
    (河童って単語を聞くたび、なぜか
    嬉し恥ずかしい様子の河童)
    俺:(ため息)わかった…
    で、なんで俺んちに河童を連れて来たわけ?
    その前に、なんで急に出ていったわけ?
    でぇっ⁉︎⁉︎
    その四角い河童おじさんと付き合ってるん⁈‼︎‼︎
    カノジョ:落ち着いてよ
    (河童も落ち着いてよのジェスチャー)
    俺:(河童に)お前は入ってくんな‼︎‼︎
    (河童落ち込む)

    カノジョ:荷物を取りに行ったの、あの日
    俺:荷物?
    カノジョ:しょうちゃん、あたしの好きなもの言える?
    俺:えっ?
    カノジョ:覚えてる?あたしが好きなもの
    俺:俺
    カノジョ:(ため息)
    俺:ちゃうんかいっ
    カノジョ:あの日、エントランスに荷物取りに降りて
    俺:好きなもの何やねん…
    カノジョ:そしたら、、立ってたの(河童をみる)
    俺:こいつが?
    (にこにこ頷く河童)
    カノジョ:歌ってくれたの
    (にこにこ頷く河童、マイク持って拳を握る
    どうやら演歌系を歌うらしい)
    俺:なんで?!急に!?こわー!
    カノジョ:あたし泣いちゃって
    (可愛くえーんえーんてやる河童)
    俺:気持ち悪っ
    カノジョ:えっ?!
    俺:いや、そっち(河童)
    (河童「えっ?!」のリアクション)

    カノジョ:なんか、無理してたんだなと思って…

    俺:…それ…俺と居てって事?

    カノジョ:(手が河童に伸びていく)

    俺:…つらかったん?一緒に居て…

    カノジョ:(河童の服の裾を握ってる)

    (河童オロオロしてる、裾も気にしてる→
    あんまり握ったら服、伸びちゃうなぁって)

    俺:(裾を握るカノジョの手が遠くて、ツラくて
    目線を外す)

    カノジョ:大事な人に何も話さないで…
    見ず知らずの河童について行ってごめんなさい
    (河童も何故だか頭を下げてみる)
    カノジョ:しょうちゃん
    俺:なんだよ…
    カノジョ:あたしの好きなものは?
    俺:えっ?
    カノジョ:(しょうちゃんの目線にしゃがむ、近い)

    「指」って答えようとした
    答えてるつもりだった
    でも気がついたら、

    …キスしてた

    止められなかった
    後悔した
    唇から順番に体の中がかたくなっていく
    スーッと冷たいものが喉を通って、
    お腹に入っていった
    雪の魔法みたいだった

    悲しかった

    申し訳なさでいっぱいになった

    俺だけがあわてている
    後悔した、してしまった、それが、
    カノジョに伝わった、
    全てが同時に起こってしまっていた

    あの時を思い出した
    部屋に帰ってきて、真っ暗で、
    待ってたけど、帰ってこなかった

    喧嘩しても、いなくなるなんてなかった
    必ず仲直りした、
    俺のそばからは離れなかった、
    なんかわからんけど、怒りながら、
    ずっと隣にいた、俺のカノジョ

    カノジョの目を見れない
    お互いがなんとなく、先延ばしていたこと、
    確認したい事が一瞬でわかってしまった
    俺の悪いところ…答えを急ぐところ
    たくさんの選択肢があるかもしれないのに
    丁寧に探せない、いつも

    記憶は美化される
    時々【ほんと】もくれる
    泣き顔…思い出したくないだけかも…

    俺:ごめ…
    音:ぐぅーーーー…
    (腹がなる河童、
    キスと腹の虫で、倍々で恥ずかしい河童、
    あわあわしてる、マンガみたいに
    いちいちリアクションが古めの河童)

    カノジョ:(立ち上がって、河童のお腹を触りながら)
    お腹すいたね
    (河童、お腹をさすりながら嬉しそうに頷く)
    カノジョ:勝手に開けるねー(と冷蔵庫へ)
    俺:何も入ってな…
    カノジョ:買ってくるー!
    俺:えっ?!ちょっと!

