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父が入院した夜


父が入院した夜。実家でひとり。

この家で過ごした高校生の頃は、ひとりになりたかった。

家族が出かけたら、これ幸いと長電話をしたり、冷蔵庫から好きなものだけ取り出して食べたり。束の間の自由を手にして、浮かれていた。

でも今は。

普段は気にならない時計のカチカチという音がやけに大きく聞こえる。
いつもは狭く感じるこの場所が、今夜は妙にがらんとしている。

人って勝手なもので。

あの頃、ひとりになりたかった私は、今はひとりになった途端に心細くなる。

時計の音を聞きながら、父がこの家で重ねてきた時間を思い浮かべる。

特別なことは何もない。

ただ、父がまたこの家に戻ってきて、いつもの日常が続くことを願う夜だ。

時計は変わらず時を刻み続けている。
その音を聞きながら、私も静かにこの夜を過ごしている。




#創作大賞2026 #エッセイ部門

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