上田綺世、ついに「日本のエース」へ―法政大から鹿島、欧州を這い上がったストライカーの覚醒?
9月28日、広島。
日本代表はベネズエラ代表に先制を許しながら、2―1で逆転した。
主役は上田綺世だった。
46分に失点。嫌な流れで始まった後半だったが、その3分後の49分、上田が同点弾を決める。そして90+6分、試合終了間際に再びゴール。
土壇場で試合をひっくり返した。
「点を取るべき人が、点を取る」
日本代表が長く待っていたエースストライカーの姿が、そこにあった。今回の代表メンバーでも上田はLOSCリール所属として招集されている。JFAの公式プログラムでは、法政大、鹿島、セルクル・ブルージュ、フェイエノールトを経て現在はフランスでプレーするキャリアが紹介されている。
エリート街道一直線ではなかった
上田のキャリアは、最初から華々しいものだったわけではない。
鹿島アントラーズの育成組織に在籍したものの、ユース昇格は果たせなかった。その後、鹿島学園高へ進み、法政大学へ。大学では1年時から結果を残し、2年時には全日本大学サッカー選手権優勝に貢献。3年時には、現役大学生として日本代表に選ばれた。
ここが面白い。
いわゆる「超高校級→即プロ→海外」という一直線ではない。
一度、大学サッカーを経由している。
つまり上田は、大学で身体と技術と得点感覚を磨き、そこでプロへの準備期間をつくった選手である。
法政大学というステップは、遠回りではなかった。
むしろ、その後の飛躍のための助走だったと言える。
鹿島で「点を取る仕事」を覚えた
大学在学中の2019年、上田は鹿島アントラーズへ加入する。
鹿島は、勝つことを要求されるクラブである。
ストライカーに求められるのは、華麗なプレーだけではない。
得点。
それだけで評価が大きく変わる世界だ。
上田はそこでゴールを積み重ね、2022年にベルギーのセルクル・ブルージュへ移籍した。法政大学によれば、同年にはカタールW杯日本代表にも選ばれている。
日本で結果を出し、海外へ。
ここからキャリアのギアが一段上がった。
ベルギーからオランダへ
欧州初挑戦のベルギー。
そこから2023年、オランダの名門フェイエノールトへ移った。さらに2025-26シーズンには、オランダ1部で得点王を獲得したと法政大学が紹介している。
ここは大きい。
欧州移籍そのものは、いまの日本代表では珍しくない。
だが、
海外リーグで点を取り続けるFW
となると、話は別である。
FWは残酷なポジションだ。
内容が良くても、点を取れなければ評価されない。
逆に言えば、点を取り続ければ言葉はいらない。
上田は、最も分かりやすい方法で自分の価値を証明してきた。
そしてフランスへ
2026年8月、フェイエノールトは上田のLOSCリール移籍を正式発表した。フェイエノールト自身も、上田が前年シーズンにクラブのトップスコアラーだったことを紹介している。
鹿島。
ベルギー。
オランダ。
そしてフランス。
きれいなステップアップである。
いきなり欧州の巨大クラブへ行くのではなく、リーグとクラブのレベルを一段ずつ上げている。
これはキャリア形成として非常に興味深い。
5Whysで考える――なぜ上田綺世は覚醒したのか
Why1 なぜ、日本代表で得点を重ねられるようになったのか。
欧州で、より速く、より強いDFを相手に日常的にプレーしているからだ。
Why2 なぜ欧州で生き残れたのか。
最大の武器である「ゴール前の動き」と「シュートまでの速さ」を磨き続けたからである。
Why3 なぜその武器を磨けたのか。
自分が万能型FWではなく、点を取ることに価値がある選手だと理解しているからだろう。
Why4 なぜ途中で伸び悩まず、ステップアップできたのか。
法政、鹿島、ベルギー、オランダ、フランスと、自分の成長段階に合った環境を選んできたからである。
Why5 なぜ今、日本代表の中心になりつつあるのか。
経験と身体能力と得点感覚が、28歳というFWとして脂の乗る時期に重なってきたからではないか。
問題の本質
日本代表は長い間、
「良いFWはいる。しかし絶対的エースがいない」
と言われてきた。
だが、エースとは肩書ではない。
点を取ることでしか、つくれない。
劣勢の試合。
終了間際。
勝敗を決める一本。
そこで決める選手がエースになる。
今回のベネズエラ戦の2得点は、単なる親善試合の2ゴール以上の意味を持つ。
上田が、
「日本代表のFWの一人」から「日本代表の点取り屋」へ変わりつつある
ことを示す試合だったのではないか。
法政大学サッカー部という原点
個人的に興味深いのは、上田が大学サッカー出身であることだ。
高校卒業時にプロ入りできなかったから失敗、ではない。
大学へ行ったから遠回り、でもない。
むしろ、
成長する場所を一つ挟んだからこそ、世界まで届いた。
法政大学は、上田が2年時にインカレ優勝へ貢献し、3年時にA代表へ選出された経歴を紹介している。
キャリアは最短距離だけが正解ではない。
大切なのは、その場所で次のステージへ行く力を身につけられるかどうかである。
未来シナリオ① 日本代表の絶対的9番へ
最も期待される未来だろう。
W杯後も代表の中心FWとして得点を重ねる。
久保建英、堂安律、三笘薫、鎌田大地らのチャンスメークを、最後に仕留める。
日本代表が世界上位へ行くためには、こうした「決め切る選手」が不可欠である。
未来シナリオ② フランスでさらに評価を上げる
リーグ・アンで得点を積み重ねれば、さらに上のクラブへ進む可能性も出てくる。
ベルギーからオランダ、そしてフランス。
この先どこまで行くかは、得点数が決める。
ストライカーほど、評価基準が明確な仕事も珍しい。
未来シナリオ③ 次世代FWのロールモデルになる
上田のキャリアは、若い選手に一つの道を示す。
高校卒業時にプロへ行けなくてもいい。
大学経由でもいい。
国内で結果を出し、欧州へ行き、一段ずつ上がればいい。
派手ではない。
しかし再現性のある成長ルートである。
上田綺世は「突然覚醒した」のではない
振り返れば、答えは単純なのかもしれない。
鹿島の育成組織。
鹿島学園。
法政大学。
鹿島アントラーズ。
セルクル・ブルージュ。
フェイエノールト。
LOSCリール。
一段ずつ登ってきた。
だから今回の2ゴールも、突然起きた奇跡ではない。
積み上げてきたキャリアが、代表という舞台で表面化したのである。
そしてエースストライカーとは、おそらくそういうものなのだろう。
誰かに任命されるものではない。
苦しい試合で点を取り、
勝たせ、
気がつけば周囲がそう呼び始める。
日本代表の「9番問題」は、ようやく答えに近づいているのかもしれない。
▶︎締めに一言
“By their fruit you will recognize them.”
— Matthew 7:16
「その実によって、彼らを見分けることができる。」
ストライカーにとって、その「実」とはゴールである。
上田綺世は今、それを積み上げ続けている。
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