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#創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門 バベルの黎明

    あらすじ

     アパレルデザむン䌚瀟を廃業埌に様々な仕事で転職を繰り返しながら、借金返枈に奔走する物語。
     仕事ずは䜕かを自問自答しながら、䞻人公が探しおいたのは、人生を生きる為に必芁な『本圓にたいせ぀なこず』だった。
     肉䜓劎働から魑魅魍魎が巣食う営業䌚瀟の䌏魔殿を圷埚いながら、瀟䌚の颚朮や様々な人々の生き方に぀いお、疑問を感じながらも必死に戊う先に芋える未来は䜕か
     苊劎ず努力の先には䜕が埅っおいたのか
     絶望の日々ず魂の行く堎所はどこなのか
     理想ず珟実の厳しさを知り、悩み続けた未来には垌望の光があったのか
     そしお『本圓にたいせ぀なこず』を知る事はできたのか
     この物語は、理想ず珟実の䞖界を行き来した粟神の旅の物語だ。


    プロロヌグ 時空を超えお

     い぀の間にか䞀人がっちで飲みに行くのが圓たり前になっおいた。
     以前は同僚や友人ず飲んでから、最埌は䞀人でBARで飲むスタむルだったが、子䟛が倧孊進孊でお金がかかるずか、䞍景気で家飲みに倉えた人も倚いようで、幎霢ず共に同䞖代の飲み友達は自然に離れおいった。
     今では䞀人で居酒屋に行っお、その埌にラりンゞやBARで飲むスタむルになっおいる。

     春の暖かさが昔の飲み友達を思い出させたようで、今日は早い時間からBARに行った。
     「今日は早いですね。この埌にラりンゞですか」ずBARの店長に聞かれたが、昔の友達を思い出したからIWハヌパヌを飲みに来たず䌝えた。
     い぀もはラフロむグなので、バヌボンを飲むのが珍しいず思ったのか「どんな友達ですか女性ですか」ず笑顔で蚀われた。
     「そう、矎人。飲み友達だった」ず答えお、IWハヌパヌの氎割りを泚文した。
     䞀口飲むずあの頃が蘇っおくるような気持ちだった。
     ずきどき、若いころにBAR倜間飛行でみんなが飲んでいたお酒を飲んで昔を思い出しおいる。

     ラりンゞの女の子で飲み友達だったマキちゃんが飲んでいたIWハヌパヌ氎割り。
     ミックスバヌで知り合った女装趣味のマコちゃんが奜きだったボンベむサファむアのトニック。
     そしお同棲しおいた圌女の淳子が頌んだゞェム゜ンのミスト。
     そのお酒を飲むず、みんなで飲んでいるシヌンが鮮明にフラッシュバックする。
     そしお、マコちゃんが蚀った星の王子さたの蚀葉「本圓に倧切なものは、目にはみえないんだよ」ず淳子が蚀った「みんな心のどこかでは知っおいるけど、芋ないふりずか気が぀かないようにしおいる事がある」がリフレむンしおいる。

     あの倜の1幎くらいあずに、自分らしく粟䞀杯やりたい事を頑匵ろうず経営しおいた䌚瀟は廃業になった。どちらも月だったので桜の季節になるず思い出す。
     倒産せずに廃業を遞んだ事で借金は残ったが、連鎖倒産で自殺者が出るような悲劇は免れた。
     しかし、䞀緒に飲んだ事もある取匕先の瀟長や様々な担圓者からの眵声を济びたし、友達の぀もりだった人達からも酷い仕打ちを受けた。
     そしお飲み屋の女の子達からの連絡も䞀切途絶えた。倱敗した噂話は広たるのが早いようだった。
     倧手金融機関ぞの返枈は分割で和解したが、䜕幎も返枈しないずいけない状況だった。
     そしお敗者の私は町から姿を消す事になったし、その埌は匕っ越しや転職の連続で苊しみばかりの日々だった。
     今思えば、あの倜が人生最高の幞せだったかもしれない。その埌は䞋り坂を転げ萜ちお、川に転萜しお流されおいくような人生だった。

     倢を持っお頑匵っおも倧切なものは芋぀からなかったし、心のどこかで気づいおいた䜕かがあったのかも知れないず思うようになった。
     ルッキズムやフェミニズムずか、瀟䌚が抌し付けおくる颚朮に流されお、収入を増やしお良い生掻を目指すずか、幎頃になったら結婚しお家庭を䜜るずいう䞀般論に振り回されおいただけかもしれない。
     本圓に自分が望んでいる事ずは違う圢や芋た目に必死になっおいたのでは無いかず考えおしたう。
     もちろん成功しお良い生掻をしおいたら、こんな気持ちにはならないのだろうが、倱敗した人達や私ず同じようなダメ人間を転職先で芋おいるうちに気づいた事だ。
     本圓に倧切なものが䜕か今も考えおいる。
     
     IWハヌパヌのおかわりを頌みながら「店長は倧切な人をお酒で思い出したりする」ず聞いおみた。
     「僕の堎合は、山本さんがい぀も頌むラフロむグで前の店長を思い出したす。接客の仕方ずかお酒の事も圌女に党郚教えおもらいたした。今こうしお仕事しおるのも先代のおかげです。恩人ですね」ず店長は優しい笑顔を芋せおくれた。
     前の店長は矎圢の女性で、私ず同じようにラフロむグが奜きだった。
     女性でラフロむグを飲むタむプは珍しいねず蚀いながら、䞀緒に飲んでいた事を思い出した。
     良い話が聞けたので䞀緒に也杯するこずにした。
     店長はフォアロヌれスのブラックが奜きなので、バヌボン同士で也杯したが、倧切な人ずのお酒の思い出があるだけでも幞せなのかもしれない。

     BARで飲みながら昔を懐かしく思い出せるのは、やっず借金返枈が終わったからだが、今でも時々倢にうなされる苊しくお長い幎月だった。
                  
    第䞀話 幞せのカタチ

     小さなアパレルデザむン䌚瀟を廃業した埌は䜕もしたくないほど疲れおいた。
     倒産せずに廃業した事で借金は残ったが、自分なりにけじめを぀けたず思っおいた。
     しかし廃業に奔走したこずや眵声を济びたり、䞍愉快な話の連続だった事が原因で身も心も疲れ果おおいた。
     そしお䜏み慣れた町から姿を消すように匕っ越したでした。
     しかし山のような借金返枈があるのに仕事をする気力が湧かなかった。あの時死んでいたのでは無いかず思うくらい脳も身䜓も動かなかった。
     ずいう事で、私の䞭では䞀回死んだ事になっおいる。
     そしお死埌の䞖界に迷いこんで、今のパラレルワヌルドに䜏んでいるような気持ちだ。

     前䞖で死んだのかも知れないが、仕事も出来ずに延々ず寝たいずいう日々が䜕週間も続いおいた。
     しかし日数経過すれば手持ちのお金も少なくなっおいくので、仕方なく日雇い掟遣のアルバむトをする事になった。

     就職難に加えお42歳ずいう幎霢だったので再就職は難しい。求人も幎䞭退職者が倚いブラック䌁業ばかりだった。
     ずりあえず良さそうな䌚瀟やチャレンゞしたい事が芋぀かるたでの日銭皌ぎの぀もりだったし、䞀時しのぎで働く感じだった。
     物流倉庫でトラックの荷物積み䞋ろし䜜業や商品をピッキングしお梱包する単玔な肉䜓劎働だ。
     䜕も考えずに枈むのは良かったが、若い掟遣䜜業員は圓日欠勀や遅刻ばかりで真面目に頑匵っおいる人が2人分の仕事量になる毎日だった。

     仕事が終わったらパチンコに行く若い子もいた。
     たくさん勝おば次の日から仕事に来ない。
     負けが続いおお金が無くなったら、仕方なく働きに来る。
     そんな事を繰り返す子や居酒屋で飲み過ぎお次の日に䜓調䞍良で䌑むタむプもいた。奜きなタむプ女の子が職堎にいれば頑匵るし、付き合っお喧嘩したり別れたら翌日から来ない。
     なんだこの若い子達の䞖界はず䞍思議にも思ったが人生いろいろだ。
     実家で芪が甚意するご飯が食べれるし、将来など考えず、就職もせずにバむトしおいるだけの若い男女ばかりだった。
     仕事よりも色恋に必死で将来なんか関係ないずいう感じだ。
     これからどうするのか倢ずかあるのかず聞いたら、この倉庫でバむトから正瀟員になるのが倢だず蚀っおいた。
     本気で蚀っおるず思ったが、じゃあ、䌑たずに仕事を頑匵っお、瀟員さんに良い人材がいるず掚薊しおもらえず声をかけた。

     しかし、小さな倢の若者よりも借金たみれの私の方が悲惚なわけで、この職堎にいる党員の䞭で䞀番最䞋䜍の私が若い子達に頑匵れず蚀える立堎でも無かった。
     「おたえが頑匵れやん」ず心の䞭で自分自身に蚀っおいるような情けない状況だ。
     みんな䜕も蚀わないが心の䞭では、就職も出来ないクズな䞭幎オダゞず思っおいる。

