
共に人生を歩むなら、甘くてほろ苦い日常を貴方と。【2】
第2章 美味い珈琲の作り方
初めて喫茶・さいるいを訪れた週の日曜日。
いつもの休日の過ごし方は
①だいたい午前11時頃に起床
②読書
③晩御飯
④就寝
何の変哲もない(大分のんびり)休日を過ごしてきたけど、今日はなんだか口を動かしたい気分だった。
気づくと19時。喫茶・さいるいの閉店1時間前。
ついに足を運ぶ気になって玄関のドアを開ける。
カランカラン。
店内は2組程いる。
『あ、きたきた。いらっしゃい。』
この前会った時より少し顔が穏やかでほっとしながらこの前と全く同じカウンター席に着く。
『注文は??』
「んー 珈琲とサンドイッチで」
「あ、チーズ抜いて欲しいです。」
『え、チーズ苦手なんだ子供だね、、笑』
「なんですかそれ笑 失礼な、、笑」
肩を揺らしてケラケラ笑う相良さんを見て、この前のぶっきらぼうな印象とのギャップに少しだけ胸がソワソワした。
(今日は機嫌が良いんだな、、笑)
なんて思いながらお出かけ用の小さな鞄に入れておいたこの前の本の続きを読むことにした。
《雨の名前を覚えているか》
僕が読書にハマったきっかけの本だ。
今日はなんだかここでこの本を読みたい気分だった。
特に理由は無い。
いや、もしかしたら会話のタネになるかもなんて潜在的な多少の期待もあったのかもしれない。
けど、今日は他にもお客さんがいたからなのか、初めてお店に訪れた日より相良さんがほんの少しだけ忙しなかった。
ただただ本を読んで、サンドイッチを食べて、珈琲を飲んで、、、。
ほんとにただただ過ごしているだけなのに、家で一人でいる時のような孤独感から解放されてすごく暖かい気持ちになる。
愛読書もいつもと環境の違う憩いの場で読んでるからなのか、新たな視点から物語を解釈できるのが何より嬉しかった。
そんな居心地の良さに浸ってから早くも閉店5分前。
もうこんな時間かと自分の感情なのにも関わらず理解し難い胸騒ぎに違和感を覚えながら勘定場へ重い腰を上げる。
『じゃあお会計1000円です。』
『、、今日は何してたの?』
「今日はお昼に起きて、本読んでました。
でも、退屈だったからここに。」
1000円札を取り出しながらそう答えると、受け取ったお金を勘定台へ戻してまたこう言う。
『ふーん、、、。
今日恵君が読んでた本、俺も好き。
ずっと言いたかったけど、他のお客さんいたから。』
「、、、僕ももしかしたら相良さんが知ってるかもと思って読んでました、、。」
遂に口に出してしまった。
自分の中でも蓋をして見て見ぬふりをしたはずだったのに、なんだか言いたくなってしまった。
『ふっ、、。そっか。』
やっぱり今日は何がいいことがあった日なのかな?
さっきからずっと相良さんの前よりも緩くて優しい。
「今日は何かいい事があったんですか?
ずっと顔が和んでますね。」
『、、いや?
、、、今日は上手く珈琲が作れたからじゃない?』
そう口に出す相良さんの表情はどこか甘苦い顔をしていた。
「なるほど。
確かに今日の珈琲も美味しかったです。
ご馳走様でした。
閉店間際まで居てしまってすいません。」
『平気。
今度はさ、店暇な時に来てよ。
、、その本の話したいし。』
『あ、。嘘。
恵君が暇な時。恵君が暇な時、いつでも来ていいから。』
そう言って少し焦った口調の相良さんは淡々としているようにみえて実は心が豊かな人なのかもしれない。
「はいもちろん。楽しみにしてます。」
「じゃあまた。」
そういって店の外へ出て頬に当たる風の気持ちが良くてようやく気づいた。
(あ僕、少し顔赤かったかな、、、??)
自分の感情を理解する能力を身に付けるのはそう簡単じゃないと社会人としての学びを得られたと言い聞かせながらいつもより大きい歩幅で歩み出した。
続く__________??