メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

スフロ通り、時に

    い぀もぱッセむを曞いおいたすが、今回は短線小説を曞いおみたした。

    〈あらすじ〉

    1990幎代のパリ。留孊生のたゆみは、サンクスギビングの倜にアメリカ人の圌アレックスず䌚う玄束をしおいた。しかし埅ち合わせ堎所ぞ行っおも圌は珟れず、電話をかけおも぀ながらない。

    街角で埅ち続けるたゆみず、レストランで圌女を埅ち続けるアレックスは、互いを知らないたたすれ違っおいく。その間に、二人が過ごした日々の蚘憶がよみがえる。

    携垯電話のなかった時代のパリを舞台に、䌚えなかった䞀倜ず、その䞭に流れた静かな時間を描いた短線小説。

    キオスク

    空はただ少し明るかった。

    Cluny-La Sorbonneの駅を出るず、Rue Saint-Jacquesにはただ人の流れが続いおいた。狭い歩道を人を避けながら進む。コヌトの襟元から、冷たい空気が入り蟌んでくる。巊には、パンテオンが芋えおいた。

    腕時蚈に目を萜ずすず、十八時を少し過ぎおいた。向かいに、小さなレストランが芋えた。癜いテヌブルクロスの間を、人が行き来しおいた。

    コヌトのポケットから、折りたたんだ玙を取り出す。メモには、番地だけが曞かれおいる。通りの看板ぞ目を向け、もう䞀床玙を芋る。行き亀う人圱の䞭に、圌の姿はなかった。

    圌女は通りを枡り、キオスクの暪ぞ立぀。

    すぐ隣のバス停では、バスがひっきりなしに止たっおいた。ドアが開くたび、人が䞀斉に降りおくる。車が詰たり、どこかでクラクションが鳎っおいた。

    向かいのレストランの扉が開く。人が出おきお、たた扉が閉たる。
    腕時蚈に目を萜ずす。い぀のたにか、建物の窓に灯りが぀き始めおいた。

    公衆電話ぞ向かう。テレカルトを差し蟌み、受話噚を耳に圓おる。

    呌び出し音が続く。

    誰も出ない。

    ゆっくり受話噚を戻し、ガラス越しにもう䞀床通りを芋る。来た時にはただ倕方だった空は、すっかり暗くなっおいた。街灯の䞋を、人圱だけが通り過ぎおいく。

    向かいのレストランだけが、ただ明るかった。

    再びキオスクの暪に立぀。コヌトのポケットに䞡手を入れたたた、しばらく通りを芋おいた。

    æ°Ž

    レストランの入口で名前を告げるず、り゚むトレスが予玄垭ぞ案内する。圌は窓を正面にしお座る。

    窓際のテヌブルにはすでに䜕組か客が座っおいお、その向こうに通りが芋えた。ガラスの倖は薄暗く、車のラむトだけが流れおいく。向かい偎のキオスクたでははっきり芋えなかった。

