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驚きの矎味しさ、りゅうきゅう䞌ずは

     ここ2幎の間に、毎月1回は実家に垰省しおいるが、倕方の6時30分頃に自宅を出るのは初めおだった。フェリヌに乗船しお倕暮れの空を芋䞊げるず、うっすらず雲が浮かんでいた。灰色がかった雲の情景が劙に印象に残った。

    「お腹が空いたからどこかで食べようね。ネットで怜玢しおみようか」ず倫に蚀った。「ここが良さそう。垂氎垂の 『創䜜割烹やたぐち』っおあるけど」「よし、決たり」 倫の快諟で電話予玄を枈たせ、ひずたず安心した。

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     䞋船しおから車を30分走らせた。あたりにもお腹が空いお、バッグをカサカサず持り氎矊矹を1個取り出した。運転䞭の倫に、それを勧めおも食べにくそうだからず、自分だけそそくさず食べた。

     初めお蚪れるお店ではあったが、予定より早い19時半に到着した。玄関の匕き戞を開けるず、こぢんたりずしおカりンタヌ垭も明るく、枅朔感が挂っおいた。座敷が2郚屋あり、家族でもゆっくりできそうだった。カりンタヌには、70代くらいの男性が静かにお酒を飲んでいた。

    「〇〇様ですかどうぞ、こちらぞ」
    䞭幎くらいの女将さんにカりンタヌ垭ぞ案内されお、メニュヌの曞かれたミニ黒板を芋せおもらった。
    最初に「りゅうきゅう䞌」が曞いおあった。ネヌミングからしお沖瞄料理だず決め蟌んで、垰省途䞭だったこずもあり、早めにそれに決めた。
     目元がパッチリした女将さんの顔立ちから、沖瞄出身だず思った。だから沖瞄料理を提䟛しおいるのかな、ず思った。

    「同じものにしよう。その方が早いだろう」
    倫は、私が車䞭で氎矊矹を食べる時、空腹感にスむッチが入ったのかもしれない。

    「矎味しいですよ〜」
    女将さんの実感の籠もった笑顔から、フレンドリヌな沖瞄感が出おいた。

     初めお食べる䞌に、沖瞄料理のむメヌゞずしお豚肉やゎヌダがたず先に頭に浮かんだ。海の幞なら、新鮮な魚ず特産品の海ぶどうが茉っおいるだろうず思った。
     ずころが、実際運ばれおきた海鮮の䞌には海ぶどうは無く、若干の違和感を持った。それでも色鮮やかな食材がさいの目切りで可愛らしく、圩りず盛り付けの絶劙なコントラストで食欲がそそられた。

     胡瓜の緑ず鮪の赀ず倪刀魚の銀色は確認できたが、䞀口食べるず矎味しくお、䜕が茉っおいるか考える䜙裕はなかった。

     新鮮な魚が、醀油ベヌスの旚味が際立぀タレに挬け蟌んであり、圩りの矎しい野菜ずのバランスが絶劙で、ワサビをちょっぎり効かせた、出汁文化を思わせる繊现な料理に感じた。

     甘蟛くお脂っこいコッテリした味ずは無瞁だし、ゎヌダも芋圓たらない。お店の雰囲気は玔和颚。
    「本圓に沖瞄料理かなもしかしお私の思い蟌み  」
    銖を傟げながらも、その掗緎された味に箞が止たらなくなった。

    「創䜜割烹だからね、工倫されおるんだよ」
    倫が私に満足気に蚀った。

    「矎味しいですね、初めお食べたした」
    ず倫が蚀うず、女将さんはにこにこしお嬉しそうだったが、沖瞄に関する話は䞀蚀も出なかった。
     そう蚀えば、女将さんの話し方には、沖瞄の方蚀らしさがないなぁず、あらためお気付いた。
    「りゅうきゅう䞌」は沖瞄料理ずいう確信からたすたす遠ざかる。自然な流れで掚枬したけれど、自分の勘違いの可胜性が芋え隠れする。もはや、女将さんに質問をするこずさえ憚られた。

    「鹿児島は醀油が甘いですけど、そんなに甘さを感じたせんね」
    ず私が䞍思議がった。

    「調味料も党郚こだわっおいたす」女将さんが誇らしげに蚀った。

     するず、板前さんが急にカりンタヌの端に珟れた。藍色の䜜務衣姿で、実盎な感じの圌は、私たち倫婊の方を芋お口を開いた。

    「甘い醀油に慣れなくお、目玉焌きは食べられないです。でも刺身は食べられたすね」
    板前さんは真顔で話した。
     有り難いサプラむズ登堎だったが、蚛りのない話し方に「アレッ」ず思った。その理由は、埌で女将さんから聞くこずになる。

     それからふず、甘い料理が苊手だった父のこずが脳裏に浮かんだ。
    「父が「こや、オクヮシかよ」ず母の手料理に蚀ったこずがあるんですけど、意味が分かりたすか」
    私が尋ねるず、女将さんは笑みを浮かべお倧きく頷いた。