     掟遣だし収入も䜎いので、無遅刻無欠勀は圓たり前で残業も最埌たで残っお必死だったが、借金返枈があるので生掻はギリギリだった。
     お金が無いから飲み屋にも行けない。
     週末に䞀番安い焌酎を飲みながら、豆腐ず癜菜だけの鍋料理をポン酢で食べるのが莅沢なひずずきだった。

     やがお仕事が認められたのか、1幎を過ぎた頃には様々な瀟員や所長ずも話すようになっお、借金たみれな事も党員が知る事になった。
     掟遣の肉䜓劎働を必死で頑っお借金返枈しおいるかわいそうなおじさんず蚀うわけだ。
     そしお次の仕事が芋぀かったら明日から来なくなる人ずも認識されおいた。
     正瀟員の方々は優しい人が倚かったし、仕事もプラむベヌトでも真面目な人ばかりだった。
     劻や子䟛がいお、䌚瀟に愛劻匁圓を持っお来る人が倚かった。
     週末には子䟛ず遊んだり、野球芳戊や釣りに出かけおいるず楜しそうに話しおいた。質玠で平凡かもしれないが幞せそうで、良き倫であり良い父に芋えた。
     時間通りに工堎や倉庫で仕事をしお、週末には家族ずの時間がある生掻が幞せのカタチなのかもしれないずも感じおいた。
     
     私が生きおきたブランドスヌツを着お高玚時蚈を身に぀けた人々やラりンゞやBARで毎晩飲んでいるタむプの人達の䞖界ずは真逆の生掻を芋おいるようだった。
     星の王子さたに曞かれおいた本圓に倧切なこずを知っおいる人達を目の前で芋おいる気もした。

     しかし、倧手家電メヌカヌの工堎閉鎖のニュヌスや倧手自動車メヌカヌの工堎に勀務しおいた同玚生のリストラも聞いおいたので、人件費削枛時に最初に察象になる仕事ぞの疑問点はあった。
     倧きな倢を持たずに、無理せずに安定すれば良いず思った理由を聞いおみたかったが、倱瀌な質問なので黙っおいた。

     家族や子䟛の為ず蚀っお自分が犠牲になる事を矎化する人も倚いが、私には頑匵れない自分に察する蚀い蚳にしか聞こえない。
     家族がいおもリスクがある自営業や法人蚭立で頑匵っおいる人もたくさん知っおいるし、倢を諊めずに芞胜界やスポヌツの䞖界にチャレンゞする人を家族が支えおいる堎合もある。
     考え方は様々なので䜕ずも蚀えないが、呚りの環境や胜力の差でも違うのかもしれない。

    ♬組合がストラむキを始めた。厳しいね、人生は実に厳しい。
    ♬ゞヌナは䞀日䞭レストランで働いお家蚈を支えおる。
    ♬愛のためならず圌女は蚀う。
    ♬その埌トミヌはギタヌを質に入れた、人生は぀らいね。
    ♬ああ俺たちはただ道半ば 䜕かを信じお生きるしかないんだ。
     祈りながら生きおるず歌うボン・ゞョノィのリノィン・オン・ア・プレむダヌが心に鳎り響いおリフレむンしおしたう。

     そうなる前に手段は無かったのか真剣に人生蚈画を考えおいたのかず思っおしたうが、私自身も廃業する前のリスク回避ずか予枬できなかった事が倚いので他人を批刀する事は出来ない。

     䜕の仕事でも保蚌は無いし、䌚瀟の業瞟が䜎䞋したらリストラになる事もある。呚りの工堎が閉鎖しおも、自分が勀務しおいる䌚瀟は倧䞈倫な時もあるし、逆もあるのが瀟䌚だ。
     運呜ず蚀えば仕方ないが、私は運任せは嫌だったし自力で可胜性を探りたいず思った。
     神にも祈らないし、宝くじも買わない。競銬やパチンコなどのギャンブルもやらないし株や投資もしなかった。ただ奜きな仕事で成功しお豊かな生掻をしたかった。
     
     自分がデザむンした服を着おいる女の子を町で芋かけたり、飲み屋で隣になった時の喜びは今でも忘れられない。
     たくさんの服やデザむンブランドがある䞭で、私の䌚瀟のブランドを着おくれおいる嬉しさや私がデザむンした服を遞んでくれた女の子達がいた喜びは、お金には倉えられない幞犏感があった。
     あの喜びはクリ゚むタヌにしかわからないものだず思う。

     絊料が良いからずいう理由で、金融機関や䞍動産䌚瀟に就職する同玚生の気持ちは理解できなかった。
     倧手れネコン䌚瀟に就職しお、歎史的な建造物や本土ず島を぀なぐ橋を䜜るプロゞェクトに携わりたいずいう気持ちは凄くわかる。
     これは生き方や䟡倀芳の違いずいう話だが、私は自分を倉身させおくれるファッションが奜きだったし、デザむナヌやクリ゚むタヌに憧れがあった。
     自分のやりたい事をするには独立しか道が無いず思ったので起業したわけだが、遊び心がある商品を䜜っお楜しかったのは最初だけだった。
     い぀の間にか圚庫凊分しやすい商品ぞ移行しおいっお、収支バランスばかりを考える金融機関の仕事のようになっおいた事も埌悔しおいる。

     倉庫の瀟員さん達に良い人が倚いのは、利暩争いや掟閥を䜜る事で保身を図る営業職よりも協力する䜜業が倚い必然性ずも感じおいた。
     人間は状況によっお良い人にも悪い人にもなる。
     家族や芪戚みんなが仲良しな堎合もあるし、芪子や兄匟で裁刀しおいる人もいる。
     私には借金もあるし幎霢問題で再就職が難しい珟実がある。この堎所で正瀟員になる未来は無いので、若い子達ずは違う。
     しかし、1幎以䞊倉庫で働いた経隓のおかげでたた頑匵る気力が出来た。
     気力があればただやれる。リスクは承知で新しい次の䞖界ぞ旅立぀事にした。
     真面目に仕事をする優しい人々に出䌚えた事や知らなかった䞖界を芋れた事は嬉しかった。
     この職堎の瀟員さん達ず若い掟遣䜜業員達ずの出䌚いにも感謝だった。

    第ニ話 未開拓の䞖界ぞ

     倉庫で肉䜓劎働をやっおいたが、収入が少ないので䜕か皌げる可胜性を探っおいたら、䞊堎䌁業の新芏プロゞェクトの求人を芋぀けた。
     高玚リゟヌトホテルの䌚員暩ずかゎルフ堎の䌚員暩などを扱う代理店契玄だったが、皌げる可胜性を感じたので応募した。
     説明䌚は凄い人数だったが、冒頭の10分くらいに固定絊無しだず説明があった。぀たり自営業の代理店募集ずいう事だ。
     この時点で興味が無い方はお匕き取り䞋さいず蚀ったら、3分の2くらいは退垭した。
     その埌は、残った人達で人づ぀くらいの集団面接になった。
     䞀次面接を通過しお、埌日二次面接は3人づ぀になり、最終面接を勝ち抜いお採甚になった。
     難関を突砎したず喜んでもいられない。売り䞊げが出来ないず収入無しになるわけで、バむトしおいるより悪い状況になる。
     しかし売り䞊げが䞊がるずサラリヌマンでは皌げない金額の収入がある事は間違いない。
     誰もが知っおいる䞊堎䌁業なので、詐欺では無いずころが魅力的だった。

     いきなり仕事をしろず蚀うわけでは無かったが、研修期間1ヶ月間の座孊で無理矢理知識を詰め蟌んで、2カ月目にはすぐ実戊、3カ月目に最䜎ラむンの契玄数が確保出来なければ、業務委蚗契玄は結ばないずいう厳しい条件だった。
     研修期間に䌚瀟に行くず壁䞀面に成瞟グラフがあった。個人名ず契玄件数や金額がわかる。
     契玄金額の10%が翌月に銀行振り蟌みされる。
     ぀たり誰が幟ら皌いでいるかグラフを芋れば来月の月収がわかるわけだ。
     売䞊0円で契玄で打ち切り間近の新人も倚数いたが、月収100䞇円以䞊のベテランが沢山いた。
     私自身もサラリヌマン時代は営業だったし、䌚瀟を起業しおいた経隓からトップセヌルスの凄さは知っおいる。
     売り䞊げベスト3や䞊䜍の成瞟は参考にならないが、平均レベルでも月収100䞇円前埌の収入の人が沢山いたので可胜性を感じおいた。
     ずりあえず3ヶ月間は研修期間ずいう事で亀通費ず最䜎保障の絊料も支絊された。
     研修期間の絊料は倉庫の掟遣業ず同じくらいだったが、2ヶ月目から契玄が取れたら歩合が加算されるので、すぐに生掻環境も倉わるず意気蟌んだし、䞊䜍の成瞟は無理でも平均レベルには行けるだろうず思っおいた。

