
消しゴムのケシ坊そらをとぶ
小学4年のたくみの筆箱には、小さくなった消しゴムのケシ坊がいました。
たくみが漢字ドリルで間違えた文字を、きれいに消すことがケシ坊の仕事です。
「は〜。たまには、筆箱の外を大冒険してみたいな〜」
ケシ坊はいつも、思っていました。
ある日の放課後、たくみが宿題を終えて遊びにでかけた時です。
机の上に残されたケシ坊の体が突然、ふわっと浮き上がりました。窓から夕方の風がケシ坊の体を包み込んだのです。
「うわぁ!ぼく、空をとんでる」
ケシ坊は窓から外へ飛び出し、夕焼けの空へと舞い上がりました。
ケシ坊が風にのって、スイスイ飛んでいると向こうから大きな黒いカラスが飛んできました。カラスはケシ坊を、美味しそうな白いお菓子だと勘違いしました。そして、カラスはそのするどいくちばしでケシ坊を捕まえようとしました。
「食べられちゃう、どうしよう」
ケシ坊は必死に逃げましたが、カラスはすぐ後ろまで追ってきています。その時、ケシ坊はひらめきました。
「そうだ!ぼくは消しゴムなんだ!」
ケシ坊は体を丸めてカラスの大きな目にとびこみ、自分の体でカラスの視界をゴシゴシとこすりました。すると、カラスは目がくらんで「カーッ」とおどろき、どこかへ逃げていきました。ケシ坊は自分の特技をつかって見事にピンチを切り抜けたのです。
夕暮れ時、風が優しくケシ坊をたくみの部屋の机の上に戻してくれました。
帰ってきたたくみは筆箱の横にあるケシ坊を見て、不思議そうな顔をしました。
「あれ…ケシ坊、さっきより小さくなって黒く汚れてるな。」
ケシ坊は心の中で、ニヤリと笑いながら静かに眠っていきました。