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連茉小説『倏圩の別れ』第3話党9話【note創䜜倧賞2026_恋愛小説郚門応募䜜品】


    【あらすじ】
    父が、突然亡くなった...。
    知念皐月ちねんさ぀きず効の芜䟝めいは還暊を迎える母のこずが心配で仕方がない。残された家族は右埀巊埀するしかない。
    それぞれが抱える寂寥感のさなか、父を敬愛しお止たなかった䌚瀟の元郚䞋が珟れる。珟圚は僧䟶を務める埡坊英二おがうえいじは、埌日家にきた。圌を通じお少しず぀理解しおいく父のこず。
    母の孀独の隙間を埋めるべく姉効二人は必死にもがき続けるが...。
    䞀人より二人がいい。二人より䞉人がいい。
    信じ合うこずは、助け合うこず。
    母を巡る人間暡様ず家族の再生を描く。
    『出䌚いず分かれ』或る家族の、倏の物語。
    _________________________________

    【第1話】⇩


    【第2話】⇩


    【第3話】⇩
     季節が狂ったような暑さだった。
     ただ䞃月初旬にも関わらず、平均気枩が連日䞉十五床を超えおいた。生きおいる党おの者が、䜕かに逆恚みされおいるようだった。
     そしお、最近、特に思うこずがある。生きるこずはこんなにも蟛く、もしかするず、この䞖は地獄かずも疑いたくなるほどだ。䞀方で、様々な倩灜や人灜がこれでもかずいうぐらい続くのは、人間の胆力が詊されおいるのかもしれない。
     「こんにちは。いやぁ、今日は暑いですねぇ」
     埡坊さんは、麊わら垜子に黒のサングラスずいう出立ちで珟れた。先日ずは、党くの別人のように芋える。
     「埡坊さん、先日はありがずうございたした」
     私は玄関前で埡坊さんをお迎えし、距離感を確かめながら「暑いですね」を繰り返す。私に呌応するように「暑いですね」を返しおきた。叀来から䌝わる日本の䟘び寂びずは、本圓に良く出来たシステムだ。たるで四季に寄り添うように、人間関係の最滑油的圹割を果たしおいる。お互いに持ち぀持たれずで、匷かな平行線を保ち続けおいる。
     私の声に気が぀いた母は玄関先で恐瞮した衚情で埡坊さんを迎えた。
     「あっ、おぉお。サツキさんは、良く芋るず奥様に゜ックリですね」
     埡坊さんの誰かが誰かに䌌おいる話は、たるで挚拶代わりの名刺みたいだ。䜕かに気が぀いたように母ず私を芋䞊げるようにこちら偎に向き盎した。むしろ、私よりも効のメむのほうが母䌌だず思うし、実際にそう蚀われるこずが倚い。私は少しぶっきらがうに返す。蚀葉ではなく衚情で。埡坊さんから芋た私はもしかするず、苊劎性のオバさんずいったずころかただ、二十九歳なのに。ショックなのか、暑さからくる鬱陶しさなのか䜕かよく分からない感情が葛藀を繰り返した。気が付けば、お土産がゆっくりず差し出されおいた。
     「そんな、お気遣いたで頂戎しおしたっお...」
     母は申し蚳なさそうに頭を䞋げる。
     「奥様...お口に合うか分かりたせんが、お気持ちたで。先日は、倧倉お疲れ様でした」
     埡坊さんは、母の恐瞮した様子を芋お垜子を取っお頭を䞋げた。私は、埡坊さんの陜ひに焌けた赀濃い頭頂郚を芋るず先日の䞃回忌の画えがありありず蘇っおいた。
     「先ず、皔雄先茩に挚拶をさせおください」埡坊さんは、急に緊迫感を湛えた面持ちになった。
     「お父さん。埡坊さんが来おくれたしたよ」私は遺圱に向かっお問いかける。
     「...皔雄先茩、たた来たしたよ」
     こう蚀うず、サングラスを䞡手で倖しお目頭を抌さえた。流れる涙が頬を䌝い、畳を濡らす。圌が遺圱の正面に座るず、私は小僧のように斜め埌郚で正座をした。ひどく湿った匂いがした。たるで家䞭党おの寂寞を集めたような焊げ茶色の雰囲気が空間を支配した。
     「お茶でもどうぞ」
     埡坊さんが居間に戻っおきた。母は、麊茶が入った陶噚のコップを机の䞊に眮く。
     「あヌ。冷たくお矎味しい」
     埡坊さんは、助かりたしたず告げおきた。こんな暑さの䞭、䜕か冷たい物を䜓内に含むか、軜劙に䌚話でもしおいないず身䜓の芯から溶けおしたいそうだ。異垞に早い猛暑なんか誰も求めないし、䜕も生たないだろう。酷暑なんぞ、倩から生きる気力を奪われるようなものだ。
     「ずころで...」ず埡坊さんは衚情が険しくなった。
     「奥様。皔雄先茩の遺曞はあるのですか」埡坊さんはサングラスを掛け盎した。
     「それが、無いのです...」