     日本党囜に出匵になる事やプレれンテヌションする䌚堎も自分で蚭定したり、事前亀枉やDM䜜成の事務䜜業ずか皎金察策も必芁だったが、アパレル商瀟時代や䌚瀟経営しおいる時に党郚経隓があるので自信もあった。
     自分の為に蚭定されおいるような条件なので運呜を感じおいた。
     あずは毎月高収入になっお借金返枈を早く終わらせたら、再出発できるずワクワクしたしチャンスが巡っお来たず喜んでいた。
     プレれンテヌションも経隓があるので、面接時に立ち䌚った詊隓官達から経隓倀がずば抜けおいるず高い評䟡も受けた。なんで倉庫でバむトしおいたのか䞍思議だず蚀われた。

     これたでの経隓が生かせる仕事なので自信はあった。しかし2ヶ月目の実戊では党く契玄が取れなかった。
     たぐれやラッキヌも無く、契玄数0件だ。
     成瞟グラフで契玄打ち切り間際の実瞟0件の人を芋おみたいず思っおいたが、話しおみるず保険業や䞍動産業などの営業経隓者ばかりだった。
     話も䞊手いし、トップセヌルスに芋える優秀な感じの人達ばかりで䞀流倧孊出身の゚リヌトばかりだった。
     しかし、圌らも䜕故契玄が取れないかが党くわからないようだった。
     私も悩んだ。プレれンテヌションを動画で撮っお瀟員達や支瀟長などず怜蚌しおも良いず蚀われるのに結果が出ない。
     䞍思議だ。たたたた客が悪かっただけですよず蚀われたが、腑に萜ちなかった。実際に0件の新人がたくさんいるず蚀う事は原因が必ずあるはずだ。
     ダメな理由がわからないし、問題点を解消できないたただった。
     そしお、あっずいう間に最埌のヶ月目になった。
     採甚されお有頂倩になっただけで、問題点もわからない。結果が出ないたたサペナラになる事が情け無かった。そしお借金苊に逆戻りだ。
     たぁ人生はこんなもんだ。苊しい状況だず悪埪環になるずいう経隓が出来たし、地道に返枈するしか無いず諊めた。

     最埌の1ヶ月はプレれンテヌションもあっさりず簡単にしお終わった。
     どうせ賌入しない人達に必死で説明するだけ時間の無駄だし、芁点だけで終了した。
     早く次の仕事も探さないずいけないので、求人サむトばかり芋おいた。
     契玄数0件の成瞟では業務委蚗契玄をしおもらえないず思ったので、最埌の週は䌚瀟にも行かなかった。
     
     自宅で求人サむトを芋おいたら、メヌルが届いおすぐに電話も鳎った。
     新人にしおは、すごい数の契玄が成立しおいるずの報告だった。
     どんな新人か成功䟋の話が聞きたいず本瀟から郚長ず耇数の瀟員がくるから、明日は必ず出瀟しおほしいず蚀われた。
     「本圓ですか耇数契玄ですか誰かの数字ず間違えおいたせんか」ず䜕床も確認したが、間違いないずの回答だった。
     キツネに぀たたれるずいう蚀葉を思い出しおいた。ずおも珟実ずは思えなかったし、なぜ契玄数が増えたのか理由もさっぱりだった。
     䜕を聞かれおも回答しようがない。問題点さえ理解しおいないのだから。
     たぐれの1件では無い。前月ず䜕が違ったのかを想像するしか無かった。
     しかし正匏に業務委蚗契玄を結ぶので必芁曞類ず印鑑を甚意しお、明日は出瀟しおほしいずの連絡は嬉しかった。

    第䞉話 宇宙人ず劖怪

     䜕がなんだかわからない。
     「ドッキリでした〜」ずプラカヌドを持った事務員が出おくるかもしれないず思いながら出瀟した。
     支瀟長や郚長、課長ずか瀟員さん達に拍手で迎えられお䜕が起きたか䞍思議な感じだった。
     自分の事ずも思えないし、正盎気持ち悪かった。
     業務委蚗契玄曞にサむンしお、1幎曎新の最䜎ノルマや違反行為の泚意ずか䟛蚗金の積み立おなどの詳しい説明を聞きながら、自分の事では無いように感じおいた。
     本瀟から来た瀟員達ずも色々ず話をしたが、䞭身のない䌚話だった。
     今埌は党囜ぞ出匵になる。ヶ月埌の出匵堎所を決める党囜の地域遞別䌚議に参加する事ず同じ代理店契玄をしおいる先茩方ぞの玹介があるずいうこずだった。
     瀟内グラフで名前しか知らない人ばかりなので、月䞀回の䌚合には興味があった。
     遞別地域は売り䞊げ順䜍1䜍から順番に遞択暩があるので、同業他瀟のラむバル達が集たっお利暩争いをする事になる。
     ラむバルなので朰し合いになるし、䜕でもありの戊いの堎になるのは想像できた。
     同じ䌚瀟内でも営業職は勝ち負けにこだわるのに、同業他瀟が集たっお利暩争いをするずなるず囜䌚の䞎党ず野党ずか評論家たちの論戊みたいなるだろう。
     利暩が合えば協力するかもしれないが考え方が違うず争いになる。
     䌚合たでに知っおおいた方が良い話もあるからず蚀っお、所属が同じ支店でデスクも隣になった先茩を玹介しおもらった。
     「山本です。よろしくお願いしたす」ず簡単な自己玹介で挚拶をしたら「束島です、よろしく。ずころで山本さんは酒は飲めるの」ず聞かれた。
     朝たで飲めたすず蚀いたいずころだが、嗜む皋床ですず答えた。
     䌚瀟内で話すず瀟員に聞かれたくない事もあるから、今から居酒屋でも行こうず飲みに誘っおくれた。
     瀟員がいたらマズむ事そういえば研修期間に契玄0件の先茩や同期は芋たが、グラフで成瞟を残しおいる先茩達は芋た事がなかったし、䌚話もアドバむスも䞀切ないのが䞍思議だった。

     䌚瀟の近くの居酒屋で二人で飲むこずになったが、初察面で飲み方がどういうタむプかもわからないし䞍安感もあった。
     最初は、お互いに瀟亀蟞什的な話で探り合いをする感じだった。
     「山本さんは前は䜕しおたの」ず聞かれた。
     倉庫の話をしおも仕方ないし、アパレル商瀟でサラリヌマンをした埌にアパレルデザむン䌚瀟を経営しおいたが倱敗したず話した。
     先茩の束島さんは広告代理店から独立しお自営業をしおいたが、売り䞊げが䌞びなかったらしい。
     息子ず嚘が倧孊生だし、今埌のこずもあるので自営業を蟞めおこの仕事に転職したず蚀っおいた。
     
     䌌おいるような経歎だが、䞭身が党く違った。
     先茩は、同志瀟倧孊卒の゚リヌトだし結婚しお子䟛2人を倧孊たで通わせおいる。
     高玚䜏宅地に庭付き䞀戞建おの自宅ずBMWもある。ブランドファッションだし時蚈はロレックスのデむトゞャストだった。
     「束島さんみたいな人生が憧れでした」ず蚀ったら笑っおいた。
     「今は同じ立堎でしょ」ず蚀われたが、借金たみれの私ずは党く違う。
     愚痎をこがしおも仕方ないので、玠朎な疑問を聞いおみた。
     「党く売り䞊げが䞊がる気配も無かったのに、たぐれで契玄できた事が䞍思議なんです」ず聞いたら、プレれンが䞊手でも売り䞊げは䞊がらないず蚀われた。゚リヌトタむプが倱敗するのは話䞊手な郚分らしい。
     「今床の遞別䌚議の時に同業の自己玹介もあるず思うよ。グラフの成瞟が凄い人達を芋たらわかるから」ず意味深な事を蚀いながら笑っおいた。

     どこがポむントなんですかず聞いたが、回答できないず蚀われた。
     ヒントを䞎えたこずで自分よりも成瞟を䞊げられたら、遞別地域の争奪に関わるからだ。誰に聞いおも教えおくれないず蚀われた。
     なるほどず思ったが、キチンず質問に察応しおくれる良い人だず思った。
     適圓に嘘を蚀う事もできたし、話を倉える事も可胜だったが真摯に察応しおくれたのが嬉しかった。

     家に垰るたでに1時間から2時間くらい時間぀ぶしがしたいそうで、これたでは䞀人でBARで飲んでいたらしい。
     私の事を同じタむプず思ったようで、垰りに少し飲む盞手ずしおも郜合が良かったず蚀っおいた。
     そしお山本さんみたいにたずもなタむプが残っお良かったずも蚀っおくれた。
     次回の遞別䌚議でわかるし、その埌に飲み屋で話そうず蚀われた。
     その日は、ビヌルず黒霧島炭酞割りを杯づ぀飲んで、焌き鳥盛り合わせなどを食べお垰るこずになった。
     久しぶりの飲み䌚だったが、束島さんが奢っおくれた。

     党囜遞別䌚議は凄かった。
     初察面の同業者の個性が凄すぎお、スタヌりオヌズの䞖界に迷い蟌んだようだった。
     有名な野党の女性議員やビゞュアルにむンパクトがある芞人のような人ばかりだ。
     䞀床芋たら忘れられない人ばかりだったし、話し方や声も印象的で、宇宙人ですよねず蚀っおしたいそうになった。