     昔の鹿児島の人は「カ」のこずを「クヮ」ず発音するこずがあり、それらは、䜿い分けられおいた。぀たり「お菓子」が「オクヮシ」になる。この柔らかな叀い発音䜓系を思い出すず、懐かしさが蟌み䞊げおくる。

    「これは、お菓子なのか」
    ず父が母に、やんわりず皮肉を蚀ったのだった。私は、その日の䞡芪のこずを思い出し反芻した。

    「そう蚀えば、ご出身はどちらですか」
    私が女将さんに尋ねた。

    「地元、垂氎なんです」
    ずにこやかな女将さん。

    「あら、そうなんですか」
    私の勘は芋事に倖れた。

     気が぀けば板前さんは、い぀の間にか持ち堎に戻っおいた。

     お店には開店時のお祝いの焌酎が䜕本も、䞀際高い棚に食られおいた。その䞭に「䞀どん」ずいう黒っぜい瓶の重厚感のある幻の焌酎があった。

    「䞀床も飲んだこずがない」
    倫が矚望の県差しで蚀った。

    「お店でも提䟛されるんですか」
    私が女将さんに尋ねた。

    「ただ開店しお4幎なの、10呚幎蚘念に開けようかな、ず思っおるの。でも、私たち2人は焌酎が飲めないのぉ  」 
    オチを付けお、女将さんは小さく笑った。

     カりンタヌ垭の角に、奄矎の颚景を描き続けた「田䞭䞀村」にあやかった「䞀村」ず無地(アむボリヌの箱に墚字の行曞で曞かれた、5合瓶の黒糖焌酎があった。その「䞀村」を眺めおいるず、倫の転勀で䜏んだ奄矎倧島を思い出し、懐かしさを芚えた。
     偶然にも倫婊で「䞀」の字の付いた焌酎を芋぀けたこずに、お店ずの瞁を感じた。

     私は、だんだんお腹が満たされおきた。
    「ごめんね、車の䞭で氎矊矹をこっそり食べたの、アゞフラむもあるから食べきれない気がする。この䞌をを少し食べおくれない」
    ず倫の䞌に近づけた。

    「ああ、いいよ」
    私は、1/3くらい倫の噚にそっず移した。

    「板前さんは、地元の方ですか」      私が女将さんに聞いた。

    「いいえ、東京出身で48歳たで東京で働いおいたんです。母芪がここの出身で、今は盎ぐ近くに䜏んでるの」女将さんは屈蚗のない笑顔だった。

    「そうなんですか」
    私は䞀蚀だけ蚀った。

    「この話をするず3時間はかかるの」
    ず蚀った女将さんのナヌモアは、秀逞だず思った。

    「昔、埌玉の倧宮に䜏んでいたした」     
    私は東京に懐かしさを感じお話した。

    「私は桶川に䜏んでたよ」
    70代のお客さんも、関東繋がりに反応したかのように、カりンタヌで向かい合う女将さんに唐突に蚀った。

    「お若い頃ですか」
    私が身を乗り出すように、そのお客さんに尋ねた。

    「はい」
    そのお客さんは、頷きながら蚀った。

    「最近埌玉では、䟵入匷盗や暎行事件が倚いらしいですね」 
    私は元埌玉県人同士ずいう芪近感から、぀い最近の気になるニュヌスをそのお客さんに口走っおしたった。するず䞀瞬、堎に冷ややかな空気が流れた。 

    「   」党員沈黙。

    「そもそも田舎の幎寄りは家に鍵をしないのよね〜、寝るずきもしないもんねぇ。ハッハッハヌ」
    女将さんが明るく声を䞊げ、芋事に方向転換させた。

    「アハハ、じゃっど、じゃっど(そうだ、そうだ匷盗が䟵入したら、逆に札束を『ポン』ず眮いおいくかもしれんね」
    そのお客さんも身振り手振りを亀えお愉快そうに笑った。

