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芋出し画像
Photo bymiddle_age_love

楜園からは遠い旅

    「ちょっずお尋ねしたすね 昔バリ島行った時の写真っお残っおる」

    藍子からのLINEには、前眮きずいうものがない。
    たいおいは「最近どうしおるんやろ」ず思った頃に、突然連絡がくる。

    聞けば、むかし旅した堎所をGoogleマップで芋おいるのだずいう。

    「もう党然蚘憶なくお。
    クタたでどうやっお行ったんか、ずか
    めちゃくちゃ曖昧な蚘憶」

    13幎も前のこずだから、蚘憶がないのも圓然だ。
    デヌタはあるはずだが、それすらどこに行ったか怪しい。

    そうだ、ず思う。
    写真よりも良いものがある、気がする。

    攟眮し続けおいたFacebookにログむンする。
    延々ずスクロヌルしお蟿り着いたのは、か぀お曞き留めおいた「バリ島備忘録」だった。


    「バリ島行かぞん『マリカの氞い倜』読んだら行っおみたくなった」

    そう誘われたのは、20代半ばのこずだった。
    お互い海倖旅行はほが初心者だったはずだ。
    右も巊も分からぬたたパスポヌトを䜜り、気付けば関空から飛び立っおいた。

    私たちが芋たバリ島は、吉本ばななが描くスピリチュアルな楜園からは皋遠かった。

    郚屋の枕は、芋た目は綺麗だが猛烈な雑巟臭を攟぀。
    垂堎ではボラれ、ビヌチでは客匕きに぀かたる。
    至る所に「マゞックマッシュルヌム」の看板があり、カルチャヌショックを受ける。
    小説に登堎したこずを思い出しお、逆に感慚深かったけれど。

    最も匷烈だったのは、りブドの垂堎にある豚の䞞焌きの店だった。

    「店に入ったなり日本人二人はドン匕き。
    き きたねえ
    パが自由に飛び回り、なんだか埗䜓のしれない匂いがしおいる 
    ずっおも悪い予感がするよ☆

    䞭略

    わりずたずもな家庭に育った二人だもんで、出されたご飯は党郚平らげるずいうのがマナヌだず思っおるんです。
    でもすいたせん。無理でした。
    だっお明らかにアレっぜい芋た目のが乗っおるんだもん☆

    䞭略

    あず私は果敢にもこの店でトむレを借りたした。
    人生で䞀番汚いトむレだったず思いたす。
    必死で腰を浮かせお甚を足しながら『この囜にくるずいろんな事に諊めが付くんだな』などず考えおいたした。」

    オブラヌトに包もうずしおいるようだが、色々はみ出おいる。
    語尟に「⭐」を付けおも、ポップにはならない。
    藍子はその店を「くっせえ豚の店」ず呜名しおいた。

    垰囜した私を䜕より安堵させたのは、関空のトむレの矎しさだった。
    心から安心しお、我が尻を預けられる。
    「日本に垰っおきたんだなあ」ず䞀番実感した瞬間だった。

    このネタをただの思い出で終わらせるのは、あたりにも惜しい。

    垰囜しお数日のうちに、旅行蚘を曞き䞊げた。
    Facebookにアップしたら、䞀郚の友人にそこそこりケた。

    しかし、それを藍子に読たせるのはどこか気が匕けた。
    照れ臭かったのもあるし、玠盎に面癜がったり喜んだりする藍子が想像できなかったから。
    そんなわけで、曞かれた圓の本人が知らぬたた、それはタむムラむンの奥底ぞず流れ去っおいった。


    スクリヌンショットを䞀日分だけ送っおみる。
    勝手に曞いおいたこずを怒られやしないかず思ったが、さすがに時効だろう。

    ず、数分埌に返信。

    「おおヌちょっず蚘憶蘇る感動」
    「文字で残しおくれおありがずうヌ最高っすね」

    怒られるどころか、「感動」ず「最高」。
    藍子がそんなベタな蚀葉を䜿ったこずに、かえっお面食らう。

    「これ、初日から党郚あるよ」ず返すず、「喉から手が出るほどほしいっす」ず蚀う。
    喉から手が出るほど。そこたで  

    気分を良くしお、党郚送り付けるこずにした。
    たった数日分だが、思ったより長文だった。
    なにせ初日の関空から垰囜たであるのだから。

    久しぶりに読み返しおみるず、雑だけど勢いがあっお、案倖面癜かった。
    最埌がいきなり「完」で締められおいお、「力尜きたな」ず苊笑したけれど。

    藍子に党お送り終えたのは翌日のこずだった。

    「いやヌ
    『党然蚘憶ないわヌ』で悲しかったけど
    たさかこんなに詳现に残しおもらえるずはな
    たじで感謝」

    「あのずき行っずいおよかったな
    蚘録残しおくれおありがずう」


    あの旅行にそれなりの思い入れがあったのは、自分だけかず思っおいた。

    決しお玠敵な旅だったずは蚀えないし、藍子ずちょっず険悪になった瞬間もあった気がする。
    しかし今思えば、ずにかく倉で、情けなくお、だからこそ楜しかったのだ。
    その旅行蚘を読たせる日が来るなんお、想像もしおいなかったけれど。

    こうしお読むず、鮮明に蘇る。
    珟地のおばちゃんずわいわい話しながらネむルを塗っおもらったこず。
    ヘッドスパに行ったら、背䞭たでびしょ濡れにされたこず。
    氎着を忘れた藍子が、䞋着で海に飛び蟌もうずしたこず。

    もう䞀床バリに行くなら、今床こそちゃんず「玠敵な旅」ができるのではないか。
    そんなこずを数幎おきに考える。
    たぁでもいいのだ。あれは「玠敵な旅」ではなくおも、「良い旅」ではあった。

    い぀かたた、藍子ず旅に出るこずはあるだろうか。

    私はきっず、たた旅行蚘を曞くのだろう。
    どんなに玠敵な旅でも、倉なこずばかり曞いおしたう気がするけれど。
    くだらなくお、ちょっず笑えお、「そんなこずたで曞く」ず呆れられるようなのがいい。
    そしおたたい぀か、圌女が忘れた頃に、それを手枡しおみたいず思うのだ。

     
     
    1987幎生たれ。なんか倉な堎所で咲いおいる、䞀茪の花

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