『当選番号』
彼と宝くじを買った。
彼がお金を払い、私が連番かバラかを選んで数枚購入した。
「当たったら半分こな」
その言葉だけが軽く残っていた。
家に帰って、神棚のような場所に宝くじを置いた。
なぜかそうした方がいい気がした。
願掛けのようなものだった。
そのうち、すっかり購入したこと自体を忘れていた。
ある日、大喧嘩をした。
理由はもう細かく思い出せない。
ただ彼の態度に愛想が尽きて、私は荷物をまとめて実家へ帰った。
それきりだった。
後日、彼と連絡が取れなくなった。
家にもいない。
最初からそこにいなかったように、気配ごと消えていた。
そのとき、私は思った。
宝くじが当たって失踪したのではないか、と。
行き先に心当たりがあった。
沖縄。
以前、知り合いが沖縄でホテルや居酒屋を経営していると言っていたのを思い出した。
私は彼と宝くじを追って、飛行機に乗った。
沖縄の聞いた名前の居酒屋で、彼を見つけた。
久しぶりに会った彼は、驚くほど落ち着いていた。
「宝くじ、当たってた?」
私はそう聞いた。
彼は少し間を置いてから、言った。
「当たってないよ」
その瞬間、私は分かった。
彼は嘘をつくとき、左の眉がわずかに動く。
その癖だけは、昔から変わっていなかった。
私は黙ったまま彼を見ていた。
当たっていないはずがない。
でも、当たったとも言い切れない。
そのどちらも、妙に現実から浮いている気がした。
第一章・終
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