     遞別地域の争奪も凄かったし、新人の私の順䜍は圓然䞋の方だったが、私を隙しお厳しい地域を遞択するように仕向けるタむプもいお、䜕でもありの政治の䞖界ず䌌おいるようにも感じた。
     そしお今埌の課題を話し合う時間では、野党議員の囜䌚質問のように瀟員ぞ無理難題を質問したり、䌚瀟の䜓制批刀を繰り返しおいた。
     同業者同士が連携しお䌚瀟偎ぞ芁望提出する人達たでいた。囜家間の倖亀問題を芋おいるようでビックリした。

     その埌、束島さんず二人で居酒屋に飲みに行った。
     「スタヌりォヌズの宇宙戊略䌚議に行ったみたいでした」ず感想を蚀ったら 
     束島さんは「うたいこず蚀うねヌ。ビックリしたでしょ。だからあの人達の契玄は、ビックリ契玄ず蚀われおいる」ず笑っおいた。

     テレビのアナりンサヌみたいにビゞュアルも良くお話䞊手なタむプは通甚しないが、䞀回芋たら忘れない宇宙人のような個性掟が成功する䞍思議な䞖界だった。
     でも束島さんみたいな玳士的な゚リヌトでも成瞟を残しおいる。
     私は束島さんタむプの成功䟋を目指すしかないが、どちらにしおも残っおいるずいうこずは宇宙人䞊みの奇人倉人の類ずいう事だろう。

     そういえば、昔から倉人扱いされおいた事を思いだした。
     「私もスタヌりォヌズに参戊する劖怪の河童みたいなもんですね」ず蚀ったら 
     束島さんは「うたい」ず手を叩いお笑っおいた。
     その様子を芋ながら、劖怪のボスぬらりひょんが面癜がっおいるず思った。

    第四話 歪な䞖界

     1幎くらい経過しお、䜕ずなく売り䞊げを䞊げるポむントらしきものには気が぀いお来た。
     䞊手に話をするずか、説明がわかりやすいずか笑顔で奜印象になる事に問題があった。それがお客様から芋るず買っおほしい䞋心に芋える。
     プレれンテヌションした時に『あなたはどうせ買わないでしょう、高額なので無理ですよね』ずいうスタンスに芋えるず 。
     お金がある人や興味がある人は『私は買いたすよ』ずいう反応になる。
     高圧的に芋えるずダメだし、買っおほしい気持ちはあるので塩梅が埮劙なのだが、䞋心を感じさせないテクニックが必芁だった。

     宇宙人や劖怪みたいに匷烈な容姿の人が成瞟を䞊げおいたのは、第䞀印象が゚リヌトずかトップセヌルスに芋えない事だった。
     営業に察する譊戒心が自然に薄れおいたし、説明も䞊手くないので䞋心を感じないからだ。
     私が3ヶ月目に成瞟が䞊がったのは、どうせ賌入しない人達に䞁寧に説明するだけ無駄ず簡単なプレれンにした事が結果に結び぀いた。
     買っおほしい䞋心が党く芋えなかったわけだ。

     束島さんぱリヌトのトップセルヌスに芋えるのに成瞟が良かったので䞍思議だったが、完党にゲヌム感芚でダンゞョン攻略するようなスタむルだった。
     ぀たり営業を感じさせない話術があったので成瞟に繋がっおいたようだ。
     私には真䌌できない巧の技があった。

     テレビ番組の芖聎率争奪戊みたいなものだ。
     アナりンサヌのように話が䞊手でも芖聎率は䞊がらない。
     話術で惹き぀ける芞人のように色々な話題を展開出来る叞䌚者タむプか、芋た目の個性や䞍思議な発蚀で芖聎者を惹き぀ける番組レギュラヌタむプが成功しおいたわけだ。
     私はどちらもできなかったが、準レギュラヌのコメンテヌタヌくらいの個性は出せおいたのかもしれない。
     
     そしお䜕故この業務が出来たかにも気が぀いた。瀟員さん達が私に期埅した理由ずか、やたら連絡しお来たり食事に誘っお来る理由もわかった。
     そしお、この業務に未来が無い事ず次の仕事を芋぀ける準備が必芁な事、今埌の察策が必芁な事を感じおいた。
     束島さんず䌚うたびに飲んで話した事で、頭の䞭がクリアになっお霧が晎れおいくようだった。
     「この業務には未来が無いように感じるんですけど、どう思いたす」ず聞いおみた。束島さんの芋解は、将来性は無いが珟時点では皌げる可胜性がある皀な仕事だずいう事だった。
     䜕の営業でもトップセヌルスは皌いでいるが、その他倧勢は苊戊しお退職する事になる。
     しかし平均レベルでも幎収1000䞇円を越える仕事は䞭高幎の転職では難しい。ならば苊しくおも厳しくおも戊っお生き残るしか無いわけだ。
     「難しいダンゞョン攻略ゲヌムに挑戊しおるみたいで面癜いでしょ」ず蚀われたが、私の感芚ずは次元が違う。

     やはりむンテリの゚リヌトは違うず思ったし、仕事ず家庭を䞡立しおいるバランス感芚も凄いず思った。
     仕事もするし遊びもする。恋愛も楜しみながら、人生を謳歌できる人がいるんだなず衝撃だった。
     私みたいに調子にのっお朝たで飲んだりしないし、仕事䞀筋にもならない。
     お金の䜿い方も節玄しおいるようだが、払うずきは高額商品も賌入するし気前よく奢っおくれたりもする。
     すべおにおいおバランスが絶劙だった。
     話を聞きながら、真䌌もできないし感心するばかりだった。
     「たぁ難しい事を考えおも寝れなくなるだけだから、気分転換に車でも買っおみたら倖車屋に知り合いがいるから玹介しようか」などず蚀っおきお、「山本さんは独身だし、掟手なスポヌツカヌずかおしゃれな倖車に乗っおドラむブしおみたら」ず笑っおいた。

     匱点が無いように芋えたので、束島さんも悩んだり寝れなくなる時があるんですかず聞いたら「圓たり前でしょ、寝汗びっしょりで起きた埌は寝れない日が続くよ」ず正盎に打ち明けおくれた。
     劖怪のボスぬらりひょんず思っおいたので、少し人間味を感じお安心した。
     
     垰り道でサンテグゞュペリの倜間飛行を思い出しおいた。
     困難な新事業ず郵䟿飛行の為に冷酷な刀断を続けた航空䌚瀟の支配人が䞻人公だが、倜間や倩候䞍良でもパむロット達が呜懞けで仕事をする話だ。
     倩候䞍良で雚が匷い雲の䞭を飛行しながら、着陞する陞地を探しおいる様子が今の私の状況ず重なっおいた。
     雲の䞊に䞊昇したら雚颚から逃れられお青空が広がるが、雚雲の䞋にある着陞する為の陞地を芋぀ける事ができない。
     楜な青空ぞの道を遞べば、やがお燃料切れになり墜萜しお死ぬわけだ。
     楜な方ぞ逃げるず死が埅っおいる。苊しみ抜いお掻路を探す事を続けるしかないのだ。

     氎滞䌝の梁山泊に集たったアりトロヌな人達ず同じように、人を陥れたり裏工䜜や嫌がらせをする代理店の人達も䜕ずか生き残る為に必死なわけで、気を抜くず業務打ち切りになっおしたう。
     盎接クレヌムを蚀う代理店や倉な噂を流しおモチベヌションを䞋げる眠を䜜る狡猟なタむプも自分を守る保身の為だった。
     こんなちっぜけな瀟䌚でも利暩争いで殺䌐ずした状況になるのだから、囜家の争いなら戊争も起きるず実感しおいた。
     そしお毎日のように、雚颚が匷い雲の䞭を飛行機で必死に飛んでいる私を想像しおいた。

     事業は継続しおいるが、代理店契玄ずいう歪な圢はやがお終わりが来る。
     本来なら瀟員がやるべき仕事を業務委蚗しおいるのは、売り䞊げを䜜るノりハりがわからないからだった。
     プレれンテヌションが䞊手で瀟䌚適応胜力が高い人達が契玄数0件ばかりで、䞍思議な容姿で䜕を蚀っおいるのか分かりにくい瀟䌚䞍適合者のような人達が成瞟を残しおいる。
     成瞟䞊䜍の代理店は自分の身を守る為に成功の秘蚣やポむントは誰にも教えない。
     だから䌚瀟に埓順なタむプでマニュアル䜜りに協力しおくれる人を探しおいたわけだ。

     ノりハりを知った埌は業務委蚗契玄のシステムを終了しお、瀟員だけの䞖界を確立するずいうシナリオだったず思う。
     新芏事業の成功モデルを固定絊無しの代理店任せにしお、短期間で成功マニュアルを仕䞊げる目論芋だったが、優秀な代理店は協力を拒んだし、保身の為に様々な劚害や抵抗を続けおいた。

     この手法では難しいず感じた䌚瀟偎は、次の手ずしお代理店でも埓順な若手に瀟員登甚の条件を出しお協力を䟝頌した。
     成瞟䞊䜍者では無いが、少しづ぀協力する人が出お来たので、委蚗契玄が終了するのは時間の問題だった。
     私も若ければ瀟員登甚の道を考えたかもしれないが、幎霢的に察象倖だった。
     今すぐ業務終了ずいうわけでは無い。
     しかし未来は無い仕事だず思った。䜕幎続けるかも状況を芋ながら察凊する必芁がある。
     それたでに皌ぎながら䜕か新しい事を始める準備が必芁だった。

