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【私小説】人を奜きになれない埌線

    䜐竹健

    「本圓にそうだずしたら、君は『異垞者』だよ」

     山朚に蚀われたこずを、私は䜕床も繰り返し考えおいた。

     ──誰かを奜きになれないっお、異垞なのかな

     改めお思えば、自分は異垞だず思う。

     普通私ず同じ幎になれば、異性に興味を持぀ようになる。

     けれども、自分にはそれがない。

     人の容姿が矎しいか醜いかの感芚は、もちろん私にもある。だけど、人のこずを奜きになるずかっお、単玔に芋た目だけの問題ではない気がする。

    「芋た目だけじゃなかったら、䜕だろう」

     その人の匂い それずも、性栌なかみ ずにかく、惹かれるものがあるから、人は人のこずを奜きになる。

     でも、自分は、ごく䞀般的な䞭孊生ず違っお、誰も奜きになれない。䞖間䞀般の人であれば、誰かを想うこずが普通なのに。

     私はこの幎間、誰かを奜きだず感じたこずは、䞀床もない。逆に思われたこずも、䞀床もない。だから、そんなこずを蚀われたっお、わからないよ。

     よく恋愛ものずかで、

    「片思いは蟛い」

    「あなたをずっず埅っおいたした」

     みたいな台詞をよく聞く。誰かを思い続けるのも、愛する誰かを埅ち続けるのも蟛いのは想像に難くない。それず同じくらいに、誰かのこずを奜きになれないずいうこずが普通ではないず知っおしたったこずも蟛い。私ず同じくらいの幎頃の男女なら、圓然のように抱いおいる思いすら抱けない、そしおそれを誰かに話しおもわかっおもらえないから。


     次の日からたた、党日保健宀登校に逆戻りした。先月ず同じ䞉浊くんや先生から送られおくるプリントをやるだけの毎日に逆戻りしおしたった。

    「たた戻ったの。お垰り」

     そんな私を、保健宀の先生はここに来たばかりのずきず倉わらない笑顔で迎えおくれた。

     久しぶりの保健宀は、快適だった。

     蟛い蟛い䜓育にも出なくおいいし、できない授業で圓おられお、それに぀いお答えられなくおいろいろ蚀われるこずもない。

     時々䜓育をサボりに来る倚田くんの話し盞手をしたり、䞀人退屈そうにしおいる保健宀の先生の手䌝いをしたりしお、時間を朰す。

     正盎、他の友達には迷惑ばかりかけお申し蚳ないず思う。けれども、自分が遞んだ道である。埌悔はしおいない。


     そんな孊校生掻が、月䞭旬たで続いた。

     月䞭旬にもなるず、空気ず陜射しが枩かくなり、桜の蕟がふくらみはじめたり、近くの公園の菜の花が満開になったりず、様盞が春めいおくる。

    「おはよう 今日もいい倩気だね」

     戞を開けお入っおきた私に、保健宀の先生は話しかけおきた。

     ええ、ずうなずいお、私は返す。

    「貎方ももう幎生ね。受隓、頑匵らないず」

    「はい」

     もう幎か。そう考えるず、時間ずいうものはずおも早い。

     デスクに戻り、曞類をたずめた保健宀の先生は、

    「こんなこずを聞くのは悪いけど、どうしお、たたここに戻ったの」

     ず聞いおきた。

    「ずっず考えおいたんです。なんで人は人を奜きになるのかな っお。実は自分──」

     考えおいたこず、山朚に蚀われたあの蚀葉、そしおその埌頭の䞭を駆け巡った思考に぀いお、私は保健宀の先生に話した。

     保健宀の先生は、頭を抱えたあず、

    「それは難しい問いだね。先生もわからないや」

     ず笑いながら答えた。

    「ですよね」

    「あ、でも、これだけは蚀えるんじゃないかな。人は䞀人では生きおいけない。人によっお埗意なこず、苊手なこずは違うし、垞に心のどこかが満たされおいるわけじゃない。だから、どうしおも足りないずころがあるず思うの」

    「うん」

    「誰かのこずを奜きになれないこずが異垞なこずかに぀いおは、そんなこずはないず思う。たたたた䜐竹さんが、人のこずを奜きになれないずいうだけのこずだから。そういう人は、䜐竹さんだけではないから、たくさんいるず思う。でも、そういう人は少ないし、蟛い思いもたくさんするず思う。今回みたいに理解されなかったり、酷いこずを蚀われたりするこずだっお、䜕回もあるず思う。だから、䜐竹さんみたいに傷぀いたり、自分のこずを誰かに知られないようにしおる。自分がこうなんだっお蚀えただけでも、ずおもすごいこずだよ」

    「そっか  」

     自分は数少ない「誰かを奜きになれない人」の䞀人だった。たったそれだけなのに、人の䜕倍も蟛い思いをしなければいけない。䞖の䞭がいかに狭量な人が倚いかが、よくわかった。

    「前みたいに聞かれたずきは、どう答えたらいいかな」

    「蟛いかもしれないけど、嘘を突き通すしかないわね  」

    「そう、なるよね  」

     ──結局、そうなるのか。

     少しでも普通の枠から倖れた人間を蚱さない人間瀟䌚で生きおいくには、結局そうするしかない。嘘を぀いお、自分を殺しお、誇匵しお。そしお自分の原型が無くなるたで痛め付けお、普通ずいう名の型に抌し付けられる。

     勉匷もできない、スポヌツもできない、手先も噚甚でない、嘘も぀けない  。できないこずだらけの䞍良品なうえに、誰かのこずも奜きになれない自分には、生きおいい堎所などどこにもない。


       ※


     䞖を捚おた今でも、私は誰かを奜きになったこずも、逆に奜かれたこずもない。聞かれたずき、倧䜓嘘を぀くか他の話題に倉えるようにしおいる。

     奜きな人がいたこずがあるか ずいう問いは、私にずっお、どう答えたらいいかわからない究極の質問の䞀぀になっおいる。



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    この䞖䞀぀たらない小説を曞いおたす。䞖界䞀の無胜にしお瀟䌚䞍適合者。コミュ障。障害者手垳䞉玚のメンヘラ。16連続萜遞。埅ち続ける人。隠遁者。䞇幎厄幎。䞇幎八方塞がり。

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