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Photo bysh240_cg

人からの謝罪を正しく受けるということ

    ある日、フィールドエンジニアが私を含めた複数の営業員に対し、怒りをあらわにしたメールを送った。内容は、営業員が必要な情報のヒアリングを、顧客から実施しないので、営業員は職務怠慢であるというものだった。

    業務ルール上は、技術的な案件情報を営業員がヒアリングすることになっていた。実際には、エンジニアでなければ分からない内容も多く、エンジニアが行うことも多かった。部門のマネージャー同士でも、業務整理が必要と認識されていた課題だった。

    私は、彼に返信を書いた。彼の怒りには申し訳無いと思うこと、ヒアリングは実施していたが返答が得られないことを記載した。内容的にはエンジニアが聞き取った方が早く、顧客満足度は高いので、そこは理解をして欲しいという内容を申し添えた。正直なところ、彼のメールは営業員を一方的に糾弾するような不躾な内容だったので、私の中には不快感が残った。

    隣のデスクで同じメールを受け取った先輩は、私と異なる行動をとった。先輩はしばらくパソコンを眺めた後、タバコを吸いに行った。喫煙所から戻ってくると、携帯を出して電話をかけた。電話の先は不在だったようで、カタカタとパソコンのキーボードを叩き出した。先輩がキーボードを打ち終えると、私のもとに一通のメールが届いた。

    先輩は全体への返信で、彼にメールを入れていた。そのCCが私に届いたというわけだ。内容は、自分の行いは職務怠慢で誠に申し訳無いということと、キチンとしたお詫びをしたいからあらためて電話をするというものだった。数日後、顧客からのヒアリング内容が先輩から配信された。彼からの返信は無かった。

    その後、先輩とこの件で話をする機会があった。先輩は、エンジニアに頼り切りで自分の職務を怠ったことを本当に申し訳無く思うこと、その上で、メールでは無く、せめて電話で詫びないと考えていたと言った。

    先輩は、数年後に別の課の課長に出世した。ランチに行った際、後日談を教えてくれた。何度か彼に電話をしたが、電話に出ず折り返しもなかった。直接謝罪もしたが、目も合わせずほぼ無視に近い状態だったそうだ。その事実を私に伝えた上で、先輩は自らの考えを私に伝えた。その考えは、次のようなものだった。

    自分には彼からの叱責を受ける要因があった。例えその指摘が不躾な方法で行われたとしても、詫びるべきは誠心誠意詫びなければならない。但し、謝罪を受けた彼は、きちんと応じるべきだった。更なる不満があれば述べれば良いし、言い過ぎたと思えばその点を詫びれば良い。彼は先輩の謝罪から逃げた。謝罪を直視するのは困難なことだが、逃げるということは人の道理に反することである。その道理に反すれば、周囲の理解は得られない。

    当時の私には、先輩のような強さは無かった。当時の彼も、先輩の強さに向き合う強さは無かった。彼は、その出来事の半年後に会社を去った。今の彼がそのような強さを持ち合わせているのかを、私は知る術もない。

     
     
    気になるテーマを調査して記事にしています。セールス・マーケティング・工業技術・キャリア・人材育成。旧帝卒。マネジメント。電気工事士、エネルギー管理士(熱分野)。

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