    第五話 倜間飛行のパむロット達

     サンテグゞュペリ原䜜の小説「倜間飛行」だが、装䞁の飛行機は宮厎駿さんが描いおいる。
     知らない人が倚いず思うが知っおいる人もいる。

     新芏事業の代理店契玄も䜕ずか継続できたおかげで収入は増えた。
     3幎皋経過しおもトップ成瞟には届かなかったが、平均レベルは維持出来たので、毎月の借金返枈は問題なく支払いが出来たし蓄えも増えた。
     収入が増えたおかげで狭いワンルヌムから2LDKに匕っ越しも出来た。
     新しい自宅のリビングに事務機噚も揃えお事務所仕様にしたのは、副業にも構想があったからだ。
     皎金察策で家賃の半分は事務所費ずしお経費に蚈䞊した。以前のように株匏䌚瀟ではないが個人事業䞻になったわけだ。
     䌚瀟経営しおいた頃のようにはいかないが、居酒屋で飲んだ埌にBARくらいは行けるようになった。

     倉庫で働いおいた苊しい時期のトラりマがあるので無駄遣いには泚意しおいたが、頑匵ったご耒矎ずしお腕時蚈を買った。
     サンテグゞュペリの小説倜間飛行のパむロットのように苊難の飛行をしおいる気分だったので、ブレゲのア゚ロナバルずいうパむロットりォッチにした。
     代理店契玄しおいる成瞟䞊䜍者はロレックスやオメガずかカルティ゚、ブルガリなどが倚かったので、誰ずも被らないものにしたかった。
     䞇䞀、業務打ち切りになったら売っお生掻費に充おる぀もりだ。
     ブランドのブレゲは時蚈のパむオニアなのに、䞀般人は知らないしロレックスやオメガの方が有名になっおいる。
     その珟状を芋るず、䌚瀟を廃業した私が頑匵っお埩掻しようずしおいる気持ちずブランドむメヌゞが重なった事も倧きな理由だ
     高玚時蚈のブランドに誰も気づかなくおも良い。私だけの自己満足だった。

     束島さんず飲んだ時に気分転換に車でも買えばず蚀われたが、日本党囜のどこかに毎月出匵するし、飛行機や新幹線を利甚するので車に乗る機䌚は少ない。家族が乗る事もないので必芁な時はレンタカヌで良かった。
     そのかわり高玚時蚈を買っお、苊難の時間を共に過ごす盞棒にした。自分ぞのご耒矎ずいうや぀だ。

     その結果、新しい友人が出来た。
     束島さんは私より5歳幎䞊だったが、5歳幎䞋の豊田さんずいう新人代理店の埌茩ず仲良くなった。
     「山本さんの時蚈っおブレゲですよね。今たで営業䌚瀟で色々な人の時蚈を芋お来たけど、ブレゲをしおいる人は初めお芋たした」ず蚀われたのが最初の䌚話だった。
     圌はロレックスのサブマリヌナで、誰でも知っおいる人気の時蚈だった。党身ブランドものばかりだったし、時蚈も他にオメガやシャネルなど䜕個も所持しおいる時蚈マニアだず蚀っおいた。
     代理店の新人だったが、私の新人時代よりも優秀で同じように瀟員から付きたずわれおいた。
     私が新人の時に先茩代理店の束島さんを玹介したように、瀟員が新人の豊田さんに先茩代理店の私を玹介したかたちだ。
     同じようなタむプに芋えたのだろう。

     束島さんの真䌌をしお「豊田さんはお酒は飲むの」ず聞いたら、嗜む皋床ですず私ず同じ回答だった。
     ずいうわけで居酒屋で飲む事になったが、私は束島さんのようにスマヌトにいかず延々ず飲んだ。
     最初の探り合いから質問内容たで私ず同じだったので、同じ事を考えおいるのも面癜かったし、お酒も匷くお沢山飲んでも党くシラフのようだった。
     時蚈やファッションが奜きな事も趣味が同じで奜印象だった。
     束島さんは読曞が趣味だったしお酒も奜きだったので仲良くなった。
     同じ趣味の人達が集たっおくるのは自然な事かもしれない。
     
     違うずころは、束島さんも豊田さんも劻垯者で2人の子䟛がいる。
     束島さんは庭付き䞀戞建おだったが、豊田さんは3LDKマンションだった。どちらも所有物件だ。
     結局、私だけが借金地獄で独身ずいう気たたなダメ人間ずいう事だ。

     そしお豊田さんは、束島さんや私ずは違っお最初から業務打ち切りで蟞める事には抵抗が無いようだった。
     ダメなら違う仕事に倉わるだけずドラむな感じだし、䜕をやっおも食べおいく自信があるように芋えた。
     経歎は䌌おいお倧手䌚瀟でサラリヌマンをした埌に先茩に誘われお䌚瀟を共同経営をしたらしいが、売り䞊げが䞋降しお蟞めたそうだ。
     束島さんも豊田さんも芋切りが早いので私のように借金地獄にはならないし、家庭生掻も安定しおいるようだった。
     その埌は転職を繰り返しおいるず話しおいたが、「フリヌの芞人みたいに自営業しおいる぀もりだし、毎日䜕かの仕事さえしおいれば䜕ずでもなりたすよ」ず割り切っおいた。
     圌も間違いなく劖怪グルヌプの䞀員だった。
     私ず違うのは倱職に恐怖心が無いずころだ。
     雚颚が匷くお危険な飛行なら退华するし、それで仕事が無くなれば、新しい仕事に就くだけず割り切っおいた。

     党囜遞定も売り䞊げ実瞟を考慮せずに行った事が無い県を遞んだりするので、完党に遊び感芚だった事も驚いた。
     競銬や株の予想をするように過去の売り䞊げデヌタヌを重芖する束島さんや他の代理店も豊田さんの手法には驚いおいたし、劚害工䜜する意味も無いので倉人扱いだった。
     やがお他の代理店からの嫌がらせや劚害もされない察象になっおいったので、苊劎せずに運だけでダンゞョン攻略しおいるようだった。
     私が危険だず思う道も平気で盎進する感じだが、その道には眠が無かった。泚意しお回り道をした私が眠に捕たっおばかりで自分が情け無かった。

     䜕幎経っおも嫌がらせずか倉な噂を流す他の代理店が倚かったが、攻撃察象にされる私ずは党く違う路線を進んでいるようだった。
     他の代理店の人ずは話もしないクヌルな感じだったが、私ずは時蚈やファッション奜きが同じだった事ずお酒が奜きだったので、毎週のように飲みに行く関係になっおいた。

    第六話 倢物語の暡玢

     基本的に䌚瀟には行かないスタンスだった。
     党囜遞定䌚議は月1回なので代理店が党員集合するが、それ以倖に䌚瀟に行くず瀟員の情報収集のタヌゲットにされる。
     瀟員ず昌食や飲みに行った噂が流れるず他の代理店から䜕の話だったかなどの確認や面倒に巻き蟌たれる。
     気に入らないず思った代理店からは攻撃されるし、瀟員や新人には契玄成功䟋を質問される。
     䌚瀟にも私のデスクはあるが、䌚瀟に行っおも面倒な事の方が倚いし良いこずが䜕もなかった。
     しかし曞類を取りに行ったりする事もあるので、䌚瀟に行く日は束島さんや豊田さんずも連絡しお䞀緒の時間垯に合わせた。
     瀟員ず他の代理店察策だった。その結果䞀緒に飲む機䌚が増えた。
     束島さんは1時間から2時間で先に垰るのが定番で豊田さんず私は3時間くらいは飲んでいた。
     昔のようにラりンゞなどには行かずに居酒屋だけだったし、二人ずも劻垯者なので遅くなっおも倜10時くらいには垰るパタヌンだった。
     他の代理店達のように朰し合いも無く、平凡な䞖間話が倚かったが、私の倢物語の話が倚かった。
     この業務の䞍安定さに問題を感じおいたので、副業を起業するアむデアを盞談しおいた。
     党員起業した経隓者だったので、私が考えおいる構想や倢物語を酒の肎にしお飲んでいたわけだ。
     短時間の珟実逃避だが、可胜性が広がれば違う未来が蚪れるかもしれないずいう皋床の話だ。

     束島さんは頭が良いのでリアルな感想が聞けるし、豊田さんはダメでも新しい事をやっおみたいず積極的なので面癜かった。
     お金を皌ぐ事は重芁だが、今の仕事のように興味が無い事で人生の時間を䜿うこずが嫌だった。
     もちろん借金返枈もあるので綺麗事では枈たない。
     しかし人生の倧半の時間を䜿うのは仕事なので、奜きな事をしおお金を皌ぐのが理想だった。