     「家庭では䜕か悩んでいらっしゃったのですか」
     極端にレンズの薄いサングラスからは、鋭い県光が光る。今たで芋せたこずのない、思い詰めたような顔぀きで母ず私を芋た。
     「コロナ犍を境に瞊死いしなどずオブラヌトに包たれお呌ばれるようになりたしたが、昔は、自殺などず柄もなく呌ばれおいたした」
     「自殺、ですか」母は反応した。
     「はい。自殺か、他殺の、自殺です」
     埡坊さんは少しずれ䞋がった県鏡を指で摘む。
     「皔雄先茩は、亡くなる前倜、私ず酒を飲んでたした」
     「そうでしたよね。もちろん、知っおいたす」母は目を釣り䞊げた。
     「私の行き぀けの居酒屋でしたが、皔雄先茩は普段は飲たないりむスキヌを济びるほど飲んでいたした。しかも、ストレヌトで」埡坊さんは母に負けたいず衚情を倉えた。
     「埡坊さん...今日は...䞀䜓、䜕ですか」
     母は、怒りを抑えるようにこう発するず、埡坊さんを殺人鬌のような目で睚み぀けた。
     「奥さんはい」埡坊さんは䞀瞬で茹で蛞のように真っ赀になった。
     「奥さん。なぜ、皔雄先茩が死ななくおはならなかったのですか」
     「...そんなこず、私が䞀番蚊きたいです」
     「あんなに、前日は楜しく飲んでいたのに、なぜ垰宅した途端に、突然自殺願望が芜生えたのですか」埡坊さんは、䜕かが憑䟝したように迫っおきた。
     「はぁ自殺願望、っお...」母は切れ気味に返すなり、机を軜く叩いた。
     「酩酊になりながらも、終始『䜕があっおも、家族が䞀番だから』っお...」
     埡坊さんはこう蚀うず咜むせび泣き、足元に眮いた麊わら垜子を握った。ムギュっず匷く抌し朰されたような音がした。
     「今でも信じられたせんよ。あの皔雄先茩が亡くなったこずが...しかも、最期があのような圢で...」
     母ず私、特に母が埡坊さんから詰め寄られたのは実は今日が初めおではない。父が亡くなった時には実際に譊察の実況芋分ず聞き取り調査があり、私達はたさか埡坊さんが父に䜕かを...ず、疑ったこずもあった。怜芖ず叞法解剖の結果、父が瞊死だず認定されるたでは残された者が疑われるのは、いい迷惑だ。呚りの人々には䜕も良い物を残さない愚行でしかない。
     玄関から音がしお、効のメむが勀務先から垰宅した。
     母ず埡坊さんは俯いたたたで、メむの存圚には気が぀いおいなかった。
     メむの存圚を忘れるほど、重苊しい沈黙が流れおいた。
     「埡坊さん、先日はありがずうございたした」
     メむは䞁寧にお蟞儀をした。深々ず頭を䞋げる効を久しぶりに芋た気がする。私達にはあたり芋せない真摯な姿。普段芋せる匷気な態床ずはうっお倉わっお真反察。もしかするず、これがメむの本性なのかもしれない。
     「メむさんはサツキさんにそっくりですね」
     埡坊さんは座ったたた、䞋から芋䞊げるようにメむの党身を爪先から頭たでを芋぀めた。
     「背が高いのは、皔雄先茩譲りかな」
     氎を急に埗た魚のように勢いよくメむに話し掛ける。父ず話す時にはこうやっお笑顔で話しかけおいたのだろうかたるで、胞が締め付けられる思いがした。
     「じゃあ、私は...そろそろ...」
     こう蚀った埡坊さんは立ち䞊がった。
     「埡坊さん、䜕も出来ず...」
     私がこう蚀うず、埡坊さんは軜く手を暪に振り、䞡手で持぀麊わら垜子をクルリず回しお頭にパッず乗せた。ニコッず優しく笑い、父の遺圱がある方向に頭こうべを垂れた。
     私ずメむは埡坊さんを远いかけるように、玄関先に駆けおいく。
     陜はちょうど䞀番高くなった頃だろうか。私達を匷く照らしおいた。
     「埡坊さん、たた、お越しくださいね」
     メむず二人で、明朗に埡坊さんを芋送った。
     「たた、来たす」埡坊さんの背䞭が芋えなくなるたで、私達は手を振り続けた。そこに芋送る母の姿は無かった。

    『倏圩の別れな぀いろのわかれ』
    【第3話完】
    【第4話に続く】⇩

    #note創䜜倧賞 #恋愛小説郚門

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    人の涙腺にそっず觊れる文章を曞きたい。 サムネは詩や短歌を曞くこずが奜きだった亡き祖母の詩集から拝借したした。 https://tales.note.com/ は読み専です。

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