    (玄関の閉まるの音、河童と2人きり)

    俺:気まずしっ
    (河童、にこっとする)
    俺:えーっと
    (河童、バイヲやりたい)
    俺:あぁ、別にええけど…
    (ソファーに座り、コントローラーを手に取る俺
    同時に躊躇せず、隣に座る河童)
    俺:わっ!近っ!!
    (河童、コントローラー奪い取る、
    ぎゅーぎゅーに座るおじさん達)
    俺:やり方知ってるん?
    (河童、痒い)
    俺:あー、乾燥あかんもんな(加湿機つける)
    (河童、嬉しい、会釈)
    俺:あかんわ、俺、河童って認め出してるわ
    (河童、鬼の形相→絶命!)
    俺:顔こわー笑笑(面白くなってくる)
    (河童、真剣)
    俺:俺もこんなふうに見られてたんかなぁ
    (河童、目を細める、見えないらしい…と、
    突然の爆音くしゃみ)
    俺:うるさぁー!!やめてぇー、それぇ!!!
    絶対河童ちゃう…あーーっ絶命!
    (河童、やってみろ!とコントローラー渡す)
    俺:(ゲームやりながら)
    お前、歌でしか声でーへんの?…ってか、おい!
    みろや、俺のプレイ、みて勉強せぇーよ
    (河童、加湿機のモワモワした煙に
    直接てっぺんを当てて、水分を塗っている、
    身体が硬いほうの河童なので、
    なかなかよい角度がみつからず、
    こちらでも鬼の形相)
    俺:(変な角度の河童をニヤニヤしながら見てる、
    嬉しそう)なぁ、聞いてるー?

    河童:えっ?

    俺:えっ?!

    河童:なぁー…
    俺:喋った
    河童:これ、もっと急速とかにできひんの?
    俺:河童ちゃうやん、絶対
    河童:なぁー聞いてる?俺の話
    俺:…そのボタン押して、そこ、その押しチョボ
    (3段階しかないのに、
    強いのがいいって言ったのに、
    理想の蒸気具合を探し、
    ピッピッとボタンを押し続ける河童、
    そもそも河童用でなく
    部屋の加湿を目的としているので、
    納得のいく強さなどないぞ…!と思いながら、
    何も言わずに河童を観察する俺)
    河童:(ピッピッ)もうええわ!
    ああ、腹減ったなぁ(お腹サスサスさすりながら、
    冷蔵庫を勝手に確かめに行く)
    俺:どうみてもただのおっさんやけどなぁ…
    禿げてるわけでもないし、なんじゃ、あいつ
    河童:ちょっとー、しょーちゃーん
    俺:おいっ!しょうちゃんて呼ぶな!気持ち悪い
    河童:なんか置いてあんで
    俺:えっ?
    河童:ほいっ(と、紙袋をしょうちゃんに渡す)
    俺:うわっ、でかっ、何これ…

    中には、3年ぶりの、
    当時よりちょっとクタッとした
    お気に入りのすゑっとが、
    きちんとたたまれて入っていて、
    ちょっといい香りもした

    柔軟剤かな?と思った

    …違った

    カノジョの匂いだ、柔軟剤やシャンプーとは違う、
    カノジョがまとう、俺の好きな匂い
    それを思い出して、少し、泣きそうになった
    匂いからの記憶が鮮明で、
    あぁ、泣き顔も変わってなかったなと
    思い出して、少しどころか、
    もう半分泣きそうになった

    一度、カノジョが隠れて泣いてたことがあった
    理由を聞いても「わかんない」と言って、
    泣きながら、リビングに連れて行かれた
    ここに座れと無言で指示され、
    座ったら抱きつかれて…泣かれた
    カノジョが俺の頭をよしよしするので、
    俺もよしよししたり、
    カノジョが俺の背中をトントンするので、
    俺もトントンしたりした

    「眠いん?…」
    と、ちょっと呆れながら幼な子扱いしたら、
    初めて顔を上げて、睨まれた
    でも笑った
    至近距離の俺の顔が面白かったらしい

    結局、理由はわからないまま、
    カノジョは泣き止んで、
    「ありがとう」と、今度は抱きしめてくれた

    お気に入りのすゑっとを取り出すと、
    最新モデルのすゑっとも入っていた
    けっこうな大きさの紙袋だった
    河童に、
    これをカノジョが持ってきたのかと聞いてみたが、
    痒いし、
    腹が減ってるからそれどころじゃないと言われた
    (腹立つー‼︎)

    河童:はいっ
    (しょうちゃんをあんまり見ないようにして、
    ティッシュを渡す)
    俺:???
    河童:んっ
    (トトロのカンタがサツキに傘渡すみたいに)

    泣いていた

    見ず知らずの、出会って間もない河童の前で、
    俺は泣いていた

    河童に気を使われる俺…
    さらに情けなくなってきて、涙が溢れてきた

    変わってない
    優しいカノジョ、でも、優しさだけだ
    これに「またね」は含まれてない
    もう、会えない

    俺:(ティッシュで涙を拭きながら)あーぁ…
    河童:人生、いろいろ、女も、いろいろ、
    男だっていろいろ咲き乱れる、
    あれ?なんかちゃうな…
    俺:女と男が逆
    河童:あっ、そーか!
    俺:(ちょっと笑いながら)あーぁ
    河童:腹減ったなぁ
    俺:ピザでもとる?
    河童:賑やか円盤焼きかぁー
    俺:賑やか???
    河童:円盤焼きなぁー…
    俺:きゅうりのほうがいい側の河童?
    河童:そらそやろ!河童なんやから
    俺:ほんまに河童なん?
    河童:歌える側のな
    俺:そこ譲らんな
    河童:いや、事実やから(拳、握る、演歌河童)
    俺:しゃーないな、ティッシュのお礼にきゅうり、買ってきたるわ
    河童:じゃ、俺、バイヲ進めといたるわ
    俺:あー、ずるむけ!あいつ、
    音立てたら寄ってきよるから、しゃがめよ!
    そろりそろりや
    河童:(集中)

