
【朝五時のインターホン】第30話 治したいです
「どうしましたか?」 先生にそう聞かれた。 「アルコール依存症だと思うんですけど、治したいです」 そう答えた。
自分でも驚くくらい素直に言えた。 隠す気はなかった。 誤魔化す気もなかった。 ここまで来たら認めるしかなかった。
先生は色々なことを聞いた。 どれくらい飲んでいるのか。 朝から飲むことはあるのか。 仕事のこと。 家族のこと。 最近の体調のこと。 一つずつ正直に話した。
飲まないと落ち着かないこと。 朝から飲んでいたこと。 吐きながら飲んでいたこと。 手が震えること。 体が思うように動かなくなったこと。
話しながら思った。 やっぱり普通じゃなかったんだなと。
診察が終わると、そのまま入院の案内になった。 驚きはなかった。 自分も入院するつもりで来ていた。 このままでは駄目だと思っていた。 だから病院に来た。
看護師さんに案内されて病棟へ向かった。 入院する用意は何もしていなかった。 診察を受けて、そのまま入院になった。 荷物もほとんどなかった。
病棟へ入った瞬間、少し驚いた。 今まで見たことのない空気だった。 独特のにおいがした。 静かなのに落ち着かなかった。 どこか現実感がなかった。 ここに入院するんだと思った。
数日前まで普通に仕事をしていた。 前の日まで酒を飲んでいた。 それなのに今は依存症の病棟にいる。 不思議な気分だった。
病室へ案内された。 ベッドに腰を下ろした。 窓の外を見た。 これからどうなるのか分からなかった。 酒をやめられるのかも分からなかった。
ただ、一つだけ分かっていた。 自分は自分を助けるためにここへ来た。 人生で初めてだった。
(第一部 完)
※本作は実体験をもとに執筆している連載エッセイです。