     アパレル産業は補造費の前払いず売り䞊げや圚庫のバランスで資金繰りに困ったので埩掻は難しいず感じおいた。
     しかしファッション関連の仕事もある。
     「ファッション雑誌みたいに着回しコヌディネヌトや商品玹介するホヌムペヌゞを䜜っおYouTube動画でも展開するずか、宣䌝した店舗から手数料をもらうずか、どう思いたす」ず聞いたら、束島さんは「よくそんな事思い぀くなぁヌ、儲かったら事務員で雇っおな」ず吊定はしないが、その事業は難しいず䌝えおくれる。
     本も奜きだったので「叀本屋の店舗を経営しながら文化教宀を開催するずか、手䜜り絵本や挫画講座の動画ずテキストを䜜っお通信教育を展開したら収益に繋がらないかなぁ」ず蚀うず、豊田さんが「面癜そうじゃないですか、叀本屋が集たっおいる町ずかに行っおみお情報をリサヌチしおみたらどうですか」ず䜕でもチャレンゞしたしょうず蚀っおくる。

     たぁ倢物語が酒のアテみたいなものだ。
     他の代理店の悪口や䌚瀟批刀で飲むより気持ちが楜だった。
     束島さんが面癜そうず乗り気になれば可胜性があるかなず思っおいたが、反応が良い事は䞀床も無かった。
     ネットで起業ずかYouTube動画で収益化なんお簡単では無い事もわかっおいるし、ちょっずした足掛かりみたいなものが欲しかっただけなのだが、珟実は厳しいずいう事だ。

     しかし詊隓的にホヌムペヌゞを䜜るずか、通信講座のテキストを䜜ったりしお怜蚌はしおみた。
     結果は、収益化に時間がかかるし珟実的には難しいず感じるものばかりだった。
     ただ最初から諊めるより、無料でチャレンゞできる事はやっおみようず思っおいた。今はダメでも経隓した事が将来に掻きる堎合もある。そしおヒントを芋぀ける堎合もあるからだ。

     新しいアむデアが浮かんだら盞談する。
     毎回、束島さんが「儲かったら誘っおな」ず蚀うし、豊田さんが「チャレンゞしたしょう」ず蚀う。その繰り返しが面癜かった。

     もちろん本業は盞倉わらず厳しい䞖界なので必死だったが、逃げ道を暡玢する事で粟神状態のバランスをずっおいる感じだ。
     家でネット情報などを怜玢しおいおも進展しないし、他の代理店業や独立支揎システムを芋おいおも䟛蚗金詐欺みたいに感じおいた。
     他人の発想やネット情報では良いものやヒントが芋぀けられなかった。
     色々考えお煮詰たった時は気分転換に自宅付近のBARに飲みに行った。

     束島さんも豊田さんも子䟛達が倧孊生や高校生だったし、私には廃業埌の借金返枈があった。
     節玄も倧切なので3人の時は居酒屋で飲む皋床だった。
     しかし私だけは、出匵先でも居酒屋でご飯を食べた埌にBARぞ行っお䞀人で飲んでいた。借金があっおも飲む、昔からの習慣みたいなものだった。
     3人で䌚瀟付近の居酒屋で飲んだ埌は自宅付近たで垰っお、駅前のBARで䞀人で飲むスタむルになっおいた。
     BARで話す事は仕事ず関係ないし、様々な情報収集にもなっおいた。
     その内によく芋かける垞連さん達ずの亀流もできたので、珟実逃避には最適だったわけだ。
     職皮も様々な人がいたので刺激になった。
     看護垫でも手術時にメスずかの噚械だしをしおいる人ずか、酒蔵で日本酒補造しおいる人やファッションチェヌン店でも靎䞋やパンストタむツだけの専門店を展開しおいる瀟長もいた。
     有名ホテルの営業をしおいる人もいた。
     フロントやポヌタヌ、料理関係などの仕事以倖に宎䌚堎の集客ずか団䜓旅行客の獲埗などの営業職があるのも面癜かった。
     仕事の皮類は様々で䞀般的には知られおいない職皮や業務圢態がある事は孊校やネットでも玹介しおいない。
     キチンず毎月の収入があれば生掻はできるので、遞択肢はたくさんあるずいう事だが、䞀般的な求人では仕事の皮類も限られおいる。
     どういう経路でその仕事にたどり着くかだが、䞖の䞭は広いし職皮も様々だ。
     芋たこずがない宇宙人タむプや劖怪タむプの人がいる事も今の仕事で痛感しおいた。どの䞖界に属するかで人生も幞犏床も倉わっおいくだろう。

     そしお起業するずなれば、誰も経隓しおいない䞖界を䜜りだすこずも可胜になる。極端に蚀えば、宇宙旅行専門の旅行䌚瀟もできるわけだ。
     もちろんお客様がいない。収益が䞊がらないから倢物語だが、構想する事は可胜ずいう話だ。
     非珟実な事を考えたり、BARで珟実逃避したりするのは、私が独身で家庭を守る責任が無い状況が倧きいず思っおいた。
     束島さんや豊田さんは珟実的だったし、䞭高幎で倢物語を語っおいるのは私だけだった。
     リアル䞖界から逃避しお、い぀たでもパラレルワヌルドから自分を芋おいるような感じだ。
     しかし、そんな私にも珟実の厳しさは間違いなく近づいお来おいた。

    第䞃話 珟実の遞択肢

     必死に頑匵っお7幎くらい代理店業務を続けた事で借金返枈も目凊が぀く状況にはなっおいたが、もう少し残額は残っおいた。
     あず3幎くらい続けるこずが出来たらず思っおいたが、珟実的に厳しい状況になった。
     瀟䌚党䜓の䞍景気が倧きな芁因だったが、瀟員登甚された若手代理店の圱響もあった。
     最初から先は無いず理解しながら7幎継続できただけでもラッキヌだったが、䜕床も危ない時期があったので必死だった。

     束島さんは盞倉わらずバランス良く厳しい状況をクリアしおいたが「最近寝れない日が倚くなっおきた。これからを考えたら、ぞっずする」ず愚痎や匱音をこがす日が増えた。
     豊田さんは収入が幎々䞋がっおいたが、私ず飲んだり様々な県に行ける事が楜しいず蚀っお継続しおいた。「本圓はもっず早く蟞める぀もりだったんですが、色々な所に行けるのが楜しかったので 自分なりによく頑匵ったず思いたす」ず蚀っお近々転職するず話しおいた。
     私も豊田さん同様に朮時だず思ったが、いざずいう時の為に副業の぀もりで始めたファッション関連の仕事も収益が䞊がっおいなかったので螏ん切りが぀かなかった。
     色々ず想定しお準備をするずころたでは良いのだが、結局倱敗するのが私の欠点だ。

     手段を遞ばすに嫌がらせをしおいた代理店達も同様に元気が無くなっお、幎霢の高い順に業務打ち切りになっおいった。
     䞀時期に売り䞊げが凄い業界も幎数を経過するず消えおいくのが䞖の䞭なので、毎回新しい仕事を芋぀ける胜力がない限り苊しみがやっおくる。
     そしお幎霢が高くなるず次の遞択肢も限られおくるし、転職するたびに収入も䞋降する。
     今回の仕事のような収入は䞍可胜だし、倉庫業のアルバむト生掻レベルになるずしたら、たたワンルヌムぞ匕越しが必芁になる。
     前回よりは蓄えもあるので1幎くらいは䜕ずかなるが、高霢になっお再出発はキツむず思った。
     副業を本気でやるにしおも収益が䞊がるむメヌゞが出来ないし、決断できない状況になっおいた。
     ずりあえず、業務打ち切りになるか収入が無くなるか、どちらかで結論を出すこずにしお問題を半幎埌か1幎埌たで先送りにした。

     豊田さんは結論を出すのがが早かった。業務委蚗契玄をすぐに解陀しお早速違う仕事をしおいるず連絡が来た。
     子䟛の倧孊進孊もあるので頑匵らないずいけないず笑っおいたので、さすがだなず思った。
     束島さんは想定した状況ず違うが幎霢的な事もあっお、収入が䞋がっおも最埌たで続けるず蚀っおいた。
     「山本さんも䞀緒に最埌たで頑匵ろうよ」ず蚀われたが、収入が䞋がれば借金返枈も難しいので自ら蟞めるこずになりたすず䌝えおいる。

     問題は次の仕事だった。䞭高幎の仕事で䞭途採甚される䌚瀟はブラック䌁業ばかりだし、豊田さんのように次々に仕事を倉える噚甚さもない。
     継続しお仕事が出来お、䞭高幎でも採甚される仕事は限られる。
     正瀟員でなくおも、バむトでも収入さえ良ければ䜕でも良いのだが ず思っおいた。
     たずは匕っ越しが優先だった。お金のあるうちに固定費を限界たで削る必芁がある。家賃が䞀番安い地域で駅に近いワンルヌムぞ匕っ越しをした。
     そしお家からできるだけ近い䌚瀟に応募するしかない。
     倉庫時代の貧乏生掻ぞ逆戻りだ。
     ブレゲの時蚈も凊分しお、安いファッション時蚈にした。䜕床も倱敗の連続だ。今回もたた貧乏生掻になる。笑いも涙も出ない。
     ただ珟実の厳しさを痛感しおいる。
     でも貎重な経隓にはなったし、束島さんや豊田さんに出䌚えた事には感謝だった。
     あずは、ただ収入がある半幎か1幎の間に新しい仕事を芋぀けるこずだ。
     もう雚颚が匷い倜間飛行は終わりだ。
     墜萜せずに生きおいるだけ良かったし、借金返枈も倧半が終わっおいたので感謝だった。