     堎が明るい空気に䞀倉した。私は初めお知り合った人に、無謀な話をしおしたったず、反省した。

    「私が東京に行くず、すぐに田舎もんっお分かるよね」
    ず女将さんが肩を竊めた。

    「いや、倖人ず思われるよ」
    70代のお客さんが女将さんに蚀っお、掛け合いが楜しそうだった。2人の䌚話は、その埌も小気味よく進んでいった。
     
     他の副菜も矎味しくお顔が綻んだ。むンゲン豆のお浞しは少し䞭華颚、アゞフラむはき぀ね色で、サクッずした歯ごたえにプロの技を感じた。

     出汁が染み蟌んだ柔らかい高野豆腐を、䞀口食べるず「ゞュワヌ」ず口の䞭に出汁が広がった。なめこの味噌汁は、赀味噌ずマッチしお枩かい気持ちになった。

     お膳の料理を食べ終えるず、硝子の噚に入った瑞々しいメロンのデザヌトが運ばれおきお、初倏の蚪れを感じさせた。私は満腹になり、お勘定をするこずにした。

    「お腹いっぱいになっお、䞌は食べきれなくお倫に少しあげたした」

    「男性は220gで、女性は170gず少なめなんですけどね」

    「50gあげたした」
    私が冗談を蚀った。

    「あらたぁ。アハハ」
    冗談が通じたようで、女将さんに笑っおもらった。

    「ありがずうございたした。たた寄っおくださいね」
    女将さんは、人懐っこい衚情で私たちを芋送っおくれた。

     絶品料理に満足しお気分良くお店を出たが、2人ずも䞌に沖瞄らしさを芋いだせず、少し違和感が残った。埌でその理由が分かるずは、その時は思いもしなかった。

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     お店を出お実家ぞ向かう車䞭で、女将さんの鮮やかな話題転換を芋た時のこずを、静かに回想した。するず、20幎くらい前に倫に面癜いこず蚀われたこずを、ふず思い出した。

    「あんたは、話し䞊手だから飲み屋に行くずモテるよ」
    晩酌で酔っぱらった倫に耒められおしたった。今曎だが、私も接客業を生業にしおいたら、女将さんのように、人を明るく元気にできる玠逊を身に付けられたかもしれない。

     自宅を出発しおから2時間半埌の21時頃、実家に着いた。倜空には星が茝いおいたが、蟺りはすっかり暗闇に包たれおいた。父が他界し、母が10幎ほど䞀人暮らしをしおいた䞀軒家に、私たちを埅ち䟘びおいる人は、もう誰もいない。しかし、よく䌞びた賑やかな雑草が埅っおいた。
     始めの頃は、雑草を芋る床にうんざりしおいたが、今はそこたではない。匷颚に吹かれおも、土砂降りに打たれおも立ち䞊がり、自然の恵みだけで育぀逞しい生呜力に脱垜。

     倫が『カチャカチャ』ず鍵を開けおくれた。お店での明るい䌚話の䜙韻を抱えたたた、静たり返った暗い玄関に足を䞀歩螏み入れた。
     寂しさは薄れ、萜ち着いた気分で居間の灯りを぀けた。「パッ」ず明るくなった瞬間、明るく楜しい女将さんのパワヌがこの居間にも届いたず思った。人は、時間の経過ず共に匷くなるず぀くづく思う。 

     実家に着いおホッずしおいるず、倫がネットで䜕やら調べおいた。
    「発祥は倧分なんだな〜」
    倫がスマホの画面を芋ながら呟いた。

     「あらたぁどういうこず」
    私はそれを聞いおかなり驚いた。

    「名前の由来に、利䌑和えにあやかったずいう説があるよ」
    倫が远加情報を教えた。

    「利䌑が「りゅうきゅう」に倉化しおいった蚳」
    私は面癜いず思った。

    「結局、沖瞄の郷土料理じゃなかったのね。クックック」
    私は、自分の倧きな勘違いを笑うしかなかった。

    「若者なら、その堎で即、スマホでポチポチしお調べるよね。フフフ」          我ながら可笑しかった。老倫婊は機転が利かない。

    「ハハハ」
    倫はりケお、倧笑いした。

     「利䌑和え」には、千利䌑が奜んだゎマがたっぷり䜿われ、倧分の「りゅうきゅう䞌」にも胡麻がたっぷり䜿われおいる。しかし私たちが食べた「りゅうきゅう䞌」には、胡麻が無かったような  
    板前さんが探求した結果、胡麻が省かれたのだず思う。
     創䜜割烹ずいうだけあっお、郜䌚で磚き䞊げた腕ずセンスで、掗緎された味にアレンゞしたのかもしれない。そしお地元の新鮮な食材ずの融合により、繊现で䞊品な料理が生たれたのだろう。
     党囜的にみお、九州の醀油は甘いず聞く、本堎倧分の「りゅうきゅう䞌」も甘蟛いようだ。䜕故、倧分名物がこちらのお店のメニュヌにあったのか、詳现は分からないが、もしかするず、党囜的に広がり぀぀あるのかもしれない。

     今倜の矎味しい料理ず楜しい䌚話は、予想だにしない展開で䞍思議な『瞁』を感じた。それにしおも、こんなに笑い合った倜は、久し振りだった。良い倢が芋られるかもしれない。
     女将さんからもらった明るいパワヌで、明日の草むしりが、䞀局、軜やかにこなせそうな気がした。

    了

    写真:筆者

     
     
    健康情報に興味を持぀䞀介の䞻婊です。 小孊生女子のいじめ問題で、同玚生ず共に成長した蚘憶を綎りたした。そしお、䞍思議な出来事や料理のこず、子育おのこずなども蚘事にしおいたす。誰かのお圹に立おたら幞いです。 どうぞよろしくお願いしたす。

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