    財布を持って、スマホを持って外に出て、
    ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ
    カノジョがいないか探した

    それなりに、好きやったんやな、俺
    と思った
    いなくなった日、わぁー…って思ったけど
    泣いたりはしなかった
    腹も立たなかった
    あー、帰ってけぇーへんねんなぁと思って
    ずっと過ごしてた
    食欲も落ちない、野球もやってた
    何にも変わらなかった

    だから、あんまり好きじゃなかったのかなと
    思ってた、この程度かと
    きっと、それがカノジョに伝わってた

    俺:(なんで今頃、河童を連れて現れたのだろうか
    ほんまにエントランスで出会ったんやろか?
    ってか、何者??
    あっ…あいつも変換しとったな、そーいえば…
    賑やか?円盤焼き?…
    えっ?…何者かもわからんやつを俺、
    自宅に一人、いや1匹で置いてきてるやん今、
    大丈夫かしら…)

    ちょっと小走りで帰宅

    俺:はぁー、色んな感情出て疲れた
    (風でなびく素敵な前髪)

    部屋はもぬけの殻だった

    俺:(小さな低い)えっ?

    俺はきゅうり一本を握りしめ、
    大量の文字が流れるゲーム画面をみつめていた

    俺:クリアしてるやん、はやっ…
    (風でなびく素敵な前髪、2回目)

    開けた記憶がないベランダが半分開いている
    ベランダに近づき、スマホみる

    俺:そんな時間たってないなぁ
    (握りしめていたきゅうりを置く)

    目の前には、ゲームのコントローラーと、
    でっかい紙袋と、きゅうりが一本

    俺:ほんとのお土産はこれだけやな…
    (紙袋から新しい方のすゑっとを取り出して
    お着替え)

    俺:ええやん(お気に入り決定)

    加湿器の警告音がなる、タンクの水がない

    俺:あいつ、最後まで潤おうとしやがって
    (電源をきる)

    河童は来た時からタバコの匂いがしていた、
    きっとバイヲを終わらせてベランダで一服して、帰りたくなって帰った、背中を掻きながら
    ってか、ほんまに妖術級の速さでクリアしてる
    あいつ、何者なん???

    俺:(背中を掻いてる河童を思い出して)
    ふふっ…うわっ、思い出して笑ってもた、
    気持ち悪っ、やばっ、俺っ(独り言が止まらない)
    でも、あんな身体かったいのになぁ、
    こーなってたもんなぁ
    (加湿器に頭上を差し出す河童を真似てみる)
    手の関節だけなんであんな事になんねん、
    柔らかすぎるって…
    (河童、登場してからずっと背中を掻いていた)
    ほんで、どーすんねん、このきゅうり…

    がたんっと窓を揺らす突風
    きゅうりから目線をはずし、顔をあげる、
    床に落ちている何かに気づく

    俺:お手紙…

    可愛らしい文字で

    「借りっぱでごめん。
    気に入ってもらえるといいな。」

    と書かれた、小さなメッセージカード→
    そのカードを掴んでいる手もたまらなく可愛い
    (指が短い)

    俺:まんまと気に入ってます…

    カードを裏返してみる

    俺:(思わず笑顔になってから、困り顔)
    もうええって笑

    「また来るわ」
    (こちらもこちらで、大変可愛らしい文字)

    窓の外から、音が聞こえる

    俺:(ラッパ?かな?)

    (くるり鶏びゅ〜とアルバムより【赤い電車】
    前奏、微かに背景に流れていく
    季節は春、心地よい)

    俺:音楽でも…やろっかなぁ…
    (スマホに目を落とす、音楽って言っても…
    何やりたいかなぁーとか考えてみる)

    俺はきっと、
    スマホを手放さない限り、ふと、
    この指が好きだったカノジョを思い出す
    スマホを触るたびに、忘れた頃に思い出す
    機械の記憶より、正確に、瞬時に頭に浮かぶ
    やっかいな機能、削除不能なところがやっかい

    俺:おっ、無料体験…

    音楽のお話、それはまた、別の…おはなし…
    (←語り、森本レオさん
    トーマスの終わりみたいな終わり)



                    おしまい

    #創作大賞2026 #オールカテゴリ部門


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