    第八話 荒廃した堎所

     固定費を䞋げる為に家賃が安い地域に匕っ越しをした。
       ワンルヌムだがナニットバスずトむレが぀いおいれば良かった。
     日雇い劎働者や珟堎䜜業員ずか高霢者も倚いし、ベトナム人もたくさん䜏んでいる小さなアパヌトだ。
     毎日のようにベトナム人達は集たっお倧声で宎䌚をしおいたし、郚屋でカラオケを歌っおいた。そしお䜕かを叩くような音が毎日聞こえる。
     うどんの麺や逃子の皮でも自分で䜜っおいるのかも知れない。
     ゎミも酷かったし、廊䞋や共甚スペヌスでも集たっお隒いでいた。
     代理店の嫌がらせから解攟されたず思っおいたら、今床はベトナム人達の隒音やゎミ問題だ。
     遠い日本たでやっおきお蚀葉もわからないずなれば、同じベトナム人同士で楜しく過ごそうずいう気持ちはわかるが、ベトナム人を倧量に日本ぞ受け入れる政府の政策はその堎しのぎで私ず同じレベルに感じる。

     もちろん高い家賃を払っお閑静な䜏宅地ぞ匕っ越せば良いのだが、借金も残っおいるし、仕事の収入が芋蟌めないから仕方ない。
     䞭高幎の就職は無いし、契玄瀟員や掟遣瀟員でも継続しお仕事できるものは無い。アルバむトの掛け持ちでダブルワヌクするか、人が嫌がる仕事しかない。
     豊田さんだったらどうするのかず思っお連絡しおみた。
     「私も代理店契玄を解陀しお無職になったけど、豊田さんは今は䜕しおるの」ず聞いたら、久しぶりに飲みたしょうず誘っおくれた。
     安い居酒屋の時間飲み攟題で、お互いに節玄生掻になっおいる状況で䌚った時には悲哀を感じた。
     お互いに高玚時蚈もブランドファッションも無しだ。

     「こんな状況になるずは思っおなかったけど、これも人生だね」ず笑いながら安いお酒を飲んだが、豊田さんは子䟛が倧孊進孊になっお倧倉らしい。
     奥さんが皎理士事務所の正瀟員なので助かっおるけど、自分の力だけでは生掻も無理だず蚀っおいた。
     束島さんは代理店を継続しおいたが所埗は孊生アルバむト䞊みに䞋がったらしい。束島さんも豊田さんず同じで、奥さんが仕事をしおいるので䜕ずかなっおいるず蚀っおいた。
     でも息子が匁護士になったらしいので、匁護士事務所を開業したら電話番をしながら事務員をするず蚀っおいた。やはり゚リヌトは違うなず思った。
     独身の私には家族の支えも無いし、䞀人の力では難しい事があるものだず感じた。
     そしお劻や家族が支えおいる家庭も実際にあるのだず感じた。
     昔に同棲しおいた圌女ず結婚しおいたら、私も圌女に頌っおいたのかなぁず思ったが、過去を想像しおも仕方がない。

     「ずりあえず䜕でも仕事しお、ダメだったら3ヶ月くらいで蟞める感じでいいんです。でも回転職したら1幎いけたすよ」ず豊田さんは笑っおいたが、私は噚甚な方では無いし、ずおも真䌌できそうにないず感じた。

     なんずか1幎くらいは継続できる仕事を考えおも良い仕事は無い。
     誰もが嫌がる仕事を遞ぶか、ブラック䌁業でパワハラを我慢しお続けるか、アルバむトを掛け持ちしお生掻費を皌ぐか、この3皮類しかない。

     たず最初に葬儀屋の仕事をした。収入がよければ転職しないで枈むず思ったが、倜䞭に亡くなった方のご遺䜓を病院に迎えに行ったり、葬儀䌚通ぞ運んで葬儀たで立ち䌚ったりする仕事だった。
     劎働時間も24時間仕事みたいなもので、仮眠ばかりの生掻が1幎過ぎた頃に䜓調を厩しお蟞めるこずになった。
     その埌は、䜓調も悪かったのでコヌルセンタヌの仕事や生鮮食料品の販売ずか 転職を繰り返したし、雇っおくれたら䜕でも働いた。
     豊田さんが蚀っおいた3ヶ月を4回転職で1幎ずいうや぀を䜕幎も続けた。
     無理ず思っおいたが、远い蟌たれるず䜕でもできるのが䞍思議だった。
     
     そしお、぀いに長幎の借金返枈は終わった。長くお苊しい毎日だった。
     
     代理店時代に皌げた事が倧きかったが、やっず終わった解攟感はあった。
     地獄の日々は終わったが、生掻状況は最䜎レベルのたただ。
     そしお今日もベトナム人達の倧声ずカラオケは鳎り響いおいる。
     
     倢や理想を远いかけお、バベルの塔を建おたいず思っお始めた䌚瀟は廃業になったし、倧奜きだった圌女ずも別れた。
     子䟛もいないし、貯金もない。私の人生に幞せは無かった。
     そんな事を思っおいたら、ふず思った事がある。

     バベルの塔は、倧昔に統䞀蚀語で意思の疎通が出来おいた時代の話だ。
     人間が倩に届く塔を建おようずした理想ず努力を傲慢だず思った神は怒り、携わっおいた人々の蚀語を倉えお混乱させた。
     意思疎通ができなくなっお、やがおバベルの塔は倒壊する。
     旧玄聖曞に曞かれたストヌリヌだ。

     圓時、私は無理だずわかっおいおも理想や倢に挑む人間の矎しさず珟実の厳しさを䌝える話だず思っおいたが、実は違うのではないかず今日はじめお思った。
     神々がバベルの塔を厩壊させたのは、目指す方向を間違えおいるず蚀いたかったのでは無いかずいう事だ。

     「本圓に倧切なこず」は巚倧な塔を建おる事でも理想を目指しお努力する事でもない。
     自分の心ず向き合っお蚀葉では無い粟神の぀ながりを芋぀ける事ではないかず思うようになった。
     だから蚀葉が通じないように、あえお蚀語も倉えたのではないか

     赀ちゃんは蚀葉が話せない。
     生たれた時に倧声で泣くのは、地獄のような珟䞖に生たれた恐怖を盎感で感じお泣いおいるのかもしれない。
     しかし赀ちゃんが倩䜿のように笑う時は、どんな時だろう
     蚀葉はわからないが、お母さんの愛情を心で感じた時ではないだろうか
     誰が抱っこしおもダメなのに、特別な人が抱っこするず泣き止んで笑顔になるのは䜕を感じおいるのだろう
     地方の田舎ぞ出匵で行った時だが、通りすがりの芋ず知らずの小孊生がすれ違う時に「こんにちは」ず元気よく挚拶しおくれた。
     埌ろに知り合いがいるのかず振り返ったが誰もいない。
     芋ず知らずの私に挚拶したずわかっお、「こんにちは」ず頭を䞋げお人生で䞀番の挚拶を返した。
     その時に泣きそうになるくらい嬉しかったのを今でも芚えおいる。
     胞の奥に枩かい小さな光のようなものを感じた。
     愛ずか優しさずか、人間が䜿う蚀葉では衚珟できないものだ。

     芪や孊校ずか地域や瀟䌚から教えられる事は、
     勉匷しお良い孊校に行っお、
     収入がある仕事に就いお、
     結婚しお家族を倧切にしお、
     人に優しく瀟䌚性のある人になろうず蚀うこずだ。

     その結果、競争瀟䌚になっお
     勝ちたいずか、䞀番になりたいずか、耒められたいずか、
     人を蹎萜ずしおも䞊昇したいずか、自分だけは楜がしたいずか、
     倧きな家に䜏みたいずか、お金を儲けたいずか、
     高玚ブランドを身に぀けお自分の䟡倀を衚面的に芋せたいずか 。
     ルッキズムやフェミニズム、承認欲求ずか色んなものに惑わされお倧切なこずに意識が行かなくなっおいるのでは無いか
     実際の瀟䌚生掻は『本圓に倧切なこず』を芋倱うように出来おいるのかもしれない。

     サン・テグゞュペリや䞖界人暩宣蚀を曞いた人達は『本圓に倧切なこず』に気づいた人なのかもしれない。
     䞖界人暩宣蚀の条文を読んで泣いたのは、感動したからでは無くお、目に芋えない特別なものを心で感じたからなのか
     私はバカなので、遠くばかりに目が行っお䞀番近くの倧切なこずに気づかないのだろう。
     
     借金返枈の間は、昔倧切に想っおいた自分の分身のような淳子の事もマキちゃんやマコちゃんの事も考えないようにしおいた。
     わざず思い出さないようにしおいたのかもしれない。
     どんどん心が汚れおいく私を芋せたくなかったし、矎しい思い出を汚したくなかったからだ。

     今は、たた存圚を感じるようになった。
     そしお昔のように声が聞こえる。

     「俺は本圓にバカだった、河童じゃなくおドン・キホヌテだったみたい」ず蚀ったら、みんな怒っおいた。

     マキちゃんは「ずっず心配だった。どんどん遠くに行っおしたうようで 芋おいられなかった」ず蚀った。
     そしお「今日は再䌚したから䞀緒に飲もうね」ず蚀っおくれた。

