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連載『それゆけ!重さん11』~バイク

    バイク

    もう一つ、重さんを語る上で
    忘れてはならないものがある。
    それは、バイクだ。

    蕎麦屋と中華屋をやっていたころは、
    出前に出かけた。

    それが重さんは楽しかった。

    出前のバイク以外にもバイクを持っていた。
    残念ながら私は乗っているところを
    見たことはないけれど、
    ハーレーダビッドソンにも乗っていたらしい。

    その昔、自動車の免許をとるだけで、
    大型バイクにも乗ることができた時代がある。

    病気で自分の店に立てなくなり、
    配達をしなくなっても
    重さんは、自慢のハーレーには乗っていたのだ。

    余命10年、重さんの楽しみは
    自分の足では行けなくなっても、
    どこにでも行けるバイクに乗ることだったのだろう。

    ーーーーー

    病気になっても淡々と生きる重さんだったが、
    私が重さんと出逢う少し前、
    そんな重さんを災難が襲った。

    池袋の家の駐車場に置いていたハーレーを
    真夜中、プロの窃盗団が、
    音もたてずに持ち去ってしまったのだ。

    数人でトラックで来て、持ち去る。
    酷い話だ。

    後に、窃盗団は逮捕されたが、
    ハーレーはすでに分解されて
    外国に売られてしまっていて戻ることはなかった。

    代わりに別のバイクなら渡せると言われたらしいが、
    重さんは断ったのだという。

    ハーレーが盗まれたことは残念だ。

    でも、重さんには他にも隠していたことがあった。

    実は、現金を20万円あまり、
    バイクのサドルの裏に括り付けていたのだ。

    窃盗団はお金には気づいていないかもしれない。
    それとも気づいて
    ラッキーだと思っただろうか。

    世の中にはお金持ちもたくさんいる。
    窃盗は悪いことだから誰からも盗むのはいけないけれど、
    何も重さんから奪わなくてもいいのに。と私は思ってしまう。

    余談だけれど、重さんは親戚の墓石の中にも
    お金を隠していた。
    最も盗まれないところだからという理由で。
    確かにそうだけど、
    1人で開けるなんて普通は怖いよ。

    ーーーーー

    戦争のさなかの子ども時代。
    妹のために奉公に出た10代。

    35歳になってやっと得た自由。
    そのあと10年で病に倒れ、
    大切なバイクまで盗まれる。

    それでも重さんは、
    明るくも暗くもなく、
    文句を言うこともなく生きる。

    出逢った頃の重さんは、
    400㏄のバイクに乗っていたけれど、

    ハーレーに乗る
    ずんぐりむっくりな重さんの後ろに
    一度でいいから乗ってみたかったな。

                       12に続く

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