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眠ることは生きること

    かなこ

    母の棺を担いでくれた婚約者同然の彼に別れを告げられたとき、母のお墓のある博多までの8時間、新幹線の中で泣いてました。そのとき車掌さんに母のこと、彼のことを泣きながら話したことがあります。

    このお話しの主人公依里よりは、眠れなくなり寝具店でその理由を泣きながら話していて。あの頃のわたしを思い出しました。

    知っている人じゃなく知らない初めて会ったその時だけに人だから話せることもあります。話すことで落ち着くことがあります。眠れない日々を過ごしていたとき、この本に出会ってたら。

    眠れない夜に寄り添い生きるエネルギーになる物語です。

    宇宙の片すみで眠る方法   畑野智美

    大学時代から8年半付き合った婚約者・直樹を亡くした依里より。大阪出張に出かけたはずが、直樹はなぜか年上女性と東北の温泉宿に泊まり、その帰りにバス事故に遭ったのだ。以来眠れなくなった依里は、親身になってくれた店長のいるデパートの寝具売り場で働くことに。

    ポプラ社

    依里のプロフェッショナルな仕事ぶりが切なく眩しい。眠れぬ人たちの話しを聞き、仕事をして生きていく。ひりひりとした孤独を感じるけど、職場の人やお客様、直樹と一緒に亡くなった女性の夫・高橋らの出会いで、考えや見える世界が変わってきます。

    依里だけでなく、自分よりも相手のことを考えて自分のことを後回しにしている女性たちがたくさん登場します。職場で上手くいくように自分を抑えている会社員、婚活で男の人の好みに合うように演じたり、夫の好みに合わせてしまったり。

    わたしもまず夫を考え、そのあと自分のことをすることが多いです。だからといってそれがまちがえだとは思わない。

    いつも家族を優先し、自分のことは後回しの母親も家族が大切だから。落ち着いた自分の時間ができたら、自分を大切にする。わたしもそう。だけど、もっともっと自分の時間をつくってもっともっと自分を愛してあげたいなと思いました。夫を愛すると同じぐらいに。

    依里さんへ
    依里さんは直樹さんのことが大好きで直樹さんも依里さんを大切にしてたのは事実だと思います。だけど、わたしが泣いちゃったのは高橋さんが、「依里」と言った場面です。ユーモアもあって初々しいけど大人で落ち着いていて、きれいでした。

    「彼が」や「夫が」でなくて、「わたしが」というものを今のわたしは求めている。

    直樹さんや、高橋さんじゃなく、依里さんが一番心地よいと思えることを優先していればきっとまた出会えると思います。今度の出会いはきっとバージョンアップした依里さんだから、最強。

    食べること、仕事をすること、人と出会うこと、自分自身を大切にすること、よく眠ること。依里さんが教えてくれました。ありがとうございました。

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