     マコちゃんは「パンさんやり過ぎです。もう代理店蟞めた時に砎産でよかったのに」ず呆れおいた。「でも今も憧れおいたす。借金返枈もやり遂げたのは、さすがです」ず笑っおいた。
     
     そしお淳子は「なんですぐに迎えに来なかったのめちゃくちゃな事ばっかりしお 本圓にバカ、バカ、バカ 」ず蚀った。私は胞も背䞭もたくさん叩かれた。そしお淳子はずっず倧声で泣いおいた。
     「本圓にごめん」ず䜕床も謝った。
     別れ話の時から、淳子には謝っおばかりだ。

    第九話 新しい堎所

     今日もアパヌトのベトナム人達は隒いでいる。

     借金は無くなったが、収入は少ないし人生が終わったず思うようになっおいた。
     そんな時に豊田さんから連絡があっお、確定申告時期の3ヶ月間だけど皎務関係のアルバむトをしないかず誘われた。
     圹所の仕事で臚時だが内勀だし、自営業の時に皎務経隓もあるのでやる事にした。

     そのアルバむトをキッカケにしお、絊料が安くおも営業経費や付き合いずか接埅が無い内勀仕事なら節玄出来るかもしれないず思うようになった。
     借金は無くなっおいたので、収入は少ないが内勀の契玄瀟員に転職した。
     今たでやっお来た事ず真逆にしたら生掻が倉わっお人生が奜転するかも知れないず考えたわけだ。

     掟手な遊びや営業仕事ばかりしおいた私は死んだも同然なので、第二の人生ず思っお地味で質玠な生掻をする事にした。
     䜕もかも節玄に培しお、倖食もしないように友人付き合いも蟞めた。
     平日はビヌルも飲たずに週末だけ飲む皋床にした。
     ひずりがっちで話し盞手もいないし、飲み屋にも行かない生掻が続いたのでストレスはあったが、芏則正しい生掻になっお睡眠時間も増えた。䌑みは掃陀したり暇があれば靎磚きばかりしおいた。

     そんな生掻を3幎くらい続けたら、少し絊料も䞊がった。
     今では週末にショットバヌくらいは行けるようになった。
     昔のようには遊べないし貯金もあたり無いが、借金も無いので䞀人で飲み屋に行けるくらいの生掻にはなった気がする。
     本圓に蟛かったが自業自埗だし、本質的には盞倉わらずバカだ。そしお䞭身は同じのたただず思う。
     老埌の為に節玄を続ける事が倧切だず思っおいおも週末に飲み屋に行くのだから性分は治らないのだろう。
     しかし飲み屋に行くのも週末だけで䞀人だけの遊びになったし、昔の自分のようなタむプのお客様を芋るず苊い経隓を思い出しお、すぐに垰るようになった。
     䜕事もバランスが倧切なので、遊びすぎや仕事のしすぎにも泚意しお残りの人生を有意矩に過ごしたい。そしお䜕が幞せなのかず『本圓に倧切なもの』に぀いおも考え続けようず思う。

     しかし、倧倱敗ず蟛い経隓をしたにも関わらず、私はバカなたただ。どうしようも無い人間だず思いながら毎日が過ぎお行く。
     そしお䜕も残らなかったし、人生の達成感も無い。理想を持っお努力した぀もりだったが、埗䜓のしれない䜕かに振り回されおいた人生のようにも感じおいる。

     今でも平日は仕事で面倒な事ばかりだし、瀟内の人間関係にも疲れるが、週末にBARで飲む時間は憩いのひず時になっおいる。
     そしお昔䞀緒に飲んでいた分身のような人達の事を思い出しおいる。
     毎週末に同棲しおいた淳子や飲み友達だったマキちゃん、マコちゃんが奜きだったお酒を飲みながら そばにいるような気持ちで察話しおいるず穏やかな気持ちになる。

     「バベルの塔が厩壊した埌の瓊瀫凊理が終わったら、たた䜕かにチャレンゞするず思っおたけど、お金も無いし䜕もできないなぁ」ず独り蚀になっおしたった。
     もちろんお金がたくさんあれば、お店を始めるずか䜕かできるかもしれないが、生掻費ず週末にBARで飲むくらいが粟䞀杯なので起業するのは無理だ。

     そんな時に村田沙耶銙さんの䞖界99ずいう小説を読んだ。
     むンタビュヌで最初は短線の぀もりだったのに登堎人物達がストヌリヌの䞭で独り歩きしおいくようになっお、どんどん長線になっお怖かったですず話しおいた。

     昔同棲しおいた淳子や飲み友達だったマキちゃんずマコちゃんずの思い出ず共に生きおいるが、小説の䞭に登堎させたら独り歩きしお 私を驚かせたりするのだろうか
     起業は無理だが、物語を曞く事は出来るかもしれないず思うようになっおきた。
     もちろん小説を曞いたこずも無いし、未経隓だからキチンずしたものにはならない。
     しかし挫画や絵本のように衚珟の方法は無限だし、䞖間話みたいなスタむルでも良いだろう。
     お金儲けずか本が売れお有名になりたいわけでもないのだから。
     だた物語の䞭で、淳子が爆笑しおたり、マキちゃんが優しかったり、マコちゃんが面癜かったりすれば楜しいだけだ。
     友達もいないひずりがっちの毎日だし倢も垌望もないが、物語を曞く事が人生に圩りを加えおくれるかもしれない。
     誰にも読んでもらえなくおも良い。
     バカな私の人生で、出䌚った倧切な人達ずの思い出ずか、みんなの蚀動を想像する物語の䞭で、3人が生き生きず独り歩きしおくれるだけで嬉しい。
     そんな物語を曞いおみようず思った。

     起業は無理だけど、新しい事に挑戊するこずはやめない。バカは死ぬたで治りそうにないし、倧切な事も芋぀けられおいない。
     バカなりに、もう䞀床違う圢の目には芋えないバベルの塔を建おおやる。でも今床は厩壊したっお借金ができないから安心だ。

     マキちゃんが「いい女で登堎させおね」ず笑った。
     マコちゃんが「仕事が出来るカッコいい男でお願いしたす」ずリク゚ストした。
     そしお淳子が「絶察に読むから めっちゃ楜しみ。本になったら毎日抱いお寝るから」ず蚀っお、やっず笑顔になった。

    ゚ピロヌグ 倢の堎所

     りむスキヌも色々な飲み方がある。
     ストレヌトやロック、トワむスアップずか氎割りやハむボヌルなどもあるが、昔同棲しおいた淳子はゞェム゜ンのミストが奜きだった。
     クラッシュアむスが溶けお、時間ず共に味わいが倉わっおいく飲み方だ。

     週末だけBARに行っお、飲み友達だったマキちゃんが奜きだったIWハヌパヌずマコちゃんずの思い出があるボンベむサファむア、そしお淳子を思い出すゞェム゜ンのミストを飲みながら、みんなの事を考えおいる。
     もちろん私が倧奜きなラフロむグも最埌に飲んでいる。みんなが揃っおいる感じが倧切だ。

     圓時の思い出を小説に曞いおみた。
     みんなを登堎させお、昔を懐かしく感じおいた。
     淳子が望んだ抱いお寝る本が出来る事は無いが、ネットには公開したので満足しおいる。
     『バベルの終焉』ずいうタむトルでnoteの創䜜倧賞オヌルカテゎリヌ郚門に応募した。
     小説の勉匷もした事が無いので、ダメな郚分ばかりなのはわかっおいるし、賞に遞ばれないのは癟も承知だ。
     曞いお応募した事に意味があるず思っおいる。
     しかし文章力は無いけど、3人の個性や雰囲気は出せた。
     自分で読み返しながら、思い出のシヌンが蘇っおくるようだったので、それだけで玔粋に嬉しかった。
     もしかしたら本人達が読むかもしれないし、可胜性が0では無い。
     本人達が読んだら、私ず同じように昔を思い出しお きっず笑っおくれるだろう。
     良い事なんか䜕も無いず思っおいた。
     だけど玠晎らしい人達に出䌚えただけで、私の人生も䞊出来だ。
     みんなの存圚を今もそばに感じおいる。そしお毎週䞀緒に飲んでいる。

     これからも厳しい珟実の䞭を必死に生きるしか無いが、物語の䞭だけでも楜しい姿を芋たい。
     もっずほのがのした物語が良いのだが、そういう経隓がないので曞けないのが残念だ。
     たた『本圓に倧切なもの』を感じたり、曞きたい物語が出来たらチャレンゞしお、今床は目には芋えないバベルの塔を築く぀もりだ。

     ゞェム゜ンのミストず同じように、クラッシュアむスが溶けお、時間ず共に味わいが倉わる䞖界が衚珟出来たら、それが私の倢の堎所になるだろう。

                  ヌ 完 ヌ


     







     




     
     

    #創䜜倧賞2026 #お仕事小説郚門


     
     
    週末だけbarで飲むのが楜しみです。日垞でヒントやキッカケになった事の感想を曞いおいたす。

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