    メニュヌが眮かれる。圌は、予玄しおいたサンクスギビングディナヌのこずを䌝える。り゚むトレスはうなずき、ワむンメニュヌだけを残し、そのたた奥ぞ戻っおいく。

    しばらくしお、氎が二぀運ばれおくる。グラスの衚面には、小さな氎滎が぀いおいた。

    瀌を蚀い、向かいの垭ぞ目を向ける。

    店の䞭は暖かく、笑い声が時々聞こえおくる。タヌキヌの匂いが挂っおいた。ナプキンに手を眮き、腕時蚈ぞ目を萜ずす。ただ玄束の時間を少し過ぎたばかりだった。

    窓の倖ぞ目を向ける。通りを枡る人圱が、次々ず行き過ぎおいく。

    グラスの氎には、ただ手を぀けおいなかった。

    メモ

    鉄栌子の門を開け、石畳の前庭を暪切る。重いドアを抌しお䞭ぞ入るず、正面には昔のたた残された朚の階段が䞞く䞊ぞ続いおいた。

    階段の裏偎の壁には、公衆電話が二台䞊んでかけられおいる。その暪の䌝蚀板の前では、倖から垰っおきた生埒たちが立ち止たり、玙をめくりながら自分の名前を探しおいた。

    その前を通り過ぎ、巊ぞ曲がる。

    奥の倧きなキッチンからは、人の話し声が聞こえおくる。倧きなキッチンには長いテヌブルがいく぀も䞊んでいる。壁際のガス台では、䞀人の生埒が鍋をかき混ぜおいた。

    壁際に䞊んだパントリヌを開ける。クッキヌの箱を取り出し、空いおいるテヌブルぞ腰を䞋ろす。

    そこぞ、レティシアがキッチンぞ入っおくる。

    「たゆみ、さっきアレックスから電話があったわよ。これ、メモしおおいた。」

    レティシアは小さな玙を枡す。

    玙には、

    「 スフロ通り、時」

    ずだけ曞かれおいる。

    「ありがずう」

    メモをポケットにしたう。そのたたキッチンに残り、ノヌトを開いお宿題を芋盎す。

    時々、壁の時蚈ぞ目が向く。ただ五時を少し過ぎたばかりだった。ノヌトぞ芖線を戻す。䜕行か読んだずころで、たた時蚈を芋る。

    ノヌトを閉じる。

    郚屋ぞ戻り、ベッドの䞊に服を広げる。着替えを枈たせ、鏡の前で髪を敎える。䞀床離れ、もう䞀床鏡を芋る。

    机の䞊の時蚈に目を向ける。コヌトを掎み、郚屋を出た。

    䞞く続く階段を、手すりに觊れながら急いで降りおいく。

    写真

    重い鉄栌子の門を抌し開けるず、冷たい颚が頬に圓たる。コヌトの前を抌さえながら、地䞋鉄ぞ急ぐ。

    Carte orangeを通し、慣れた手぀きで鉄のバヌを抌しお地䞋ぞ降りおいく。ホヌムに着くず、䞀息぀いお前を向く。暗い線路の奥から、地䞋鉄の明かりが近づいおきた。

    電車が止たる。

    すぐに金属のバヌを匕き䞊げ、扉を開ける。入口近くの折り畳み怅子ぞ腰を䞋ろす。

    電車が動き出し、車䞡が倧きく揺れた。向かい偎では、新聞を読んでいる男の隣で、女性が膝の䞊に玙袋を眮いお座っおいた。

    ガタン、ガタンずいう揺れが続く。

    その音の向こうで、服が回っおいた。コむンランドリヌでは、人が出たり入ったりしおいた。

    「あずどれくらい」

    圌が䞞い窓を芋ながら聞いた。

    「十分くらいかな」

    シャツの袖が回るたび、ガラスに圓たっおいた。

    圌は、もうすぐアメリカぞ垰るず蚀った。

    「い぀」

    「ただい぀か決めおない」

    目の前では、女性が也いた服をテヌブルの䞊で畳んでいた。

    畳たれた服の暪の空いた堎所に、圌がカメラを眮いた。タむマヌを抌し、急いで隣ぞ座る。

    シャッタヌが切れる盎前たで、二人ずも笑っおいた。

    テレカルト

    もう䞀床公衆電話ボックスぞ入る。ドアを閉めるず、倖の音が遠くなる。

    テレカルトを差し蟌み、圌の郚屋に電話をかける。叀い呌び出し音だけが、狭い箱の䞭に響いおいる。

    ガラスには、通りの灯りが映り始めおいた。

    ただ鳎り続けおいる。

    誰も出ない。

    䞀床受話噚を眮きかけ、もう䞀床耳に戻す。ため息を぀き、カヌドを抜いた。ゆっくり受話噚を戻す。

    電話ボックスを出るず、冷たい颚が頬をかすめる。行き亀う人圱の䞭に、芋芚えのある姿はない。さっきたで続いおいたクラクションも、い぀のたにか聞こえなくなっおいた。

    レストランの窓の向こうでは、近くのテヌブルにも少しず぀人が座り始めおいた。タヌキヌやマッシュポテトの匂いが、店の䞭に広がっおいた。

    圌は窓の倖ぞ目を向ける。通りの灯りが、ガラスに映っおいた。

    向かいの垭には、ただ誰も座っおいない。

    腕時蚈に目を萜ずす。

    氎の入ったグラスは、ただそのたただった。

    り゚むトレスがテヌブルぞ戻っおくる。圌は埮笑み、予玄しおいた料理を持っおきおほしいず頌んだ。

    しばらくしお、二人分のサンクスギビングディナヌがテヌブルに運ばれおくる。

    フォヌク

    通りを少し歩く。暗くなった通りでは、コヌトの色ばかりが目に入る。顔はもう、よく芋えない。䜕人かずすれ違うたび、顔を確かめるように目を向けおしたう。

    通りの向こうから、車の音だけが聞こえおくる。

    レストランの灯りが、少しず぀埌ろぞ遠ざかっおいく。

    明るい店の䞭では、客たちがただ食事を続けおいた。人々の話し声に混じっお、時々皿の音や笑い声が聞こえる。

    向かいの垭には、誰も座っおいない。

    圌は動かずに座っおいた。テヌブルに眮かれた二぀のグラスを、じっず芋぀めおいた。

    それから、ゆっくりずフォヌクを手に取る。


    Photo by Adrien Olichon on Unsplash


     
     
    東京生たれ。あちこちで暮らしお、今はカリフォルニア。 家族のこず、昔のこず、最近ちょっず気になるこずを、分からないたた曞いおいたす。 自分からコメントするのはちょっず苊手ですが、もらえるず倧倉嬉しいです。

    あなたぞのおすすめ